CCルールを「満たした」と判定しても、除外規定を見落とすと関税削減がゼロになります。
品目別規則CCとは、正式には「Change in Chapter(類の変更)」といい、EPA(経済連携協定)の原産地規則のうち、関税分類変更基準(CTC)の一形態です。非原産材料のHSコードが上位2桁(類)のレベルで、製品のHSコードと異なる類に属するよう変更されていれば、その産品は原産品として認定されるというルールです。
HSコードは、世界税関機構(WCO)が定めた商品分類体系で、全世界共通の上位6桁を基本として構成されています。上位2桁が「類(Chapter)」、上位4桁が「項(Heading)」、上位6桁が「号(Subheading)」です。このうちCCは最も桁数の少ない2桁レベルの変更を求める基準です。
関税分類変更基準には次の3種類があります。
| 記号 | 正式名称 | 変更レベル | 難易度のイメージ |
|---|---|---|---|
| CC | Change in Chapter | 上2桁(類)変更 | 最もクリアしやすい |
| CTH | Change in Tariff Heading | 上4桁(項)変更 | 中程度 |
| CTSH | Change in Tariff Subheading | 上6桁(号)変更 | 最も厳しい |
CCが「最もクリアしやすい」とされる理由は、類(2桁)という大きなくくりでの変更を認めていることにあります。つまり材料と産品の間で、類レベルの違いさえあれば、実質的な変更があったとみなされます。
具体例で確認しましょう。大豆(HSコード:1201、第12類)、米(第10類)、麹菌(第30類)、塩(第25類)を原材料として、日本で味噌(HSコード:2103.90、第20類)を製造したとします。これらの非原産材料はすべて「20類以外の類」に属しているため、CCを満たします。たとえ大豆が中国産であっても、類レベルの変更が発生しているため、製造された味噌は日本の原産品として認定されるのです。
CC基準が原則です。最もゆるやかな変更基準ですが、後述するように除外規定が付く場合もあります。
参考:関税分類変更基準(CCの概念図含む)|財務省関税局・税関「我が国の原産地規則」
https://www.customs.go.jp/roo/origin/epa_roo.pdf
CCを満たしたからといって、必ずしも原産品と認定されるわけではありません。これを知らないと、関税削減のチャンスをみすみす逃す可能性があります。
品目別規則の条文には、しばしば「except from〜(〜からの変更は除く)」という除外規定が付記されています。CCが満たされていても、この除外規定に該当する材料を使用していた場合、原産性は認められません。
例として、日米貿易協定における溶接機械(HSコード:8515.31)の品目別規則を見てみましょう。規則は「CTSH, except from subheadings 8515.11 through 8515.80」と規定されています。これは、8515.11〜8515.80に分類される非原産材料を用いた場合、たとえCTSHを達成していても原産性が認められないということです。
同様に、CCにも除外規定が付く場合があります。農産物などでは「CC(ただし第〇類の材料からの変更は除く)」のように記載されていることがあり、典型的な例として、調製食品(第21類)の品目別規則に「CC(第07.02項及び第20.02項の材料からの変更を除く)」と規定されているケースがあります。
つまり、「CC(ただし特定の材料からの変更は除く)」という条件付きのCCが存在するのです。
除外規定への対応には、税関が公開している「原産地規則ポータル」で産品のHSコードを入力し、条文の細部まで確認することが最も確実です。また、判断に迷う場合は税関の「事前教示制度」を活用し、書面で回答を得ておくと安心です。
参考:日米貿易協定の関税分類変更基準の例外について解説|TariffLabo
https://www.tarifflabo.com/tariff/jp-us-fta-ctc-exception/
CCの判定にあたって見落とされがちな重大ポイントがHS年次版の問題です。HSコードは世界税関機構(WCO)によって約5年ごとに改正されます(HS2002、HS2007、HS2012、HS2017、HS2022…)。各EPAの品目別規則は、協定締結時のHSコードバージョンに基づいて作成されており、後に改正されたバージョンに自動更新はされません。
これが実務上の重大な落とし穴になります。
| 協定名 | 品目別規則の基準HS版 | 実務上の注意 |
|---|---|---|
| RCEP | HS2022 | 2023年1月1日からHS2022に移行済み |
| CPTPP(TPP11) | HS2012 | ⚠️ 現在のHS2022との差異に要注意 |
