PSEマーク取得の方法と輸入事業者が知るべき全手順

PSEマーク取得の方法を通関業従事者向けに解説。届出から自主検査、費用・期間の目安、違反時のリスクまで網羅。あなたの輸入業務に直結する情報をまとめました。正しく手続きできていますか?

PSEマーク取得の方法と輸入事業者が押さえるべき全手順

PSEマークが製品についていれば、通関は問題ないと思っていませんか。


📋 この記事の3ポイント要約
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PSEマークは「認証」ではなく輸入事業者の自己責任表示

PSEマークは国や第三者機関が認証するものではなく、輸入事業者が義務を履行した証として自ら表示するものです。中国工場の「PSE対応済み」は法的に意味をなしません。

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取得の手順は製品区分(ひし形・丸形)で大きく異なる

特定電気用品(ひし形)は登録検査機関による第三者検査が必須で費用100〜200万円・期間半年〜1年。特定電気用品以外(丸形)は自主検査で完結し、費用は数万〜30万円程度です。

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違反した法人には最大1億円の罰金と輸入禁止措置も

PSEマーク未表示のまま販売した場合、法人は最大1億円の罰金。さらに回収命令・輸入禁止措置が発動した実例もあります。「知らなかった」では免責されません。


PSEマーク取得の前提:電気用品安全法とは何かを正確に理解する

PSEマークとは「Product Safety Electrical Appliance & Materials」の頭文字をとった略称で、日本の電気用品安全法電安法)に基づく安全表示です。電気製品による感電・火災・傷害を防止することを目的としており、対象となる電気製品の製造事業者または輸入事業者が義務を履行した証として、自らの責任で製品に表示します。


ここで多くの通関業従事者が見落としがちな重要事項があります。PSEマークは「国が認証するもの」でも「第三者機関が付与するもの」でもありません。つまり認証制度ではないのです。


電気用品安全法が規定する対象製品は457品目(2021年7月時点)にのぼり、電源コードやACアダプターから、冷蔵庫・扇風機・LEDライト・モバイルバッテリーに至るまで、私たちの身の回りにある多くの電気製品が含まれます。通関業の実務では、輸入申告貨物がこの457品目のいずれかに該当するかを正確に判断し、依頼主(輸入事業者)が適切な手続きを履行しているかを確認する知識が必要です。


さらに注意が必要なのは「通関手続きが完了した時点で輸入行為が完了したとみなされる」という法律上の位置づけです。つまり輸入事業者としての義務は、通関前から始まっており、届出・技術基準確認・自主検査という一連のプロセスを事前に整備していなければなりません。









根拠法律 電気用品安全法(電安法)
対象品目数 457品目(特定116品目+特定外341品目)
義務を負う者 日本国内の輸入事業者(外国メーカーは不可)
マークの性格 自己宣言型(認証制度ではない)
所管省庁 経済産業省(管轄の経済産業局)


所管省庁の公式情報や具体的な品目一覧については、経済産業省の製造・輸入事業者ガイドで確認できます。


経済産業省|製造・輸入事業者ガイド(電気用品安全法)


PSEマーク取得の方法:ひし形と丸形の区分判定が最初の分岐点

PSEマークの取得方法を正しく理解するには、まず「ひし形PSE(◇)」と「丸形PSE(○)」の2種類を区別することが出発点です。この区分を間違えると、必要な手続きが根本的にズレてしまいます。











項目 ひし形PSE(◇) 丸形PSE(○)
正式名称 特定電気用品 特定電気用品以外の電気用品
対象品目数 116品目 341品目
第三者検査 ✅ 登録検査機関の適合性検査が必須 ❌ 不要(自主検査で完結)
取得費用目安 100〜200万円程度 数万円〜30万円程度
取得期間目安 半年〜1年 1〜3か月
代表的な製品例 ACアダプター、電源タップ、電動マッサージ器 モバイルバッテリー、LED照明、冷蔵庫、扇風機


ひし形PSEの特定電気用品とは、①長時間無監視で使用されるもの、②社会的弱者(高齢者・子ども)が使用するもの、③直接人体に触れて使用するものなど、特に高い安全性が求められる製品です。これらは日本電気安全環境研究所(JET)や日本品質保証機構(JQA)などの「登録検査機関」による適合性検査を受け、「適合性証明書」を取得しなければマークを表示できません。


一方、丸形PSEの対象製品は、輸入事業者が自社の責任で技術基準への適合を確認し、自主検査を実施してその記録を保管すれば、マークを表示できます。費用・期間ともにひし形PSEより大幅に少なく済みます。


