品目別規則CCとEPA原産地証明の関税削減活用法

品目別規則CCとは何か、HSコード2桁変更の仕組みからデミニマス規則・除外規定の落とし穴まで徹底解説。EPA関税削減を確実に実現するための実務知識を知っていますか?

品目別規則CCで原産地証明とEPA関税削減を確実にする方法

CCルールを「満たした」と判定しても、除外規定を見落とすと関税削減がゼロになります。


この記事の3つのポイント
📌
品目別規則CCの基本

CC(Change in Chapter)とはHSコードの上位2桁(類)レベルで変更があることを示す関税分類変更基準。3種類のCTC基準の中で最も大きな変更を求める。

⚠️
除外規定と落とし穴

CCを満たしていても「except from〜」の除外規定が付いていると原産性が認められない。HS年次版のズレも実務上の重大ミスにつながる。

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救済規定の活用

CCを満たさない材料があっても、デミニマスルール(FOB価格の10%以下)や付加価値基準(RVC)を使えば原産品として認定できる可能性がある。


品目別規則CCとは何か:HSコード2桁変更の基本

品目別規則CCとは、正式には「Change in Chapter(類の変更)」といい、EPA(経済連携協定)の原産地規則のうち、関税分類変更基準(CTC)の一形態です。非原産材料のHSコードが上位2桁(類)のレベルで、製品のHSコードと異なる類に属するよう変更されていれば、その産品は原産品として認定されるというルールです。


HSコードは、世界税関機構(WCO)が定めた商品分類体系で、全世界共通の上位6桁を基本として構成されています。上位2桁が「類(Chapter)」、上位4桁が「項(Heading)」、上位6桁が「号(Subheading)」です。このうちCCは最も桁数の少ない2桁レベルの変更を求める基準です。


関税分類変更基準には次の3種類があります。


記号 正式名称 変更レベル 難易度のイメージ
CC Change in Chapter 上2桁(類)変更 最もクリアしやすい
CTH Change in Tariff Heading 上4桁(項)変更 中程度
CTSH Change in Tariff Subheading 上6桁(号)変更 最も厳しい


CCが「最もクリアしやすい」とされる理由は、類(2桁)という大きなくくりでの変更を認めていることにあります。つまり材料と産品の間で、類レベルの違いさえあれば、実質的な変更があったとみなされます。


具体例で確認しましょう。大豆(HSコード:1201、第12類)、米(第10類)、麹菌(第30類)、塩(第25類)を原材料として、日本で味噌(HSコード:2103.90、第20類)を製造したとします。これらの非原産材料はすべて「20類以外の類」に属しているため、CCを満たします。たとえ大豆が中国産であっても、類レベルの変更が発生しているため、製造された味噌は日本の原産品として認定されるのです。


CC基準が原則です。最もゆるやかな変更基準ですが、後述するように除外規定が付く場合もあります。


参考:関税分類変更基準(CCの概念図含む)|財務省関税局・税関「我が国の原産地規則」
https://www.customs.go.jp/roo/origin/epa_roo.pdf


品目別規則CCの除外規定:「except from〜」の落とし穴

CCを満たしたからといって、必ずしも原産品と認定されるわけではありません。これを知らないと、関税削減のチャンスをみすみす逃す可能性があります。


品目別規則の条文には、しばしば「except from〜(〜からの変更は除く)」という除外規定が付記されています。CCが満たされていても、この除外規定に該当する材料を使用していた場合、原産性は認められません。


例として、日米貿易協定における溶接機械(HSコード:8515.31)の品目別規則を見てみましょう。規則は「CTSH, except from subheadings 8515.11 through 8515.80」と規定されています。これは、8515.11〜8515.80に分類される非原産材料を用いた場合、たとえCTSHを達成していても原産性が認められないということです。


同様に、CCにも除外規定が付く場合があります。農産物などでは「CC(ただし第〇類の材料からの変更は除く)」のように記載されていることがあり、典型的な例として、調製食品(第21類)の品目別規則に「CC(第07.02項及び第20.02項の材料からの変更を除く)」と規定されているケースがあります。


