滅却承認申請を出したのに、廃棄届も別途出していませんか?それ、法律で二重提出が不要と明記されています。
「廃棄」と「滅却」は日常語ではほぼ同じ意味に使われますが、関税法の世界では明確に別の概念です。この違いを正しく理解しておかないと、関税の納付義務を余計に負ったり、手続きの漏れが生じたりするリスクがあります。
まず「廃棄」とは、関税法第34条が定めるもので、腐敗・変質等により本来の用途に供されなくなった外国貨物をくずとして処分することを指します。廃棄を行う場合は、あらかじめ税関に「外国貨物廃棄届」(税関様式C-3080)を提出しなければなりません。ここで重要なのは、廃棄しても貨物に経済的価値が残る場合、輸入申告(通関)が必要になる点です。つまり、廃棄だけでは関税納付義務は免れません。
一方「滅却」は、関税法第45条が根拠で、焼却・破砕・溶解・発酵等の処理によって貨物の形態をとどめなくすることをいいます。滅却のメリットは大きいです。あらかじめ税関長の承認を受けて滅却した場合、関税の納付義務が免除されます。輸入申告なしに処分が完結するため、関税・消費税どちらも負担しなくて済みます。
| 項目 | 廃棄(関税法第34条) | 滅却(関税法第45条) |
|---|---|---|
| 必要な手続き | 廃棄届(C-3080) | 滅却承認申請(C-3170) |
| 税関への対応 | 届出(事前) | 承認申請(事前) |
| 輸入申告の要否 | 原則必要 | 不要 |
| 関税の扱い | 納付義務あり | 承認後は免除 |
| NACCSコード | H46等 | H22等 |
そして実務上、特に見落としやすいのが「二重提出不要のルール」です。滅却の承認申請手続きを執る場合には、廃棄届の提出は要しないものとされています(関税法第34条ただし書き)。廃棄届と滅却承認申請の両方を出してしまっている実務者も少なくありません。滅却承認申請を出すなら、廃棄届は不要が原則です。
外国貨物の廃棄・滅却の法的定義と手続きの違いをわかりやすく解説(AOGパートナーズ法律事務所)
NACCSで滅却承認申請を行う場合は、専用の申告業務コードがあるわけではなく、「汎用申請」業務(業務コード:HYS)を利用します。注意点はここです。汎用申請の中でも、申請手続種別コードが蔵置場所の種類によって細かく分かれています。
以下が主な申請手続種別コードの一覧です。
| 申請手続種別コード | 手続名称 | 根拠法令 |
|---|---|---|
| H22 | 滅却(廃棄)承認申請(保税蔵置場にある貨物) | 関税法第45条第1項 |
| H23 | 滅却(廃棄)承認申請(他所蔵置場所にある貨物) | 関税法第36条第1項 |
| H24 | 滅却(廃棄)承認申請(指定保税地域にある貨物) | 関税法第45条第1項 |
| H25 | 滅却(廃棄)承認申請(保税工場にある貨物) | 関税法第61条の4 |
| H26 | 滅却(廃棄)承認申請(保税展示場にある貨物) | 関税法第62条の8 |
| H27 | 滅却(廃棄)承認申請(総合保税地域にある貨物) | 関税法第62条の13 |
| H28 | 滅却(廃棄)承認申請(保税運送貨物) | 関税法第45条第1項 |
| H29 | 外国貨物の包括滅却承認申請 | 関税法第45条第1項 |
| K30 | 滅却(廃棄)承認申請(船機用品) | 関税法第23条第6項 |
コードの選択を誤ると、受付官署が変わる場合があります。保税蔵置場ならH22、保税運送中の貨物ならH28というように、貨物が現在どの場所にあるかを確認してからコード選択をしてください。
NACCSの汎用申請を行う際の基本的な流れは次のとおりです。まずNACCSパッケージソフトから「HYS(汎用申請)」業務を選択します。次に上記の申請手続種別コードを入力し、「記事」欄に申請内容を入力します。代理申請(通関業者が依頼主に代わって行う場合)の場合は、「記事」欄に代理申請の旨、申請者名(輸出入者名)および住所を必ず入力してください。これを省略すると受理されないケースがあります。税関様式はC-3170(滅却(廃棄)承認申請書)が対応書式です。
NACCSで承認が下りると、「MEK(滅却承認)」の許可・承認等通知情報が出力されます。この通知情報は保管しておきましょう。
NACCS汎用申請手続一覧(NACCSセンター公式):全コードと根拠法令・申請様式が確認できます
NACCSで汎用申請するにしても、税関様式C-3170の内容を正確に把握しておくことが不可欠です。マニュアルで紙申請する場合はもちろん、NACCSで添付ファイルを送る場合でも書式の理解が前提になります。
申請書に記載する主な項目は次のとおりです。申請者の住所・氏名(法人名)、貨物の品名・数量・価格、蔵置場所、滅却の理由、滅却の方法、滅却を行う場所・業者名。これらをもれなく記入します。
添付書類について注意があります。「廃棄承認申請書として使用する場合には、廃棄することがやむを得ないものであることを証する書類を添付してください」と様式に明記されています。つまり、単に「不要だから廃棄したい」では承認が下りない場合があります。
添付書類の例としては次のようなものがあります。
- 腐敗・変質を示す検査証明書や写真