区分判定に迷った場合は、独自に判断せず経済産業省の管轄局または検査機関に問い合わせることが原則です。製品の「用途・構造・定格電圧・定格消費電力」によって同じカテゴリの製品でも電気用品名が変わる場合があるため、慎重な確認が必要です。


関東経済産業局|電気用品輸入事業者の皆様へ(届出義務・手続き詳細)


PSEマーク取得の手順:STEP1〜STEP5の実務フローを解説

PSEマークを適法に製品に表示するまでの手順は、次の5ステップで整理できます。通関業従事者として依頼主の状況を確認する際の参照軸にもなります。


【STEP1】経済産業省への事業届出


電気用品の輸入事業を開始した日から30日以内に、管轄の経済産業局長あてに「電気用品輸入事業届出書」を提出します。これは製品ごとではなく「事業者単位・電気用品区分単位」での届出です。届出が完了していない状態での販売はそれ自体が違反になります。事業届出の費用は自社で行えば無料です。行政書士などに依頼する場合の代行費用は2〜3万円程度が目安です。


【STEP2】技術基準への適合確認


製品が電気用品安全法の技術基準(省令の技術基準、または整合規格)に適合していることを確認します。特定電気用品(ひし形)の場合は、製造工場が登録検査機関の審査を受けた「適合性証明書」の写しを入手する必要があります。特定電気用品以外(丸形)の場合は、輸入事業者が自らの責任で適合確認を行います。


【STEP3】適合性検査の受検(ひし形PSEのみ必須)


製造工場が、JET・JQAなどの国の登録検査機関において製造工程検査・完成品検査・試料検査を受けます。この検査にかかる期間が3〜6か月と長く、費用も製品種別によっては100万円を超えます。輸入事業者は工場検査の立会いや書類整備を事前に進めておく必要があります。


【STEP4】自主検査の実施と記録の保管


ひし形・丸形ともに必須のステップです。出荷前に全製品(全数)に対して外観検査・絶縁耐力検査・通電検査などを実施し、その記録を3年間保存します。「抜き取り検査でいいのでは」と思われがちですが、原則として全数検査が義務です。これは意外なほど知られていないポイントです。


自主検査の記録には①製品名・型式、②検査年月日・場所、③検査担当者名、④数量、⑤検査方法・結果、を必ず記載します。様式は自由ですが、ExcelやPDFで整備し改ざん防止の工夫をしておくことが推奨されます。


【STEP5】PSEマークと届出事業者名の表示・販売開始


上記の義務をすべて履行した後、製品本体に「PSEマーク」「届出事業者名(または登録商標)」「定格電圧・定格消費電力」などの法定表示を行い、初めて販売が可能になります。ひし形PSEの場合は適合性検査を行った登録検査機関名の表示も必要です。マークは製品本体への直接印字が原則で、パッケージへの表示だけでは違法になるケースがあります。


PSE自主検査の全数検査義務と記録保存の実務解説(gray01.com)


PSEマーク取得にかかる費用と期間:通関前に知っておくべき現実の数字

費用感を事前に把握しておくことは、依頼主への適切なアドバイスにも直結します。ここでは実態に即した費用・期間の目安を示します。


ひし形PSE(特定電気用品)の費用・期間


登録検査機関での試験費用だけで数十万〜100万円前後、工場検査費用として数十万円が加算されます。総額として初年度は100〜200万円程度の支出を見込む必要があります。取得期間は半年〜1年が標準的で、製品の複雑さや製造国・工場の状況によってはさらに延びます。


「通関前に準備が必要」という意識を依頼主が持っていない場合、輸入後に手続きが追いつかず販売できない事態が起きます。製品企画の初期段階からスケジュールに組み込むことが不可欠です。


丸形PSE(特定電気用品以外)の費用・期間


外部試験機関への依頼費用が数万円〜30万円程度で、1〜3か月で取得可能なことが多いです。検査機関によって費用や対応スピードが異なるため、複数機関から見積もりを取ることが賢明です。


ただし、「費用が安い=手続きが簡単」とは限りません。丸形PSEでも技術基準の確認作業や書類整備に相応の工数がかかります。社内リソースが不足する場合は認証コンサルタントの活用を検討する価値があります。


💡 費用節約のヒント(独自視点)


通関業従事者にはあまり知られていませんが、同一製品カテゴリで過去に取得した試験データがある場合、試験の一部を省略できるケースがあります。また、OEM元のメーカーがすでにPSE取得済みの製品を自社ブランドで販売する場合は、製造元との契約・表示方法さえ整備すれば、追加の試験費用をほぼゼロにできるケースも存在します。依頼主への情報提供として知っておきたい知識です。










