名義貸しの禁止とは|通関業法の罰則と通関士の義務を解説

通関業務における名義貸しの禁止について、通関業法の規定や罰則、具体的な違反事例を詳しく解説します。通関士のID・パスワード共有も違反になるのをご存知ですか?

名義貸し禁止 通関業法 通関士

通関士のID・パスワードを同僚と共有しただけで名義貸しになります

この記事の3ポイント
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名義貸しは刑事罰の対象

通関業者・通関士が名義貸しをすると30万円以下の罰金刑に処せられ、懲戒処分の対象にもなります

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ID共有も違反に該当

通関士のNACCS用ID・パスワードを営業所内職員で共有する行為は名義貸しの疑いがあります

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退職後も義務が継続

通関士が退職しても、異動届を税関に提出するまでは名義貸し禁止義務が残ります

名義貸しの禁止 通関業法の基本規定


通関業法では、通関業者と通関士の両方に対して名義貸しを明確に禁止しています。通関業者については第17条で「通関業者は、その名義を他人に通関業のため使用させてはならない」と規定され、通関士については第33条で同様の禁止が定められています。


参考)通関業法 |Lawzilla(迷わない法令データベース)


これが禁止される理由は、通関業務の適正性と信頼性を確保するためです。通関業を営むには財務大臣の許可が必要であり、通関士として業務に従事するには国家資格が必要です。名義貸しを許してしまうと、無資格者や無許可者が通関業務を行うことになり、税関手続きの秩序が乱れます。


参考)通関業者に対する「監督処分」と通関士に対する「懲戒処分」とは…


名義貸しに対する罰則も厳格です。違反した通関業者・通関士には30万円以下の罰金という刑事罰が科せられます。財務大臣の許可を受けても名義貸しができるとする例外規定は一切存在しません。


参考)通関業法|条文|法令リード


つまり禁止は絶対です。


e-Gov法令検索:通関業法(名義貸し禁止の条文を確認できます)

名義貸しの具体例と通関士ID共有問題

名義貸しとして違反になる具体的な行為は、通関業法基本通達33-1で明示されています。


代表的なのは以下の2パターンです。



参考)https://www.customs.go.jp/tokyo/sodan/4-1_leaflet.pdf


通関士が自ら通関書類を審査せず他人に記名押印させる場合。これは通関士本人が実質的に業務を行っていないにもかかわらず、自分の名義だけを貸している状態です。他人に自己名義の印章を使わせて通関業務を行わせる行為も同様に該当します。
参考)通関士の過去問 第54回(令和2年) 通関業法 問37 - …

通関士のID・パスワードを営業所内職員で共有する行為も名義貸しの疑いがあります。東京税関が発行したリーフレット「それ、通関士の名義貸しの疑いがあります」では、「通関士のID・PWを営業所内職員で共有している」事例が明確に警告されています。RPAの実行ボタンを押すだけの作業でも、通関士以外の者が通関士名義で申告すれば違反です。​
ID共有は危険です。


組織のセキュリティポリシー上も個人のID・パスワードは他者と共有してはいけませんが、通関業界では法的な刑事罰のリスクがあります。NACCS利用者コードは通関士個人に紐づけされており、通関士が自己のコードで申告作業を行う必要があります。


参考)ITパスポート試験 令和5年度 問15 過去問解説


東京税関:名義貸し防止リーフレット(通関士ID共有の危険性について詳しく解説されています)

名義貸し違反の罰則と懲戒処分の内容

名義貸しをした場合、刑事罰と行政処分の両方が科される可能性があります。刑事罰としては、通関業法第44条により30万円以下の罰金刑が規定されています。この罰金刑は、名義を貸した通関業者(第1号)と名義を貸した通関士(第2号)の両方に適用されます。


参考)通関士の過去問 第57回(令和5年) 通関業法 問30 - …


行政処分では、財務大臣が通関業者に対して監督処分を下すことができます。具体的には、1年以内の期間を定めた通関業務の全部または一部の停止命令、あるいは許可の取消しです。通関業務が止まれば、その期間中は収入が途絶えます。

通関士に対する懲戒処分も厳しいものです。財務大臣は通関士に対して、①戒告、②1年以内の通関業務従事停止、③2年間の通関業務従事禁止のいずれかを命じることができます。従事停止期間中は通関士として業務ができず、一般従業者としても従事できません。従事禁止処分を受けた場合は、再度確認を受けなければ通関士業務に復帰できません。


