GMP認証サプリメントの輸入と通関で押さえる基礎知識

サプリメントのGMP認証は製品品質の証明だけでなく、通関業務にも直結します。2026年9月の義務化を前に、輸入手続きや食薬区分の落とし穴を知っていますか?

GMP認証サプリメントを輸入通関で正しく扱う基礎知識

GMP認証のあるサプリメントでも、輸入時に食品衛生法の審査でリジェクトされるケースがあります。


この記事でわかること
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GMP認証とは何か

Good Manufacturing Practiceの略で、原材料受入から出荷まで全工程の品質・安全を管理する国際的な製造規範。2026年9月から機能性表示食品(錠剤・カプセル等)では義務化が完全施行される。

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通関業従事者が見落としがちなリスク

海外でGMP認証を持つ工場の製品でも、日本の食薬区分に抵触すれば通関止め。GMP認証書と食品衛生法の届出審査は別の話であり、混同すると現場でのトラブルに直結する。

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輸入実務で確認すべき3つのポイント

①食薬区分の事前確認、②食品等輸入届出書の適正記載、③GMP認証書・原材料規格書の準備。この3点を整理しておくだけで、荷主からの問い合わせ対応も格段にスムーズになる。


GMP認証とはサプリメント製造の品質管理基準のことです

GMP(Good Manufacturing Practice)は「適正製造規範」と訳され、原材料の受け入れから製造・充填・包装・出荷に至る全工程において、製品の品質と安全性を一定水準以上に保つことを目的とした規則体系です。医薬品の分野では1980年に日本で法制化されて久しいですが、健康食品・サプリメントの分野では長らく業界の自主基準にとどまっていました。


その状況が大きく変わったのは、2024年3月に発生した小林製薬の紅麹サプリメントによる健康被害事案がきっかけです。この事案を受けて、消費者庁は機能性表示食品(天然抽出物等を原材料とする錠剤・カプセル剤等)について、GMP告示(適正製造規範)への適合を義務化しました。


つまり今まで「努力義務」だったわけです。


2024年8月の制度改正では2年間の経過措置期間が設けられ、2026年9月1日から完全施行となります。消費者庁は製造事業者約350社の確認作業を進めており、同年5月末頃を目途に完了する見通しで、業界全体が対応を急いでいます。


GMP認証を手掛ける主な民間団体には、日本健康食品規格協会(JIHFS)と公益財団法人日本健康・栄養食品協会(JHFA)の2団体があります。JIHFSは製品単位でのGMP認証マーク交付制度を持ち、JHFAは工場単位の認定を行うという違いがあります。なお、法令上の義務は「GMP告示(国の基準)の遵守」であり、これら民間団体の「GMP認証」の取得自体は義務ではありません。ただし、基準を満たしていることを証明する最も実効的な手段が認証取得であるため、実務上は取得が強く推奨されています。


GMP認証が「品質のパスポート」と言われるのは、このためです。


通関業従事者にとって重要なのは、GMP認証の有無が輸入品の書類審査においてどのような位置づけになるのかを理解することです。次のセクションから、具体的な輸入手続きの流れに踏み込んで解説します。


参考:厚生労働省「GMPマークを目印に健康食品を選びましょう!」
https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/dl/kenkou_shokuhin_gmp.pdf


GMP認証サプリメントの輸入手続きの流れと食品衛生法の関係

「GMP認証を持っている製品なら輸入はスムーズ」という誤解が、通関実務の現場では少なくありません。しかし実際には、GMP認証と食品衛生法に基づく輸入届出は、まったく別の制度です。


サプリメントを含む健康食品を日本へ輸入する場合、最初に確認すべきなのは「医薬品に該当しないか」という点です。日本の法令では口から摂取するものは医薬品か食品かのいずれかに分類されます(食薬区分の原則)。海外では食品として販売されているサプリメントであっても、日本では医薬品成分を含む場合や、医薬品的な効能効果を表示している場合は「無承認無許可医薬品」として医薬品医療機器等法の規制対象になり、通関止めとなるリスクがあります。


