貿易協定一覧から関税削減とEPA活用法

通関業務従事者が知っておくべき日本の貿易協定一覧と各協定の特徴、関税削減効果を解説します。EPA・FTAの違いや原産地証明書の取扱いを理解し、実務に活かせていますか?

貿易協定一覧と関税削減

原産地証明書の記載ミスだけで追徴課税が発生します。

📋 この記事でわかる3つのポイント
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日本の貿易協定の全体像

日本が締結している22の貿易協定とその対象国・地域を整理し、通関業務で活用できる協定を把握できます

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関税削減の具体的効果

EPAを活用した関税削減額の実例と、通常税率との差額を数字で理解し、コスト削減の可能性を見極められます

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原産地証明書の実務リスク

形式ミスによる追徴課税の事例と、商工会議所の罰則規定を知り、申請時の注意点を実務に反映できます

貿易協定一覧の最新状況と締結国数

日本が締結している貿易協定は2026年2月現在、発効済みが18件、交渉中が4件の合計22件です。発効済み協定の内訳は、シンガポール、メキシコ、マレーシア、チリ、タイ、インドネシア、ブルネイ、ASEAN包括、フィリピン、スイス、ベトナム、インド、ペルー、オーストラリア、モンゴル、TPP11、日EU・EPA、日米貿易協定、日英EPA、RCEPとなっています。
交渉中の協定は4件です。RCEP(2022年発効)、トルコ、コロンビア、日中韓が含まれます。これらの協定により、日本は主要貿易相手国との関税削減の枠組みを構築しています。​
世界全体では486件のFTAが確認されており、日本の22件は主要貿易国の中では標準的な水準です。ただし、日本は2001年のシンガポールとの協定を皮切りに、EPAとして幅広い経済連携を重視した戦略をとっています。
参考)https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/fta/index.html


通関業務では、輸入貨物の原産国を確認し、適用可能な協定を特定することが最初のステップとなります。各協定には原産地規則が定められており、この基準を満たす貨物のみがEPA特恵税率の適用対象です。​

貿易協定のEPAとFTAの違い

FTA(自由貿易協定)は、特定の国や地域間で物品の関税やサービス貿易の障壁を削減・撤廃することを目的とした協定です。関税撤廃が主な内容で、貿易の自由化に焦点を当てています。
参考)https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/fta/


EPA(経済連携協定)は、FTAの要素に加えて、投資規制の撤廃、知的財産の保護、人の移動、競争政策におけるルール作り、様々な分野での協力の要素を含む、より幅広い経済関係の強化を目的とした協定です。日本が締結する協定の多くはEPAとして位置づけられています。
つまりFTAは関税削減に特化した協定で、EPAはそれを含む包括的な経済連携の枠組みということですね。通関業務の観点では、どちらの協定でも関税削減効果を受けられますが、EPAの方が投資や知的財産など周辺分野でのルールも整備されているため、企業活動全体でのメリットが大きくなります。​
実務上の手続きは、EPA特恵税率の適用を受けるために原産地証明書の提出が必要な点で共通しています。課税価格の総額が20万円以下の貨物は原産地証明書の提出が免除されますが、それ以上の金額では必ず提出しなければなりません。​

貿易協定による関税削減の具体例

EPA活用による関税削減の効果は、個別の取引で数万円から数百万円規模に達します。ベトナムから課税価格100万円の家具を輸入する場合、通常のMFN税率では3%の関税で3万円が課税されますが、日ASEAN・EPAを利用すれば関税率0%で関税額はゼロになります。この一回の輸入だけで3万円のコスト削減です。
参考)EPA/FTA完全ガイド:輸出入コストを削減する経済連携協定…

日EU・EPAの場合、通常10%の関税がかかる製品で協定を活用すると関税が0%になり、価格競争力が10%向上します。競合他社がEPAを活用している状況で自社が活用していなければ、スタートラインで10%のハンデを負うことになります。​
RCEPでは、日本と中国・韓国との貿易で初めてFTAが適用されることになりました。中国の工業製品の対日無税品目の割合は発効前の8%から86%に上昇し、韓国は19%から92%に高まりました。特に自動車部品では、中国は約87%の品目(日本の対中輸出5兆円規模)で関税を撤廃することを約束しています。
参考)RCEPの発効は日本に何をもたらすか - 一般財団法人国際貿…

この関税削減効果を実際の申告で受けるには、原産地証明書または原産品申告書の提出が必須です。証明書の有効期限は発給日から1年で、期限切れの書類では特恵を受けられません。また、日本に直接運送されることが原則で、第三国経由の場合は通しB/Lが必要になります。