参考)https://ameblo.jp/rlvvisole/entry-12281361820.html


資格喪失のリスクがあります。


苦労して取得した通関士資格を失うだけでなく、前科がつく可能性もあります。現場での一時的な判断ミスが、キャリア全体に影響を及ぼすのです。

名義貸しと輸入名義貸しの違いとリスク

通関業法上の「名義貸し」と、実務でよく聞く「輸入名義貸し」は別物です。通関業法の名義貸しは通関業者・通関士が自分の名義で他人に業務をさせる行為を指しますが、輸入名義貸しは日本企業が外国企業のために輸入者として名義を提供する行為です。


参考)輸入名義貸しのリスクとは : 川崎みらい税理士法人の消費税還…


輸入名義貸しには複数のリスクがあります。


まず通関業法違反の可能性です。


日本企業が外国企業から依頼を受けて名義を貸与し、許可なく通関業務を行なっているとして、通関業法違反に問われる可能性があります。この場合、通関業法第41条第2号により1年以下の懲役または100万円以下の罰金という刑事処分が科されます。

アンダーバリューなど輸入関税のリスクも名義人に帰属します。民事上の賠償責任を追及される場合もあり、輸入商品に問題があれば輸入者としての責任を問われます。取引規模や回数が大きく、事故が発生した場合は特に高リスクです。

本来の方法は税関事務管理人制度の利用です。外国企業が日本でビジネスを行う場合、関税法第95条に基づき税関事務管理人として届け出るのが適切な対応になります。

正規の手続きが安全です。


退職後の名義貸し義務と異動届の重要性

通関士の名義貸し禁止義務は、退職後も一定期間継続します。通関業法第33条は「前条第1号の規定に該当し、第22条第2項の規定による異動の届出がない者を含む」と明記しています。


参考)【通関業法】条文別徹底解説シリーズ(第2回:通関業務・通関士…


どういうことでしょうか?
通関士が退職などで業務に従事しなくなった後でも、その旨の「異動届」が税関に提出されるまでの間は、引き続き名義貸し禁止の義務を負うということです。つまり、退職したからといって自動的に義務が消滅するわけではありません。

異動届が提出されるまでの空白期間に、元の勤務先が退職した通関士の名義を無断で使い続けるケースを防ぐための規定です。もし退職後に自分の名義が勝手に使われていることを知った場合、速やかに税関に異動届の提出を促すか、自ら届出の事実を確認する必要があります。


異動届の確認が必須です。


退職時には、人事部門や通関業務管理者に対して、必ず税関への異動届提出を依頼し、提出完了の確認を取るようにしましょう。これにより退職後の名義貸しリスクから身を守ることができます。


名義貸し防止のための実務上の対策

名義貸しを防止するには、組織全体での意識向上と具体的な管理体制の構築が不可欠です。まず通関士本人が自分の名義・ID・パスワードの管理責任を明確に認識することが出発点になります。

通関業者側では、通関士のNACCS用IDとパスワードの個別管理を徹底する必要があります。営業所内で共有アカウントを作ることなく、通関士一人ひとりに固有のIDを発行し、パスワードも定期的に変更させる運用が求められます。RPAなど自動化ツールを使う場合でも、実行権限は通関士本人に限定すべきです。

社内研修で名義貸しの具体例と罰則を繰り返し周知することも有効です。新人研修だけでなく、定期的なコンプライアンス研修の中で、東京税関のリーフレットなどを教材として活用しましょう。


退職者が出た場合は、速やかに税関への異動届を提出する手続きフローを確立します。人事部門と通関業務部門が連携し、退職日から一定期間内に必ず届出を完了させるチェックリストを作成するのが効果的です。

定期的な内部監査で、通関士の記名押印がある書類について、本人が実際に審査を行ったかどうかを抽出確認する仕組みも導入できます。こうした多層的な対策により、意図しない名義貸しの発生を防ぎ、通関業務の信頼性を維持することが可能になります。

チェック体制が鍵です。


フォーサイト:通関業者の監督処分と通関士の懲戒処分(処分事例と予防策について詳しく解説されています)




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