これは大きなリスクです。


食品に該当することが確認できたら、次は食品衛生法第27条に基づく「食品等輸入届出」の手続きに進みます。具体的な流れは以下の通りです。



  • 📌 輸入前の準備:原材料配合表・製造工程表・成分規格書など必要書類を整備する。医薬品に該当しないかの事前確認(都道府県薬務担当課への相談も有効)を行う。

  • 📌 検疫所への届出:食品等輸入届出書を、貨物を通関する港・空港を管轄する検疫所に提出する。食品衛生監視員が法令適合性・検査の要否を審査する。

  • 📌 審査・検査:初回輸入品や過去に違反実績がある食品等については、自主検査または命令検査が実施される場合がある。

  • 📌 届出済証の取得:審査を通過すると「食品等輸入届出済証」が返却される。これが税関への輸入申告時に必要となる。

  • 📌 通関:届出済証を添付して税関で輸入申告を行い、関税・消費税等を納付して輸入許可を受ける。


GMP認証書は、この一連の流れの中で「製造環境の品質を示す補足資料」として活用できますが、それ自体が届出審査を省略したり、検査を免除したりする法的な効力は持ちません。「GMP認証=通関クリア」ではないことを荷主・依頼者に説明できる状態にしておくことが、通関業従事者としての重要な知識です。


参考:一般財団法人ミプロ「健康食品の輸入〜知っておきたい法規制〜」
https://www.mipro.or.jp/Document/hti0re0000000vi2-att/pdf_publications_0123.pdf


GMP認証サプリメント輸入で通関業従事者が陥りやすい食薬区分の落とし穴

通関業従事者が特に注意を要するのが、「食薬区分(食品と医薬品の境界線)」の判定です。これを誤ると、貨物が保税地域に足止めされるだけでなく、荷主への大きな損害につながります。


海外のサプリメントには、日本では医薬品成分に指定されている原料が含まれているケースが少なくありません。たとえばイチョウ葉エキス、高麗人参(朝鮮人参)の一部の使用形態、特定の植物由来エキスなどが該当することがあります。こうした成分が一定量以上含まれていたり、製品表示に医薬品的な効能効果の記載があったりすると、食薬区分の基準である「昭和46年薬発第476号(通称:46通知)」に基づき、無承認無許可医薬品として判定されるリスクがあります。


46通知の基準は細かく、専門性が高いです。


また、ワシントン条約(CITES)の規制にも注意が必要です。サプリメントに使われる生薬系の原材料の中には、ジャコウジカ由来成分・木香・天麻・アメリカニンジン(アメリカ産)など、条約付属書に掲載される規制品が含まれる場合があります。これらは輸出国政府発行の許可書や経済産業省輸入承認証なしには輸入ができません。


実務上のポイントとして押さえておきたいのは「荷主から事前に全成分リストと原材料規格書を入手する」という習慣です。GMP認証書があるからといって成分詳細の確認を省略してしまうと、通関時に初めて問題が発覚し、貨物の留置や廃棄・積み戻しという最悪の事態につながりかねません。


検疫所の事前相談制度を使うのが大前提です。


厚生労働省の検疫所では、輸入前に食品の安全性に関する事前相談を受け付けています。サプリメント形状の製品や初めて取り扱う成分が含まれる場合は、この制度を積極的に活用することが、業務上のリスク管理として有効です。


参考:厚生労働省検疫所FORTH「届出手続きの方法」
https://www.forth.go.jp/keneki/tokyo/kanshi_hp/a004.html


GMP認証サプリメントの2026年義務化で輸入実務はどう変わるか

2026年9月1日から、機能性表示食品のうち「天然抽出物等を原材料とする錠剤・カプセル剤等食品」に対して、GMP告示への適合が義務化されます。これは通関業従事者にとっても他人事ではありません。輸入品がこのカテゴリに該当する場合、製造工場がGMP告示の基準を満たしているかどうかが、消費者庁への届出の前提要件となるからです。


