耐久試験回数の基準と輸入通関での適合確認の要点

輸入品の通関実務で避けて通れない耐久試験の回数規定。品目ごとに異なる試験回数の基準や、PSEなど製品安全4法との関係を正しく把握していますか?

耐久試験の回数と通関業従事者が押さえるべき適合確認の基礎知識

試験回数さえ満たせばPSEマークを付けて輸入できる、と思っていると通関後に行政処分を受けます。


この記事の3つのポイント
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耐久試験の回数は品目ごとに異なる

電気用品安全法(PSE)では、コンセントや自動販売機など品目によって規定される試験回数がまったく異なります。一律に考えると適合確認が通らないケースがあります。

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試験回数の確認は輸入事業者の義務

PSEを始めとする製品安全4法では、輸入事業者が自主検査の実施と記録の3年間保存を義務付けられています。通関業者はその書類の整合性確認が実務上求められます。

試験成績書の回数記載を必ず確認する

海外発行の試験成績書に記載された試験回数が日本の技術基準を満たしているかどうかの検証が、通関実務でのトラブル防止につながります。


耐久試験の回数とは何か、通関実務との関係

耐久試験とは、製品や部品が繰り返しの使用・負荷に対してどの程度の性能を維持できるかを評価する試験のことです。ボタンやスイッチなら「何回押し続けても壊れないか」、電源コードなら「何回屈曲させても断線しないか」といった具体的な動作に置き換えて、試験回数(サイクル数)という数値で耐久性能を測ります。


製品の耐久試験には複数の種類があります。温度や湿度の変動を繰り返す「温度サイクル試験」、物理的な力を繰り返しかける「振動試験・衝撃試験」、製品を折り曲げて断線を確認する「屈曲試験(折曲げ試験)」などが代表例です。


通関業従事者にとって重要なのは、輸入品が日本の技術基準で規定された耐久試験回数を満たした試験成績書を持っているか、という点です。輸入時に税関は直接試験回数を確認するわけではありませんが、電気用品安全法(PSE)・消費生活用製品安全法(消安法)など「製品安全4法」に該当する製品については、輸入事業者が適合確認を済ませた上で輸入申告に臨む義務があります。つまり問題が発覚するのは通関後の立入検査や市場流通後です。


これが原則です。試験回数の確認は「輸入事業者の仕事」ですが、通関業者が書類の整合性を確認しておくことが、後々のトラブル回避に直結します。


製品安全に関する書類確認の詳細は、ミプロ(一般財団法人対日貿易投資交流促進協会)の資料が参考になります。


ミプロ「輸入品の安全確保の手引き 2025」(製品安全4法・輸入者の義務を網羅)


耐久試験の回数は品目によって大きく異なる

「すべての製品で耐久試験の回数は同じ」という認識は誤りです。品目ごとに技術基準で規定された回数が異なり、その差は数倍~数十倍に及ぶことがあります。


たとえば電気用品安全法の技術基準では、電源コードの屈曲試験(折曲げ試験)について、製品種別や使い方に応じた回数が設定されています。一般的な家庭用電気機器のコードには1,000回(往復)を基準とするケースが多いですが、使用頻度が高い機器や特定品目では異なる回数が定められています。


自動販売機の場合は、「販売ごとに動く部分は5,000回」「その他の可動部は1,000回」というように、動作の種類ごとに細かく回数が分けられています(電気用品安全法技術基準解釈通達・平成21年改正)。東京ドームのグラウンドを5周走るマラソン選手のイメージで、各部品が繰り返しの動作に耐えられるかを検証しているイメージです。


さらに意外なのが、屈曲試験のような繰り返し動作試験の対象に「速度」も規定されている点です。たとえば「毎分60回の速度で2,570回屈曲させる」という条件で試験を行い、その後にコードの断線や損傷がないことを確認するケースもあります(経済産業省PSE試買テスト資料より)。これは単に「回数だけ多ければOK」とはならず、速度・荷重・角度の3条件が一致して初めて適合と認められるという意味です。


速度・荷重・角度すべてが条件です。試験成績書に試験条件が明記されているかを必ず確認する必要があります。


経済産業省「平成29年度電気用品安全法試買テスト結果の概要」(屈曲試験の不合格事例を掲載)


製品安全4法と耐久試験回数の確認が通関業務で求められる背景

2025年12月25日より改正製品安全4法が施行され、日本国内の消費者へ直接製品を販売する海外事業者も「特定輸入事業者」として規制対象に加わりました。この改正は越境EC(海外直販)の拡大を受けたもので、通関業者にとっても実務上の影響が大きい変化です。


従来、製品安全4法の義務(技術基準への適合確認・自主検査の実施・記録の3年間保存)は「国内の輸入事業者」が担っていました。しかし改正後は、海外からAmazonなどのプラットフォームを通じて日本消費者へ直接販売する海外事業者にも同等の義務が課されることになりました。