| 日EU・EPA / 日英EPA | HS2017 | 協定付属書にHS2017使用が明記 |
| 日ASEAN(AJCEP) | HS2017 | 2023年3月にHS2002から更新済み |
| 日スイス / 日ベトナム / 日インド | HS2007 | 古いバージョンのため読み替え必須 |
| 日シンガポール / 日メキシコ | HS2002 | 最も古いバージョンのため特に注意 |
典型的な誤判定パターンを紹介します。CPTPPを使ってある産品を輸出しようとした場合、現在の日本の関税率表(HS2022)で判定すると「CCを満たす」と判断できても、CPTPPの品目別規則が基準とするHS2012で確認すると、当該品目のHSコードが異なる類に分類されており、実際はCCを満たさない——というケースが発生します。これは「HS年次版のズレ」と呼ばれ、最も典型的な誤判定ミスです。
これは使えそうです。逆に、HS2022で見るとCCを満たしていないように見えても、協定のHS年次版で確認するとCCを満たしていた、というケースもあります。
HS年次版のズレを防ぐための実務的な手順は以下の通りです。
HS年次版の確認が原則です。
参考:各EPAのHS年次版早見表と注意点を解説|株式会社ロジスティック・ブログ(2025年9月)
https://global-scm.com/blog/?p=3010
品目別規則CCを完全にはクリアできない材料が1つあるだけで、原産性の取得を諦めてしまっていないでしょうか。実は、CCを満たせない場合でも使える救済規定が複数あります。
デミニマスルール(僅少の非原産材料)
CCを満たさない非原産材料が存在していても、その材料の価格が産品全体のFOB価格の一定割合(多くの協定で10%以下)に収まる場合、その材料を「僅少な非原産材料」として無視できる制度です。
具体例:日本でプリンター(FOB価格300ドル、HSコード:8443.32)を製造し、海外から輸入したプリンター専用カバー(CIF価格15ドル、HSコード:8443.99)を組み込んで輸出するケースを考えます。この専用カバーはプリンターと同じ「8443」に属するためCTHを満たせません。しかし、15ドル÷300ドル=5%です。RCEPの場合、第84類はFOB価格の10%以下の非原産材料にデミニマスルールが適用できるため、このカバーを原産材料とみなすことができます。結果としてプリンターは原産品として認定されます。
主要協定のデミニマスルール(工業品の目安)。
注意点が1つあります。デミニマスルールは関税分類変更基準(CTC)が条件を満たさない場合にのみ使えます。付加価値基準では使用できません。また、すべての品目に適用されるわけではなく、協定ごとに対象HSコードが指定されています。
付加価値基準(RVC:Regional Value Content)
品目別規則にCCと並んで「または付加価値40%以上(RVC40)」といった選択肢が設けられている場合があります。CCをどうしても満たせないなら、日本での付加価値割合を計算してRVC基準で代替できるかを検討することが有効です。RCEPの一般的な閾値はFOB価格ベースで40%以上です。
結論は救済規定の活用です。諦める前に、まずデミニマスルールとRVCの両方を検討しましょう。
参考:デミニマスルール(僅少の非原産材料)の協定別一覧|原産地証明相談サポートセンター
https://hero-gensanchi.com/gensanchkinsyou.html
品目別規則CCを正しく運用するためには、正確な判定手順と証拠書類の整備が欠かせません。判定だけ正しくても、書類が不備だと税関の事後確認で問題になります。
CC判定の基本5ステップ
保管が義務付けられる主な書類は以下の通りです。
書類保管が条件です。
書類保管期間は協定によって異なりますが、多くのEPAでは「輸入申告日から5年間」とされています。RCEP協定の場合も同様で、5年間の保存が求められます。事後確認(税関による調査)が実施された際に書類を提出できなければ、認定が取り消され過去の輸入分の関税追徴が発生するリスクもあります。
また、CC判定に自信が持てない場合や、判定が難しい産品については、税関の「事前教示制度」を活用することを検討してください。事前教示制度とは、HSコードの分類や原産地規則の解釈について税関に照会し、文書で回答を得られる制度です。書面回答を得ておくことで、後の調査時のリスクを大幅に軽減できます。
参考:EPA原産地規則の概要(基本編)|公益財団法人日本関税協会
https://www.kanzei.or.jp/wp-content/uploads/2025/08/2025071516_gensanchikihon.pdf
参考:原産地証明書の事後確認・事前教示制度について|税関Japan Customs
https://www.customs.go.jp/roo/origin/index.htm