義務化の内容をまとめると以下の通りです。
































項目 内容
完全施行日 2026年9月1日(経過措置期間終了)
対象製品 機能性表示食品のうち、天然抽出物等を原材料とする錠剤・カプセル剤等食品
義務の内容 国が定めたGMP告示(消費者庁)に基づく製造・品質管理の実施
自己点検・報告 届出者による年1回の遵守状況の自己点検と消費者庁への報告が義務
民間GMP認証 法令上の必須要件ではないが、基準適合の有力な証明手段として実務上推奨
グミ・タブレット菓子等 現時点では対象外のケースが多いが、今後規制範囲が拡大される可能性がある


外国製造の機能性表示食品を輸入する荷主(届出者)にとっては、海外の製造工場が日本のGMP告示の基準を満たしているかどうかを確認する義務が生じます。通関業従事者は荷主から「この工場はGMP義務化に対応しているか」と相談を受けるケースが増えることが予想されます。そのとき「それは荷主が確認することですから」と突き放すだけでは、信頼関係に影響します。制度の概要を把握し、「消費者庁への届出の要件を満たしているかは、荷主が届出時に証明責任を持つ」という構造を説明できるようにしておくと、対応力が高まります。


さらに注目すべき動向として、機能性表示食品以外の「いわゆる健康食品(サプリメント全般)」にも、GMP管理と健康被害報告の義務化を拡大すべきという意見が消費者庁の検討会や消費者団体から相次いでいます(2026年2月時点)。現時点では議論段階ですが、輸入を扱う実務者として継続的に情報をフォローしておく価値があります。


制度の変化には先手が必要です。


参考:消費者庁「機能性表示食品の届出等に関する告示」関連情報
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_with_health_claims/info_session/assets/food_labeling_cms205_250314_01.pdf


GMP認証を活用したサプリメント輸入の独自視点:原材料GMP認証という盲点

通関業従事者向けの情報として、あまり語られることのない重要な盲点があります。それが「原材料GMP」です。


一般的にGMP認証というと、最終製品を製造する工場が対象というイメージが強いでしょう。しかし2024年の小林製薬紅麹問題では、最終製品の製造工場はGMP認証を取得していたにもかかわらず、問題は「原材料の製造工場」にありました。消費者庁のデータベース上では「GMP適合製造所にて製造」と表記されていても、原材料製造工場のGMP管理状況は別の話であるという実態が明らかになったのです。


GMP認証は最終製品だけでは不十分ということです。


これを受けて、日本健康食品規格協会(JIHFS)は2024年7月から「輸入原材料GMP認証(GMP-IM認証)」事業をスタートさせました。輸入原材料を製造ロットごとに国内の公的分析試験機関でパターン分析などを実施し、海外の製造工場による規格との同一性・同等性を確認する仕組みです。この認証に係る費用は1製造工場・1品目あたり初年度で合計65万円(事業者監査25万円+品目別審査40万円)と決して安くありませんが、輸入原材料の安全性を担保する手段として注目を集めています。


通関業従事者として輸入書類を確認する際、荷主が提出する資料に「原材料GMP証明書」や「原材料の分析試験成績書」が含まれているかどうかに着目することは、意識的な関わり方の一つです。とりわけ中国・インド・東南アジア産の植物性原材料を多く使うサプリメントでは、原材料の品質証明が不十分なまま輸入されることによる食品衛生法違反リスクが高まります。


GMP証明の範囲を「原材料まで含むか」が論点です。


荷主から「GMP工場で作られた安全な製品だ」と聞かされても、それが最終製品工場のGMPのみを指しているのか、原材料工場のGMPまでカバーしているのかを意識できる通関業従事者は、付加価値の高いサービスを提供できます。制度や認証の「枠の外」まで理解することが、専門家としての差別化につながります。


参考:日本健康食品規格協会(JIHFS)「輸入原材料GMP(GMP-IM)認証」
https://www.jihfs.jp/jihfs-cs/cs_04.html