複合運送証券と有価証券の性質を関税実務で活かす方法

複合運送証券が有価証券として持つ機能や、船荷証券との違い、関税・通関実務での役割、電子化の最新動向まで徹底解説。知らないと損する法的リスクや実務上の注意点とは?

複合運送証券の有価証券としての性質と関税実務での正しい活用法

複合運送証券を「ただの運送書類」だと思っていると、L/C決済で銀行に書類を拒否され、貨物が港で止まります。


📋 この記事の3つのポイント
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複合運送証券は「有価証券」として機能する

船荷証券(B/L)と同様に、裏書譲渡・担保設定が可能な有価証券としての性質を持ち、信用状(L/C)取引でも使用できます。ただし発行者や条件によって制限があります。

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関税・通関実務で証券の種類を誤ると大きなリスク

複合運送証券と海上運送状(Sea Waybill)は似て非なるもの。後者は有価証券ではないため、荷為替手形の担保として使えず、代金回収リスクが生じます。

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電子化・商法改正の動向を把握しておく必要がある

2025年12月、貿易コンソーシアムが法務大臣へ電子B/L化の商法改正を要望。電子複合運送証券の普及が実務に影響を与えつつあります。


複合運送証券とは何か:有価証券としての定義と3つの機能

複合運送証券(Combined Transport B/L、またはMultimodal Transport B/L、略してCT B/L・MT B/L)とは、海上輸送を含む2種類以上の異なる輸送手段を組み合わせた国際複合一貫輸送に際して発行される運送書類のことです。たとえば「日本→海上輸送→アメリカ西海岸→鉄道輸送→内陸部の倉庫」というルートのように、海陸を組み合わせた輸送に対して1通の証券で全区間をカバーします。


重要なのは、この証券が単なる「受領書」ではないという点です。複合運送証券は以下の3つの機能を同時に持っています。


- 🚢 運送契約の証拠:運送人と荷主の間で締結された契約の内容を示す証拠書類としての機能
- 📦 貨物受領証:運送人が貨物を受け取ったことを証明する書類としての機能
- 💎 有価証券(引き渡し請求権の表象):貨物の引き渡し請求権を化体した有価証券としての機能


3番目の「有価証券」としての機能が、実務上最も重要です。株券や小切手と同様に、複合運送証券はその権利の移転・行使に証券の占有を必要とします。つまり、証券を持っている人だけが貨物の引き渡しを請求できるということです。


有価証券が原則です。


複合運送証券は、港から港への純粋な海上輸送に対して発行される本来の「船荷証券(B/L)」とは異なります。しかし日本の実務では、海上輸送を含む複合輸送に発行される複合運送証券も、船荷証券と同様の法的効力を持つ有価証券として広く認められています。株式会社トランスコンテナの解説でも「港から港への海上輸送で発行される本来の船荷証券ではありませんが、有価証券として船荷証券と同様の機能と性質を持っています」と明確に述べられています。


また、法務省が公表した商法改正要綱においても、「荷証券に関する規定は、複合運送証券について準用する」という規律が設けられており、有価証券としての取り扱いが法的に明確化されています。これは知っておくべき重要事項です。


参考:複合運送証券(CT B/L)の定義と有価証券としての機能についての解説
船荷証券(B/L)について|株式会社トランスコンテナ


複合運送証券と海上運送状の違い:有価証券かどうかで大きく変わる実務対応

関税実務や貿易実務に携わる方が混同しやすいのが、複合運送証券と海上運送状(Sea Waybill)の違いです。見た目や記載内容は似ていますが、有価証券かどうかという点で根本的に性質が異なります。これは実務上、非常に大きな差です。


複合運送証券(CT B/L)は有価証券であり、裏書によって第三者への譲渡が可能です。これに対し、海上運送状(Sea Waybill)は有価証券ではなく、単なる運送契約証明書に過ぎません。海上運送状は、貨物の引き取り時に提示を必要とせず、記載された荷受人であることが確認できれば引き取りができます。


| 項目 | 複合運送証券(CT B/L) | 海上運送状(Sea Waybill) |
|------|------------------------|--------------------------|
| 有価証券性 | ✅ あり | ❌ なし |
| 貨物引き取り時の提示 | ✅ 必要 | ❌ 不要 |
| 裏書による譲渡 | ✅ 可能 | ❌ 不可 |
| L/C取引での担保利用 | ✅ 可能 | ❌ 原則不可 |
| 紛失リスク | ⚠️ 高い | 低い |


