便益関税とは、WTO非加盟国に最恵国待遇と同様の優遇税率を与える制度です。
便益関税を使わないと関税が2倍になることもあります。
関税定率法第5条に規定される便益関税は、関税条約の特別規定による便益を受けない国の生産物に対して、政令で国と貨物を指定し、協定税率の便益の範囲内で優遇措置を与える制度です。
参考)関税定率法第五条の規定による便益関税の適用に関する政令
通常、WTO非加盟国からの輸入品には国定税率(基本税率または暫定税率の高い方)が適用されますが、その国が日本に対して最恵国待遇と同様の取扱いをしている場合、相互主義の原則に基づき便益関税が適用されます。
つまり差別なしですね。
現在、日本の便益関税対象国は13カ国で、2024年11月にはレバノンが新たに追加される方針が示されました。レバノンから日本への主要輸入品は基本税率が無税のものが中心ですが、制度適用により将来的な貿易拡大の基盤が整います。
参考)https://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/rippou_chousa/backnumber/2025pdf/20250203035.pdf
便益関税の適用には、対象国が関税制度および貿易制度上で日本を差別せず、最恵国待遇と同様の取扱いをしていることが条件です。さらに、対象国の社会経済情勢やその他の事情も考慮されます。
実務では、WTO譲許表(第38表の日本国の譲許表)に掲げられた貨物のみが便益関税の対象となります。
手続きは特別複雑ではありません。
便益関税と協定税率は、適用される国の範囲と法的根拠が異なります。
協定税率は、WTO加盟国または二国間通商条約を締結している国の産品に適用される税率で、WTO協定や経済連携協定(EPA)などの国際条約に基づきます。一方、便益関税はWTO非加盟国に対して、政令により個別に適用される制度です。
参考)https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/asia/asean/ajcep/pdf/AJCEP_202310r.pdf
税率の優先順位では、協定税率は暫定税率などと比較され、低い方が適用されます。便益関税も同様に、国定税率と比較して優遇される場合に適用されますが、協定税率よりも適用範囲は限定的です。
適用条件が厳しいということですね。
参考)【関税の算出方法🧮】関税率の種類と適用される優先順位について…
実務上の重要な違いは、原産地証明書の取扱いです。EPA協定税率を適用する場合は特定原産地証明書が必要ですが、便益関税では通常のインボイスや原産地証明で対応できる場合があります。どういうことでしょうか?
参考)通関とは?申告方法や書類、手続きの流れをわかりやすく解説
便益関税は、WTO非加盟国であっても日本に対して公正な貿易制度を維持している国に、実質的に最恵国待遇と同等の税率を適用することで、貿易の公平性を保つ役割を果たします。これにより、WTO加盟・非加盟にかかわらず、相互主義に基づいた関税制度の運用が可能になります。
参考)日本には特別な特恵関税がある
2024年時点で便益関税の対象国は13カ国で、レバノンが新たに追加される予定です。
対象国に指定されるには、WTO非加盟かつ日本との間で最恵国待遇を付与する二国間通商条約等を締結していないことが前提条件となります。その上で、関税制度および貿易制度上で日本を差別せず、最恵国待遇と同様の取扱いをしている必要があります。
相互主義が基本です。
適用される貨物は、WTO譲許表の第38表(日本国の譲許表)に掲げられた品目に限定されます。つまり、日本がWTOで譲許している品目のみが対象となるため、すべての輸入品に便益関税が適用されるわけではありません。
レバノンの事例では、2023年の同国から日本への輸入額は約3億3,218万円で、主な輸入品は基本税率が無税の物品が中心でした。しかし便益関税を適用することで、将来的に有税品の輸入が増えた場合にも優遇税率が適用される枠組みが整います。
対象が広がるということですね。
便益関税の適用は、その国の社会経済情勢やその他の事情も考慮して決定されます。レバノンについては、2024年9月下旬より情勢が悪化しつつあることから、引き続き情勢の推移を注視する必要があるとされています。
便益関税を適用せずに輸入すると、国定税率が適用され、関税負担が大幅に増加するリスクがあります。
