研修を1年度うっかり忘れても、管理者資格は即日消滅しません。
高度管理医療機器の継続研修(継続的研修)とは、薬機法(医薬品医療機器等法)施行規則第168条に基づき、高度管理医療機器等の販売業・貸与業の営業所管理者および医療機器修理業の修理責任技術者が、毎年度(4月1日〜翌年3月31日)に1回受講することが義務付けられている研修です。
毎年度受講が必要です。これは任意ではなく、法律に基づく明確な義務です。
平成17年の薬事法改正(現・薬機法)により、平成18年4月1日から施行されており、すでに20年近くにわたって運用されています。高度管理医療機器とは、コンタクトレンズや自己血糖測定器、人工透析器など、適切に管理されなければ人体に重大な影響を及ぼしうる機器を指します。
受講対象者は以下のとおりです。
通関業に従事する方が高度管理医療機器の取引や通関手続きに関わる場合、輸入・販売に伴い営業所管理者として届出をしているケースでは、この研修が直接の義務となります。つまり、この研修を無視することは薬機法違反につながる可能性があり、軽視は禁物です。
なお、当該年度に基礎講習を修了して新たに管理者等になった場合は、その年度については継続的研修の受講が不要です。来年度から受講が必要となります。これが原則です。
厚生労働省による公式Q&A(平成29年3月22日付)では、「管理者等となった年度の残期間に継続的研修が実施されていない等、継続的研修を受講する機会がない場合は、次年度の継続的研修を受講することで差し支えない」とも明記されています。
参考:高度管理医療機器等営業所管理者及び医療機器修理責任技術者の継続的研修の取扱いに関するQ&A(厚生労働省)
厚生労働省 継続的研修Q&A(平成29年3月22日)
「うっかり1年度分を受講し忘れた」という状況は、現場では珍しくありません。では、実際に継続研修を受講しなかった場合、何が起きるのでしょうか?
まず押さえておきたいのは、受講を怠ること自体が薬機法施行規則第168条違反の状態になるという点です。ただし、受講しなかった翌日に即座に許可が取り消されるわけではありません。
義務違反は立入検査で指摘対象になります。都道府県の薬務主管部門や保健所が実施する立入検査(薬事監視)において、修了証の保管状況が確認されます。日本医療機器産業連合会のQ&Aでも、「継続的研修等教育記録の保管は、高度管理医療機器等の許可を受けた営業所は施行規則第164条第2項第1号で示されるように記録の保管が求められている」と明記されています。
リスクとして考えられる具体的な影響を整理します。
厳しいところですね。ただし、「すぐに資格が消滅する」という誤解は持たないでください。重要なのは、未受講の状態をいつまでも放置しないことです。
参考:厚生労働省 医療機器の販売・貸与業者及び修理業者の法令遵守に関するガイドライン(令和3年6月1日)
法令遵守ガイドライン(厚生労働省 令和3年)
継続研修の受講を忘れたと気づいた場合、焦る前に冷静に対処することが大切です。年間を通じて受講できる団体が複数存在するため、すぐに挽回できる可能性が高いのが実情です。
まず確認すべきことから整理しましょう。
| 対処ステップ | 内容 |
|---|---|
| ①受講可能な研修団体を探す | 公益財団法人総合健康推進財団・保健福祉振興財団など複数団体が年間を通じて受付中 |
| ②eラーニング形式で受講申込 | 受講料は4,950円(税込)程度。コンビニ払い・クレジットカード払いに対応 |
| ③本人で受講・動画視聴を完了させる | 代理受講は絶対に不可。本人受講のみ有効(代理受講が発覚すると資格取消) |
| ④修了証のデジタル発行を確認 | 修了日から約1ヶ月で発行。急ぎ対応は不可のため早めに完了させること |
| ⑤修了証を営業所で適切に保管 | 施行規則第164条第2項第1号に基づき記録保管が義務 |
これが基本の流れです。令和8年度(2026年度)では、総合健康推進財団の受付期間は2026年2月2日〜2027年2月28日と設定されており、かなり幅広い期間での申込が可能です。
