公正取引委員会 下請法 調査と通関業務の実務リスク

公正取引委員会による下請法調査は製造業や運送業だけの問題ではなく、通関業務従事者の契約や料金設定にも静かに迫っています。気づかないうちに連帯的な法的リスクを抱えていませんか?

公正取引委員会 下請法 調査と通関実務

下請法違反を一度黙認すると、あなた自身が前科と数百万円の損害賠償リスクを背負うことがあります。

この記事で押さえるべき3ポイント
📊
下請法調査の実態と件数

公正取引委員会と中小企業庁が毎年度実施する書面調査・立入検査の実態と、令和6年度の立入検査703者・違反1,321件という数字が意味する「見つかるリスク」を整理します。

[1][2]
⚖️
通関業務と下請法違反リスク

運送事業者間の集中調査や製造業への勧告21件の中で、通関委託・運送手配など貿易実務がどう巻き込まれるのかを具体的にイメージできるように解説します。

[3][4]
📝
調査文書が来たときの初動対応

「公正取引委員会 下請取引調査室」名義の文書が届いたときに、通関業者として何を確認し、どこまで回答し、どのタイミングで専門家に相談すべきかの目安を示します。

[5][6]

公正取引委員会 下請法 調査の仕組みと件数の現状


公正取引委員会と中小企業庁は、下請事業者の申告に頼らず親事業者・下請事業者双方を対象に、毎年度大規模な書面調査を行っています。[1][5]
この「定期的な書面調査」が端緒となり、令和2年度には新規に着手された下請法違反被疑事件が8,393件、そのうち約99%にあたる8,291件が書面調査をきっかけとしていました。[1]
つまり、何もトラブルが表面化していなくても、毎年のアンケート回答だけで違反疑いが掘り起こされるのが実態ということです。
数字を見ると、これは相当なペースです。
つまり書面調査が基本です。
さらに、令和6年度には、下請法に基づく立入検査が703者の親事業者に対して行われ、その結果1,321件もの違反行為が確認され、584者に対して改善指導が実施されています。
参考)https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/torihiki/2025/250611.html

東京ドームが約5万人収容とすると、立入検査703者は地方球場がほぼ満員になるイメージです。
これだけの件数が毎年度動いていると考えると、「自社は関係ない」と言い切るのは危険です。
勧告件数だけでなく、改善指導まで含めると、軽微な違反でもかなりの確率で把握されていると考えた方が現実的でしょう。
結論は「監視の網は想像以上に細かい」です。

公正取引委員会 下請法 調査と通関業務が交差するポイント

通関業務従事者の多くは、「下請法は製造業やIT開発の話で、通関は直接関係しない」と考えがちです。
しかし実際には、運送事業者間の取引やロジスティクス全体に対して集中調査が行われており、その中で通関関連の委託契約や料金設定も調査対象に入り得ます。[6][3]
中小企業庁と公正取引委員会は、令和7年4月以降、運送事業者間の取引で行われている下請代金に関する下請法違反被疑行為について集中的に調査し、2件の勧告と530件の指導を行ったと公表しています。[3]
運送会社と通関業者がセットで物流サービスを提供しているケースでは、運賃の一方的な値下げ要請や、通関委託料の「口約束での減額」が、実質的に下請代金の減額や不当な経済上の利益の提供要請と評価される可能性があります。
つまり物流周りも対象です。
また、2024年度には、公正取引委員会が下請法違反で出した勧告が21件と公表されており、前年度の13件から大幅に増加しています。
参考)公取委、24年度の下請法違反の勧告が大幅に増加し21件 「不…

勧告相当案件は自発的申出を含めて24件で、その違反内容のうち「不当な経済上の利益の提供要請」が11件、「下請代金の減額」が8件と、価格交渉の場面での違反が大半を占めていました。​
通関業者が大手荷主やフォワーダーから「今年から通関手数料を一律10%下げて」「追加書類対応は無償で」と一方的に要求され、慣行として受け入れていると、それがまさに統計上の「減額」「不当な利益提供」にカウントされ得ます。
こうした慣行が、調査票への回答や下請Gメンのヒアリングを通じて表に出る構造です。
減額要請には特に注意すれば大丈夫です。