つまり、「CC(ただし特定の材料からの変更は除く)」という条件付きのCCが存在するのです。


  • ⚠️ 除外規定の見落としはゼロ件でも許されません。条文の本文だけでなく、注記・脚注まで必ず読み込みましょう。
  • ⚠️ 「CCを満たしている」ではなく「CCを満たしており、かつ除外規定に該当しない」と確認することが正しい手順です。
  • ⚠️ 農産品・加工食品・繊維製品などは除外規定が付きやすい傾向があります。


除外規定への対応には、税関が公開している「原産地規則ポータル」で産品のHSコードを入力し、条文の細部まで確認することが最も確実です。また、判断に迷う場合は税関の「事前教示制度」を活用し、書面で回答を得ておくと安心です。


参考:日米貿易協定の関税分類変更基準の例外について解説|TariffLabo
https://www.tarifflabo.com/tariff/jp-us-fta-ctc-exception/


HS年次版のズレが引き起こす品目別規則CC誤判定

CCの判定にあたって見落とされがちな重大ポイントがHS年次版の問題です。HSコードは世界税関機構(WCO)によって約5年ごとに改正されます(HS2002、HS2007、HS2012、HS2017、HS2022…)。各EPAの品目別規則は、協定締結時のHSコードバージョンに基づいて作成されており、後に改正されたバージョンに自動更新はされません。


これが実務上の重大な落とし穴になります。


協定名 品目別規則の基準HS版 実務上の注意
RCEP HS2022 2023年1月1日からHS2022に移行済み
CPTPP(TPP11) HS2012 ⚠️ 現在のHS2022との差異に要注意
日EU・EPA / 日英EPA HS2017 協定付属書にHS2017使用が明記
日ASEAN(AJCEP) HS2017 2023年3月にHS2002から更新済み
日スイス / 日ベトナム / 日インド HS2007 古いバージョンのため読み替え必須
日シンガポール / 日メキシコ HS2002 最も古いバージョンのため特に注意


典型的な誤判定パターンを紹介します。CPTPPを使ってある産品を輸出しようとした場合、現在の日本の関税率表(HS2022)で判定すると「CCを満たす」と判断できても、CPTPPの品目別規則が基準とするHS2012で確認すると、当該品目のHSコードが異なる類に分類されており、実際はCCを満たさない——というケースが発生します。これは「HS年次版のズレ」と呼ばれ、最も典型的な誤判定ミスです。


これは使えそうです。逆に、HS2022で見るとCCを満たしていないように見えても、協定のHS年次版で確認するとCCを満たしていた、というケースもあります。


HS年次版のズレを防ぐための実務的な手順は以下の通りです。


  1. 使用するEPAを特定し、そのEPAの基準HSバージョンを確認する
  2. 産品のHSコードを協定の基準HSバージョンで再確認する
  3. 必要に応じて、WCO・ジェトロ・税関が提供する「読み替え(トランスポジション)対照表」を活用する
  4. 「原産地規則ポータル(税関ウェブサイト)」では基準年次版を指定して検索する


HS年次版の確認が原則です。


参考:各EPAのHS年次版早見表と注意点を解説|株式会社ロジスティック・ブログ(2025年9月)
https://global-scm.com/blog/?p=3010


品目別規則CCを満たせない場合の救済規定:デミニマスルールと付加価値基準

品目別規則CCを完全にはクリアできない材料が1つあるだけで、原産性の取得を諦めてしまっていないでしょうか。実は、CCを満たせない場合でも使える救済規定が複数あります。


デミニマスルール(僅少の非原産材料)


CCを満たさない非原産材料が存在していても、その材料の価格が産品全体のFOB価格の一定割合(多くの協定で10%以下)に収まる場合、その材料を「僅少な非原産材料」として無視できる制度です。


具体例:日本でプリンター(FOB価格300ドル、HSコード:8443.32)を製造し、海外から輸入したプリンター専用カバー(CIF価格15ドル、HSコード:8443.99)を組み込んで輸出するケースを考えます。この専用カバーはプリンターと同じ「8443」に属するためCTHを満たせません。しかし、15ドル÷300ドル=5%です。RCEPの場合、第84類はFOB価格の10%以下の非原産材料にデミニマスルールが適用できるため、このカバーを原産材料とみなすことができます。結果としてプリンターは原産品として認定されます。


