SDSが不要な化学品輸出案件でも、SDS不提出を理由に税関で貨物を止められた事例が国内外で複数報告されています。

SDS(Safety Data Sheet=安全データシート)は、化学物質や化学品を輸送・保管・廃棄する際の危険性・有害性、安全な取り扱い方法を記載した文書です。 製品情報・成分・応急措置・火災時の措置など16項目から構成されており、荷主がメーカーから取り寄せて船社・航空会社・フォワーダーに提出するのが実務上の基本です。 mkc-net2(https://mkc-net2.com/how-to-view-sds-and-points-to-pay-special-attention-to-when-exporting-dangerous-goods/)
通関実務でSDSが問われる理由は、輸出品が「危険品(Dangerous Goods)」に該当するかどうかを判断するためです。 仮に荷主が「普通品です」と申告していても、SDS第14項の「輸送上の注意」にUN番号・危険クラスが記載されていれば、危険品として取り扱う必要があります。 通関業者はその確認ゲートキーパーとして機能する立場にあります。 mol-logistics-group(https://www.mol-logistics-group.com/blog/knowledge/dg-sds)
SDSには化管法(化学物質排出把握管理促進法)・安衛法(労働安全衛生法)・毒劇法(毒物及び劇物取締法)の3法が関わっており、それぞれで義務対象物質と除外規定が異なります。 つまり「化管法ではSDS不要」の製品でも「安衛法では必要」というケースもあり、判断には各法の確認が欠かせません。 johokiko.co(https://johokiko.co.jp/chemmaga/tkkqa0008/tkk_qa/)
| 根拠法 | 対象 | 主な除外条件(SDS不要) |
|---|---|---|
| 化管法 | 指定化学物質を一定含有率以上含む製品 | 含有率1質量%未満、固形物(管・板・組立部品)、密封製品、一般消費者向け製品、再生資源 |
| 安衛法 | 通知対象物質を含む製品 | 医薬品・農薬・固体成形品(粉状化しない)、一般消費者向け製品、食品 |
| 毒劇法 | 毒物・劇物を含む製品 | 200mg以下の劇物販売、一般消費者への供与 |
輸出貨物を普通品と危険品に分けると、必要書類の構成がまったく異なります。これが基本です。 普通品ではインボイス・パッキングリスト・シッピングインストラクション(作業指示書)の3点が中心ですが、危険品の場合はこれに加えてSDS・危険物容器検査証(容器証明書)・UN容器(専用容器)の3点が最低限必要です。 mkc-net2(https://mkc-net2.com/documents-required-for-export/)
通関業務上で頻繁に起きるミスが「SDS確認の先送り」です。 フォワーダーに引き受けてもらったあとでSDS未整備が発覚し、船積み直前に危険品扱いへ変更となったケースでは、フリータイム(貨物の無償保管期間)が極めて短い危険品の特性上、超過保管料が発生することがあります。 危険品のフリータイムは通常貨物よりも短く設定されているため、通関遅延はそのまま追加コストに直結します。 hps-connect(https://hps-connect.com/column/transport-logistics/p7836/)
初回輸出では特に事前確認が重要です。 万が一SDS提出タイミングがずれると、船積みが翌便に回り、顧客との納期に影響するリスクがあります。SDS入手→UN番号確認→危険クラス判定→船社・航空会社への危険品申告、というフローを逆算して進める必要があります。 mkc-net2(https://mkc-net2.com/documents-required-for-export/)
通関業従事者が意外と見落としがちなのが「成形品はSDS不要」という理解の誤りです。 確かに化管法・安衛法ともに「固体以外の状態とならず、粉状・粒状にもならない製品」はSDS交付義務の対象外と定められています。 しかし、加工プロセスで粉状・粒状になる可能性がある成形品は除外対象には該当せず、SDSが必要です。 nichireibiosciences.co(https://nichireibiosciences.co.jp/sds/%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%88%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%82%B9%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%89SDS%E4%B8%8D%E8%A6%81%E8%AA%AC%E6%98%8E%E6%9B%B8.pdf)
例えば、切削加工が予定されている金属部品や、研磨工程がある工業用部材などは、それ自体が固形であっても作業中に粉塵が生じるため、安衛法上の通知対象物質を含む場合はSDS提出義務が残ります。 「固形だから大丈夫」という判断は、対象製品の用途・加工プロセスを確認せずに行うと法令違反のリスクがあります。厳しいところですね。 johokiko.co(https://johokiko.co.jp/chemmaga/tkkqa0008/tkk_qa/)
また一般消費者向け製品は3法すべてで原則SDS不要ですが、「容器等に包装された状態で小売店で一般消費者を対象に販売されている」という条件を厳密に満たしている必要があります。 同じ製品であっても、BtoB(企業間取引)での輸出ではこの除外規定は適用されません。 BtoBかBtoCかでSDS要否が変わります。 johokiko.co(https://johokiko.co.jp/chemmaga/tkkqa0008/tkk_qa/)
EU向けでは「REACH規則」に基づくSDS形式が求められ、日本のGHS分類との差異が生じることがあります。 各国・地域ごとにSDS言語要件・分類基準・項目仕様が異なるため、輸出先の規制を事前に確認することが重要です。 世界各国対応のSDS作成サービスを提供している専門機関もあり、多国間取引を扱う通関業者はこうしたサービスとの連携を検討する価値があります。 scas.co(https://www.scas.co.jp/chemical-safety/management-support/sds/global-sds.html)
参考:中国向け化学品輸出の通関書類と留意点(JETRO)
https://www.jetro.go.jp/world/qa/P-220303.html
現時点(2026年6月)では、SDS不交付に対する直接の刑事罰は未施行です。 しかし2025年後半に交付された改正労働安全衛生法では、SDS交付義務違反に対して「6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金」という罰則規定が盛り込まれており、交付から5年以内(2030年まで)に施行される予定です。 journal.smartsds(https://journal.smartsds.jp/detail/penalty-for-not-issuing-sds)
罰則がないから今は問題ない、という考え方は危険です。 SDS未交付が発覚した場合には行政指導の対象となり、さらに事業場で労働災害が発生した際には、SDS不備が企業責任を問われる根拠となりえます。 「交付はしたが内容が不十分だった」という場合も同様のリスクがあります。 journal.smartsds(https://journal.smartsds.jp/detail/penalty-for-not-issuing-sds)
通関業として対策できることは明確です。輸出案件の受注時にSDS現物の確認を標準フローに組み込み、仕向地に応じたSDS要件をチェックリスト化することが出発点です。特に初回輸出品・化学品を含む産業材・海外製品の並行輸入品はリスクが高いため、荷主への事前確認を徹底する運用が求められます。SDS確認のタイミングが条件です。
参考:SDSの罰則規定と義務違反時のリスク(SmartSDS Journal)
https://journal.smartsds.jp/detail/penalty-for-not-issuing-sds
参考:化管法SDS制度に関するQ&A(経済産業省)
https://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/law/qa/3.html

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