貿易協定における原産地証明書の重要性

原産地証明書は、輸入貨物がEPAに基づく原産品であることを証明する書類で、EPA特恵税率の適用を受けるために輸入申告時に提出が必要です。課税価格の総額が20万円を超える貨物では原産地証明書の提出が原則となっています。​
証明書の記載内容に誤りがあると、税関が証明書の正当性を認めず、特恵関税の適用が拒否されます。よくある不備例として、日付・署名・定型文言の欠落、証明書とインボイスでHSコードや品目名の不一致、原産地基準の記載ミスや欠如、コピーやスキャンデータの不鮮明などがあります。
実際の事例では、文書の定型文言の一部抜け、日付欄の未記入、商品明細と証明書の記載内容のズレにより、税関が「証明書としての要件を満たさない」と判断しました。この結果、通常税率10.9%が適用され、加算税付きで追徴課税が行われています。​
形式不備は悪意がない場合でも無効とされる可能性が高いです。原産国を誤って申請し証明書の発給を受けた場合には、商工会議所貿易関係証明罰則規定に基づく罰則を受けることになります。申請時には輸出者情報、品目詳細、原産地基準、有効期限などを十分に確認する必要があります。
記載ミスによる追徴リスクを避けるには、輸入申告前に証明書の全項目を点検することが基本です。特にHSコード、品目名、原産地基準の記載は、インボイスやパッキングリストとの整合性を必ず確認してください。不備が見つかった場合は、輸出者に正しい原産地証明書の再発行を依頼するか、通常税率での申告を選択することになります。

貿易協定活用時の通関業務上の注意点

EPA特恵税率の適用には、原産地証明書の提出に加えて、原産地基準を満たしていることが必須条件です。一定割合以上の部品や工程が協定対象国で行われている必要があり、この基準を満たしていないと証明書が提出されていても特恵関税は適用されません。​
輸入申告に誤りがあった場合、納める税金が少なかったときは修正申告、多かったときは更正の請求を行います。更正の請求ができる期間は、原則として貨物の輸入許可を受けた日から5年以内です。輸入事後調査では、課税価格の申告漏れが発覚すると追徴税額が数百万円から数億円規模に達する事例も報告されています。
実際の非違事例として、加工賃の追加支払いを課税価格に含めていなかったケースでは不足申告額788百万円、追徴税額117百万円となっています。また、無償提供したミシン等の費用を課税価格に含めていなかったケースでは不足申告額96百万円、追徴税額15百万円が発生しました。​
原産地証明書が輸入申告時に間に合わない場合は、事後提出が認められるケースがあります。税関長が災害その他やむを得ない理由があると認める場合、または輸入許可前における貨物の引取り(BP)を受ける場合には事後提出が可能です。事後提出が認められた場合、一般の関税率特恵税率の差額が還付されます。
通関業務では、申告前に原産地証明書の記載内容とインボイス・パッキングリストの整合性を必ず確認してください。不備があれば輸出者への再発行依頼を優先し、間に合わない場合は通常税率での申告を検討する判断が求められます。

貿易協定のRCEP活用による独自メリット

RCEPは2022年1月に発効し、日本にとって中国・韓国との間で初めてFTAを利用できるようになった点で画期的な協定です。日本と中国の貿易におけるRCEP利用による関税削減額は、他のEPA/FTAと比べて大きく、関税削減効果の恩恵が徐々に加盟国間に浸透するため、最終的には大きなメリットを享受できます。​
RCEPの特徴は累積原産地ルールです。部品や材料がRCEP加盟国で調達されていれば、最終製品に累積して原産性を認める制度があり、多国籍サプライチェーンの構築がしやすくなります。例えば、中国で最終組立を行い、日本製部品と韓国製素材を使用した場合でも「RCEP原産品」として関税優遇が適用可能です。
参考)中国の輸出入はどう変わる?RCEP発効の影響と今後の貿易動向…

中国では対日本の輸入関税が一部即時ゼロになり、精密機器・自動車部品の関税が段階的にゼロに向かっています。日本製機械・部品、日本酒・食品加工品などはブランド力に加えて関税ゼロで輸出拡大が見込まれます。​
累積原産地ルールを活用する際は、サプライチェーン全体でRCEP加盟国からの調達状況を把握することが重要です。複数国で加工された製品でも、各国での付加価値を合算して原産地基準を満たせば特恵関税の適用を受けられます。この仕組みを理解し、調達戦略に反映することで、関税コストの最適化が可能になります。


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