型式認証を取得済みのドローンでも、輸入時に別途追加書類が必要になるケースが全体の約4割に上ります。
型式認証とは、航空法に基づいて国土交通大臣が特定の無人航空機の設計・製造・品質管理体制を審査し、基準に適合していると認めた機体に与えられる認証制度です。2022年12月の航空法改正によってカテゴリーⅢ飛行(第三者上空での補助者なし目視外飛行)が解禁されたことと同時に導入された、比較的新しい制度です。
この制度が導入された背景には、物流ドローンや点検ドローンの産業利用が急拡大したことがあります。つまり、安全基準を機体レベルで担保しようという発想です。
型式認証を取得した機体の一覧は、国土交通省の公式ウェブサイト「無人航空機の登録制度・型式認証」のページで随時更新されています。2025年8月時点では、DJI Matrice 30シリーズ、DJI Matrice 350 RTK、DJI Agras T40、ACSL PF2-CAT3、ブルーイノベーション Blue Whale Type2などが型式認証を取得しています。一覧は増加傾向にあります。
通関業務で型式認証一覧を参照する場面は、輸入申告前の機体分類の確認です。型式認証の有無によって輸入後の運用可否が変わるため、荷主(インポーター)への確認事項として事前に把握しておく必要があります。国土交通省の公表ページのURLは以下から確認できます。
国土交通省「無人航空機の登録制度・型式認証」ページ。型式認証取得済み機体の一覧や審査状況が確認できます。
機体の型式名・製造者名・認証番号が掲載されており、通関申告時の確認資料として活用できます。型式認証番号は「型認第〇〇-〇〇号」の形式です。これが条件です。
ドローン(無人航空機)の輸入通関では、まずHSコードの正確な分類が求められます。多くの民生用ドローンは関税率表の第88類(航空機およびその部品)に分類されますが、カメラ内蔵型やセンサー搭載型は第85類に分類されるケースもあります。これは意外ですね。
具体的には、ラジコン飛行機として機能するものは8806.21、自律飛行機能があるものは8806.22または8806.29に分類されることが多く、機体の構造・重量・用途によって細分化されます。重量25kg超の機体では申告内容がさらに精査されます。
型式認証取得済み機体を輸入する場合、通関書類としては以下のものが典型的に必要になります。
型式認証があるからといって、電波法(技適)の手続きが免除されるわけではありません。この2つは別の法律に基づく手続きです。別々に確認が必要です。
特に注意が必要なのは、並行輸入品や個人輸入名義での業者輸入です。型式認証を取得しているのはあくまで「型式(設計)」であり、輸入された個体がその型式認証の条件に適合しているかどうかを書類で証明できなければ、輸入後の国内飛行に支障が出る可能性があります。荷主への事前説明が大切です。
上記リンクは関税分類の基礎確認に活用できます。実務では税関の事前教示制度を利用することで、分類リスクを低減できます。事前教示は無料です。
カテゴリーⅢ飛行とは、第三者が存在する可能性のある場所の上空で、補助者なしかつ目視外で無人航空機を飛行させることを指します。2022年12月以前は原則禁止でした。
型式認証を受けた機体と、一等無人航空機操縦士の技能証明を持つパイロットが揃って初めて、このカテゴリーⅢ飛行が合法的に実施できます。つまり機体と人の両方が条件です。
通関業従事者がこの関係を把握しておくべき理由は、輸入依頼のあった機体がカテゴリーⅢ用途かどうかによって、荷主が求めてくる書類や用途確認の内容が変わるからです。「型式認証を取得済みの機体を輸入したい」という依頼の背後には、こうした飛行目的が存在することが多いです。
2025年時点でカテゴリーⅢ飛行に使われている型式認証機体としては、ACSL製のPF2-CAT3が代表的です。国産機として初めて型式認証を取得し、過疎地や離島での物流用途を主な目的としています。物流ドローンの通関案件では、この機体名が登場することが多くなっています。
