ジェトロのビジネスライブラリーでGTAを使っても、データをプリントアウトするだけでは関税削減チャンスの9割を見逃します。
Global Trade Atlas(GTA)は、米国のGlobal Trade Information Services社(現:S&P Global)が提供する世界最大級の商業貿易統計データベースです。 現在はS&P Globalのプラットフォームを通じて提供されており、世界の商品貿易の98%をカバーする輸出入データを収録しています。marketplace.spglobal+1
データソースは各国の政府統計機関(税関等)が公表した一次データです。 HSコードの2桁・4桁・6桁レベルで統計データを取得でき、月次・年次の両方が利用可能です。これが週次や年次データしか持たない他サービスとの大きな違いです。
参考)https://www.jetro.go.jp/db_corner/gta.html
199カ国・地域をカバーしており、そのうち82カ国は政府機関の統計を直接ソースとしています。 残り117カ国はUN Comtradeをソースとしていますが、月次データまで取得できる点で無料のComtradeより詳細な分析が可能です。
| データベース | カバー国数 | HSコード桁数 | 月次データ | 費用 |
|---|---|---|---|---|
| Global Trade Atlas(GTA) | 199カ国・地域 | 2〜6桁(国によりそれ以上) | ✅ あり | 有料(要申込) |
| UN Comtrade | 200以上 | 最大6桁 | 一部のみ | 基本無料(件数制限あり) |
| ITC Trade Map | 200以上 | 4桁以上は有料 | 有料のみ | 2桁まで無料 |
| 財務省貿易統計 | 日本のみ | 最大9桁 | ✅ あり | 無料 |
GTAの検索は「レポーター(報告国)」「パートナー(相手国)」「品目(HSコード)」「期間」の4つの軸で構成されています。 たとえば「日本から米国への機械類(HS84類)の月次輸出額を2023〜2024年で確認したい」という場合、レポーターに日本、パートナーに米国、HSコードに84、期間を指定してSubmitするだけでデータが表示されます。
HSコードを正確に入力することが基本です。 6桁を入力すれば世界共通の最細分類まで絞り込めます。 逆に2桁・4桁で広く指定すると、複数品目をまとめた市場規模の把握に向いています。
参考)世界各国の貿易統計を品目コード別調査するには? – 関税削減…
注意点として、GTAはComtradeと異なり、HSコードの改訂版間の自動変換は行いません。 つまりHS2012とHS2017のデータをまたいで長期時系列分析をする場合は、改訂前後でコードが変わっていないかを自分で確認する必要があります。これが実務で意外と見落とされるポイントです。
検索後のデータはCSV等でダウンロード可能です。 Excelに落として「輸出金額(USD)÷重量(kg)」を計算すれば、品目ごとの平均単価が算出でき、調達先比較や価格交渉の根拠として使えます。
GTAは有料のデータベースのため、個人での契約はハードルが高いのが現実です。 利用料は使用範囲によって変わり、担当者との個別交渉が必要になります。atpress+1
これは使えそうです。 ジェトロのビジネスライブラリー(東京・大阪など)やアジア経済研究所図書館では、GTAを無料で利用できます。 ただし、注意点があります。ジェトロでの利用はプリントアウトのみが基本で、データのダウンロードは認められていません(プリント料金1枚50円)。library.pref+2
大量データを扱う分析やExcelへの転記作業が必要な場合は、有料契約を検討するか、UN Comtradeの無償データと組み合わせて使う戦略が現実的です。 UN Comtradeは1回の検索で5万件まで無料でダウンロード可能なため、大枠の把握はComtradeで行い、月次の詳細確認はジェトロのGTAで補完するという使い分けが効率的です。
参考)https://www.atpress.ne.jp/releases/104839/att_104839_1.pdf
大学や研究機関に所属している場合は、機関契約でアクセスできるケースもあります。 立命館アジア太平洋大学では専門講師によるGTAガイダンスを実施しており、実務活用の事例として参考になります。kansai-u.repo.nii+1
GTAへのアクセス方法を整理して確認したい場合、ジェトロの公式サイトでデータベースコーナーの利用案内を確認するのが確実です。
ジェトロ公式|Global Trade Atlas更新状況と利用案内(東京ビジネスライブラリー)
GTAの最も実務的な活用場面は、FTA/EPAを活用した関税削減の根拠データ収集です。 原産地規則を満たすために「どの国から原材料を調達するか」を検討する際、GTAで調達候補国の輸出データをHSコード別に取得すれば、コスト・供給安定性・品質の3軸で比較できます。
具体的な手順はシンプルです。 たとえばある原材料(HS2710)を最安値で調達したい場合、全世界を対象にした輸出データを取得し、「輸出総額(USD)÷重量(kg)」で1kgあたりの平均単価を計算してソートします。 A国の平均単価が100ドルで、B国が300ドルなら、A国がコスト面で優位という判断ができます。
さらに、過去数年間の月次データをグラフ化すると供給の安定性が視覚的にわかります。 単価が安くても供給量がばらつきのある国は品質や政情リスクを疑う根拠になり、逆に単価がやや高くても継続的に安定供給している国は信頼性が高いと判断できます。これが関税削減だけに目を奪われがちな通関業従事者が見落とすポイントです。
ジェトロが公開しているEPA活用セミナー資料でも、GTAデータをもとに品目別の関税譲許情報と貿易統計を組み合わせた実務的な分析手法が紹介されています。
ジェトロ|EPA活用のメリットと活用に向けた実務(GTAデータ活用事例あり)
GTAとUN Comtradeは「どちらが優れているか」ではなく「何を調べたいか」で使い分けるのが正解です。 GTAは各国政府機関の一次統計を直接収録しており、月次データと高精細な品目レベルが強みです。一方、Comtradeは国連が品目改訂に対応した補正処理を行っているため、10年以上にわたる長期時系列分析に向いています。
GTAが特に威力を発揮するのは「月次の市場動向把握」と「特定の国・品目の最新データ確認」です。 たとえば2024年に入ってから特定品目の対中国輸出が急増しているかどうかを月単位で確認したい場合、GTAは最速のデータ更新速度を誇ります。UN Comtradeは各国の報告タイミングにより遅延が生じることがあるためです。
参考)Home
一方、GTAの弱点は「一度の検索でまとめてダウンロードできる範囲が限られること」です。 複数の相手国・6桁以上の詳細品目をまとめて一括取得することはGTAでは難しく、大規模な分析にはUN ComtradeやBACIと組み合わせる必要があります。つまりGTAは万能ではありません。
通関業の実務では、以下のような場面での使い分けが現実的です。