別表1に該当すれば、自動的に輸入承認が不要になります。
日本の輸入管理制度は「外国為替及び外国貿易法(外為法)」を根拠とし、その具体的な管理方法を定めているのが「輸入貿易管理令」です。外為法第52条は、貨物を輸入しようとする者は「政令で定めるところにより輸入の承認を受ける義務を課せられることがある」と定めています。つまり、すべての輸入に承認が必要なわけではなく、あくまでも政令(=輸入貿易管理令)が具体的な対象を定める構造になっています。
この政令の中で、輸入承認や輸入割当が「必要になる場面」を規定しているのが第4条・第3条などの本文条文であり、逆に「不要になる場面」を規定しているのが第14条と別表第1・別表第2です。通関業務の実務において、別表第1は「承認・割当の義務を免除する特例貨物のリスト」として機能します。
輸入管理は経済産業大臣が所管していますが、実際の現場では税関が貨物の確認を担います。外為法は経済産業大臣が税関長を指揮監督することを認めており、権限の一部を税関長に委任することも可能です。通関業従事者は、税関への申告と経済産業省への承認申請という二重の手続き体系を念頭に置いて業務にあたる必要があります。
つまり外為法→輸入貿易管理令→輸入公表・告示という三層構造が原則です。
経済産業省「輸入承認制度別一覧」:各承認制度(輸入割当・2号承認・2の2号承認・事前確認・通関時確認)の種類と対象品目を網羅的に確認できます。
別表第1には複数の「号」が設けられており、それぞれが異なる特例の根拠となっています。通関業従事者として覚えておきたい主な号を以下に整理します。
| 号 | 内容 |
|---|---|
| 第1号 | 総価額500万円以下の貨物(経済産業大臣が告示で定めるものに限る) |
| 第2号〜 | 無償の救じゅつ品 |
| 関連号 | 無償の商品見本・宣伝用物品(告示指定品) |
| 関連号 | 個人使用に供せられ、売買対象とならない程度の量の貨物 |
| 関連号 | 入国者の携帯品・職業用具など |
| 第15号・第21号・第22号 | 経済産業大臣が告示で定める特定の貨物 |
別表第2には、外交官などの入国者が携帯・別送できる特定品目の別途免除規定があります。これと別表第1はセットで押さえておくとよいでしょう。
注目すべきは第1号の「500万円以下」という数字です。一見すると「500万円以下なら何でも承認不要」と読めますが、実際には経済産業大臣の告示で指定された品目に限定されています。この告示(平成元年通商産業省告示第103号等)の内容は逐次改正されるため、最新の告示を確認する習慣が必要です。
500万円以下がすべて対象ではない、という点が実務上の落とし穴です。
e-Gov法令検索「輸入貿易管理令」:法令本文・別表第1・第2の全文をオンラインで参照でき、最新の改正内容も確認可能です。
別表第1が適用されると、輸入貿易管理令第14条の規定により、輸入の承認および輸入割当の義務が適用されません。この「特例扱貨物」の考え方は通関実務で非常に重要です。
① 修理後の返送貨物
外国に修理のために輸出した貨物が修理を終えて再輸入される場合、別表第1告示の規定により承認が免除されます。これは実務上、機械設備の海外メンテナンスや試作品の試験後返却でよく登場するケースです。
② 再輸入貨物(ATA条約・通関手帳関係)
通関手帳(ATA条約)を利用して一時輸出された貨物が再輸入される場合も対象となります。展示会への出品物や職業用具として海外に持ち出した機材の返送がこれに該当します。
③ 仮陸揚げ貨物(第14条第3号)
輸入貿易管理令第14条第3号は「貨物を仮に陸揚げしようとするとき」を特例として規定しています。これは輸入割当品目であっても適用されるため、通関士試験でもよく出題される論点です。ただし、条約等の誠実な履行のために必要な場合として経済産業大臣が定める貨物(例:モントリオール議定書の規制物質)は除外されます。これが例外です。
④ 無償の救じゅつ品・商品見本
天災や事故の被災地に送られる無償の救じゅつ品は、承認・割当不要です。また、商品見本や宣伝用物品も告示で指定されたものについては特例扱いとなります。販促用サンプルの輸入で誤って承認申請を試みるケースがあります。必ず告示の該当確認が先です。
各ケースとも、「告示で定めるもの」という限定が付く場合がある点に注意が必要です。