- 輸入が不許可になった他法令の通知書(食品衛生法、植物検疫法等)
- 商標権侵害品として差し止められた旨の通知
- 破損状況を示す現状写真・調査報告書
税関長は「滅却することがやむを得ない」と認めるときは、滅却の承認をしなければならないと関税法第45条第2項が定めています。承認が義務であるということですね。ただし前提として、やむを得ない事情の証明が必要です。証明書類が不十分だと審査が長引くため、用意できる証拠はすべて添付する方が実務的です。
また申請書は2通提出が必要です(税関控えと申請者控え)。紙申請の場合は「滅却(廃棄)承認申請書(C-3170)2通を税関長に提出しなければならない」と定められています。NACCSで電子申請する場合でも、対応する書類を電子ファイルとして添付します。
税関様式C-3170(滅却(廃棄)承認申請書):税関公式ページからダウンロード可
令和7年12月19日付の「関税法基本通達等の一部改正(財関第1274号)」により、令和8年(2026年)1月1日から滅却に関する運用が大きく見直されました。通関業務に直接影響するため、必ず把握しておく必要があります。
改正の最大のポイントは「滅却により発生する灰・破片・泥等について、一定の場合に再生利用が可能となった」点です。これまでの「滅却」の概念は、貨物の形態を完全にとどめなくすることを意味し、滅却後に何か残るものを再利用するのは認められないと解釈されていました。この点が改正で明確化されました。
具体的に再生利用が認められるケースとして以下が例示されています。
- 衣類・かばん・靴等の焼却により発生した灰が建築資材に利用される場合
- 機械類等の破砕により発生した金属片が溶解・精錬を経て再資源化される場合
- 電気機器から取り外した電池が焙焼・解砕等により材料ごとに選別され再資源化される場合
- 食品等に対して発酵処理が行われ、飼料化または堆肥化される場合
- プラスチック製品が溶解または分解され、再製品化される場合
ただし注意が必要です。滅却前の貨物の形態の全部または一部をとどめた状態で再使用される場合は、滅却と認められません。たとえば、部品として取り外してそのまま使用するケースや、製品の一部として組み込まれるケースは対象外です。
もう一つ重要な改正点があります。申請者の範囲が明確化されました。これまでは「貨主」が申請者というイメージが強かったですが、今回の改正で「契約に基づき貨物の処分権限を有する者」も滅却の承認申請ができることが明記されました(関税法基本通達45-2)。取扱いを変更するものではなく従来から可能だったとされていますが、実務上の根拠が明確になりました。
また、滅却を行うために貨物を他者に引き渡す際に対価を得る場合は承認されません。再生利用の目的で引き渡す場合でも「対価の受領」があると承認不可になるため、事前に確認が必要です。
税関公式:保税制度・運用の見直しを実施しました(令和8年1月1日施行)
滅却承認申請は、荷主(貨主)だけでなく通関業者が代理申請するケースも多くあります。代理で申請する場合には、NACCSの汎用申請における記入ルールが通常の申告とは少し異なります。これが抜けたまま送信すると、受付が通らなかったり後から税関から連絡が来たりします。
代理申請の場合は必須の入力内容があります。NACCSの「汎用申請(HYS)」業務の「記事」欄に、次の3点を明記してください。
1. 代理申請の旨(例:「本申請は通関業者〇〇株式会社が代理して申請するものです」)
2. 申請者名(輸出入者名・荷主名)
3. 申請者の住所
この3点が揃っていないと、後から補完を求められるケースがあります。「記事欄に記入する」という文化が薄い担当者は特に要注意です。
また、滅却承認が下りた後にも、実務上の流れがあります。承認通知を受けた後、実際の滅却作業は「税関長が指定した場所・方法」で実施する必要があります。一般廃棄物に分類される食品や紙類であれば市町村のゴミ処理場での焼却処分、金属やプラスチックなどの産業廃棄物であれば都道府県知事の許可を受けた廃棄物処理業者との委託契約が必要です。滅却場所を勝手に変えることはできません。
滅却完了後は「滅却証明書」などの証明書類を税関に提出するのが原則です。この証明書類の入手が漏れると、のちの保税業務検査の際に指摘を受けるリスクがあります。フローは「承認→滅却実施→証明書類の取得→税関への提出」と覚えておくと整理しやすいです。
さらに、包括滅却承認申請(申請手続種別コード:H29)の活用も検討してください。同一保税蔵置場で繰り返し滅却を行う貨物がある場合、個別ではなく包括的に承認を取得することで、そのつど申請する手間を省けます。ただし包括承認は全官署で受け付けているわけではありません。申請官署の受付業務一覧を事前に確認してから使用してください。
実務で迷ったときは、NACCSセンターが運営するNACCS掲示板(bbs.naccscenter.com)に過去の質疑応答が蓄積されています。最新の運用変更も掲示板から確認できるため、ブックマークしておくと便利です。
NACCS掲示板 汎用申請関係ページ:最新の汎用申請業務コードや官署別受付一覧が確認できます
日本関税協会:保税業務の基礎知識(保税初任者研修資料):廃棄と滅却のNACCS業務コードが図解で整理されています