換算レート適用日のズレだけで関税額が7倍も変わることがあります。
2026年2月現在、為替市場では1ドル=150円台の攻防が続いています。2025年は値動きの激しい展開となり、4月には一時1ドル=139円まで円高が進みましたが、年後半にかけては円安が再び加速しました。第二次トランプ政権発足後、政策の不透明感から「米ドル離れ」が強く意識される一方で、「円離れ」も同時進行しています。
参考)「米ドル離れ」と「円離れ」が同時進行した2025年 2026…
米国は利下げ局面、日本は利上げ局面が継続しています。日米金利差の縮小が予想されている中でも、トランプ関税が円安要因として作用し、為替相場を複雑にしています。つまり円高要因と円安要因が拮抗した状態です。
参考)円安が止まらない!日米協調でも「1ドル=150円台」の攻防が…
2月特有のアノマリーとして、過去20年間の統計では米ドル/円の月足で陰線の出現回数が13回と、「米ドル安・円高」となった回数のほうが多いことが確認されています。一部の市場参加者の間では「米国債の大量償還と利払いで円高になりやすい」というアノマリーも話題になります。ただし2月でも3日・9日・12日には円安傾向が見られる日足データもあり、短期的な変動には注意が必要です。
参考)2026年2月の為替レート予想は「トルコリラ/円での円高」や…
通関業務における換算レートは、輸入申告時の関税額計算に直接影響します。税関公示の換算レートは毎週火曜日に公表され、次の日曜日から土曜日まで適用される仕組みです。このレートは「輸入申告日の属する週の前々週の実勢外国為替相場の週間平均値」に基づき計算されます。
参考)通関レート(税関公示の換算レート)について
換算レートが大きく変化する場合、当然ながら課税価格が大きく変化します。具体的な例を見ると、2024年2月11日の週に適用される円換算レートでは、1CNY(中国元)=20.52円、1USD(米国$)=147.24円でした。もし適用通貨CNYをUSDに間違えると、輸入申告価格は約7倍も高く(過大)になってしまい、誤った申告価格に基づいて計算される税額も過大になります。
参考)輸入時の関税を低くする換算レートの選択
急激な為替変動があった場合は申告タイミングをずらすことも検討できます。この戦略により、関税額や消費税額に影響を与え、輸入コストを調整することが可能です。為替前提が崩れやすい昨今の状況では、事前の換算レート確認が欠かせません。
実務上、通関業者に通関依頼した場合でも、申告は納税義務者である輸入者の名義で行います。通関業者はその代理人として税関に申告しているため、申告誤りの責任は最終的に輸入者に帰属する点に注意が必要です。
参考)更正(還付)の請求 / 不服申し立て(再調査の請求、審査請求…
円高になると、輸入には有利になります。輸入品の外貨建て価格が円換算で安くなるため、同じ金額でより多くの商品を仕入れられるメリットが生じます。
参考)円高・円安のしくみがよくわかりません。|地歴公民|苦手解決Q…
関税削減の具体的な方法として、換算レートの選択があります。前述の通り、換算レートは週単位で変動するため、申告日を調整することで有利なレートを適用できる可能性があります。これは合法的な節税策です。
また、納付した関税額が過大であった場合、更正の請求という手続により税金の還付を請求できます。更正の請求ができる期間は、原則として貨物の輸入の許可を受けた日から5年以内です。この手続は、納税申告を行った方が、誤っていた納税申告と正しい納税申告の両方の内容などを記載した関税更正請求書(税関様式C-1030)を納税申告をした税関官署に提出することにより行います。
数量が異なっていた場合でも、税関検査などで判明した差が3%以内であるときは、申告した数量が通関されたものとみなされ、修正申告等の必要はありません。3%以内なら問題ありません。
参考)輸入(納税)申告した数量と実際に引き取った数量が異なる場合の…
円安が進行すると輸入コストが増加し、企業の利益率が圧迫される可能性があります。2026年2月現在、トランプ関税の影響もあり、輸入企業は二重のコスト増加圧力に直面しています。
為替変動の予測困難性が高まっています。為替相場は多くの要因により影響を受けるため、その動きを予測することは非常に難しいです。特に地政学的リスクや世界経済の不確実性が高まると、為替相場が急激に変動することがあります。
このような予測困難な状況において、輸入企業は為替リスクに対する十分な備えが必要です。具体的な対策として、代替調達先の検討が有効です。円安が進行して輸入コストが増加する場合、国内外の代替調達先を検討することで、輸入依存度を下げ、為替リスクを軽減できます。
財務戦略の強化も重要です。円安進行時の輸入コスト増加に備え、十分な流動性を確保することが必要です。これにより資金繰りの悪化を防ぎ、急激な円安に対応するための柔軟性が向上します。流動性の確保が基本です。
想定外の大幅円安で中小を中心に多くの企業の為替前提が崩れ、リスク回避策の再構築が迫られているのが現状です。
参考)アングル:輸入企業の為替管理に狂い、迫られるリスク回避再構築…
2026年の為替見通しについて、日米金利差の縮小が予想される中でも、トランプ関税の影響で1ドル=150円台の攻防が継続する可能性が指摘されています。一部の専門家は、欧州の主要通貨に対するクロス円レートの推移から、ドル円についても昨年のドルの高値となる161円台を意識した展開に移行する可能性を示唆しています。
参考)トランプ関税が起こす「円安ドル高」トレンド ドル円の161円…
トランプ関税が円安ドル高に作用する理由として、以下の4つの要因が挙げられます。①対米貿易黒字の削減は直接的には輸出企業のドル売りニーズの低下を通じて円安要因に、②日本の防衛予算拡大、③消費税を含む非関税障壁の撤廃、④日本経済への下押し圧力です。
日米当局による「レートチェック」の実施も注目されています。2026年1月には、過度な円安を防ぐために日米当局が連携し、為替介入の前段階となるレートチェックを行い、レートチェックだけで7円もの円高が進行しました。口先介入なしのレートチェックは異例です。
参考)日米当局のレートチェックで急激な円高が進行。だが為替水準で株…
通関業務従事者にとって、今後も換算レートの週次変動を注視し、申告タイミングを最適化する重要性が高まっています。為替リスク管理と通関実務の両面からアプローチすることで、輸入コスト削減と業務の効率化を実現できるでしょう。為替動向の定期チェックを習慣にすることをおすすめします。
税関公式サイトの修正申告・更正の請求に関する詳細ガイド
申告誤りがあった場合の具体的な手続き方法や必要書類について、税関公式サイトで確認できます。
JETROによる関税申告の修正・補正に関する解説
修正申告、更正の請求、補正の違いについて、実務上の観点から詳しく説明されています。