輸出申告のたびに統計品目番号を入力しているのに、その番号が積み上がって「公開される統計」になっていることを意識している人は、ほとんどいません。
財務省が公表する「貿易統計」は、実は1種類ではありません。大きく3つに分かれています。
最も重要なのが普通貿易統計です。日本から輸出された貨物について、金額・数量を品目別・国別に示したもので、一般に「貿易統計」「税関統計」と呼ばれる場合はこれを指します。輸出申告書に記載された内容をそのまま集計したものですから、通関業者が入力する統計品目番号の精度が、そのまま統計の品質に直結します。これが原則です。
次に特殊貿易統計があります。金統計・船用品統計・通過貿易統計の3つで構成されており、再輸出品や通過貨物などが対象になります。通常の輸出業務では直接扱う機会が少ないですが、船会社や航空会社と連携する案件では関係してくる場合があります。
3つ目が船舶・航空機統計です。国籍別の入出港に関する統計で、物流実態の把握に使われます。
実務上もっとも使うのは普通貿易統計の「品別国別表(A-1)」と「国別品別表(A-2)」です。品別国別表は「ある品目がどの国に輸出されているか」を示し、国別品別表は「ある国にどのような品目が輸出されているか」を逆引きで確認できます。検索ページ(財務省貿易統計検索ページ)では9桁の統計品目番号を指定して無料で検索できます。これは使えそうです。
荷主の市場調査資料を作る場面でも、この品別国別表を活用して「競合品目の輸出動向」を数値で示せるため、通関業者としての付加価値を高める情報源になります。
財務省貿易統計トップページ(税関)|最新月次データや速報値、統計表一覧を確認できます
多くの通関士が見落としやすい点があります。輸出と輸入では統計品目番号の桁数が異なります。
| 区分 | 構成 | 合計桁数 |
|------|------|---------|
| 輸出統計品目番号 | HS6桁 + 国内細分3桁 + チェックデジット1桁 | 10桁 |
| 輸入統計品目番号 | HS6桁 + 国内細分3桁 | 9桁 |
輸出の10桁目はチェックデジットで、上位9桁を9で割った余りが入ります。NACCSへの申告時にこの桁が誤っていると即座にエラーとなり、申告が差し戻されます。「9桁入力すれば大丈夫」という感覚でいると必ずトラブルになります。
さらに、輸出と輸入は「HS6桁まで共通」ですが、7桁目以降の国内細分は輸出と輸入で必ずしも一致しません。税関のFAQにも明記されている通り、輸出申告に輸入用の統計品目番号を流用するのは誤りです。
2026年1月1日より、財務省告示第283号に基づいて輸出統計品目表が改正されています。品目番号の統合・分割が行われているため、2025年以前のマスタをそのまま使い続けると、NACCSで申告エラーが発生します。年明け通関でこのトラブルが頻発しているのが現状です。
特に問題になるのが「年跨ぎ貨物」です。2025年末に船積みされ、2026年1月に輸入申告を行う貨物は、インボイスに旧コードが記載されていても、申告は新コードで行わなければなりません。旧コードの使用は通関遅延の直接原因になります。
社内マスタの更新状況を確認するには、日本関税協会が提供するWeb輸出統計品目表(日本関税協会)|品目分類名称を日英両文・9桁番号で一覧検索できますが役立ちます。
貿易統計は、発表された翌月以降も数値が変わり続けます。意外ですね。
公表の段階は以下のように設計されています。
| 段階 | タイミング | 内容 |
|------|-----------|------|
| 速報 | 対象月翌月末頃 | 輸出入総額・主要品目 |
| 確報 | 輸出:対象月の1か月後 | 修正申告等を反映した詳細数値 |
| 確々報 | 確報公表後 | 確報後の修正を反映(令和2年分から) |
| 確定 | 翌年3月頃 | 以降は修正なし |
輸出確報は「対象月の1か月後」に公表されます。速報で公表された数値と確報値が異なることもあります。修正申告などにより申告後に輸出入情報が修正された場合、それが確報・確々報・確定と段階的に反映されていくためです。
ここで注意すべきは「確定以降は修正しない」という点です。確定公表後に新たな修正情報が判明しても、統計数値は変更されません。修正申告は早めに行うことが原則です。
速報と確報の数値が異なるのは珍しいことではありません。特に月末前後に大量の申告が集中する時期は、速報から確報への変動幅が大きくなる傾向があります。荷主に統計データを提供する際は「速報か確報か」を明示することが、情報提供者としての信頼性につながります。確報以降のデータを使うのが基本です。
日本関税協会|「速報」「確報」「確々報」「確定」の違いをわかりやすく解説したページです
貿易統計は原則として誰でも閲覧できる公開情報です。しかし「特定の品目の輸出者が1社または2社しかいない場合」、その統計が公開されると企業の営業秘密が事実上開示されてしまいます。
そこで設けられているのが非公表化処理申請です。輸出入者からの申請を踏まえて、数量・金額を非公表とする処理を行うことができます。申請先は財務省関税局関税課統計係(kantokei@mof.go.jp)で、原則メールによる提出です。
申請書の提出期限は「対象貨物の統計計上月の20日まで」です。4月分の輸出なら4月20日までに提出する必要があります。期限を過ぎると原則として申請できなくなるため、スケジュール管理が重要です。
複数月分をまとめて申請することも可能です。ただし、申請できる期間は「申請月から同年12月まで」が上限となっています。1月から12月まで継続的な輸出が予定される場合は、1月20日までにまとめて申請できます。これは使えそうです。
非公表化申請を依頼されたときに的確に対応できる通関業者は、荷主からの信頼を得やすくなります。この制度の存在を知らない荷主も多いため、プロアクティブに情報提供できる姿勢が重要です。
申請書のフォームは税関ウェブサイトからダウンロードできます。
税関|貿易統計における品目別実績の公表方法の変更と非公表化処理の詳細はこちら
輸出の税関統計では、相手国の計上基準が「仕向国(最終的に輸出貨物が向かう国)」となっています。これは輸入の「原産国」計上とは考え方が異なります。仕向国が原則です。
この仕向国の概念が実務で問題になるのは、中継貿易・トランシップが絡む案件です。例えば、シンガポール経由でインドネシア向けに輸出する場合、仕向国はインドネシアとして計上されます。シンガポールが最終仕向地ではないため、申告書には最終的に貨物が届く国を記載しなければなりません。
輸出申告書の「仕向地」欄を誤ると、貿易統計に誤びゅうが生じます。横浜税関が通関業者向けに「誤びゅう削減のお願い」として周知しているように、申告内容の誤りは統計全体の品質に影響を与えます。統計の精度は現場の申告精度に依存しています。
また、税関別の統計表は「輸出入申告の際に貨物が置かれた場所を管轄する税関官署」を基準に集計されます。積卸港とは一致しない場合があります。例えば、名古屋港から積み出された貨物でも、申告が東京税関の管轄保税地域からされていれば、東京税関の統計として計上されます。この点は「積卸港別貿易額」と「税関別統計」が一致しない原因として頻出です。
貿易統計の金額は輸出についてFOB価格(本船渡し価格)で計上されます。CIF建ての契約であっても、統計上はFOBに換算した価格が用いられます。計上単位は1,000円で、1,000円未満は切り捨てです。細かいですが、申告書と統計値がずれると感じた場合はこの端数処理を確認してみてください。
財務省貿易統計FAQ(税関)|仕向国の計上基準・速報確報の違い・非公表化まで網羅的に解説されています