この違いが関税・貿易実務に直結する場面は、特に荷為替手形を使ったL/C(信用状)取引です。L/C取引では、銀行が荷為替手形の担保として運送書類を保持します。銀行が担保として機能させるためには、その証券が有価証券でなければなりません。海上運送状はこの条件を満たしません。


つまり有価証券なら問題ありません。


一方で、複合運送証券が有価証券であるがゆえに注意すべき点もあります。有価証券は紛失すると貨物の所有権主張が難しくなるリスクがあります。万が一紛失した場合の対応として、L/G(Letter of Guarantee:補償状)を船会社に差し入れて貨物を引き取るという方法がありますが、この手続きには手間がかかり、場合によっては訴訟リスクも発生します。


一方、海上運送状が使われるケースも増えています。コンテナ船の高速化により、船が目的地に到着しても証券が間に合わないという「B/L Crisis」と呼ばれる事態が増え、近距離航路や信頼できる継続取引先との取引では海上運送状の利用が増えています。どちらを選ぶかは、取引の安全性・スピード・担保機能のバランスで判断する必要があります。


参考:複合運送証券と海上運送状の違い、商法改正における規律の内容
商法(運送・海商)改正要綱⑨ 海上物品運送に関する特則(Ⅲ)|弁護士法人F&J法律事務所


複合運送証券を関税・通関で使う際の実務上の注意点

複合運送証券は、輸入通関手続きにおいても重要な役割を担います。日本で輸入貨物を引き取るには、税関による輸入許可が必要です。そのプロセスにおいて、貨物の引き渡しを受けるための有価証券として、複合運送証券の正しい取り扱いが求められます。


有価証券としての複合運送証券には、以下のルールが適用されます。


- 📋 証券と引き換えでなければ、運送人は貨物を引き渡してはならない
- ✍️ 裏書があれば第三者への譲渡(権利移転)が可能
- 🔒 証券の所持人のみが貨物に対する権利を行使できる
- 🏦 銀行が質権や所有権を第三者に対抗できる


関税の観点で特に重要なのは、複合運送証券が「課税価格の基礎となる運送費用の証明」に関わる場面です。日本の関税は原則CIF価格(運賃・保険料込みの価格)を課税標準とします。そのため、どのルートでどのような輸送手段が使われたかを示す複合運送証券の記載内容が、課税価格の計算に影響することがあります。


注意が必要なのは、一般特恵関税(GSP)などの特恵税率の適用を受ける場合です。課税価格の総額が20万円を超える場合、「通しB/L」や「積替え証明」などの書類を税関に提出する必要があります。複合運送証券がこの「通しB/L」に相当するかどうかは、証券の記載内容と運送ルートによって判断されます。これが条件です。


また、実務上しばしば問題となるのが、複合運送証券の表題と実態の乖離です。法務省の法制審議会議事録では「複合運送証券と言われるものは、実際に表題として複合運送証券として出ているものだけがそうなのではなくて、実は、船荷証券という表題が付いていて複合運送証券として機能しているものもある」と指摘されています。表題だけで判断せず、証券の記載内容・発行者・運送区間を確認する習慣が重要です。


参考:一般特恵関税マニュアルにおける通しB/Lと積替え証明の要件
一般特恵関税マニュアル|税関(財務省)


NVOCCが発行する複合運送証券(ハウスB/L)の有価証券性と責任リスク

複合運送証券の発行者として重要な存在が、NVOCC(Non-Vessel Operating Common Carrier)です。NVOCCとは、自社では船舶を運航しないものの、運送人として荷主とB/Lを締結し、実際の輸送は船会社などの実際運送人に委託する事業者のことです。フォワーダーがNVOCCとして機能するケースも多くあります。


