政府調達金額大学の基準と通関業務への影響

国立大学の政府調達で1,500万円と1,900万円の基準額が存在するのをご存知ですか?通関業務従事者が知っておくべき大学調達の金額基準、WTO協定との関係、輸入手続きへの影響を解説します。調達現場で損をしないための知識とは?

政府調達金額大学の基準

国立大学の政府調達では1,500万円が実務上の金額基準とされています。
参考)政府調達ってそもそも何なん?|東京大学情報基盤センター

この記事の3ポイント要約
💰
大学の政府調達基準額

国立大学は協定上1,900万円だが、自主的措置で1,500万円に引き下げている

🌍
WTO協定の対象機関

国立大学法人は政府調達協定の対象機関として外国企業に市場を開放

📋
通関業務への影響

基準額以上の調達では国際競争入札が必須となり輸入手続きも複雑化する

政府調達の金額基準1,500万円と1,900万円の違い


国立大学における政府調達の金額基準には2つの数字が存在します。協定上の基準額は10万SDR(特別引出権)で、これを邦貨換算すると1,900万円になります。しかし、実際の運用では1,500万円が基準となっているのです。
参考)https://www.chisou.go.jp/tiiki/kokusentoc_wg/r3/pdf/20211021_shiryou_s_4_1.pdf


この引き下げは日本の自主的措置によるものです。協定より厳しい基準を設定することで、外国企業等への市場をより広く開いていることを示しています。つまり協定が求める水準を超えて、日本は自ら門戸を開いているということですね。​
通関業務従事者にとって、この違いは重要です。大学からの輸入依頼があった場合、1,500万円以上なら政府調達手続きが必要になります。1,900万円未満だからと安心していると、実際には政府調達の対象になっている可能性があります。金額判断を誤ると、必要な手続きが漏れるリスクがあるのです。​
令和6・7年度においては、SDRの邦貨換算レートが変更され、基準額は1,800万円となりました。為替変動により2年ごとに見直されるため、最新の財務省告示を確認する必要があります。この変動により、前年度は政府調達対象外だった案件が今年度は対象になることもあります。
参考)調達情報


政府調達金額と大学の調達契約における特例

国立大学法人は、WTO政府調達協定の附属書Iの付表3に「その他の機関」として明記されています。この指定により、大学は中央政府機関とは異なる調達ルールを適用されます。
参考)https://www.kobe-u.ac.jp/sites/default/files/doc-page/2024-04/kizyungaku0607.pdf


協定上の基準額は物品等(購入・借入)で13万SDRと定められています。これは中央政府の10万SDRより高い水準です。しかし日本政府は、独立行政法人及び国立大学法人について、協定よりも厳しい10万SDR以上の案件まで対象とする自主的措置を実施しています。
参考)https://www.mofa.go.jp/mofaj/annai/shocho/chotatsu/kijyungaku.html


政府調達では内国民待遇の原則と無差別待遇の原則が適用されます。これは他の締約国の産品及び供給者に与える待遇を、自国の産品及び供給者に与える待遇と差別しないことを意味します。通関業務の現場では、外国製品であることを理由に排除することは許されません。公正かつ衡平な待遇が求められます。
参考)https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/wto/chotatu.html


建設サービスについては、物品とは異なる基準額が設定されています。A群の機関では45万SDR(令和6・7年度で8,100万円)、B群では150万SDR(同2億2,800万円)となっています。調達の種類によって金額基準が大きく異なるため注意が必要です。

政府調達金額基準を超えた場合の大学輸入手続き

政府調達基準額を超える大学の輸入案件では、国際競争入札の手続きが必須となります。官報への公告掲載、入札説明会の開催、十分な公告期間の確保など、通常の調達とは異なる複雑な手順を踏む必要があります。
参考)https://www.jst.go.jp/saisei-nw/document/jimusyori/setsubi/jimusyori_H24hosei.pdf

1億円以上の調達では、資料提供招請、意見招請、入札公告の3段階の官報公告が求められます。購入依頼書到着から入開札まで約3ヶ月を要します。1,200万円以上1億円未満の場合でも、入札公告と入札説明会が必要で、約3ヶ月かかります。通関業務従事者は、この長期化したスケジュールを前提に輸入計画を立てなければなりません。​
政府調達手続きでは、仕様書の作成に特に注意が必要です。特定のメーカーや製品を指定することは原則として認められず、性能要件での記載が求められます。しかし研究用機器では特定の装置が必要なケースもあり、その正当性を示す客観的な説明が不可欠です。通関業務の観点からは、HSコードの特定や原産地証明の準備にも影響します。
参考)https://www.soumu.go.jp/kanku/shikoku/si_kokuritu.html


