独占販売権を持っていても、並行輸入品の取引をあなたが妨げると課徴金を請求されます。
独占販売権(Exclusive Distribution Right)とは、特定の商品について、ある地域内で唯一の販売・輸入代理店として取引できる権利です。 海外メーカーと日本の輸入代理店が締結する「総代理店契約」によって設定されることが多く、通関業従事者がこの契約形態に関わる場面は少なくありません。
契約上は独占的な立場が保証されているように見えます。しかし実態は違います。
独占販売権はあくまで「優先的な販売ルート」を確保するものであり、他の事業者が同じ商品を合法的に輸入・販売することを、法律上は必ずしも排除できません。 特に「並行輸入(真正商品の別ルート輸入)」は、日本の独占禁止法および商標法の解釈上、原則として認められています。aqcg+1
つまり独占販売権が有効であることと、並行輸入が禁じられることは別の話です。
| 項目 | 独占販売権あり | 並行輸入品 |
|---|---|---|
| 法的根拠 | 総代理店契約(私法) | 商標法・独禁法(公法的解釈) |
| 通関上の扱い | 通常の輸入申告 | 真正商品なら原則通関可 |
| 価格コントロール | 希望価格の提示は可 | 拘束は原則禁止 |
| 独禁法リスク | 阻害行為があれば高い | 適正手続きなら低い |
通関業者はこの「契約上の権利」と「法律上の限界」の両面を理解した上で、輸入申告や取引関係者へのアドバイスに当たる必要があります。
独占禁止法が問題視するのは、独占販売権の「存在」ではなく「行使の仕方」です。 具体的には、市場における競争を不当に阻害する行為が規制対象となります。
通関業従事者が取引先から依頼される場面で特に注意が必要なのは、以下のような行為類型です。mkikuchi-law+1
並行輸入を「妨げる行為」が違法です。
公正取引委員会が公表している「流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針」には、これらの行為が不公正な取引方法(一般指定13項または15項)に該当することが明示されています。 課徴金納付命令を受けた場合の金額は、売上高の一定割合(最大3〜10%)が基準となるため、大口の輸入案件ほどリスクが大きくなります。corporate.vbest+1
これは通関業者にとっても人ごとではありません。取引先の指示に従って輸入を恣意的に止めるような動きに加担すれば、間接的に関係するリスクがあります。
独占禁止法は「例外なく競争制限を禁じる」法律ではありません。意外ですね。
市場シェアが20%以下の事業者であれば、取引先に競争品の取扱いを制限させても、通常は独禁法違反にはならないとされています。 これは公正取引委員会の「流通・取引慣行ガイドライン」に示された目安であり、実務上の重要な判断基準です。
シェア20%以下なら問題ありません。
また、独占禁止法には法律上の「適用除外」制度も存在します。 以下の場合には、独禁法の適用が免除されることがあります。
さらに、再販売価格の拘束についても「正当な理由」がある場合は違法とならないケースがあります。 具体的には、①ブランド間競争が促進されること、②消費者利益が増進されること、③他の方法では効果が得られないこと、④必要な範囲・期間に限定されること、の4要件をすべて満たす場合です。
条件を満たせば違反になりません。
通関業従事者としては、取引先が主張する「独占性」が本当に法的に有効な範囲かを確認する習慣が大切です。自社や取引先のシェアを把握しておくだけで、無用なリスクを回避できます。
独占禁止法の適用除外制度の詳細(公益財団法人公正取引協会)
並行輸入は「正規ルート以外での真正商品の輸入」であり、独禁法上は原則として適法です。 しかし現場では、正規代理店が様々な手段で妨害しようとするケースがあります。これが通関業従事者にとって最もグレーな領域です。
どういうことでしょうか?
具体的には、税関における「商標権侵害申告」が悪用されるケースがあります。真正商品(本物の商品)であっても、正規代理店が税関に対して輸入差止め申請を行い、通関手続きが長期間停止させられる事例が実際に起きています。 この申請が不当な場合、独禁法上の問題となる可能性があります。
参考)https://www.jpo.go.jp/support/ipr/qanda/q02.html
厳しいところですね。
通関業従事者として注意すべき場面を整理すると、次のようになります。
通関業者は商品の輸出入手続きを担う立場上、競争阻害行為の「実行者」に近い役割を担わされるリスクがあります。 疑義を感じたら顧問弁護士や公正取引委員会のガイドラインを参照することが、リスク管理の第一歩です。
並行輸入とブランド商品に関するJETROの解説(日本)
独占販売権に関する契約書は、通関業従事者が直接作成することは少ないですが、契約内容を理解した上で輸入業務に臨むことが重要です。 独禁法上のリスクを含む契約に基づいて業務を遂行すると、取引全体のコンプライアンス問題に巻き込まれる可能性があります。
これは使えそうです。
実務上、通関業者がチェックすべき契約書の主要ポイントは以下のとおりです。businesslawyers+1
独占禁止法の観点から契約書を事前にチェックするサービスとして、公正取引委員会への「相談制度」があります。 相談は無料で受け付けており、新しい取引形態を導入する前に利用することで、違反リスクを事前に排除できます。
相談制度の活用が原則です。
また、日本代理店協会(J-DMA)などの業界団体も、独禁法と販売代理店契約に関する解説資料を公開しており、実務上の参考になります。 輸入取引の拡大に伴い、通関業者が契約内容に関わる機会は今後さらに増えると予想されます。契約書の「危険なキーワード」を知っておくだけで、多くのトラブルを未然に防ぐことができます。
独占禁止法に関するよくある質問と回答(公正取引委員会公式)
独占禁止法と販売代理店の取引制限リスク(日本代理店協会)