あなたの輸入設備、関税評価だけ見ていると固定資産税評価で数百万円単位の差額が放置されることがあります。
固定資産税評価額は、市町村が固定資産評価基準に基づき土地・家屋ごとに決める課税のための金額です。
参考)固定資産税の評価額と鑑定評価額|不動産評価と土地価格アドバイ…
宅地では、標準的な画地に対して評点数を付け、その評点数に1点あたりの価額(多くの自治体で1円)を掛けて評価額を算出する方式が採用されています。
参考)固定資産税評価額の計算方法や調べ方は?必要なシーンや課税標準…
つまり土地評価は「評点数×1円」という極めてシンプルな掛け算ですが、その前段の評点付けに地形、間口、奥行、角地補正など細かな補正が入ります。
つまり評点管理が肝心ということですね。
市街地の宅地では「固定資産税路線価×土地面積×各種補正」で評価額を求める運用が一般的です。
参考)固定資産税評価額ってどう決まるの?仕組みや調べ方についてわか…
一方、路線価が定められていない地域では国税庁が定める「評価倍率表」による倍率方式が使われ、固定資産税評価額に1.1倍、1.2倍など地域ごとの倍率を掛けて相続税評価額を算出します。
参考)https://www.rosenka.nta.go.jp/docs/ref_rtof.htm
例えば宅地の固定資産税評価額が1,000万円で倍率1.1なら、相続税評価額は1,100万円となります。
倍率方式が基本です。
ここで通関業務従事者にとって重要なのは、「固定資産税評価額は時価の7割程度を目安に設定されている」という点です。
参考)固定資産税評価額から「取引額」の目安を算定する方
多くの解説では「地価公示価格等の約70%が固定資産税評価額」という目安が紹介されており、逆算すると「固定資産税評価額÷0.7≒取引価格の目安」となります。
例えば評価額2,100万円の土地建物なら、時価の目安は約3,000万円で、東京ドームの外野席約300席分の販売価格に相当するイメージです。
つまり0.7という係数が原則です。
この「0.7ルール」は、日本国内不動産を担保にする際の金融機関の審査や、相続税評価・法人の資産査定でも間接的に影響します。
参考)路線価と固定資産税評価額とは?実勢価格との違いと相続・購入で…
通関担当者が輸入業者の財務状況を大まかに理解したいとき、決算書に記載された土地建物の固定資産税評価額を0.7で逆算すれば、担保価値や売却価格のラフなイメージをつかむこともできます。
数字の変換イメージが掴めれば、税理士や財務担当との会話もスムーズになります。
結論は0.7を頭に入れておくことです。
固定資産評価の仕組みについては、総務省が「家屋評価のしくみ」資料を公表しており、再建築価格方式など実務的な流れが確認できます。
参考)https://www.soumu.go.jp/main_content/000877355.pdf
また、不動産鑑定士による詳細な解説サイトでは、評点方式と路線価との関係が図解されており、通関従事者でも数分で全体像を掴める構成になっています。
不動産税務に慣れていない通関担当が、依頼主との打ち合わせ前に短時間で予習する用途に向いています。
不動産評価の全体像を押さえるのが基本です。
この部分の参考になる一次情報はこちらです。
国税庁「評価倍率表の説明」- 固定資産税評価額に倍率を掛けて相続税評価額を求める仕組み
三井住友トラスト不動産「固定資産税(土地)の評価額」解説ページ
通関業務従事者に直結するのは、輸入した機械設備などを会社が固定資産として計上するときの「取得価額」と、将来の固定資産税評価額とのギャップです。
参考)固定資産の取得価額に含めるもの/含めないもの - 税理士法人…
法人税のルールでは、減価償却資産の取得価額には購入代価に加え、引取運賃、荷役費、運送保険料、購入手数料、そして関税など「購入のために要した費用」をすべて含めるのが原則です。
参考)固定資産の取得価額 - 岡篤志税理士事務所
例えば5,000万円の印刷設備を輸入し、運賃・保険・荷役で300万円、関税で500万円かかった場合、取得価額は合計5,800万円となります。
参考)No.5400 減価償却資産の取得価額に含めないことができる…
取得価額に含める範囲が広いということですね。
一方で、取得価額に「算入しないことができる」経費もあります。
代表的なものは、不動産取得税や登録免許税などの一部の税金、建設計画の変更で無駄になった設計費、契約解除で支払った違約金などで、こうした費用は資産計上せず当期の損金(経費)処理が可能です。
また、借入金の利子についても、資産の使用開始前に支払ったものであっても取得価額に含めずに処理できるとされています。