NVOCCが発行する複合運送証券は「ハウスB/L(House B/L)」と呼ばれます。一方、船会社が発行するものは「マスターB/L(Master B/L)」と呼ばれ、両者は異なる書類です。ハウスB/Lも有価証券としての機能を持ち、荷為替手形の担保として利用可能です。


問題が生じるのは、ハウスB/Lと船会社のマスターB/Lの責任範囲に差異がある場合です。NVOCC Clubの解説によると、複合運送人(NVOCC)は受託した貨物1個ごとにヘーグルールのパッケージ・リミテーション(国際海上物品運送法では1個あたり10万円)まで責任を負います。これに対し、船会社はコンテナ1本単位にパッケージ・リミテーションを適用するのが一般的です。


具体的な数字で考えてみましょう。100個の貨物を1コンテナに混載した場合、NVOCCが負う最大賠償額は「10万円×100個=1,000万円」に達します。一方で船会社のマスターB/L上の責任はコンテナ1本(≒1パッケージ)として処理されるため、NVOCCと船会社の間に大きな差が生まれます。意外ですね。


この賠償リスクに対応するために、フォワーダー(NVOCC)はB/L賠償保険(Cargo Indemnity Insurance)に加入することが推奨されています。「求償権放棄特約があるから保険でカバーされている」と誤解しているフォワーダーも存在しますが、日本が国際条約に批准している以上、その考え方は成立しません。これは大きな落とし穴です。


荷主側の視点でも注意が必要です。フォワーダーを通じてハウスB/Lを受け取った場合、そのハウスB/Lの発行者(NVOCC)が外航利用運送事業の登録を持っているかを確認することが、リスク管理の出発点となります。国土交通省が事業者の登録情報を公開しているので、確認先としてメモしておくといいでしょう。


参考:NVOCCとしての責任範囲と賠償リスクについての詳細解説
損害に関するご案内|NVOCC Club


複合運送証券の電子化と商法改正:関税実務に与える今後の影響

2025年12月、貿易コンソーシアム(事務局:株式会社トレードワルツ)は、船荷証券・複合運送証券等の電子化に関する商法改正の早期実現を求める要望書を法務大臣宛に提出しました。これは、現行の商法が「紙の船荷証券」を前提として規定されており、電子B/Lを正式な有価証券として扱う根拠規定が国内法に存在しないことを問題視したものです。


法務省の法制審議会(商法(船荷証券等関係)部会)がまとめた要綱案では、電子化された船荷証券を「電子船荷証券記録」、電子化された複合運送証券を「電子複合運送証券記録」と称し、紙の証券と同等の法的効力を持たせるための制度設計が示されました。これは実務にとって大きな一歩です。


電子B/Lが法制化されると、関税・通関実務にも以下のような変化が生じると予想されます。


- 🖥️ 証券の紛失リスクがなくなり、通関書類管理が大幅に簡略化される
- ⚡ 証券の受け渡しが即時に完了するため、「B/L Crisis(証券到着前に船が着く問題)」が解消される
- 🏦 電子的な有価証券として銀行が担保に取れる法的根拠が明確化される
- 🌐 国際的な電子B/Lプラットフォーム(essDOCS、Bolero等)との連携が強化される


ただし、現時点(2026年3月)では商法改正は成立しておらず、電子複合運送証券はまだ国内法上の正式な有価証券とは認められていません。要綱を踏まえた法案の国会提出・成立を引き続き注視する必要があります。これは必須です。


一方で、実務では既にサレンダードB/Lという形で有価証券の電子的処理に近い運用が行われています。サレンダードB/Lは、輸出地で船会社がB/Lを全通回収し「Surrendered」の記載を添付してデータを揚地に通知する方法です。ただしこれは法的規正が及んでいないため、事故発生時の責任問題が複雑になる点に注意が必要です。


電子化の流れを先取りするために、現在取引しているフォワーダーや船会社が電子B/Lプラットフォームに対応しているか確認しておくことが、実務担当者としての次の一手になるでしょう。


参考:電子B/L化に関する商法改正要望と法務省要綱案の詳細
【コラム】「電子B/L法制の検討状況」―中間試案を踏まえて|Japan P&I Club