roro船に乗った輸入品には、関税とは別に1隻あたり約1.5億円の費用が上乗せされることがあります。
roro船とは、トラックやトレーラーが船尾や船側に設けられたスロープ(ランプウェイ)を通って、自走したまま積み込み・積み下ろしができる貨物専用の船舶です。「RORO」という名前は「Roll on / Roll off(ロールオン・ロールオフ)」の略で、「転がして乗せ、転がして降ろす」という荷役の仕組みそのものを表しています。
貨物をクレーンで吊り上げる従来の「LOLO船(Lift on Lift off)」とは根本的に異なり、車輪のついた貨物であればそのままデッキに乗り入れられます。これが最大の特徴です。具体的には、トラックやトレーラー、建設機械、完成自動車、大型重機など、タイヤや足回りを持つあらゆる貨物に対応しています。
船内には複数の「カーデッキ(車両甲板)」が設けられており、多層構造のデッキ間を油圧式のランプウェイやエレベーターが連結しています。例えるなら、立体駐車場をそのまま海に浮かべたようなイメージです。積み込みにクレーンや大型の港湾設備が不要なため、設備の整っていない港でも対応できる柔軟性があります。
関税に関心がある方が押さえておくべきポイントがあります。輸入品がどの輸送手段で届くかによって、コスト構造が変わります。特に自動車や大型機械類を輸入・輸出する場合、roro船が使われることがほとんどです。つまり、roro船にかかるコスト変動は、輸入品の価格に直結します。
roro船の読み方は「ローロー船」です。カタカナ表記でロールオン・ロールオフ船とも呼ばれます。
参考:roro船の基礎知識(日本通運 ロジスティクス用語集)
https://www.nittsu.co.jp/support/words/pqrs/roll-on-roll-off-ship.html
「roro船ってフェリーと同じじゃないの?」と思う方も多いでしょう。違います。フェリーとroro船は構造が似ていますが、用途が根本的に異なります。
フェリーは旅客と貨物を同時に輸送することを目的とした船で、客室・食堂・売店など旅客向け設備が充実しています。一方、roro船はあくまで貨物専用の輸送船で、乗客の乗船は基本的に認められていません。ドライバーも港で荷台(シャーシ)を切り離して下船し、目的地でまた別のトラクタ(前部運転席)が迎えに行くという運用が標準的です。
| 船種 | 旅客 | 荷役方式 | 主な用途 |
|------|------|---------|---------|
| roro船 | ❌ 貨物専用 | 自走(水平荷役) | トラック・大型機械・完成車 |
| フェリー | ✅ 旅客+貨物 | 自走(水平荷役) | 短〜中距離の人と物の輸送 |
| コンテナ船(LOLO) | ❌ | クレーン(垂直荷役) | 箱型コンテナ貨物 |
| PCC/PCTC船 | ❌ | 自走(水平荷役) | 完成自動車専用 |
| ConRO船 | ❌ | 自走+クレーン | 車両+コンテナ混載 |
PCC(Pure Car Carrier)はroro船の一種で、完成自動車だけを運ぶ自動車専用船です。日本の自動車メーカーが海外へ輸出する際に使う船として有名で、1隻に7,000台以上の乗用車を積むことができます。東京ドームの駐車場をイメージしてもらうとわかりやすいですが、さらに多層構造のカーデッキによって垂直に車を収納していきます。
roro船はPCC船よりも汎用性が高く、トラックやトレーラー、建設機械なども混載できます。コンテナ船とroro船を組み合わせた「ConRO船」も存在し、デッキ下に車両を収容しつつ甲板上にコンテナを積む複合型として利用されています。
つまり、roro船は車両輸送の「総称」です。
参考:自動車専用船(PCC)とroro船の違いについて(日本船主協会)
https://www.jsanet.or.jp/qanda/text/q2_18_1.html
roro船の荷役の仕組みは「水平荷役方式」と呼ばれ、次のような流れで進みます。
この仕組みにより、荷物の積み替え作業が不要になり、貨物の損傷リスクが大幅に低減されます。港での滞在時間も大幅に短縮できるため、船の回転効率が上がります。