費用項目 ひし形PSE 丸形PSE
試験・検査費用 数十万〜100万円/品目 数万〜30万円/品目
工場検査費用 数十万円(年1回) 不要
事業届出 無料(自社申請) 無料(自社申請)
コンサルタント費用 別途(任意) 別途(任意)
取得期間の目安 半年〜1年 1〜3か月


PSEマーク取得に必要な費用と期間のリアルな目安(ROSSY JAPAN)


PSEマーク取得の落とし穴:通関業者が依頼主に確認すべき3つのリスクポイント

通関業従事者として依頼主の輸入貨物を通すだけでなく、こうしたリスクポイントを把握していることが現場での信頼につながります。


リスク① 中国工場の「PSE対応済み」をそのまま信用している


中国工場がいくら「PSEマーク付き」と主張しても、日本側の輸入事業者が届出・技術基準確認・自主検査を行っていなければ、法的に有効なPSEマークとは認められません。そもそもPSEマークは外国メーカーが取得・表示することができない仕組みです。


中国の安全認証であるCCC認証や、CEマークなどのヨーロッパ基準とも全くの別制度です。よくある誤解として、工場が偽のPSEマークを印刷しているケース、他社が取得した証明書を流用しているケースがあります。依頼主から「工場がPSEついてると言っている」と聞いた際には、日本側での手続き状況を必ず確認しましょう。


リスク② 付属品・同梱品のPSE対象を見落としている


本体がPSE対象外でも、同梱部品が対象になるケースがあります。ノートパソコン本体は電気用品安全法の対象外ですが、付属のACアダプター(直流電源装置)はひし形PSE(特定電気用品)の対象です。同様に、電源コード・リチウムイオン蓄電池・差込みプラグなどにも別途の手続きが必要になります。


輸入申告の際にインボイス記載の商品説明だけで判断せず、セット内容全体を確認する習慣を持つことが重要です。


リスク③ 「通関が通れば問題ない」という誤解


税関は電気用品安全法の執行機関ではありませんが、輸入貨物が同法の規制対象であると判断した場合、経済産業省の指示に基づき通関を保留することがあります。しかし逆に言えば、通関が通ったからといって電気用品安全法上の義務をすべて果たしたことにはなりません。販売後に経済産業省から立入検査が入り、届出書・適合性証明書・自主検査記録の提示を求められる場合があります。依頼主がこれらの書類を整備していないと、販売停止命令や回収命令につながります。


JETRO|家電製品の輸入手続き(PSE届出義務・技術基準確認の詳細)


PSEマーク未取得・違反のリスク:法人は最大1億円の罰金と輸入禁止措置

PSEマーク未表示のまま対象製品を販売した場合、どのようなペナルティが発生するかを正確に把握しておく必要があります。「知らなかった」「小規模だから大丈夫」は法律上まったく免責事由になりません。


刑事罰


電気用品安全法に違反した場合、個人には「1年以下の懲役または100万円以下の罰金(もしくは両方の併科)」が科される可能性があります。法人に対しては最大1億円以下の罰金が適用されます。さらに違反内容によっては懲役と罰金の両方が同時に科されるケースもあります。


行政処分


刑事罰とは別に、行政処分として次のような措置が取られます。



  • 📋 報告徴収:製品状況・コンプライアンス体制の文書報告を求められる

  • 🔍 立入検査:事業所・倉庫に経済産業省職員が立ち入り、書類・現物を確認

  • 🚫 販売停止命令・回収命令:対象製品の販売停止・市場回収の指示

  • ⛔ 輸入禁止措置:最長3年間の電気製品輸入禁止が発動した実例あり


実際に発生した事例として、大手ホームセンターがPSEマークのないLED照明器具を1,000点以上販売したことが発覚し経済産業省から行政処分を受けたケースがあります。また、国内のある電気製品輸入企業では、回収命令とあわせて3年間の電気製品輸入禁止措置が取られた事例も記録されています。


ビジネス上の損害


罰則だけでなく、Amazonなどの主要ECプラットフォームからアカウント停止処分が下されるケースも増えています。PSEマーク関連書類の提出を求められた際に対応できなければ、出品停止・在庫全量撤去という事態にもなりかねません。回収費用・廃棄費用・信用失墜による取引停止など、金銭的・社会的ダメージは計り知れません。


通関業従事者としては、依頼主がこのリスクを正確に認識しているかどうかを事前確認することが、後のトラブル回避につながります。PSE手続きの専門家(行政書士・認証コンサルタント)への相談先を手元に持っておくことも実務上有効です。


経済産業省|電気用品安全法のよくある違反事例集(PDF)


PSE違反の罰則とリスク|事業者が知っておくべき法律知識