通関業者が「犯則嫌疑者」という言葉を目にする機会は少ないかもしれませんが、実は日常業務のすぐそばに存在するリスクです。 関税法や国税通則法における「犯則嫌疑者」の定義を正確に理解しておくことは、通関士・通関業者として自分自身と顧客を守る最低限の知識です。 okada-taxlaw(https://okada-taxlaw.jp/zeikin-zeimu/column-021/)

「犯則嫌疑者」とは、関税法や国税通則法などの犯則事件(密輸・脱税・虚偽申告等)を犯した疑いをかけられた者のことを指します。 国税犯則取締法(現在は国税通則法に統合)第131条では、収税官吏(税関職員を含む)は「犯則嫌疑者若しくは参考人」に対して出頭を求め、質問・検査・領置を行う権限を持つと定められています。 laws.e-gov.go(https://laws.e-gov.go.jp/law/133AC0000000067)
正式な逮捕状がなくても調査を受ける点が、通常の刑事手続きと大きく異なります。つまり行政調査の段階です。
「犯則嫌疑者」と「参考人」は区別されており、前者は違反行為の直接の疑いがある者、後者はその周辺にいて事情を知る者です。 通関業者の場合、依頼人の申告内容に不正が発覚すると、依頼を受けた通関士本人が「知っていたのではないか」という観点から犯則嫌疑者として扱われるケースがあります。 これは意外に思われる方も多いでしょう。 zsk.ne(http://www.zsk.ne.jp/zeikei668/ronbun.html)
根拠条文は国税通則法131条・132条、および関税法108条の4以降の罰条です。 関税法の適用においては、密輸・関税ほ脱・無許可輸出入犯など複数の類型があります。法令の全体像を把握しておくことが原則です。 customs.go(https://www.customs.go.jp/shiryo/batsujo.htm)
参考として、財務省・税関による関税法の罰条一覧は法的根拠の確認に役立ちます。
関税法の罰条(財務省・税関)|密輸・ほ脱・虚偽申告等の法定刑を網羅した公式資料
犯則調査には「任意調査」と「強制調査(臨検・捜索・差押え)」の2種類があります。 任意調査では、税関職員が犯則嫌疑者に質問し、帳簿・書類・物件等を検査する権限を持ちます。強制調査は裁判官が発する許可状に基づいて実施されます。 datsuzei-bengo(https://www.datsuzei-bengo.com/flow/inspection-survey/)
事前の通告は一切ありません。
ある日突然、税関職員が事業所・倉庫・自宅に一斉に訪れるのが強制調査のパターンです。 証拠隠滅を防ぐために複数拠点へ同時に臨検が行われることもあり、取引先や荷主にまで調査が及ぶ場合があります。通関業者にとっては業務停止に直結するリスクです。 datsuzei-bengo(https://www.datsuzei-bengo.com/flow/inspection-survey/)
任意調査と強制調査の主な違いを以下に整理します。
| 区分 | 根拠 | 令状 | 対象者の拒否 |
|---|---|---|---|
| 任意調査 | 国税通則法131条 | 不要 | 理論上は可能(実態は難しい) |
| 強制調査 | 国税通則法132条 | 裁判官の許可状が必要 | 不可(拒否は罪になる) |
任意調査であっても、実際には出頭を断りにくいプレッシャーがかかります。 「任意だから断ってもいい」という認識でいると、後に強制調査への切り替えを招くリスクがあります。対応方法を事前に弁護士に確認しておくことが、リスク回避の有効な手段です。 zsk.ne(http://www.zsk.ne.jp/zeikei656/ronbun.html)
黙秘権は通関業者にも認められる権利です。
通関業者がこの局面で知っておくべき点は次のとおりです。
「税関に呼ばれたら正直に話せば問題ない」という感覚は危険です。話した内容が後に告発の根拠になるケースがあります。 黙秘権の存在と弁護士への即時連絡、この2点だけ覚えておけばOKです。 okada-taxlaw(https://okada-taxlaw.jp/zeikin-zeimu/column-021/)
犯則嫌疑者の調査が終わると、最終的に「通告処分」または「告発(刑事手続き)」のいずれかに進みます。 通告処分とは、税関長が行政処分として罰金相当額の納付を通告するもので、嫌疑者が一定期間内にこれを履行すれば刑事訴追を免れます。 customs.go(https://www.customs.go.jp/shiryo/batsujo.htm)
通告処分は「前科がつかない」点が大きなポイントです。
通告処分の対象となるのは、情状が罰金相当と判断された場合に限られます。ただし以下の4つの条件に一つでも当てはまる場合は、通告処分を経ずに直ちに告発されます。 customs.go(https://www.customs.go.jp/shiryo/batsujo.htm)
告発された場合は検察庁に送致され、起訴されれば刑事裁判に発展します。関税ほ脱犯なら「10年以下の懲役若しくは1,000万円以下の罰金またはその併科」が法定刑です。 関税法111条の無許可輸出入・虚偽申告犯でも「5年以下の懲役若しくは1,000万円以下の罰金」が科されます。 customs.go(https://www.customs.go.jp/shiryo/batsujo.htm)
通関業者としては、通告処分で済んだとしても通関業の許可取り消し事由に該当しうる点を見落とさないようにしましょう。 欠格事由に当たれば許可自体が消滅し、業務継続が不可能になります。これは通告処分で前科がつかなかった場合でも同様に適用されます。 kumashikaku.web.fc2(http://kumashikaku.web.fc2.com/1gyounokyokashinokakuninn.pdf)
処分の流れを整理した参考資料として、税理士法人のコラムが詳しく解説しています。
国税の犯則調査の手続と犯則事件の処分(岡田税務・法務事務所)|告発・通告処分の違いと流れをわかりやすく解説
犯則嫌疑者になるリスクは、密輸や脱税を意図した悪質な業者だけの話ではありません。依頼人から受けた申告内容の確認が甘かった場合や、過去の申告書類の管理が不十分だった場合にも調査対象になりえます。 「知らなかった」「依頼人が言ったとおりにしただけ」という言い訳は、調査の入口では通用しないのが実態です。 okada-taxlaw(https://okada-taxlaw.jp/zeikin-zeimu/column-021/)
これは多くの通関業者が想定していないリスクです。
実務上のリスク管理として、以下の点を定期的にチェックする習慣が有効です。
関税法117条の両罰規定では、法人の従業者が違反行為をした場合に法人にも罰金が科されます。 個人の通関士が注意するだけでなく、会社として組織的なリスク管理体制を構築することが、犯則嫌疑者リスクを下げる最も確実な方法です。 customs.go(https://www.customs.go.jp/shiryo/batsujo.htm)
通関業法上の欠格事由(許可の取り消し)との関係は、通関業の許可申請に関する情報に詳しく記載されています。
通関業許可申請について(つなぐ行政書士事務所)|欠格事由・許可取消事由の具体的な内容を解説