高度管理医療機器販売の資格と取得手順を解説

高度管理医療機器販売の資格とは何か、取得条件から申請手続きまでを詳しく解説。通関業従事者が知っておくべき許可制度の仕組みとは?

高度管理医療機器販売の資格と取得・許可の全手順

資格の修了証を取れば、それだけで自由に販売できると思っていませんか。


この記事の3ポイント要約
📋
資格だけでは販売できない

営業所管理者の資格取得に加えて、営業所ごとに保健所への「許可申請」が別途必要です。資格と許可は別物です。

📅
資格は一生有効・許可は6年更新

営業所管理者の資格(修了証)に有効期限はありませんが、販売業許可は6年ごとに更新が必要です。両者の違いを理解することが重要です。

⚠️
毎年の継続的研修が義務

許可取得後も、高度管理医療機器等の販売業許可を受けた営業所の管理者は、毎年度の継続的研修を受講させることが法律で義務づけられています。


高度管理医療機器販売の資格が必要な「対象機器」とは

医療機器は薬機法によって4つのクラスに分類されており、そのうち「高度管理医療機器」はクラスⅢおよびクラスⅣに該当します。不具合が生じたときに人体へのリスクが最も高い機器群です。


具体的には、AED(自動体外式除細動器)・コンタクトレンズ・人工呼吸器・ペースメーカー・冠動脈ステント・透析器など、生命維持に深く関わる機器が含まれます。「コンタクトレンズがそんなに危険な分類なのか」と驚く方もいますが、目に直接触れる器具として2005年(平成17年)の薬事法改正でクラスⅢに位置づけられた経緯があります。


これらを「販売または貸与する」場合、薬機法第39条第1項に基づき、営業所ごとに都道府県知事(保健所)の許可を受けなければなりません。高度管理医療機器だけでなく、特定保守管理医療機器(故障時に重大なリスクがある機器)も同じ許可が必要です。


通関業に従事していると、輸入通関後に国内で製品を販売する流れに関わることがあります。その際、輸入者が販売業者でもある場合は、薬機法上の製造販売業許可と、この販売業許可の両方が求められます。税関への輸入申告時には「医薬品等製造販売業許可証の写し」等を提出して確認を受ける必要があり(関税法第70条)、通関業者として正確な許可の有無を把握することは欠かせません。


つまり「どの機器が許可必要か」を理解することが基本です。


クラスⅢ・Ⅳに該当する主な機器の例は以下のとおりです。


機器の種類 クラス リスクの概要
コンタクトレンズ(度付き) 眼球への直接接触・感染リスク
AED(自動体外式除細動器) 心臓への電気刺激・誤作動リスク
人工呼吸器 生命維持装置としての高リスク
冠動脈ステント 体内植込み・心臓関係の最高リスク
人工心臓弁 生命維持に直結・取り出し困難


参考:医療機器のクラス分類と各規制の詳細は、長野県ウェブサイトに一覧が掲載されています。


医療機器のクラス分類例示 – 長野県


高度管理医療機器販売の資格・営業所管理者になるための3つのルート

「高度管理医療機器販売の資格」と呼ばれるものは、正式には「高度管理医療機器等営業所管理者」の資格です。取得ルートは大きく3つあります。


ルート①:医師・歯科医師・薬剤師の免許保有者


免許証があれば講習不要で、すべての高度管理医療機器等と特定管理医療機器の管理者になれます。これが条件です。


ルート②:製造販売業・製造業・修理業の責任者要件を満たす者


大学等で物理学・化学・生物学・工学・薬学・医学・歯学などの専門課程を修了した者(目安として当該科目の30単位以上取得)や、医薬品・医療機器の品質管理業務に一定年数以上従事した経歴のある方が対象になります。こちらも講習を受けずに管理者の要件を満たせる場合があります。


ルート③:実務経験+基礎講習の受講


最も一般的なルートです。高度管理医療機器等の販売等に「3年以上」従事したうえで、厚生労働省が登録した機関が実施する基礎講習を受講し、試験に合格する必要があります。ここで注意したいのが「3年以上」という数字です。


コンタクトレンズ専門の管理者になる場合は「1年以上」の従事経験で足りますが、取り扱える機器がコンタクトレンズに限定されます。販売できる機器範囲が変わる、ということです。


管理者区分 必要な従事経験 取り扱える機器
高度管理医療機器等(フル) 3年以上(コンタクトレンズ・プログラムを除く高度管理医療機器等) 高度管理医療機器全般・管理医療機器
コンタクトレンズ 1年以上(プログラムを除く高度管理医療機器等) コンタクトレンズのみ+管理医療機器
プログラム高度管理医療機器 従事経験不要 プログラム医療機器のみ


参考:営業所管理者の要件についての公式資料(東京都健康安全研究センター)
医療機器の販売・貸与制度について(営業所管理者の要件について)– 東京都健康安全研究センター


高度管理医療機器販売の資格取得に必要な基礎講習の受講手順

基礎講習は、厚生労働大臣が登録した機関のみが実施できます。現在、主な実施機関は以下の3つです。


  • 公益財団法人 医療機器センター(JAAME)
  • 一般社団法人 日本ホームヘルス機器協会(HAPI)
  • 公益財団法人 総合健康推進財団


ここでは、受講者数が最も多いJAAME(医療機器センター)の講習を例に流れを説明します。


STEP 1:受講資格の確認と従事年数証明書の準備


申し込みに先立ち、高度管理医療機器等の販売等に3年以上従事したことを証明する「従事年数証明書」が必要です。重要なのは、過去に転職している場合は「各営業所ごとに」証明書を用意しなければならない点です。