通関業者の立場では、輸入申告時に「他法令確認」として電気用品安全法(PSE)などの手続き完了を確認するケースがあります。PSEの場合、特定電気用品については登録検査機関による「適合性検査証明書」が必要で、それ以外の電気用品については輸入事業者による「自主検査」の実施が前提です。


重要なのは、この自主検査の内容に耐久試験が含まれるということです。「どの試験を、何回の条件で行ったか」が技術基準に合致していなければ、PSEマークを付けること自体が違法となります。


これは法的リスクに直結します。PSEマークを無表示・虚偽表示のまま販売すると、電気用品安全法違反として1年以下の懲役または100万円以下の罰金の対象になり得ます。


経済産業省の製品安全のページは最新の法令情報を随時更新しています。


経済産業省「海外事業者が製品安全4法の規制対象となりました」(2025年12月施行の改正内容を解説)


耐久試験の回数確認で通関業者が実務上チェックすべきポイント

実務での確認は具体的にどう行えばよいでしょうか?ここでは、通関業者が試験成績書を受け取った際に最低限確認すべきチェックポイントを整理します。


まず確認すべきは「試験規格の特定」です。試験成績書に記載されているJIS規格やIEC規格の番号が、輸入品の品目に対応する正しい規格かどうかを照合します。たとえば電子機器の電源コードならJIS C 3005(電気絶縁材料の試験方法)やJIS C 60068シリーズ、環境耐久性ならJIS C 60068-2-6(振動試験)といった具合です。


次に確認するのが「試験回数・条件の記載の有無」です。成績書に「○○回(往復)、荷重○kg、速度○回/分、角度○°」のような具体的な数値が記載されているかを確認します。数値が抜けている場合は仕入先に追記を求めるか、試験機関に問い合わせる必要があります。これは使えそうです。


さらに、「試験結果と判定の明記」も必須です。「試験実施」だけが書かれており「合否判定」が記載されていない成績書は、日本の技術基準への適合を証明するものとして不十分です。「PASS」や「適合」の記載と、担当機関のロゴ・署名が揃っているかを確認しましょう。


最後に「試験機関の信頼性」です。試験を行った機関が、日本の登録検査機関(JET・JQA・SGSジャパンなど)または経済産業省が認める外国登録検査機関であるかどうかを確認します。特定電気用品については登録機関以外の試験書では適合性検査の証明になりません。


4つの確認が基本です。試験規格・回数条件・合否判定・試験機関の4点を必ずセットで確認するようにしましょう。


SGSジャパン「電気用品安全法(PSE)に基づく適合性検査」(試験の流れと登録機関の役割を解説)


耐久試験回数の見落としが招くリスクと、通関実務での独自対策

ここが独自の視点です。一般的な解説では「試験成績書を確認しましょう」で終わりますが、実務ではそれだけでは不十分なケースが存在します。


最もよくあるミスは「旧規格の試験回数で対応した成績書の持ち込み」です。日本の技術基準は定期的に改正されており、たとえば折曲げ試験の回数は2009年の省令改正で製品種別ごとに見直しが行われました。以前の一律1,000回が適用される前提で用意された古い成績書をそのまま使用すると、改正後の基準との齟齬(そご)が生じます。輸入事業者が気づかないまま申告してくるケースが実務上ゼロではありません。


もう一つ見落としがちなのが「試験品と実際の輸入品の仕様違いです。試験に使ったサンプルと量産品の素材・コードの長さ・コードプロテクターの設計が異なるケースがあります。NITEの事故情報データベースには「コードプロテクター部への繰り返し屈曲で断線・短絡が発生した」という事故事例が記録されており、設計変更後に再試験なしで輸入を続けていたことが原因の一つとされています。


輸入品で製品事故が発生すると、輸入事業者は消費生活用製品安全法に基づき「重大製品事故の報告義務」が生じます。報告期限は事故発生を知ってから10日以内と非常に短く、対応が遅れると行政指導の対象になります。


痛いですね。通関後の流通段階でリコールが発生すれば、通関業者が書類確認を適切に行ったかどうかも問われる場面が出てくる可能性があります。


そこで実務上の対策として有効なのが、仕入先とのコミュニケーション強化です。試験成績書の提出を単に「書類として受け取る」のではなく、「試験回数・条件・規格番号・試験機関名を事前にフォームで指定して送付を依頼する」という仕組みを作ることです。書類の形式を統一するだけで、確認漏れのリスクを大幅に減らすことができます。


製品事故情報の一次情報はNITE(製品評価技術基盤機構)が公開しています。どんな製品でどういう試験不備が事故につながったかを確認することで、実務上の感度が上がります。


NITE(製品評価技術基盤機構)公式サイト(製品事故情報データベースと安全性評価の最新情報)