技適マークなし違法リスクと通関業務での正しい対応

技適マークがない無線機器の輸入・使用は違法になるのか?通関業従事者が知っておくべき電波法の例外規定や手続き、罰則のリスクを詳しく解説します。あなたは正しく対応できていますか?

技適マークなしは違法?通関業従事者が知るべき電波法の全知識

技適マークのない機器を通関させると、あなた自身が電波法違反の幇助に問われる場合があります。


📋 この記事の3つのポイント
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技適マークなしは原則として電波法違反

日本国内で技適マークのない無線機器を使用することは、電波法第4条に違反します。ただし、例外規定が複数存在するため、通関業務では正確な知識が不可欠です。

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通関業従事者が見落としがちな例外規定

「技術基準適合証明の特例」や「180日ルール」など、合法的に輸入・使用できるケースがあります。この判断を誤ると、通関業者としての信用問題に直結します。

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違反時の罰則は最大1年以下の懲役または100万円以下の罰金

電波法違反は刑事罰の対象です。通関業者として依頼人の違法輸入を見逃すリスクと、適切な対応フローを把握しておくことが重要です。


技適マークとは何か:通関業務で必ず確認すべき法的根拠

技適マークとは、「技術基準適合証明」または「工事設計認証」を取得した無線機器に付けられる国の認証マークです。電波法第38条の2の2および第38条の24に基づき、国内で使用する無線機器はこのマークの取得が義務付けられています。


マークは2種類あります。総務省が定める電気通信端末機器のための「技術基準適合認定マーク(💻のような円形の記号)」と、電波法に基づく「技術基準適合証明マーク(Tの字を丸で囲ったもの)」です。この2つが揃って、いわゆる「技適マーク」として一般に認識されます。


通関業務においてこの知識が重要なのは、輸入申告時の品目確認の段階で技適マークの有無が通関可否の判断基準の一つになりうるからです。つまり技適の確認は必須です。


スマートフォン、タブレット、Wi-Fiルーター、Bluetooth機器、ドローン、特定の産業用センサーなど、電波を発する可能性のある機器はすべて確認対象と考えてください。「充電器だから大丈夫」という判断は危険で、充電器でもワイヤレス充電(Qi規格など)に対応していれば無線機能があるとみなされるケースがあります。


技適マークは通常、機器本体の裏面や内部のシステム設定画面(スマートフォンの「設定→一般→情報」など)に表示されています。輸入品の場合、日本向けモデルでなければ技適マークが存在しないことがほとんどです。これが問題の出発点です。


電波法に基づく技適マークの詳細は総務省の公式ページで確認できます。


総務省 電波利用ホームページ:技術基準適合証明等を受けた機器の検索


技適マークなしが違法になる具体的なケース:電波法第4条の解釈

電波法第4条は「無線局を開設するには免許を受けなければならない」と定めています。技適マークがない機器で電波を発することは、この「無線局の不法開設」に該当します。違反した場合、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されます。これは厳しいですね。


実際に問題になりやすいのは、海外通販(AliExpress、Amazon.com、eBayなど)で購入された機器を個人輸入し、そのまま国内で使用するケースです。総務省によれば、海外で販売されている製品の多くは日本の技術基準を満たしておらず、技適マークが付いていない製品が大多数を占めています。


通関業従事者として特に注意が必要なのは「業者として輸入された大量の無線機器」です。個人輸入と異なり、販売目的または業務使用を前提とした輸入品は、税関での取り扱いが異なります。電気通信事業法や電波法の観点から、技適マークのない機器を業として輸入・販売することは、より厳しい制裁を受けうる行為と見なされます。


たとえばドローンの場合、2022年以降の改正航空法との兼ね合いもあり、技適マークなしのドローンは電波法違反と航空法違反の両方に問われる可能性があります。2つの法律に同時違反するケースもあります。


通関業者が「知らなかった」という理由で責任を免れることはできません。輸入申告書の内容確認と、必要に応じた依頼人への確認・指摘が通関業者の専門的義務として求められます。


技適マークなしでも合法になる例外規定:180日ルールと特例措置

技適マークがなければ必ず違法というわけではありません。電波法には複数の例外規定があります。ここが最も重要なポイントです。


まず知っておくべきは「180日ルール(電波法第100条の5)」です。外国から持ち込まれた無線機器であっても、日本に入国してから180日以内であれば、その機器を使用することが認められています。これは訪日外国人や短期出張者を想定した規定で、パスポートと入国スタンプが証明手段になります。


ただしこの180日ルールには注意点があります。「使用を目的とした持ち込み」に限られており、転売や第三者への貸与は認められません。通関業従事者が輸入代行する場合、依頼人がこのルールを誤解していることが多いため、確認が必要です。


次に、「技術基準適合証明の特例(開設の特例)」があります。電波法第4条ただし書きに基づき、試験、研究、調査のために使用する無線局については、総務大臣の認定を受けた場合に限り、技適マークなしでも合法的に使用できます。産業用機器のテスト輸入などで適用されることがあります。


2019年の電波法改正により、「技適未取得機器の特例制度」が新設されました。これは日本国内で技適を取得する前の段階であっても、総務省に届け出を行えば180日間、技適マークのない機器を試験的に使用できる制度です。IoTビジネスや新製品開発を想定した制度で、スタートアップや製造業者のテスト輸入に関わる通関業務で遭遇する可能性があります。


