港湾運送事業者一覧と種類・許可・選び方の完全ガイド

港湾運送事業者の一覧を国土交通省の名簿から調べる方法、7種類の事業区分、大手企業の特徴、関税・通関との関係まで徹底解説。輸入ビジネスを始める前に知っておくべき事業者選びのポイントとは?

港湾運送事業者一覧の見方と関税・通関業者との正しい使い分け

港湾運送事業者と通関業者は、実は法律が全く異なる別の資格です。この2つを同じ業者と思い込んでいると、通関費用を二重に支払う損をします。


📋 この記事のポイント3選
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国土交通省の公式名簿で全国1,000社以上を確認できる

港湾運送事業者の一覧は国土交通省が令和7年3月末時点で公開しており、93の指定港湾ごとに許可種別まで確認可能です。

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港湾運送事業者と通関業者は根拠法が全く異なる

港湾運送は「港湾運送事業法」、通関は「通関業法」という別々の法律で規定されており、荷主が混同すると窓口選びで無駄なコストが発生します。

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事業は7種類に区分され、許可は港湾ごとに異なる

港湾運送事業は一般港湾運送・港湾荷役・はしけ運送など7種に分類され、同じ事業者でも対応できる港湾と業務が限定されています。


港湾運送事業者の一覧を確認できる公式情報源【許可種別も掲載】

港湾運送事業者の一覧を調べるには、まず国土交通省港湾局が毎年更新している「港湾運送事業者名簿」にアクセスするのが確実です。これは公式のPDF資料として無償公開されており、令和7年(2025年)3月末時点では全国93の指定港湾に登録された事業者が網羅されています。事業者数は大手から中小まで含め全国で約1,000社以上に上ります。


日本海事新聞が発行する「港運事業者要覧」も業界では広く使われています。こちらは全国の港湾運送事業者約1,000社の事業内容・許可種別・役員構成・本支社の住所・電話番号・従業員数・取引先(取扱貨物)・決算情報まで収録した有料の専門要覧です。


公式名簿には「一般 港湾荷役 はしけ いかだ」という欄に記号で許可種別が記載されており、◎は一般港湾運送事業(条件なし)、海は一般港湾運送事業(海貨業・乙仲)、は港湾荷役事業(条件なし)というルールになっています。


つまり一覧です。


| 記号 | 事業種別 |
|------|---------|
| ◎ | 一般港湾運送事業(条件なし) |
| 海 | 一般港湾運送事業(海貨業・乙仲) |
| 新海 | 一般港湾運送事業(海貨無限定・新乙仲) |
| | 港湾荷役事業(条件なし) |
| 2 | 港湾荷役事業(船内限定) |
| 4 | 港湾荷役事業(沿岸限定) |
| 3 | はしけ運送事業 |
| 5 | いかだ運送事業 |


名簿は港湾別・五十音順に配列されており、稚内港・留萌港・小樽港から始まり、日本通運・上組・山九・東洋埠頭・宇徳など全国の大手~中小まで掲載されています。


地域ごとに独自の一覧を提供している組織もあります。名古屋港では「名古屋港利用促進協議会」、神戸港では「神戸港振興倶楽部」が加盟業者の一覧をウェブ上で公開しており、特定の港湾を使う場合はその港の専門組合・協議会ページを確認すると効率的です。


参考:国土交通省が公開している港湾運送事業者名簿(令和7年3月末現在)の公式PDF
港湾運送事業者名簿(国土交通省港湾局港湾経済課)


港湾運送事業者の7種類と関税・輸入手続きにおける役割の違い

港湾運送事業は「港湾運送事業法」に基づき、次の7種類に区分されています。これが基本です。


- ①一般港湾運送事業(1種元請・ステベ):荷主または船社の委託を受け、貨物の受け渡しを行い、船内荷役・はしけ運送・沿岸荷役・いかだ運送を一貫して実施する事業です。港湾において唯一「受渡し責任」を負う元請業者です。


- ②港湾荷役事業:船舶への貨物の積込み(船内荷役)と、上屋・荷捌き場への搬入搬出および荷捌き(沿岸荷役)を担います。1984年(昭和59年)に船内荷役事業と沿岸荷役事業を統合して誕生しました。


- ③はしけ運送事業:港湾において船舶またははしけによって貨物を運送する事業です。


- ④いかだ運送事業:木材をいかだに組んで水上を運送し、水面貯木場への搬出入や荷捌き・保管を行います。


- ⑤検数事業:船積貨物の積み込みや陸揚げの際に貨物の個数を計算し、受け渡しを証明します。


- ⑥鑑定事業:船積貨物の積付に関する証明・調査・鑑定を行います。


- ⑦検量事業:船積貨物の積み込みや陸揚げの際に、貨物の容積や重量を計算・証明します。


これらの事業は港湾の内部(岸壁から上屋・ヤードまで)の作業に限定されています。重要なのは、港湾運送事業法が定めているのはあくまで「港湾内での積卸と運送の許可」であって、関税の申告や税関手続きは一切含まないという点です。