つまり税務上は「外せる費用」もあるということです。
ここで通関担当者が見落としがちなのが、「関税は取得価額に含めるが、固定資産税評価額には必ずしも反映されない」というズレです。
参考)https://www.recpas.or.jp/new/jigyo/report_web/r4_kensyushiryou/r4_kankei_3.pdf
固定資産税評価はあくまで土地・家屋の評価基準に基づいて算定されるため、建物の建設コストに含まれる輸入建材の関税額を、自治体が個別に加算してくれるわけではありません。
たとえば、輸入した特殊ガラスを多用して建築コストが1億円から1億2,000万円に増えても、評価基準上の再建築価格と経年減価により、固定資産税評価額の差は数百万円程度にとどまることがあります。
参考)https://www.recpas.or.jp/new/jigyo/report_web/pdf/H.15/kaokuhyouka.pdf
固定資産税評価と取得価額は別物ということです。
このズレは減価償却との関係でも影響します。
減価償却は取得価額ベースで計算されるため、輸入時の関税をきちんと取得価額へ算入しておけば、その分だけ毎年の減価償却費が増え、法人税負担を軽減できます。
逆に、通関書類と会計処理の連携が弱く、関税を雑費や荷造運賃で処理してしまうと、本来計上できた償却費が失われ、長期的には数百万円単位の税負担増につながります。
関税をどこに載せるかが条件です。
リスク回避の場面としては、輸入設備の通関時に出るインボイス、海上運賃、保険料、関税額の明細を、会計・税務チームと一緒にチェックし、「取得価額に含めるべきもの」の一覧を簡易フォーマットで共有しておく方法が有効です。
狙いは、通関担当の段階で取得価額の材料を揃えておき、後工程の経理が迷わないようにすることです。
そのうえで、国税庁の「減価償却資産の取得価額に含めないことができる費用」リストを1ページだけ印刷し、共有フォルダに保存しておくと、現場での判断がブレにくくなります。
取得価額のルールだけ覚えておけばOKです。
詳細な取得価額の範囲については、以下のリンクが便利です。
国税庁「減価償却資産の取得価額に含めないことができる費用」
岡篤志税理士事務所「固定資産の取得価額」解説記事
通関業務に携わる方は、海外不動産や海外工場を持つ企業の輸出入案件に関わることが少なくありません。
このとき問題になるのが、現地の固定資産税評価額と、日本での相続税評価や法人税上の評価の食い違いです。
参考)海外進出における固定資産税の扱いについて
シンガポールのように「年間評価額(Annual Value)」として推定家賃ベースで固定資産税が課される国もあり、日本のような「地価×0.7」ベースとは前提が根本的に異なります。
評価の前提が国ごとに違うということですね。
実務上、海外不動産の減価償却や按分計算を行う際に、「現地の鑑定評価額」と「現地の固定資産税評価額」のどちらを基準にするかで争いになった事例もあります。
参考)国際税務Vol.58 国外不動産の取得価額…
ある裁決では、現地の固定資産税評価額は所有者変更時点の市場価格を反映する合理的な指標と認められ、税務当局は納税者側の簡略な鑑定評価を採用せず、固定資産税評価額に基づく按分を妥当と判断しました。
このケースでは、固定資産税評価額を基準にした結果、減価償却費が減少し、日本側での課税所得が増える方向に是正されています。
つまり評価額の選び方で税負担が変わるということです。
通関担当者が押さえておくべきポイントは、次の3つです。
・輸入者が海外不動産や設備を保有している場合、現地の固定資産税評価額が日本側の税務判断の材料として利用される可能性があること。
・相続・事業承継の局面では、日本国内不動産について「固定資産税評価額×倍率」などのルールが適用され、路線価地区かどうかで評価が変わること。
・固定資産税評価額が時価の7割程度に抑えられているため、相続税・贈与税の節税策としてローン付き不動産を利用するスキームが存在する一方、近年は評価見直しや補正率導入などで節税効果が弱まる方向にあること。
相続と国際税務が絡むときは特に注意が必要です。
現場では、荷主や顧客から「海外工場の評価額」や「現地の固定資産税証明書」を提示されることがあります。
このときに、「それは現地税務上の評価で、日本の相続税評価や法人税評価とは別物です」とひと言添えられると、後続の税理士・会計士との連携がスムーズになります。
逆に、「現地でこの評価だから日本でも同じ」と安易に説明すると、後で税務調査を受けた際に誤解の出所として矢面に立たされかねません。