現在の勤務先の所長が「以前の職場での経験」を証明することはできません。これに気づかず準備が遅れるケースが多いため、早めに確認しましょう。


STEP 2:申し込みとオンライン審査


マイページを作成し、申込書作成フォームに従事年数証明書をアップロードして申請します。審査が通れば受講料の支払い案内が届きます。受講料は14,800円(税込)で、テキスト代と受験料を含みます。


STEP 3:eラーニングで受講(約6時間20分)


受講は全6科目・約6時間20分のeラーニングで完結します。全国どこからでも受講できます。会場に出向く必要はありません。


  • Ⅰ:現在の医療とその周辺について(60分)
  • Ⅱ:医療側からみた販売業者のあり方(50分)
  • Ⅲ:販売業・貸与業に関する薬機法の規定(95分)
  • Ⅳ:関連法規(医療法・医師法等)(40分)
  • Ⅴ:品質確保における業務管理(60分)
  • Ⅵ:医療機器の流通における品質確保(各25分)


STEP 4:オンライン試験(12問・10分)


全講義を視聴した後に受験できます。三者択一方式で12問、試験時間は10分です。受講期間内に受験しなければ失効となるため、期限管理が肝心です。


STEP 5:修了証の受け取り(オープンバッジ形式)


合格後、修了証はデジタル形式(オープンバッジ)でメール送付されます。この修了証に有効期限はなく、取り消されない限り生涯有効です。更新のための再受験は不要です。


参考:JAAMEによる高度管理医療機器等営業所管理者講習会の詳細
高度管理医療機器・特定管理医療機器販売及び貸与営業所管理者講習会 – 公益財団法人 医療機器センター


高度管理医療機器販売業の許可申請・保健所への手続きの流れ

資格取得はあくまでも「管理者の要件を満たす」ための第一歩です。実際に販売業を営むには、営業所ごとに所轄の保健所(都道府県)へ「高度管理医療機器等販売業・貸与業許可」を申請する必要があります。


許可が必要です。これが原則です。


手続きの主な流れは以下のとおりです。


① 事前相談(営業開始の約20日前までを目安に)


構造設備の基準(倉庫・室温管理など)が定められており、施設検査が伴います。申請前に必ず保健所の窓口へ事前相談してください。申請書類を整えるだけでは足りません。


② 申請書類の提出


必要書類には以下が含まれます。


  • 高度管理医療機器等販売業・貸与業許可申請
  • 管理者の資格を証明する書類(修了証・免許証など)
  • 営業所の構造設備の概要(平面図含む)
  • 手数料(都道府県により異なる)


実地検査


保健所の薬事監視員が営業所へ赴き、構造設備基準を満たしているか確認します。


④ 許可証の交付と販売開始


検査通過後に許可証が交付され、販売業を開始できます。


許可の有効期間は6年です。継続して営業する場合は、有効期間が満了する「14日前まで」(都道府県によっては1ヵ月前まで)に更新申請を行う必要があります。更新を失念すると許可が失効し、販売継続ができなくなります。


通関業者の視点から補足すると、輸入申告時に税関から確認される「医薬品等製造販売業許可証の写し」は、この販売業許可と別物です。輸入を行う法人が製造販売業者(販売元)として責任を持つ場合に求められる製造販売業許可が求められます(関税法第70条・医薬品医療機器等法第39条)。通関手続きを担当する際は、依頼者がどの許可を持っているかを正確に把握することで、書類不備によるトラブルを防ぐことができます。


参考:税関における医薬品等輸入時の確認内容について
医薬品医療機器等法に基づく輸入規制の税関における確認内容 – 税関(財務省)


高度管理医療機器販売の資格取得後も続く「継続的研修」の義務と罰則リスク

資格(修了証)を取得し、保健所から許可を受けたら終わり、ではありません。許可取得後も法律上の義務が続きます。


高度管理医療機器等販売業・貸与業の許可を受けた営業所の管理者は、毎年度の「継続的研修」を受講することが義務(薬機法施行規則第175条第2項)です。「継続的研修」は、基礎講習とは別の研修で、最新の法規制や品質管理の動向を学ぶ目的で毎年度実施されています。


継続的研修の義務対象と努力義務の対象を整理しておきます。


  • 義務(毎年度必須):高度管理医療機器等販売業・貸与業の許可を受けた営業所の管理者
  • 🔶 努力義務(受講推奨):特定管理医療機器(補聴器・家庭用電気治療器など)の届出のみの営業所管理者


受講義務を果たさなかった場合、直接的な罰金規定はないものの、業許可の更新審査に影響するリスクがあります。また、無許可・無届で高度管理医療機器を販売した場合は、薬機法第84条に基づき「3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはその両方」が科される可能性があります。法的リスクは非常に大きいです。


通関業者として輸入支援に携わる場合、依頼企業側のコンプライアンス状況(許可の有無・継続的研修の実施状況)を把握しておくことは、業務上のリスク管理にもつながります。万一、許可なしで流通されている商品の通関を手伝うことになれば、通関業者自身が巻き込まれるケースも否定できません。


参考:継続的研修の対象者・手続き詳細(厚生労働省)
医療機器販売業者等営業所管理者の継続的研修について – 厚生労働省


参考:薬機法違反時の罰則について詳しく解説している弁護士解説記事
薬機法(旧薬事法)における医療機器の規制と罰則 – クロスプロ法律事務所