この特例制度の届け出には、①使用する機器の情報、②使用目的、③使用期間・場所、④技適取得の見通しを記載した申請書類が必要です。届け出先は総務省の電波利用電子申請・届出システムLiteを通じて行います。これが条件です。


総務省 電波利用ホームページ:技適未取得機器を用いた実験等の特例制度


通関業従事者が実務で直面する技適マーク確認の具体的な手順

実務レベルでの確認手順を整理しておきましょう。通関業者として輸入申告を受け付けた際、以下のフローで技適マークの有無を確認することが推奨されます。


ステップ1:品目の性質確認
まず輸入品が「電波を発する可能性のある機器」かどうかを判断します。HSコード(関税率表)の85類(電気機器・電子機器)に分類される品目は特に注意が必要です。具体的には、スマートフォン(HS8517.12)、Wi-Fi機器(HS8517.62)、ドローン(HS8806)、ウェアラブル端末(HS8543.70)などが該当します。


ステップ2:仕向け地と販売対象の確認
日本市場向けに正規に販売されている製品か、それとも並行輸入品・海外向けモデルかを確認します。並行輸入品であっても技適マークが付いている場合(例:日本でも販売されているグローバルモデル)は問題ありませんが、そうでない場合は要確認です。


ステップ3:技適マークの検索
総務省の「技術基準適合証明等を受けた機器の検索」データベースで、型番や認証番号から技適マークの取得状況を確認できます。このデータベースは無料で検索できます。


ステップ4:依頼人への確認・指摘
技適マークが確認できない場合、依頼人に対して①技適マークの有無の確認、②該当する例外規定の適用可否、③技適取得の予定、を確認します。依頼人が「知らなかった」と主張しても、通関業者として記録を残しておくことが重要です。


この確認記録は問題が発生した際の証拠になります。メールやチャットでの確認が望ましく、口頭確認のみは避けましょう。記録の保管が原則です。


税関:輸入通関における法令遵守(コンプライアンス)について


技適マークなし機器の輸入が発覚した場合のリスクと対応策:通関業者の視点

技適マークのない無線機器の輸入が税関で発覚した場合、その処理は単純ではありません。厳しいところですね。


税関において電波法違反が疑われる貨物は、「輸入差止め」の対象となります。税関法第69条の11第1項第9号では、電波法その他の法令の規定による許可、承認等を要する貨物で、その許可等を受けていないものは輸入禁止品に該当する場合があると定めています。差止められた貨物は、依頼人が適切な対応(技適取得・積み戻し・廃棄)を取らない限り、留置され続けます。


通関業者として問題になるのは、「違法と知りながら通関手続きを行った場合」です。この場合、通関業法に基づく処分(通関業者の認定取消しや業務停止)の対象になりえます。通関業者の認定取消しは事業継続に直結する重大なリスクです。


一方、依頼人から「技適マークは取得済み」と虚偽の申告を受けた場合でも、通関業者が合理的な確認義務を果たしていれば、法的責任を免れる可能性が高まります。つまり確認記録が保険になります。


実際のリスク軽減策として有効なのは、輸入申告前の「事前確認チェックリスト」の整備です。機器名、型番、技適番号(または取得予定の証明書)、例外規定の適用根拠を一枚の書類にまとめ、依頼人の署名・捺印を取得するフローを社内標準化することで、万一のトラブル発生時の証拠能力を高めることができます。


このような社内フロー整備には、通関業者向けの法令遵守(コンプライアンス)支援サービスや、電波法・電気通信事業法に精通した法律事務所との顧問契約も選択肢になります。通関業者団体(日本通関業連合会)が定期的に開催している法令研修も活用できます。定期的な情報更新が大切です。


日本通関業連合会:通関業者向け法令研修・最新情報


2024年以降の法改正と技適マークに関する最新動向:通関業者が押さえるべき変化

電波法および関連法規は近年、急速に変化しています。通関業従事者として最新情報を把握しておくことは、リスク管理の基本です。


2022年の電波法改正では、特定無線設備の技術基準適合自己確認制度の対象が拡大されました。これにより、従来は第三者機関による認証が必要だった一部の無線機器について、製造業者・輸入業者自身が技術基準への適合を確認・届け出る自己確認制度の対象になりました。この変化は、技適マークの表示形態にも影響します。意外ですね。


自己確認制度に基づく機器には、従来の「T」マークとは異なる様式のマーク表示が認められる場合があります。通関業従事者が古い知識のまま「このマークは見たことがない=技適なし」と判断すると、合法的な輸入品を不当に留め置くリスクがあります。


ドローン(無人航空機)分野では、2022年12月の航空法改正によりドローンの登録制度が義務化されました。これに伴い、技適マークの確認と機体登録の確認が一体で求められるケースが増えています。ドローン輸入は複数法令の交差点です。


また、2023年以降はIoT機器の輸入増加に伴い、電波法の適用範囲の解釈についても総務省から新たなガイダンスが出されています。特に「低出力無線機器」の扱いについては、従来の解釈が変わりつつある部分もあり、定期的に総務省のウェブサイトや官報を確認する習慣を持つことが重要です。


通関業として扱う貨物の種類が多様化する中で、電波法に限らず「輸入に際して技術基準の確認が必要な法律」を横断的に把握する視点が求められています。NITE(製品評価技術基盤機構)や総務省総合通信局への事前照会制度を活用することも、リスク回避の実務的な手段として知られています。


総務省 電波利用ホームページ:技術基準適合自己確認制度について