受講料は4,950円(令和8年度から値下げ)です。テキスト代は無料で研修サイトからダウンロード可能です。ただし、入金後のキャンセル・返金は原則不可なので注意してください。
なお、複数の団体で同年度に研修を受講した場合でも、「1年度に1回」という義務を満たすことができれば問題ありません。複数受講が義務ではなく、1回の修了で要件を満たせます。受講機会は年中あると理解しておけばOKです。
また、年度途中に管理者変更があった場合には注意が必要です。管理者が交代した場合、新しい管理者が速やかに保健所・薬務課に変更届を提出し、新管理者が当該年度分の研修を受講する必要があります。前任者の受講履歴を新管理者が流用することは認められません。
参考:令和8年度継続的研修の案内(公益財団法人 総合健康推進財団)
総合健康推進財団 令和8年度継続的研修ページ
継続研修に関して、現場でよく見られる「やってはいけないこと」があります。それが代理受講です。
継続研修は「個人に係る資格」です。これが原則です。業者側の都合で、忙しい管理者の代わりに他の社員が代わりに受講するケースが実際に起きていますが、これは完全にアウトです。
本人による受講ではないことが発覚した場合、資格取消の対象となります。これは総合健康推進財団、保健福祉振興財団など複数の研修実施機関が明示しているルールであり、行政側も厳格に運用しています。日々の業務が忙しく、管理者本人がスケジュールを取りにくい状況があるとしても、代理受講という選択肢はないと覚えておいてください。
代理受講をしてしまうと資格取消になります。痛いですね。
では、修了証の取り扱いについても整理しましょう。
修了証の保管は義務です。これだけ覚えておけばOKです。
また、通関業務の実務においては、輸入された高度管理医療機器が日本の販売業許可制度の下で適切に管理されているかどうかを確認するためにも、管理者の継続研修受講状況は重要な指標となります。輸入通関の申告時や取引先監査の場面で修了証の提示を求められることもあります。
修了証は1年ごとに更新するものであり、古い年度の修了証だけでは当年度の義務を満たしていないことになります。年度ごとに管理・保管する習慣をつけることが大切です。
ここでは、一般的な解説記事には載っていない、通関業ならではの視点から見た注意点を取り上げます。
通関業従事者が高度管理医療機器を扱う場面として、主に輸入通関申告・輸入後の国内流通・輸入者への情報提供サポートなどがあります。この際、輸入者が高度管理医療機器等販売業・貸与業の許可を持っているかどうか、管理者が適切に継続研修を受講しているかどうかは、依頼主(輸入者)のコンプライアンス状況に直結します。
通関業者として輸入申告書類を作成・提出する立場から見ると、依頼主が薬機法上の義務を果たしていない状態で輸入・販売を行っていると、通関手続きそのものが問題の発端となりかねません。
例えば、以下のような状況は要注意です。
これらは意外ですね。輸入通関に問題がなくても、国内流通段階で薬機法違反が発覚すれば、通関業者の評判にも影響します。
通関業を営む法人・事務所としては、輸入依頼を受ける前に「依頼主の高度管理医療機器等販売業許可の有効期限(6年更新)」「管理者の当年度継続研修の受講状況」を事前にヒアリングする確認フローを設けることが、リスク管理の観点から有効です。
また、輸入者に対して「継続研修の受講期限が年度末(3月31日)に近づいている」という情報を事前に伝えるサポートができれば、顧客からの信頼獲得にもつながります。これは使えそうです。
高度管理医療機器の輸入通関は、単なる書類手続きではなく、薬機法コンプライアンスと一体で考える必要があります。通関業従事者が継続研修の仕組みを正しく把握しておくことは、自社の業務品質向上にも直結する知識です。
参考:厚生労働省 医療機器販売業者等営業所管理者並びに医療機器修理責任技術者の継続的研修について
厚生労働省 継続的研修の公式案内ページ