一方、DJI Matrice 350 RTKは主に点検・測量用途で型式認証を取得しており、電力会社や土木測量会社が輸入主体になることが多いです。荷主の業種と機体用途がほぼ一致します。これが基本です。
型式認証機体であっても、飛行空域・飛行時間帯・機体重量によっては国土交通省への個別飛行許可申請が必要になる場合があります。通関後の運用リスクについても荷主に確認を促すことが、丁寧な通関業務につながります。
このページでは、型式認証取得状況の最新情報と飛行申請の統合管理システムへのリンクが確認できます。輸入後の運用フローを荷主に説明する際の参考資料としても有用です。
型式認証を取得していないドローンの輸入自体は、現行の航空法・関税法において禁止されていません。輸入は可能です。
ただし、型式認証なしの機体でカテゴリーⅢ飛行を実施した場合は、航空法第132条の85の規定に基づき、50万円以下の罰金が科される可能性があります。これは荷主のリスクですが、通関業者が輸入用途を把握せずに申告した場合、事後的に問題になるケースがあります。
厳しいところですね。
実務上の対応として推奨されるのは、輸入依頼書または荷主へのヒアリングシートに「飛行用途・飛行カテゴリー予定」の確認欄を設けることです。これにより、型式認証の要否・電波法手続きの有無・機体登録の申請主体を一度に整理できます。1つのシートで確認が完結します。
また、型式認証の審査中(申請中)の機体を輸入するケースも存在します。この場合、輸入通関自体は問題ありませんが、型式認証が下りるまでの間はカテゴリーⅢ飛行が行えないため、荷主の業務スケジュールに影響が出ることがあります。審査期間は申請内容によって異なりますが、標準処理期間は国土交通省の公表では数か月から1年以上になる場合もあります。審査期間は長めに見ておくことが原則です。
さらに見落とされがちな点として、型式認証機体であっても「改造・改変」を加えた場合は型式認証が失効します。カスタムペイロードの搭載やソフトウェアの非公式アップデートなどがこれにあたります。輸入後に荷主が独自改造を行った機体は、元の型式認証一覧に掲載されていても法的には未認証扱いになります。この点は荷主への説明義務の観点からも重要です。
国土交通省の型式認証ドローン一覧は、新規取得・更新・取消しが随時発生するため、固定のリストを社内で保管するだけでは情報が陳腐化します。これが盲点です。
実務上の最善策は、国土交通省のDIPS2.0(ドローン情報基盤システム)またはe-Govのページを月1回程度チェックし、型式認証の追加・変更情報を自社の通関案件管理表に反映する運用フローを構築することです。チェック頻度は月1回が目安です。
具体的な独自管理のポイントを整理すると以下のようになります。
独自リスト管理は、荷主への付加価値提供という観点でも意味があります。型式認証一覧の最新情報を持っている通関業者は、ドローン輸入に不慣れな荷主から見れば非常に頼れる存在になります。これは使えそうです。
また、型式認証制度は今後も対象機体が増加することが見込まれています。農業用ドローン、物流ドローン、インフラ点検ドローンの各領域でメーカーの申請が相次いでおり、2026年以降は認証取得機体数がさらに増加すると予想されます。この分野に特化した通関ノウハウを蓄積しておくことは、業務の差別化につながります。
参考として、国土交通省が公表している型式認証の申請・審査に関する詳細情報は以下で確認できます。
国土交通省|無人航空機の型式認証制度について(解説資料PDF)
上記PDFでは、型式認証の審査基準・申請書類・手数料などが体系的にまとめられており、荷主への説明資料としても活用できます。特に「認証の条件」「認証の取消し事由」のページは通関実務者として把握しておくべき内容です。
型式認証ドローンの一覧を定期的に確認し、輸入案件ごとの機体分類・書類確認・荷主への情報提供を標準化することが、ドローン輸入における通関業者の信頼性向上に直結します。情報の鮮度が重要です。