国内航路については、東京〜苅田(福岡)、博多〜敦賀、東京〜博多、苫小牧〜室蘭〜東京など、全国の主要港を結ぶ定期便が複数あります。物流の「2024年問題」でトラックドライバーの長時間労働が制限されてから、モーダルシフト(陸運から海運への切り替え)の手段としてroro船への注目が高まっています。2026年2月には商船三井さんふらわあが宮崎港〜東京〜苅田間の新航路を22年ぶりに開設するなど、国内航路の拡張が続いています。
国際航路では、博多〜上海、大阪・神戸〜上海、博多〜釜山(フェリー含む)など東アジアを中心とした航路が整備されています。博多〜上海間を高速roro船で約20ノット(時速約37km相当)で航行する「上海スーパーエクスプレス」のような事例もあります。
定期航路と不定期航路があります。定期航路は国土交通省の許可制で、安定した貨物輸送を目的に運航されます。不定期航路は届出制で、特定企業の専用便やプロジェクト輸送など、需要に応じて柔軟に設定されます。
参考:国際RORO船・フェリー航路一覧(日本港湾協会)
https://www.phaj.or.jp/distribution/data/202210r.pdf
roro船には明確なメリットがあります。まずコスト面では、荷役にクレーンが不要なため港湾使用料を抑えられ、積み替え人件費も削減できます。1回の航海でトラック数百台分の貨物を輸送できるため、陸上輸送に比べて輸送単価は格段に低くなります。
環境面でのメリットも大きいです。国土交通省のデータによると、1トンの貨物を1km運んだときのCO2排出量は、トラックが216gに対して船舶はわずか43gです。約5分の1の排出量で同じ距離を輸送できるということですね。脱炭素経営を進める荷主企業にとって、roro船の活用はESG対策としても有効な選択肢です。
デメリットも押さえておきましょう。
関税・入港料との関係で見逃せないのは、2025年10月に米国が発動した「入港料(寄港料)」です。米通商代表部(USTR)は外国製の自動車運搬船に対して1トンあたり46ドルの入港料を課す措置を発効しました。7,000台積みの大型roro船(PCC船)では、1回の寄港だけで約1億5,000万円の入港料が発生する計算になります。これは関税とは別に課されるコストで、輸入車の価格や貿易コストに直接影響します。
コスト増は運航会社から荷主(輸入業者・メーカー)へ転嫁される可能性が高く、川崎汽船など大手海運会社もすでにその方針を公表しています。関税だけでなく、こうした「隠れたコスト」が輸入コストに加わる点は、輸入業務に関わる方なら必ず把握しておく必要があります。
参考:米USTR、自動車運搬船の入港料金算定基準を大幅引き上げ(JETRO)
https://www.jetro.go.jp/biznews/2025/10/e35c68fb5c94603a.html
これは他の解説記事にはあまり載っていない視点です。通関・関税を扱う実務者にとって、roro船は「船種の知識」だけでなく「コスト変動の予測」という観点からも重要です。
roro船で輸送される貨物は、完成自動車・建設機械・農業機械・鉄道車両・大型医療機器など「規格外の大型品」が中心です。これらの品目は関税率が品目ごとに異なり、輸入申告のHSコード分類を誤ると関税の過不足が生じるリスクがあります。自動車の関税率は乗用車で0%(日本のWTO税率)ですが、トラック・バスは別税率が適用されることもあり、船積みされる車種・用途の確認が不可欠です。
また、roro船では「シャーシ(荷台)のみ輸入」「トレーラーヘッドは除く」という形態があり、関税の課税対象の範囲が曖昧になるケースがあります。シャーシ単体の関税分類と完成車としての申告では税率が変わることがあるため、船積み書類(B/LやPacking List)と現物の状態をよく照合することが大切です。
運賃・保険料を含む課税価格(CIF価格)の計算においても、roro船特有のサーチャージが注意点です。
輸入コストの総合管理という視点で言えば、関税(Duty)だけに目を向けず、輸送コストの変動要因を事前にヒアリングしておくことが重要です。日本通関士会や日本貿易実務検定(B級・A級)の学習資料には、roro輸送のコスト体系に関する解説も含まれており、実務知識の補強に役立てられます。
参考:モーダルシフトとCO2排出量比較(国土交通省)
https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/modalshift.html