包括担保とは関税納期限延長に使う据置担保の仕組みと手続き

包括担保とは、関税の納期限延長制度で使われる据置型の担保のことです。輸入者が毎回担保を出さずに済む便利な制度ですが、担保不足で輸入許可が止まるリスクも。正しく理解していますか?

包括担保とは何か:関税の納期限延長で使う据置型担保の仕組み

担保は「1回ごとに提供するもの」だと思っていませんか?実は包括担保を使えば、担保を据え置いたまま何度でも輸入通関に使い回せるので、毎回の申請手続きが丸ごと不要になります。


📋 この記事の3ポイント
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包括担保=据え置き型の担保

一定期間・一定限度額の範囲で繰り返し使える担保。輸入のたびに担保を出し入れする手間が省けます。

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関税等の支払いを最大3ヶ月猶予できる

包括納期限延長制度と組み合わせることで、特定月の関税・消費税をまとめて3ヶ月後に納付できます。

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担保不足になると輸入許可が止まる

担保残高が不足すると、その時点で輸入申告中の貨物が許可されなくなります。申告前の残高確認が必須です。


包括担保とは:関税の納期限延長制度における担保の基本区分

輸入通関において「担保」という言葉は頻繁に登場しますが、その種類を正確に把握している輸入者は意外に多くありません。税関の手続きで使われる担保は、大きく「据置担保」と「個別担保」の2種類に分けられます。


据置担保とは、一定の期間内・かつ一定の限度額内において、複数の輸入申告に繰り返し使用できる担保のことです(税関東京用語集2025年版)。これに対して個別担保は、特定の輸入申告1件のみに対応する担保で、その申告以外には流用できません。


包括担保とは、この「据置担保」を使って行う包括納期限延長制度のために提供する担保のことを指します。つまり「包括担保=据置担保を活用した延納のための担保」と理解するのが正確です。一括担保(全国2官署以上で使える据置担保)も包括担保の一形態です。


関税法第9条の2に基づき、輸入者は税額相当の担保を税関長に提供することで、関税・消費税・地方消費税の納期限を最長3ヶ月延長できます。包括担保はその際の担保として機能します。


税関カスタムスアンサー1302:関税等の納期限延長制度の概要(個別・包括・特例の3方式を公式解説)


包括担保が使われる包括延長方式の仕組みと具体的な流れ

包括担保の使い方を理解するには、まず包括延長方式の流れを把握することが大切です。これが包括担保の中心的な使途だからです。


包括延長方式とは、「特定月」(例:5月)に行われるすべての輸入申告をまとめて延納処理する方法です。具体的には、特定月の前月末日(例:4月30日)までに、関税(消費税及び地方消費税兼用)納期限延長(包括)申請書を税関に提出し、あわせて担保を提供します。認められると、5月中に許可された輸入貨物の関税等は、すべて「8月31日」まで(5月末の翌日から3ヶ月以内)に納付すればよいことになります。


つまり仕組みです。


たとえば5月1日・5月15日・5月28日に3回輸入許可を受けた場合でも、納期限がバラバラにならず、3件分まとめて8月31日に一括で納付できます。毎回の申告ごとに担保を出し入れする必要もありません。これが包括担保(据置担保)ならではの実務上のメリットです。


なお、延納期間は最長3ヶ月ですが、制度を最大限に活用するためには4ヶ月分の関税等相当額を担保として用意することが推奨されています(日本通関業連合会)。なぜかというと、3ヶ月後の納付によって担保が回復するまでの間も継続して輸入申告を行う必要があるためです。


一般社団法人日本通関業連合会:包括納期限延長制度のメリット(制度の申請手順・担保額の目安・注意点を掲載)


包括担保として提供できる種類と書類:保証書・国債・金銭など

包括担保として税関に提供できる担保の種類は、関税法第9条の6に限定列挙されています。不動産業者がよく使う「不動産担保」は、実は通常の包括延長では主流ではありません。現場で最も多く使われているのは銀行や損害保険会社による「保証書」または「法令保証証券」です。


提供できる担保の種類は以下のとおりです。



  • 🏦 保証人の保証(銀行・損害保険会社等による保証書または法令保証証券)→ 実務で最も一般的

  • 📜 国債・地方債(供託書の正本、または登録済通知書)