輸入貨物が日本の港に着いた後の流れは、おおまかに①船内荷役(港湾運送事業者の担当)→②保税地域への搬入→③通関申告(通関業者の担当)→④関税・消費税の納付→⑤輸入許可→⑥国内配送という順序になります。つまり港湾運送事業者と通関業者はバトンをつなぐように役割が分担されているのです。


参考:港湾運送事業の仕組みと7種類の事業区分について詳しく解説した国土交通省中部運輸局の資料
港湾運送事業の概要(国土交通省中部運輸局)


港湾運送事業者・乙仲・通関業者・フォワーダーの違いを整理【関税に興味ある人向け】

関税や輸入に興味を持ち始めた人が最初につまずく壁が、「乙仲」「通関業者」「フォワーダー」「海貨業者」という言葉の違いです。これを整理しておけば業者選びがスムーズになります。


海貨業者(乙仲) は、港湾運送事業法に基づく一般港湾運送事業者のうち「海貨限定」の許可を持つ業者のことです。正式には「海運貨物取扱業者」といいます。「乙仲」という言葉は、戦前の海運組合法で定められた「乙種仲立業」が語源ですが、1947年に同法が廃止されてから法律上は存在しない言葉となっています。意外ですね。現在も業界慣習として使われており、港湾での海運貨物の受渡し・搬入搬出を担います。


通関業者 は、通関業法に基づき税関長の許可を受けた事業者です。関税法上の輸出入申告の代理、関税・消費税の計算や納付手続きの代行が主な業務です。港湾内の物理的な作業ではなく、書類と申告の世界です。


フォワーダー(貨物利用運送事業者) は、荷主から貨物を引き受け、船舶・航空機・鉄道・トラックなど複数の輸送手段を組み合わせて国際輸送全体をコーディネートする事業者です。多くの大手フォワーダーは通関業も兼ねているため、実務では「1社に依頼すれば全部まかせられる」ケースが多いです。


整理するとこうなります。


| 業者名称 | 根拠法 | 主な業務 |
|---------|-------|---------|
| 港湾運送事業者(一般) | 港湾運送事業法 | 港湾内の積卸・搬入搬出・受渡 |
| 海貨業者(乙仲) | 港湾運送事業法(海貨限定) | 港湾内の海運貨物の取扱 |
| 通関業者 | 通関業法 | 税関申告・関税納付の代理 |
| フォワーダー | 貨物利用運送事業法 | 国際輸送全体のコーディネート |


大手フォワーダーは港湾運送業・通関業・海上運送業をすべてカバーするケースが多い、というのが現実です。日本通運・郵船ロジスティクス・近鉄エクスプレス・ヤマトグローバルロジスティクスなどの大手はまさにこのワンストップ型です。


参考:乙仲・通関業者・フォワーダーの違いを実務的な視点で解説した記事
乙仲/フォワーダー/海貨業者/通関業者: 何が違う?(TIER公式ブログ)


港湾運送事業者の許可制度と93港の指定港湾【新規参入の条件】

港湾運送事業は現在「許可制」です。かつては「免許制」で参入が非常に厳しく制限されていました。2000年(平成12年)の法改正で主要9港(千葉・京浜・清水・名古屋・四日市・大阪・神戸・関門・博多)の需給調整規制が廃止されて許可制に移行し、2006年(平成18年)の改正で全国84港にも同制度が拡大された経緯があります。


許可制とはいっても、誰でも自由に参入できるわけではありません。許可を得るには、安定した人員確保・荷役の安全管理・設備の整備状況など複数の審査項目をクリアする必要があります。審査が通らなければ許可は下りません。


港湾運送事業法が適用される指定港湾は全国93港です。これは港湾法上の港湾(国際戦略港湾5港・国際拠点港湾18港・重要港湾102港・地方港湾807港)とは区分が異なります。港湾運送事業法の93港は「一定の港湾運送需要量があり、事業者の乱立による港湾運送秩序の混乱が予想される等の事情を考慮して指定」されたものです。


許可は「港湾単位」「事業種別単位」で発行されます。つまり横浜港で一般港湾運送事業の許可を持っている事業者が、名古屋港でも同じ事業をやろうとすれば名古屋港の許可を別途取得する必要があります。複数の港で事業を展開している大手業者は、それぞれの港で許可を取得しています。