主要協定のデミニマスルール(工業品の目安)。


  • 🇯🇵 RCEP、日EU EPA、CPTPP など多くの協定:FOB価格の10%以下
  • 🇯🇵 日スイスEPA(第1〜24類):工場渡し価格の7%以下(食品類はやや厳格)
  • 🧵 繊維製品(第50〜63類):多くの協定で重量の7〜10%以下


注意点が1つあります。デミニマスルールは関税分類変更基準(CTC)が条件を満たさない場合にのみ使えます。付加価値基準では使用できません。また、すべての品目に適用されるわけではなく、協定ごとに対象HSコードが指定されています。


付加価値基準(RVC:Regional Value Content)


品目別規則にCCと並んで「または付加価値40%以上(RVC40)」といった選択肢が設けられている場合があります。CCをどうしても満たせないなら、日本での付加価値割合を計算してRVC基準で代替できるかを検討することが有効です。RCEPの一般的な閾値はFOB価格ベースで40%以上です。


結論は救済規定の活用です。諦める前に、まずデミニマスルールとRVCの両方を検討しましょう。


参考:デミニマスルール(僅少の非原産材料)の協定別一覧|原産地証明相談サポートセンター
https://hero-gensanchi.com/gensanchkinsyou.html


品目別規則CC判定の実務フローと書類保管義務

品目別規則CCを正しく運用するためには、正確な判定手順と証拠書類の整備が欠かせません。判定だけ正しくても、書類が不備だと税関の事後確認で問題になります。


CC判定の基本5ステップ


  1. 産品のHSコード(上位6桁)を確定する:輸出先の関税率表に基づき、製品のHSコードを特定します。日本国内の9桁と輸出相手国の6桁が一致しているかも確認が必要です。
  2. 非原産材料をすべてリストアップする:BOM(部品表/原材料表)を用いて、輸入原材料や海外調達部品を全件リストアップします。実務上は一旦すべての材料を「非原産品」として扱うのが効率的です。
  3. 各非原産材料のHSコードを確認する:仕入先から提供されるHSコードをそのまま使わず、自社でも妥当性を検証することが重要です。仕入先の分類が相手国の解釈と異なる場合があるためです。
  4. 適用EPAの品目別規則(基準HSバージョン含む)を確認し判定する:CCが求められている場合、各非原産材料のHS上位2桁と産品の上位2桁が異なるかをチェックします。除外規定の確認も必須です。
  5. 証拠書類を整備・保管する:判定根拠となる書類一式を、協定で定められた期間(通常5年程度)保管します。


保管が義務付けられる主な書類は以下の通りです。


  • 📄 BOM(部品表/原材料明細)
  • 📄 仕入先から取得したサプライヤー証明書(非原産材料のHSコードと原産地を明記)
  • 📄 製造工程表(どの工程がどの国で行われたかを示す)
  • 📄 コスト計算書(付加価値基準を使う場合)
  • 📄 特定原産地証明書の写し(発給を受けた場合)


書類保管が条件です。


書類保管期間は協定によって異なりますが、多くのEPAでは「輸入申告日から5年間」とされています。RCEP協定の場合も同様で、5年間の保存が求められます。事後確認(税関による調査)が実施された際に書類を提出できなければ、認定が取り消され過去の輸入分の関税追徴が発生するリスクもあります。


また、CC判定に自信が持てない場合や、判定が難しい産品については、税関の「事前教示制度」を活用することを検討してください。事前教示制度とは、HSコードの分類や原産地規則の解釈について税関に照会し、文書で回答を得られる制度です。書面回答を得ておくことで、後の調査時のリスクを大幅に軽減できます。


参考:EPA原産地規則の概要(基本編)|公益財団法人日本関税協会
https://www.kanzei.or.jp/wp-content/uploads/2025/08/2025071516_gensanchikihon.pdf


参考:原産地証明書の事後確認・事前教示制度について|税関Japan Customs
https://www.customs.go.jp/roo/origin/index.htm