港で通関すると輸送費に10%の消費税がかかります。
インランドデポ(ICD:Inland Container Depot)は、港や空港から離れた内陸部に設置された通関物流基地のことです。通関機能と保税機能を併せ持つため、「内陸の港」とも呼ばれています。
参考)【ICD】インランドデポとは? メリット、デメリット、ドレー…
従来は港倉庫が担っていた機能を内陸で実現できるのが特徴です。輸出入貨物の一時保管、通関業務、仕分け、流通加工、コンテナの返却や再利用といった複数の機能を果たします。
つまり輸入業務の窓口が内陸に移るということですね。
港湾混雑の緩和と物流のスムーズな流れを保つ目的で、全国各地に設置されています。特に港や空港を持たない内陸県の企業にとって、地元での通関手続きが可能になる大きなメリットがあります。
参考)インランドデポとは?10分でわかりやすく解説 - ロジパレ
全国各地にインランドデポは設置されており、地域ごとに利用可能な施設があります。以下は主要なインランドデポの所在地と運営事業者の一覧です。
東北エリア
北関東エリア
参考)https://www.cma-cgm.com/assets/public/pdf/CORPORATE%20PRESENTATION%2027012020.pdf
北関東エリアが充実しているのが特徴です。
中部エリア
参考)岐阜インランド・デポの紹介 - 岐阜県公式ホームページ(商業…
関東エリア
関西エリア
参考)三木インランドデポ
これらの施設は海運会社や物流事業者によって運営されており、各社の顧客向けにサービスを提供しています。利用を検討する際は、取引のある海運会社や通関業者に問い合わせることで、最寄りのインランドデポ情報を入手できます。
インランドデポを利用する最大のメリットは、保税運送による消費税の免税です。通常の港通関と比較して、大幅なコスト削減が可能になります。
参考)https://www.ayasato-boueki.com/2018/02/inland-depot.html
港で輸入通関する場合、通関後に内陸の倉庫まで運ぶ輸送費には消費税10%がかかります。例えば輸送費が100万円なら10万円の消費税が発生します。
一方でインランドデポで通関する場合は異なります。輸入許可を受ける前の貨物は外国貨物として扱われるため課税対象外です。港からインランドデポまでの輸送は「保税運送」となり、この区間の輸送費は免税になります。
参考)保税地域の消費税は免税対象?輸入時のルールと税の発生タイミン…
保税運送が免税対象ということですね。
関税法では、外国貨物は輸入許可により内国貨物になると定められています。つまり名古屋港で輸入許可を受けず、インランドデポまで輸送すれば外国貨物のまま輸送することになり、その区間の輸送費に対する消費税がかからなくなるのです。
輸送距離が長いほど免税額も大きくなるため、内陸県の企業ほどメリットは大きくなります。例えば輸送費が200万円なら20万円、500万円なら50万円の消費税が免税対象になります。年間の輸入回数が多い企業であれば、累積の節約額は相当な金額になるでしょう。
保税地域内での荷役作業(積み上げ、荷下ろし、保管、鑑定など)も免税対象です。これにより関税や消費税の支払いを留保したまま簡単な仕分けや加工、値札付けなどの作業ができ、さらに経費を抑えられます。
インランドデポは保税蔵置場の一種であり、外国貨物を一定期間保管できる機能があります。この保管期間を正しく理解して活用することで、資金繰りの改善や在庫管理の最適化が可能です。
保税蔵置場に貨物を搬入してから3ヶ月を超えて保管する場合、税関長の「蔵入承認」を受けることで2年間まで蔵置が可能です。この間、関税や消費税の支払いは不要で、罰金なども発生しません。
参考)保税倉庫に貨物を保管できる期間はどのくらい?期間を過ぎるとペ…
最大2年間が基本です。