評価の種類を区別することに注意すれば大丈夫です。
海外不動産と固定資産税評価額の関係については、国際税務に強い会計事務所の解説が参考になります。
SUパートナーズ税理士法人「海外不動産と固定資産税評価額を巡る裁決事例」
また、海外進出企業向けの情報サイトでは、各国の固定資産税制度の概要や税率が整理されており、案件ごとのリスク想定に役立ちます。
X-HUB Tokyo「海外進出における固定資産税の扱いについて」
通関業務の現場で日々扱っているのは「関税課税価格(CIF価格)」ですが、ここに含まれる要素の一部が、後で固定資産の取得価額や減価償却、さらには固定資産税評価額との比較材料になります。
輸入取引における消費税の課税標準は、関税課税価格に関税や一部の個別消費税額を加算した合計額であり、固定資産として計上される輸入設備については、この金額をベースに取得価額が組み立てられます。
しかし、固定資産税評価額は自治体が国内に存在する土地・家屋を評価するものなので、輸入時点のCIF価格とは全く別のタイミング・別のロジックで決まります。
つまり関税評価と固定資産課税評価は目的が違うということですね。
典型的なリスクパターンとして、次のような流れがあります。
関税評価に関する照会事例では、委託加工先に貸し付けた設備の取得価格をCIF価格へ加算すべきかどうかが問題となっており、「設備の対価が輸入貨物の現実支払価格に含まれるか」という判断次第で関税額が大きく変動します。
このようなケースでは、関税評価の結論がそのまま設備の取得価額や減価償却の前提にも波及し得るため、通関担当者が税務部門と早期に情報共有しておくことが重要です。
関税評価の判断が固定資産税評価額よりも先に動くというのがポイントです。
また、設備の輸入と同時に行う据付工事、基礎工事、試運転費用などは、「事業の用に供するために直接要した費用」として取得価額に含める必要があります。
例えば、輸入した包装機械本体5,000万円に対し、現地での基礎工事と据付費用に1,000万円、試運転とオペレーター教育に300万円かかった場合、取得価額は6,300万円となります。
しかし固定資産税評価の観点からは、これらの内訳よりも「再建築価格」と「経年減価」の方が重視されるため、機械設備自体の固定資産税評価額は取得価額とは別の値になることが多いです。
評価のズレを前提に考えるのが基本です。
リスクを減らすための実務的な対策としては、次のステップが有効です。
・輸入時点で、CIF価格・関税額・保険料・荷役費・国内運賃などを「取得価額候補」として一枚のシートにまとめる。
・関税評価で後日更正があった場合、そのシートを更新し、会計システム側の取得価額も必ず修正する運用ルールを決める。
・固定資産税の納税通知書が届いたら、固定資産税評価額と帳簿上の取得価額の差をざっくり確認し、「想定内の差かどうか」を税理士と共有する。
こうした基本的な連携だけでも、通関のミスが数年後の税務リスクに化ける事態をかなり減らせます。
関税評価と固定資産課税評価をリンクさせる意識が条件です。
通関と関税評価の基本については、国税庁と税関の解説ページが参考になります。
国税庁「No.6563 輸入取引」- 輸入消費税の課税標準(CIF+関税等)の解説
税関「輸入貨物に係る関税評価上の取扱い等に関する照会事例」
最後に、通関業務従事者が日常業務の中で「固定資産課税評価額」を意識するときのチェックポイントをまとめます。
ここまで見てきたように、評価額そのものを計算するのは市町村や税理士の役割ですが、通関の現場での一言・一資料が、後の税務判断を大きく左右することがあります。
いいことですね。
チェックリストの主な項目は次の通りです。
こうしたチェックは、1案件あたり数分の確認で済みます。
しかし、何も伝えないままだと、数年後の税務調査で「当時の通関書類がこうなっていたから…」と指摘され、顧客との信頼にも影響しかねません。
一方で、事前に「固定資産税評価額は別物なので、税務担当と一緒に検討してください」と一言添えておけば、「税務リスクに気づいてくれる通関業者」として評価される可能性が高まります。
つまり通関担当の一言が将来のトラブル防止につながるということです。
追加で学ぶ際には、不動産評価や固定資産税評価額の仕組みを解説した専門サイトと、国税庁・総務省の一次資料をセットで読むのがおすすめです。
通関実務と税務の境界線を意識して知識を広げていくことで、輸入者・荷主からの相談に対する説得力が大きく変わってきます。
固定資産課税評価額を「通関にも関係する数字」として捉え直すことが重要です。