経済産業省「輸入承認対象貨物一覧」:承認が必要な貨物をHSコード・品目ごとに一覧化。別表1の特例と照らし合わせる際の起点として利用できます。
輸入管理の必要性の程度に応じて、日本では以下の5制度が設けられています。別表第1の特例が「どこに効いてくるか」を理解するために、制度全体を把握しておくことが大切です。
① 輸入割当(数量規制)
水産物やオゾン層破壊物質(モントリオール議定書附属書物質)が対象です。輸入数量が国内需要等に基づいて割り当てられます。近海魚(にしん、たら、ぶり、さば等)の輸入では、毎年度の割当枠を取得した上で承認申請に進む流れが必要です。数量枠の管理が煩雑なため、専門業者への委託も多い分野です。
② 2号承認(特定地域規制)
特定の原産地または船積地域からの輸入に対して承認を必要とする制度です。中国・北朝鮮・台湾産のさけ・ます、北朝鮮からのすべての貨物(制裁措置)などが代表例です。地域が変われば承認不要になるケースがあるため、船積地域の確認が実務上の鍵となります。
③ 2の2号承認(全地域規制)
原産地・船積地域を問わず特定の品目に承認を要する制度で、規制は最も厳格です。武器類・火薬類・原子力関連貨物・ワシントン条約附属書Ⅰ掲載動植物・特定有害廃棄物(バーゼル法)・化学兵器禁止法関連物質などが対象です。全地域規制が原則です。
④ 事前確認
特定の貨物を輸入する前に経済産業大臣等の確認を受けることで、輸入承認が不要となる制度です。まぐろ類(水産庁確認)、めろ、かに、ワシントン条約対象品(一部)などが対象です。「事前確認を受ければ承認申請書を出さなくていい」という点で、業務効率に直結します。
⑤ 通関時確認
輸入通関時に所定の書類を税関に提出することで承認不要となる制度です。まぐろ類・かに(一部)・放射性同位元素・ダイヤモンド原石・農薬・けしの実などが対象です。書類を準備して申告と同時に提出するだけで完了するため、実務上の負担は相対的に軽い制度です。
厳しいところですね。特に2の2号承認は品目が多岐にわたります。
日本関税協会「通関士ポータル・用語解説(や行)」:輸入承認証・輸入承認の特例など、実務用語の定義と根拠条文を簡潔に確認できます。
ここからは、検索上位の解説記事にはあまり書かれていない、通関業務の現場で実際に問題になりやすいポイントを取り上げます。
📌 ポイント①:「別表1該当=常に特例適用」ではない
輸入貿易管理令第14条ただし書により、わが国が締結した条約の誠実な履行のために必要と経済産業大臣が定める貨物については、別表第1や仮陸揚げ特例が除外されます。具体的には、モントリオール議定書の規制物質(フロン類等)、バーゼル条約の特定有害廃棄物などが除外対象となっています。「別表1に入っているから安心」と思い込むことが最も危険です。
📌 ポイント②:500万円の「総価額」の計算方法
経済産業省通達(平成12年12月26日付)によれば、「総価額500万円以下の貨物」とは代金決済の有無にかかわらず関税等の課税価格に相当する価額で計算された価額の合計が500万円以下のものを指します。つまり、無償サンプルであっても課税価格相当額で判断します。「無償だから金額ゼロ」と誤解して計算漏れが起きるケースがあります。
📌 ポイント③:NACCSへの「貿易管理令コード」入力
輸入貿易管理令の該当・非該当に関わらず、NACCSへの申告では「貿易管理令」欄へのコード入力が求められます。別表第1特例に該当する貨物を申告する際も、「輸入承認証なし」の状態でどのコードを入力すべきかを把握しておく必要があります。東京税関の業務通達(「他法令該当貨物に係る輸出入申告の取扱い」)にその詳細が記されています。
📌 ポイント④:改正告示への追従
2025年4月には、JETROのビジネスニュースにて「輸入貿易管理令別表第一第一号等に規定する経済産業大臣が告示で定める貨物の一部を改正する件の一部を改正する件」が公示されています。告示は随時改正されるため、年1回以上、JETROまたは経済産業省の通商公示ページを確認する体制が必要です。この作業を怠ると、適用できるはずの特例を見落としたり、逆に特例が外れた品目を誤って非承認扱いにするリスクがあります。
これは使えそうです。JETROの通商公示は実務チェックに必須です。
JETRO「輸入貿易管理令別表第一第一号等に規定する経済産業大臣が告示で定める貨物の一部を改正する件(2025年4月)」:最新の告示改正内容を確認できます。実務担当者は定期的なチェックが必要です。