基準適合の申告書を提出しても、検査で2週間止まることがあります。
非関税障壁(Non-Tariff Barriers: NTBs)とは、関税以外の手段で輸入品やサービスの流通を制限または抑制する政策的措置の総称です。関税には明確な税率(例:チーズ22.4~40%)が設定されていますが、非関税障壁はルールや基準、手続きの煩雑さによって輸入の障壁となります。
具体的には、輸入に対して数量制限・課徴金を課す、輸入時に煩雑な手続きや検査を要求することなどが該当します。また、国内生産に対して助成金などの保護を与えることも非関税障壁の一種です。世界的に貿易協定により関税が低下する一方で、非関税障壁は増加傾向にあり、現在では関税よりも大きな貿易への影響を持つ可能性が指摘されています。
参考)http://thescipub.com/pdf/10.3844/ajassp.2009.1321.1326
通関業務従事者にとって非関税障壁は、「お金」ではなく「制度・ルール・書類不備」によって輸出入が止まるケースとして日常的に直面する課題です。これが業務です。YouTube
非関税障壁には多様な形態が存在します。まず**輸入数量制限(クォータ制度)**では、一定期間に輸入できる数量を制限します。日本のコメ輸入における「ミニマム・アクセス」制度が典型例で、外国産米を年間一定量までに制限しています。
参考)【輸出入担当必読】非関税障壁とは?2025年の最新動向を解説…
次に**許可制度(ライセンス制)**があり、政府の許可がないと輸入できない仕組みです。輸入手続きを複雑にすることで事実上制限するケースも含まれます。日本でも特定商品の輸入には政府の許可が必要で、許可の手続きや基準によって輸入が制限されることがあります。
参考)非関税障壁(Non-tariff barriers)開発とは…
さらに技術基準・規格要求として、国際基準と異なる独自仕様を求めるケースがあります。つまり差別化です。
日本語での成分、原産国、製造日などの細かい表示義務や、自動車の排ガス基準・安全基準が国内基準と異なる例が該当します。米国の2024年版外国貿易障壁報告書では、日本が米国の自動車安全基準を日本と同等レベルとみなしていないことが非関税障壁として指摘されています。
参考)トランプ大統領が仕掛けた関税の網から日本はいかにして逃れるか…
検査・認証手続きも重要な非関税障壁です。輸入される製品が一定の基準を満たしていることを確認するための検査や認証に、追加の費用や時間がかかります。他国で安全確認済みの製品でも、同様の検査を義務付けられることがあります。これは負担増です。
非関税障壁は通関業務に直接的な影響を及ぼします。最も顕著なのは通関手続きの遅延です。過剰な書類要求(成分証明、製造履歴、原産地証明など)や税関審査が不透明かつ非効率で、通関に時間がかかるケースが報告されています。一部のアフリカ諸国の港湾では遅延が深刻な問題となっており、実務負担を増加させ公平な競争を阻害しています。
追加コストの発生も見逃せません。検査や認証手続きには費用がかかり、関税がゼロでも通関費用が高額になる事例があります。食品輸入では、検疫所への輸入届出と審査が必須で、場合によっては検査が実施されます。検査費用は輸入者負担となり、コスト増加の要因です。
参考)関税ゼロでも通関費用がまさかの30%!!? 通関でまさかの「…
書類不備による輸入停止リスクも重大です。FDA登録、CEマーク、ラベル表示などの要件を満たさない場合、通関が止まります。放射性同位元素を含む部品の輸入時には、放射性同位元素等規制法に基づく手続きが必要で、これを怠ると違反となる事例が報告されています。
参考)https://www.meti.go.jp/policy/external_economy/trade_control/01_seido/02_jigo/download/20220412jigoshinsajiannokeikoujirei.pdf
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輸入ライセンスの取得困難さは、日系企業の多くが「ビジネス阻害」要因として挙げています。判断基準が明確でない不透明な許可制度により、企業にとっては貿易機会が奪われたり、追加的なコストや時間が発生します。影響は深刻ですね。
参考)日系企業の多くが「ビジネス阻害」要因とする輸入ライセンス制度…
非関税障壁には、環境保護や経済安全保障といった政策目的から設けられる新しいタイプの障壁が登場しています。気候変動対策型規制として、製造工程におけるCO₂排出量に応じて追加コストを課す制度があります。EUの炭素国境調整メカニズム(CBAM)が代表例で、2026年以降本格適用されると、排出量の多い製品の輸入コストが大幅に増加する可能性があります。
経済安全保障型規制も拡大傾向です。軍事転用可能な技術・製品の輸出や技術提供を許可制で管理する規制で、日本の外為法や米国の輸出管理規則(EAR)が該当します。通関業者に対し、リスト規制対象貨物の通関依頼を行う際には、適切に指示(少額特例適用の有無など)をすることが求められ、税関の輸出許可後も継続的な管理が必要です。
参考)https://www.meti.go.jp/policy/anpo/seminer/shiryo/anpo_junshu_kaisei_2022.pdf
デジタル貿易障壁も注目されています。米国通商代表部(USTR)の2025年外国貿易障壁報告書では、各国のデジタル関連規制が問題視されており、データローカライゼーション要求やクロスボーダーデータ移転制限などが貿易障壁となっています。通関実務においても、電子データの取り扱いに関する規制が今後増える見込みです。
参考)デジタル貿易障壁や非関税障壁を指摘、米USTR2025年外国…
補助金政策も非関税障壁として機能します。トランプ大統領は2025年4月、非関税障壁の例として「輸出補助金およびその他の政府補助金」「関税および輸出補助金として機能する消費税」を挙げています。国内産業への補助金や税制優遇措置は、輸入品の競争力を相対的に低下させ、実質的な輸入障壁となります。
トランプ政権は日本に対し、非関税障壁を含めると46%の関税を課しているとして、24%の相互関税を発動しました。独自視点が必要ですね。
参考)トランプ相互関税に日本は反論すべきだが、「コメ政策の根本的見…
通関業務で非関税障壁による遅延や追加コストを回避するには、事前の情報収集と確認が不可欠です。輸入前に規制内容を把握しておくことで、書類不備や基準未達によるトラブルを防げます。
具体的な対策として、JETROや商工会議所への相談が有効です。JETROは各国の輸入規制に関する情報を提供しており、事前相談により必要な手続きや書類を確認できます。食品等の輸入では、検疫所が輸入手続きを含め各窓口で輸入相談を受け付けています。
参考)食品等輸入手続について|厚生労働省
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事前の基準適合確認も重要です。輸入届出を行わない食品等でも、一定の要件を満たす検査結果は受け入れられるため、輸出国で実施した検査結果を活用することでコスト削減が可能です。ただし、輸送途上で変化するおそれのある項目(細菌、カビ毒等)は除外されます。
適切な通関業者の選定も対策の一つです。リスト規制対象貨物の通関依頼を行う際は、通関業者に適切に指示することが求められます。経験豊富な通関業者は、各国の非関税障壁に関する知識を持ち、スムーズな通関をサポートします。
デジタルツールの活用も効率化につながります。輸出入申告官署の自由化により、電子申告が進展しています。電子データでの申告や事前登録により、手続きの迅速化が図れます。活用しましょう。
参考)輸出入申告官署の自由化とは?対象業務やメリット・デメリットを…
近年、非関税障壁は複雑化・多様化しており、通関業務従事者には最新情報の継続的な収集と柔軟な対応が求められています。事前準備と専門機関の活用により、通関トラブルを最小限に抑えることが可能です。