  • 📋 社債その他有価証券(供託書の正本、または振替株式等担保申出書)

  • 🏢 土地・建物・財団等登記事項証明書または登記簿謄本)

  • 💴 金銭法務局への供託書の正本)


保証人の保証が実務で主流な理由は、申請や解除の手続きが比較的シンプルなためです。銀行の保証書を使う場合は、保証期間が「月の初日から月の末日」となるよう設定する必要があります。保証期間は任意で設定できますが、保証書には12ヶ月を限度とした自動更新条項を付けることも可能で、年1回の更新手続きを省略できます。


これは使えそうです。


なお、保証人は原則として銀行法による銀行・信用金庫・生命保険会社・損害保険会社等に限定されています。個人が保証人になることは原則として認められていないため、注意が必要です。


税関カスタムスアンサー1303:包括納期限延長の申請と担保提供手続(提供できる担保の種類・書類・全国一元化の説明あり)


包括担保の全国一元化:1か所に提供するだけで全国の税関で使える

複数の港(例:東京港と大阪港)で輸入通関を行う企業にとって、包括担保の「全国一元化制度」は見逃せない仕組みです。これを知らないまま運用しているケースも少なくありません。


全国一元化とは、全国のいずれか1つの税関官署に包括担保を提供するだけで、原則として全国すべての税関官署で納期限延長制度が利用できるという制度です(関税法基本通達9の11-5・9の11-6)。つまり、東京・名古屋・大阪・神戸・横浜それぞれに個別の担保を用意する必要がありません。


一括担保(あて先:全国の税関官署の長)として登録された据置担保は、海上貨物を扱うSEA-NACCS航空貨物を扱うAIR-NACCSの両方で利用することも可能です。2つのシステムのホストコンピュータはリンクしていませんが、1つの担保を海上・航空でそれぞれの使用額に分けて充当できます。


これは使い勝手がいいですね。


手続き上、申請書は「関税(消費税及び地方消費税兼用)納期限延長(包括)申請書(一括)」(税関様式C第1005号)を2部、担保提供書(税関様式C第1090号)を2部、保証書(据置担保用)(税関様式C第1105号または第1106号)とあわせて提出します。受理税関の本関が受け付け、全国の官署への共有が行われます。


東京税関:担保関連用語集2025年版(据置担保・個別担保・一括担保など用語を網羅的に解説)


担保不足で輸入許可が止まる:包括担保の残高管理と見落としがちなリスク

包括担保を使う上で最も気をつけるべきポイントは、担保残高の管理です。担保不足は思った以上に早く発生します。


輸入申告を行うたびに、その関税等相当額が担保残高から「取り崩し」られます。そして、担保残高が不足した時点で、その輸入申告の許可が出ません。輸入許可が遅れると、貨物の引き取りが遅延し、倉庫保管料(デマレージやストレージ)の追加費用が発生します。これは痛いですね。


担保残高は、関税等を実際に納付することによって回復します。Pay-easy(ペイジー)のインターネットバンキングで納付した場合は即時回復しますが、銀行・郵便局の窓口経由で納付した場合は、税関が領収済通知書を受け取るまで約1週間かかります。この違いを知らずに窓口納付をすると、担保回復の遅れで連続した輸入申告が詰まるリスクがあります。


担保不足のリスクを避けるための対策として、日本通関業連合会は4ヶ月分の関税等相当額を担保として準備することを推奨しています。たとえば月次の輸入関税額が500万円の企業なら、担保として少なくとも2,000万円程度を用意することが目安になります。また、担保の「積み増し(増担保)」申請もいつでも可能なので、輸入量が増えた時期には早めの対応が有効です。


延滞税のリスクもあります。延納中に万が一納期限を過ぎると、延滞税が課されます。延滞税の率は年14.6%(ただし一定条件下では軽減措置あり)と相応に高いため、納付書の確認と期限管理は慎重に行うことが原則です。


通関業者に包括延納を委任している場合でも、担保残高の管理は輸入者自身が最終的な責任を持ちます。通関業者との連携を密に保つことが大切です。


ジェトロ:関税・消費税の延納手続き(担保の提供義務・延滞税の起算日など実務情報を掲載)