許可を受けた後も管理基準を満たし続けなければ取り消しのリスクがあります。さらに事業の譲渡・譲受には国土交通大臣の別途許可も必要です。


参考:港湾運送事業の許認可の仕組みと資格・安全・環境ルールを解説した記事
港湾運送業の許認可のしくみと資格・安全・環境ルールのいろいろ


大手港湾運送事業者の一覧と特徴【上組・山九・日本通運を比較】

関税・輸入ビジネスに携わる人にとって、大手の港湾運送事業者がどこでどのような強みを持つかを把握しておくことは費用対効果に直結します。


株式会社上組(かみぐみ) は、兵庫県神戸市中央区に本社を置く港湾運送業最大手クラスの企業です。1867年(慶応3年)創業という老舗で、神戸港を始め全国の主要港湾で業務を展開しています。売上高は約2,792億円(港湾運送・倉庫部門)規模です。コンテナ輸送の港湾取扱量が多く、日中間の国際コンテナ輸送に強みがあります。


山九株式会社 は、北九州市門司区に本社を置く大手港湾・物流事業者です。港湾分野での売上高は業界トップクラスで、プラント・重機輸送も得意としています。全国の港湾運送事業者名簿に、稚内から九州まで幅広い港での名前が確認できます。


日本通運株式会社 は、全国93港すべての指定港湾において名前が出てくる唯一の事業者といっても過言ではないほど広域ネットワークを持つ業者です。稚内・留萌・小樽・函館・室蘭・釧路といった北海道の地方港湾でも日本通運の名が確認できるのが公式名簿の特徴的な点です。総合物流企業として通関業・フォワーディング・国内輸送まで一貫対応できます。


その他、東洋埠頭・宇徳・大東港運・東海運・三菱倉庫・三井倉庫ホールディングスなども港湾運送・倉庫分野の主要上場企業として知られています。港湾運送・倉庫部門の売上高ランキングでは、三菱倉庫(約2,841億円)・三井倉庫ホールディングス(約2,807億円)・上組(約2,792億円)の順となっています(最新決算時点)。


これが現実です。大手は軒並みワンストップ対応が可能で、港湾運送だけでなく通関・倉庫・国内配送まで一括して依頼できます。中小・専門事業者は特定の港湾・特定の貨物(鉄鋼・石油・食品など)に特化している場合が多く、専門性の高い貨物を扱う際にはコストメリットが出るケースもあります。


港湾運送事業者を選ぶ際の注意点と2026年現在の最新動向

荷主が港湾運送事業者を選ぶ際に見落としがちなポイントと、現在の業界の重要な変化を整理しておきます。これは使えそうです。


①港湾ごとに使える事業者が異なる点に注意する


港湾運送の許可は港湾単位のため、「この業者に任せれば全国どこでも対応できる」とは限りません。特に地方港湾(函館・釧路・酒田・三河・高知など)では対応できる事業者数が少なく、選択肢が限られます。輸入する港を先に決め、その港で許可を持つ事業者の一覧を名簿で確認する手順が原則です。


②許可種別(事業区分)と自社のニーズが一致しているか確認する


港湾荷役(沿岸限定)の許可しか持たない事業者に船内荷役も依頼しようとすると対応できないケースがあります。公式名簿の記号(◎・・2・4など)で事前に確認しておく必要があります。


③2026年2月に「適正取引推進ガイドライン」が策定された


国土交通省は2026年2月3日、「港湾運送事業における適正取引推進のためのガイドライン」を策定・公表しました。背景には、港湾運送事業者の担い手不足が深刻化しており、船社・荷主への価格転嫁が不十分な事業者が多い実態がガイドライン検討委員会の調査で浮き彫りになったことがあります。今後は港湾運送の運賃・料金が適正水準に引き上げられる可能性があり、荷主にとっては輸入コストが変動するリスクとして認識しておく必要があります。


参考:2026年2月に策定された港湾運送事業における適正取引推進ガイドラインについての国土交通省プレスリリース
港湾運送事業における適正取引推進ガイドラインを策定しました(国土交通省)


④経済安全保障の観点で規制強化が進んでいる


2024年改正の経済安全保障推進法において、港湾運送が「特定社会基盤役務(重要インフラ)」に追加指定される見通しが出ています。これは荷主にとって事業者選定における信頼性・安全管理基準の確認が今後より重要になることを意味します。


⑤2024年問題(時間外労働規制)の影響が続いている


2024年4月に本格施行されたトラックドライバーの時間外労働規制強化の影響が港湾にも波及しています。ドレージ(港湾とデポ・工場間のコンテナ輸送)の配車コストや待ち時間が増加傾向にあり、港湾荷役のスケジュール調整が従来より複雑になっています。事業者選定の際は、ドレージ輸送まで一貫対応できるかどうかを確認しておくことがコスト管理の面で有効です。