通関業者が誤解しやすい「よくある対応」と下請法上の落とし穴

通関業務の現場では、取引先との長年の付き合いや、荷主の事情を優先して「期日を少し過ぎても入金してもらえればいい」「スポット案件だから書面契約は後回し」といった運用が当たり前になっていることがあります。
しかし、公正取引委員会の統計では、下請法違反の典型的な類型として、下請代金の支払遅延や減額、買いたたきなどが多数確認されており、これらは親事業者側だけでなく、契約関係の中で下請に近い立場の通関業者にもかかわり得る問題です。[2][4]
例えば、輸入1コンテナあたりの通関・運送一括料金を5万円で合意していたところ、荷主から「為替がきついので今月分だけ4万円でお願い」とメール一本で減額され、それを黙認して請求書を書き直す行為は、合理的な理由のない下請代金の減額と評価される余地があります。
1件あたり1万円の減額でも、月50本、年間600本のコンテナを扱えば、年間で600万円の利益を失っている計算です。
つまり小さな値引きの積み重ねです。
また、「親事業者から調査票が来たから、実態よりも『問題なし』と書いてほしい」と依頼されるケースもあり得ます。
この場合、下請事業者として虚偽の回答をすることは、自社の立場を弱くするだけでなく、後の立入検査でメール履歴等が確認されたとき、共同行為として厳しく見られる可能性があります。
参考)公正取引員会等から下請法違反の調査の文書が届いた場合の対応


リスクのある場面では、調査票の文言をそのまま信用せず、下請法のパンフレットや弁護士の解説記事を一度確認し、少なくとも「支払サイト」「減額の有無」「支払方法」については事実どおりに記載することが重要です。
事実どおりの回答が原則です。

公正取引委員会 下請法 調査への実務対応と初動フロー

「公正取引委員会事務総局経済取引局取引部下請取引調査室」といった差出人名の書面が届くと、多くの企業はそれだけで身構えます。[6]
独禁法・下請法に詳しい弁護士による解説では、下請法違反の調査文書が届いた場合、まず事案の性質として「単なる定期書面調査」なのか、「特定行為に関する立入検査や個別調査」なのかを切り分けることが重要とされています。[5]
通関業者が親事業者の立場で下請に通関実務を再委託している場合もあれば、自らが下請として大手物流企業から通関業務を受託している場合もあり、そのどちらの立場かによって回答のリスクと視点が変わります。
ここを曖昧にしたまま回答すると、意図せず不利な事実を強調してしまうことがあります。
立場の確認が条件です。
実務上の初動フローとしては、次のようなステップが現実的です。
・ステップ1:送付元・調査名・回答期限を確認し、コピーを法務・経理・通関部門で共有する。
・ステップ2:通関委託・運送委託・倉庫委託など、下請法が関わりそうな契約書と実際の運用(支払サイト・値引き履歴)を洗い出す。
・ステップ3:書面調査であっても、支払遅延や減額が過去3年分どの程度あるかを把握し、継続中の問題があれば早期に是正案を検討する。
・ステップ4:疑義がある場合は、独禁法・下請法に詳しい弁護士や専門家に相談し、「何をどう書いてよいか」よりも「是正を前提とした回答かどうか」をすり合わせる。
こうした流れなら違反になりません。
下請法調査への実務対応を整理した解説として、以下のような弁護士サイトが参考になります。
公正取引委員会等から下請法違反の調査の文書が届いた場合の対応(独禁法・下請法ネットワーク名古屋)

通関業務従事者が今からできる予防策と独自のチェック視点

通関業務従事者にとって重要なのは、「自社が下請法の直接の対象かどうか」だけではなく、「取引スキーム全体の中で、どの契約関係が弱い立場に立たされやすいか」を早めに把握しておくことです。
特に、通関手数料が1件あたり3,000円〜5,000円の小口案件が大量にある場合、1回あたりの減額や無償対応が小さく見えても、年間ベースでは数十万〜数百万円のロスになり、下請法上も問題視される水準に達していることがあります。
具体的には、次のような「チェックリスト」を年に1度は確認すると有効です。
・チェック1:通関・運送一括契約で、「値引き要請のメール」がそのまま恒常的な単価になっていないか。
・チェック2:支払サイトが口頭で延長され、実務では「90日サイト」が常態化していないか。
・チェック3:追加書類や突発案件への無償対応が、実質的な減額・不当な経済上の利益提供になっていないか。
こうした自己点検が基本です。
リスクを抑えつつ業務を進めるためには、社内で簡単な「下請法ミニ研修」を行い、通関担当者だけでなく営業・経理も含めて、どのような対応が「減額」「買いたたき」に当たるのか共有しておくと効果的です。
最近は、中小企業庁や公正取引委員会が下請法や価格転嫁に関する特設ページやパンフレットを公開しており、オンラインで無料で入手できます。
参考)https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/torihiki/2025/250625shitauke_search.html


1時間程度の社内勉強会で、これらの資料から事例を3つほど選んで読み合わせをするだけでも、「これはまずいかも」と気づく社員が増え、結果的に通関部門へのトラブル持ち込みも減らせます。
これは使えそうです。
公正取引委員会と中小企業庁が行っている下請事業者との取引調査や、令和6年度の取組状況の詳細は、以下の公式情報が参考になります。
令和6年度における下請代金支払遅延等防止法に基づく取組(中小企業庁)
運送事業者間の取引における下請法違反被疑事件の集中調査の結果について(公正取引委員会)
下請事業者との取引に関する調査(中小企業庁)




フリーランス・事業者間取引適正化等法