技術基準適合証明番号を検索すれば輸入可否はすぐわかると思っていたら、実は番号が存在しないケースで通関が止まり、荷主への損害賠償リスクが生じることがあります。
技術基準適合とは、特定の法令が定める技術的な基準を製品が満たしていることを、第三者機関または製造者が証明した状態を指します。日本の通関実務でとくに関わりが深い法令としては、電波法に基づく「技術基準適合証明(いわゆる技適)」、電気用品安全法(PSE)、消費生活用製品安全法(PSC)などが挙げられます。これらはすべて、輸入時の税関審査において根拠書類として提示が求められる可能性があります。
重要なのは、法令によって管轄省庁・認証機関・データベースが完全に異なるという点です。電波法の技適は総務省が管轄し、総務省の技術基準適合証明等のデータベースで番号を検索できます。一方でPSEはJET(日本電気安全環境研究所)やその他登録検査機関が担当し、確認先がそれぞれ異なります。つまり、「技術基準適合を検索する」といっても、一元化されたシステムは存在しません。これが基本です。
通関業従事者がこの検索を行う主な理由は、輸入申告時に提出された書類の真正性を確認するためです。荷主から提出された技術基準適合証明書や適合マークの表示が、本当に有効な番号に紐づいているかを確認しないままに申告を進めると、虚偽申告の連帯リスクを負うことになります。知らなかったでは済まない世界です。
また、並行輸入品や個人輸入代行品では、海外仕様の製品に日本向け適合証明が添付されていないケースが頻繁にあります。こうした品目は水際で差し止められるだけでなく、輸入者への指導・罰則につながる場合もあります。通関業者として適切に関与するためにも、検索スキルの精度を上げることが業務品質に直結します。
総務省 技術基準適合証明等のデータベース(技術基準適合証明番号の検索はここから)
検索に使うデータベースは、対象法令によって選択を誤ると的外れな照合になります。まずは法令を特定してから検索先を決めることが原則です。
電波法に基づく技術基準適合証明・工事設計認証の検索は、総務省の「技術基準適合証明等データベース」(通称:技適DB)で行います。このDBでは「証明番号」「認証番号」「申込者名」「機器の種別」などで絞り込み検索が可能です。証明番号は「002-XXXXXX」「T18XXXXXXX」などの形式が多く、機器に貼付されたマーク(技適マーク:⑦マーク)の隣に記載されています。番号が一致しても、有効期限や機器の使用条件を確認することが条件です。
電気用品安全法(PSE)の場合は、「PSEマーク(特定電気用品は◇PSE、非特定は〇PSE)」が製品に表示されていることを目視確認するのが基本手順ですが、登録検査機関のデータベースや製造・輸入事業者の届出番号を経済産業省の「電気用品安全法 製品安全情報検索システム(SAFE-Lite)」で確認することも可能です。これは使えそうです。
経済産業省 製品安全(PSE・PSC関連の制度説明・検索システムへのリンクあり)
注意が必要なのが、適合番号の形式を誤認するケースです。技適番号の「002」は旧認証機関コードであり、「T」から始まる番号はTELEC(一般財団法人テレコムエンジニアリングセンター)の認証を意味します。機関コードを知っておくと、不正な番号かどうかのアタリがつけやすくなります。形式が既存のパターンに合わない番号が記載されていた場合は、偽造・改ざんを疑って然るべきです。
また、輸入品に表示されている外国の認証マーク(CE、FCC IDなど)と日本の技術基準適合は別物です。FCCやCEがあっても技適がなければ、日本国内での無線機器の使用は原則として電波法違反になります。この点を荷主に正確に伝えられるかどうかが、通関業者の付加価値につながります。
現場で使える検索フローを整理します。手順を型化しておくことで、担当者が変わっても品質が落ちません。
ステップ1:対象法令の特定
輸入品のHSコード・品名から、どの技術基準が適用されるかを判断します。無線通信機能を持つ機器は電波法、電源プラグを持つ機器はPSE、特定の圧力容器・乗具はPSCと大まかに整理できます。複数の法令が重なる製品(例:充電機能付きBluetooth機器)では、それぞれ別々に確認が必要です。
ステップ2:正規データベースの選択
上記の通り、法令ごとに参照先が異なります。誤ったDBで「該当なし」と判断するのは最も危険なミスです。「検索したが見つからなかった」と記録する前に、正しいDBを選んでいるかを必ずダブルチェックします。これが基本です。