さらに特別な理由があると税関長が認めた場合には、2年を超えて延長することも可能です。つまり理論上は2年以上の長期保管もできるということになります。
参考)保税蔵置場に保管中の商品を輸入手続きせずに蔵置しておく方法:…
JETRO「保税蔵置場に保管中の商品を輸入手続きせずに蔵置しておく方法」
上記リンクには蔵入承認の具体的な申請手続きについて詳細が記載されています。実務で延長が必要になった際の参考資料として活用できます。
この保管機能を活用すれば、需要動向を見極めてから輸入通関するタイミングを選べます。急いで通関して国内倉庫に保管するよりも、保税状態のまま保管しておく方が税金の支払いタイミングを遅らせられるため、キャッシュフローの改善につながります。
また倉庫保管料はかかりますが、自社倉庫の保管スペースを圧迫せずに済むメリットもあります。季節商品や需要変動の大きい商品を扱う企業にとって、この柔軟性は大きな武器になります。
インランドデポを利用した輸入通関の具体的な流れを理解しておくことで、スムーズな貨物受け取りが可能になります。
以下は標準的な手順です。
1. 貨物の港到着
輸入貨物が名古屋港などの港に到着します。
この時点では外国貨物のままです。
2. 保税運送の許可取得
税関から保税運送の許可を得ます。これにより輸入許可前の状態で内陸への輸送が認められます。
3. インランドデポへの輸送
外国貨物のまま、岐阜県などのインランドデポに輸送します。
この区間の輸送費は免税対象です。
4. インランドデポでの輸入通関
インランドデポで輸入許可を得ます。地元の税関職員が対応するため、迅速な通関と荷物引き取りが可能です。
5. 最終配送先への配送
輸入許可を得た貨物が最終配送先に届けられます。
最終配送先に届いて完了ですね。
この流れの中で、保管やバンニング(コンテナ詰め)、通関等が一貫してできる点も大きなメリットです。複数の事業者に分散して依頼する必要がなく、窓口が一元化されることで管理コストも削減できます。
税関検査による不具合等が発生した場合も、地元のインランドデポであれば迅速に対応できます。港まで戻る必要がないため、時間とコストの両面で有利です。
インランドデポの保税保管機能を、単なる物理的な倉庫ではなく、財務戦略のツールとして活用する視点は意外と知られていません。2年間の保管可能期間を活かした、資金繰り改善の具体的な手法を紹介します。
輸入通関すると同時に関税と消費税の納付義務が発生します。大量の貨物を一度に輸入通関すると、多額の税金支払いが発生し、一時的にキャッシュフローが悪化します。
そこで保税蔵置場に貨物を分散保管し、販売見込みに応じて小口ずつ通関する手法があります。例えば月間販売予定の1ヶ月分だけを輸入通関し、残りは保税状態で保管しておくのです。
これにより税金支払いを分散できます。
在庫リスクの軽減にもつながります。国内倉庫に大量在庫を抱えると、売れ残りリスクや保管コストが増大しますが、保税蔵置場に置いておけば必要な分だけ通関すればよいからです。
さらに為替変動への対応力も高まります。保税状態の貨物は外国貨物のままなので、通関のタイミングで適用される為替レートを選択できる余地が生まれます。円高のタイミングで通関すれば、関税計算の基準となる円換算額が下がり、関税額も減少します。
国際輸送119「【ICD】インランドデポとは? メリット、デメリット」
上記サイトには保税輸送の詳細なメリット・デメリット分析が掲載されており、実務判断の参考になります。
ただし倉庫保管料は継続的に発生するため、保管コストと税金支払いタイミングのバランスを見極める必要があります。保管料と金利コスト、為替変動などを総合的に計算し、最適な通関タイミングを判断するスキルが求められます。
この戦略は特に高額商品や大量輸入を行う企業にとって、数百万円から数千万円レベルの資金繰り改善効果を生む可能性があります。財務部門と連携して、単なる物流拠点ではなく資金戦略の一環としてインランドデポを位置づけることで、競合他社に対する優位性を確立できるでしょう。