国定税率は基本税率または暫定税率のうち高い方が適用されるため、WTO協定税率や便益関税と比較すると税率が高く設定されているケースが多くあります。例えば、ある品目の協定税率が5%でも、国定税率が10%であれば、便益関税を使わない場合は10%の関税を支払うことになります。
差額が大きいですね。
輸入コストの増加は、企業の利益率を直接圧迫します。特に薄利多売のビジネスモデルでは、数パーセントの関税率の違いが経営に大きな影響を与えます。原材料を輸入している製造業であれば、製品価格への転嫁を検討せざるを得なくなり、価格競争力が低下するおそれがあります。
参考)https://www.77bank.co.jp/financial-column/article76.html
通関業務従事者としては、輸入者に便益関税の適用可能性を事前に確認しないまま通関手続きを進めると、後から過払い関税の還付請求が必要になり、事務負担が増大します。さらに、輸入者からの信頼を損なう可能性もあります。
これは避けたいところですね。
便益関税の適用漏れを防ぐには、輸入前に原産国がWTO非加盟国かつ便益関税対象国リストに含まれているかを確認する必要があります。財務省や税関のウェブサイトで最新の対象国リストを定期的にチェックすることが重要です。
便益関税を適用する際には、原産国の正確な確認と申告手続きが不可欠です。
まず、輸入貨物の原産国が便益関税対象国であることを証明する書類を準備する必要があります。通常のインボイスに原産国が明記されていれば十分な場合もありますが、税関から追加の原産地証明を求められることもあります。
どの書類が必要か事前確認が基本です。
HSコード(関税分類番号)の正確な特定も重要です。間違った分類コードを使用すると、優遇関税の適用を逃してしまうことになります。製品が正確に分類されているか不安な場合は、税関に事前教示制度を利用して確認することができます。
輸入申告の際には、便益関税の適用を明示的に申請する必要があります。申告時に適用税率の種類を正しく選択しないと、自動的に国定税率が適用されてしまいます。NACCS(輸出入・港湾関連情報処理システム)での入力ミスにも注意が必要です。
これは見落としやすいポイントです。
便益関税対象国のリストは不定期に更新されるため、最新の政令を確認する習慣が重要です。レバノンのように新規追加される国もあれば、情勢変化により除外される可能性もあります。税関のウェブサイトや財務省の関税・外国為替等審議会の資料を定期的にチェックしましょう。
税関ウェブサイト「関税のしくみ」
減免税措置を受ける場合は、減免税明細書など追加書類が必要になることがあります。便益関税と減免税を併用する場合、どちらの手続きも漏れなく行う必要があります。
書類の準備は早めに済ませましょう。
便益関税制度は、国際情勢や二国間関係の変化に応じて定期的に見直されます。
2024年11月の関税・外国為替等審議会では、レバノンを便益関税の対象国に追加することが審議されました。レバノンから日本に対し、WTO譲許税率の適用を希望する旨の口上書が届いたことが契機となっています。令和7年4月1日以降の適用開始が予定されています。
レバノンの追加にあたっては、同国の社会経済情勢が考慮されました。2024年9月下旬より情勢が悪化しつつあることから、引き続き情勢の推移について注視する必要があるとされています。
安定性も評価材料です。
便益関税の適用判断では、対象国が日本を関税制度・貿易制度上で差別していないこと、および最恵国待遇と同様の取扱いをしていることが重視されます。この条件を満たさなくなった場合、便益関税の対象から除外される可能性もあります。
通関業務に携わる方は、財務省の関税・外国為替等審議会の議事録や資料を定期的に確認することで、新規追加国や制度変更の情報をいち早く入手できます。税関のウェブサイトでも最新の対象国リストが公開されています。
情報収集が実務の鍵ですね。
参考)https://www.customs.go.jp/shiryo/kanzei_shikumi.htm
WTO非加盟国の中には、将来的にWTOに加盟する可能性がある国も含まれます。加盟が実現すれば、その国には便益関税ではなく協定税率が適用されるようになるため、適用関税の種類が変わる点に注意が必要です。
柔軟な対応が求められます。