総代理店契約の独占権は、並行輸入品を税関で止める根拠にはなりません。
総代理店契約とは、メーカー(サプライヤー)が特定の代理店に対して、定められた地域・市場において商品やサービスを独占的に販売する権利を与える契約です。 通常は「総代理店 → 卸売業者(問屋)→ 小売店 → 消費者」という流通網を構築し、総代理店がその地域における販売戦略の司令塔を担います。bgent+1
通関業者にとって重要なのは、この「独占販売権」が何を意味するかです。
総代理店は、メーカーから独占的に商品を仕入れ、エリア内の他の販売店・卸売業者はすべて総代理店を経由して商品を取り扱います。 総代理店を介さずに直接メーカーから仕入れることは、契約によって禁じられているのが原則です。
参考)総代理店取引契約書とは?ひな形をもとに記載項目やレビューポイ…
以下に、混同しやすい用語の違いを整理します。
| 用語 | 立場 | 在庫リスク | 収益源 |
|---|---|---|---|
| 総代理店 | 独占販売権を持つ最上位代理店 | あり(買取の場合) | 販売差益 |
| 一般代理店(二次店) | 総代理店傘下の販売店 | あり | 販売差益 |
| 代理店(エージェント) | メーカーの代わりに取次ぎ | なし | コミッション(手数料) |
「一次店だから総代理店」とは限りません。 独占販売契約を締結していない限り、たとえ日本唯一の取扱店であっても総代理店とは呼ばないのが原則です。つまり独占販売契約の有無が条件です。
参考)総代理店とは何か?代理店、販売店との違いと英語契約書の場合 …
「独占販売権」と聞くと、独占禁止法に抵触しないか心配になる方もいるでしょう。結論は問題ありません。
参考)総代理店とは?代理店や取次店との違いを解説します! - カケ…
その理由は、総代理店が独占しているのはあくまでその「商品の販売チャネル」であり、同カテゴリの他社競合品との間には自由競争が存在するからです。 たとえばドイツ製工業機器の総代理店があっても、日本製の同種機器との競争は妨げられません。競争そのものが消えるわけではないということですね。
ただし、独禁法上のリスクがゼロというわけではありません。
公正取引委員会の「流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針」では、総代理店契約における以下の行為が問題になり得ると明示されています。
参考)海外市場で販売を行うために販売店・代理店を選任する場合の留意…
並行輸入の阻害は独禁法違反です。 これは通関実務に直結する話ですから、後述のセクションで詳しく説明します。
参考)https://www.sanken.keio.ac.jp/law/law/guideline/gl-rt_3_3.html
参考:公正取引委員会「流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針(第三部)」で総代理店契約への規制内容が詳しく解説されています。
並行輸入の不当阻害に関する独禁法上の考え方(慶應大学・公取委指針資料)
通関業者が最も実務で悩むのが、「この輸入品は並行輸入品か?税関で止まるか?」という判断です。
並行輸入とは、総代理店ルート以外の第三者が、正規ルートとは別のルートから同一商品を輸入することをいいます。 たとえばA社がフランスのブランド品の日本総代理店である場合、B社が欧州の小売店から同一ブランド品を買い付けて日本に輸入するケースが並行輸入に当たります。
参考)https://www.jetro.go.jp/world/qa/04J-010223.html
これは商標権侵害になるんでしょうか?
日本の税関は、以下の3要件をすべて満たす場合は商標権侵害に当たらないとして通関を認めています。
3要件を全部クリアすれば問題ありません。しかし「実質的同一」の判断は個別事案によって異なります。 通関業者は荷主からの情報だけに頼らず、必要に応じて商標権者への確認を促すことが重要です。
総代理店が日本で商標登録をしているケースも多く、その場合は3要件の「2」の判断が特に複雑になります。 仮に並行輸入品が税関を通過した後でも、総代理店が法的措置を講じてくる事例は実際に複数あります。jipa.or+1
参考:JETROによる並行輸入の留意点と税関での3要件解説は実務で必携の情報源です。
輸入者から提示された総代理店契約書を確認する機会がある場合、以下の記載事項が適切かを把握しておくと、申告上のリスク判断に役立ちます。
総代理店契約書に必ず含まれる主要項目は次のとおりです。bgent+1
ミニマム・パーチェスの条項は見逃しがちです。 輸入数量が急増している場合、通関頻度や輸入申告書類の量が増えることになりますので、事前に荷主へ販売計画を確認しておくと業務が円滑に進みます。
また、商標の使用許諾と登録の帰属は後のトラブルに直結します。 総代理店が自社名義で商標登録している場合、契約終了後もその商標権が有効に残るケースがあり、元メーカーとの紛争に発展した事例が実在します。これは知っておくと得する情報ですね。
参考)http://www.jipa.or.jp/kaiin/kikansi/honbun/2005_07_0903.pdf
あまり語られない論点ですが、総代理店契約が失効・解除された後の輸入申告には特別な注意が必要です。
契約解除後も、旧総代理店名義での輸入申告が行われるケースがあります。これは誤申告のリスクになります。
たとえば、日本国内の商標登録を旧総代理店が持っている場合、新しい総代理店が輸入した商品であっても、商標権上の問題が発生する可能性があります。 通関業者がこの状況を知らずに申告を進めると、税関で差止めを受けるリスクがあります。
実際に起きたトラブルとして、EU製造設備の日本総代理店A社が独占契約を持っているにもかかわらず、国内大手C社がメーカーB社に直接取引を迫り、並行輸入を強行しようとしたケースが報告されています。 この場合、B社(メーカー)の行為はA社との契約違反となり、損害賠償・販売差止め請求の対象になりました。
参考)輸入総代理店契約について - 相談の広場 - 総務の森
通関業者が取れる対策は、輸入者(荷主)への確認です。
具体的には以下の3点を輸入前に確認しましょう。
荷主任せにしないことが原則です。輸入申告の法的責任は通関業者にも問われるケースがあるため、書類の裏付けは自分の目で確認しておくことが実務上の鉄則です。
参考:JETROによる通関業者への委託時の注意点と確認事項の解説です。