ステップ3:番号照合
書類に記載された証明番号・認証番号をDBに入力し、機器名・申請者・有効期間が一致するかを確認します。部分一致や類似番号での誤認を防ぐため、全桁一致を確認することが必須です。
ステップ4:証明書現物との照合
DB上の情報と、荷主から受け取った証明書の現物(または電子ファイル)を照合します。機器の型番・色・仕様が一致しているかも確認します。証明書の発行日・有効期限が輸入申告日時点で有効かどうかも確認ポイントです。
この4ステップのうち、ステップ1の法令特定とステップ2のDB選択を誤るケースが実務上最も多いとされています。確認フローをチェックリスト化してチームで共有することが、ミス防止の現実的な対策になります。
実務経験者が見落としやすいポイントを3つに絞って解説します。意外ですね。
落とし穴①:「技適マークがある=問題なし」という思い込み
技適マークは製品に印刷・刻印されていますが、マーク自体は簡単に模倣できます。輸入品、特に中国・東南アジア発の格安電子機器では、実際には認証を取得していないにもかかわらず技適マークに似たデザインを印刷しているケースが確認されています。2018年頃から税関・総務省の連携強化が進み、摘発件数も増加傾向にあります。マークの有無だけで判断せず、必ずDB照合を行うことが対処法です。
落とし穴②:旧規格・旧認証番号の存在
技術基準は定期的に改定されます。旧規格で取得した認証番号がDBから削除されたり、有効期間が終了したりしているケースがあります。とくに製品ライフサイクルが長い機器では、数年前に取得した認証が既に失効していることも珍しくありません。古い型番の機器を輸入する場合は、認証の有効性を現時点で再確認することが必要です。これには期限があります。
落とし穴③:一部モデルのみ認証取得という「型番の罠」
同じブランド・同じシリーズ名でも、カラー違い・メモリ容量違い・周波数帯域違いで別の型番が設定されており、認証取得モデルと未取得モデルが混在していることがあります。たとえば、Wi-Fiルーターの「モデルA(2.4GHz対応)」は技適取得済みでも「モデルA-5G(5GHz追加対応)」は別認証が必要、というケースです。荷主から受け取ったインボイスの型番と認証書の型番を一字一句比較することが原則です。
国税庁 輸入貨物に係る消費税・関税に関する説明(通関業務の背景知識として)
ここからは、検索・照合という「確認作業」を超えた話をします。通関業者が荷主に対して「適合証明の専門アドバイザー」として機能できると、競合他社との差別化につながります。これは使えそうです。
多くの荷主、特に新規輸入者は「技術基準適合という概念自体を知らない」ことがほとんどです。海外サプライヤーから購入した電子機器が日本で使えないケース、あるいは通関時に差し止められるケースを事前に防ぐためのアドバイスができる通関業者は、単なる手続き代行業者よりもはるかに高い信頼を得られます。
具体的には、輸入前の段階で荷主に対して「この品目には技術基準適合の確認が必要です。事前に証明書をサプライヤーへ依頼してください」と案内することです。輸入申告の段階でNGが出ると、保税蔵置料・再輸出コスト・荷主への損害補償リスクなど複数の問題が連鎖します。事前案内はそのすべてを回避できる行動です。1つ覚えておけばOKです。
また、サプライヤーへの証明書要求のひな形文(英語)を用意しておくサービスを提供している通関業者も存在します。荷主が「どう依頼すればいいか分からない」という壁を取り除くだけで、スムーズな輸入フローが実現します。こうした付加価値サービスは、契約更新率や紹介受注率にも影響します。
さらに、継続的な輸入取引がある荷主については、取り扱い品目ごとに「技術基準適合確認チェックシート」を作成して渡すことも有効です。毎回同じ説明をする手間が省け、荷主の理解も深まります。通関業者側の工数削減と荷主満足度の向上が同時に達成できます。いいことですね。
なお、こうした書類管理や確認フローのデジタル化には、通関業務向けのクラウドシステム(例:NACCSとの連携機能を持つ業務管理ツール)を活用する方法があります。手作業のチェックリストと比べて記録の抜け漏れが減り、監査対応も容易になります。NACCS(輸出入・港湾関連情報処理センター)の関連サービスや民間の通関管理クラウドを検討する際は、技術基準適合書類の保管・検索機能が含まれているかを確認することをおすすめします。
NACCS(輸出入・港湾関連情報処理センター)公式サイト(通関業務効率化の参考として)