輸入通関では、政府調達案件であることを税関に適切に説明する必要があります。WTO協定に基づく調達であることを示す書類(入札結果通知書、契約書など)を用意しておくと、通関がスムーズに進みます。特に高額な研究機器の場合、関税減免措置の適用可否も確認すべきポイントです。

政府調達金額と大学における共同調達の実態

国立大学では、同一時期に同種の物品を購入する際、全学的な観点から調整し、可能な限り一括購入することが文部科学省から指導されています。この一括購入により、個別では政府調達基準額に達しない案件でも、合算すると基準額を超えるケースがあります。​
調査対象大学では、50万円以上の物品を毎年度367個〜482個(取得価格7億9,400万円〜16億5,400万円)調達していました。個々の機器は基準額未満でも、複数の研究室からの要望をまとめることで、結果的に大規模な国際入札案件になることがあります。これは経費節減の観点からは望ましいですが、通関業務の複雑化につながります。​
共同調達では、複数の品目を一つの契約でまとめて輸入することになります。この場合、各品目のHSコード、原産地、用途が異なるため、通関書類の作成が煩雑になります。さらに、納品先が複数の研究室に分かれる場合、保税運送や分割納品の手続きも必要です。
総合評価落札方式が適用される分野も要注意です。スーパーコンピューター(全調達)、コンピューター製品及びサービス(80万SDR超、令和2・3年度で1億2,000万円)、医療技術製品及びサービス(38.5万SDR超、同5,900万円)などが対象です。価格だけでなく技術的評価も加味されるため、入札プロセスがさらに長期化します。
参考)https://www.kobe-u.ac.jp/documents/info/public-info/purchase/kizyungaku0405.pdf


政府調達金額基準と通関業務者が知るべき独自リスク

安全保障貿易管理の観点から、大学の輸入案件には特別な注意が必要です。外国為替及び外国貿易法(外為法)に基づき、大量破壊兵器等に関連する貨物の輸出や技術提供が規制されています。輸入についても、研究用途で持ち込まれた機器や技術が、その後第三国に流出するリスクを考慮しなければなりません。
参考)大学及び研究機関等における安全保障貿易管理の徹底について(依…


文部科学省は平成29年11月6日付で「大学及び公的研究機関における輸出管理について(依頼)」を発出し、外為法を踏まえた安全保障貿易管理の徹底を要請しています。通関業務従事者は、大学からの輸入依頼があった場合、該当貨物がキャッチオール規制の対象かどうかを確認する必要があります。特に先端的な研究機器や計測装置は、軍事転用可能性を慎重に審査すべきです。
参考)https://www.meti.go.jp/policy/anpo/daigaku/seminer/h30/meti.pdf


政府調達の透明性確保のため、調達情報は日本貿易振興機構(JETRO)のサイトでも公開されています。しかし現場では、客観性、透明性及び競争性の確保が不十分な事例も指摘されています。例えば、特定メーカーの製品を前提とした仕様書が作成され、実質的に競争入札が形骸化しているケースです。
参考)調達情報 - 大学案内 - 横浜国立大学


通関業務者として独自に注意すべきは、大学の予算執行タイミングです。国立大学では年度末に調達が集中する傾向があり、3月に輸入通関が殺到します。政府調達案件は手続きに時間がかかるため、余裕を持った輸入計画を大学側に提案することが、トラブル回避につながります。納期遅延が研究計画に与える影響は大きく、大学との信頼関係維持のためにも、早期の相談と適切な助言が求められます。
外務省の政府調達協定の基準額一覧
政府調達の最新基準額と邦貨換算額を確認できます。令和6年度からの変更点も掲載されています。
JETROの政府公共調達概要ページ
政府調達制度の全体像と、各機関の基準額の違いについて詳しく解説されています。
文部科学省の安全保障貿易管理に関する通知
大学及び研究機関等における輸出管理の徹底について、具体的な要請内容が記載されています。




ISO15408セキュリティ実践解説: 政府調達の統一基準