危険物等級一覧を通関業務で正しく使う実務知識

危険物等級一覧は通関業務の基本ですが、等級の判断ミスが貨物差し止めや罰則につながることをご存じですか?現場で役立つ分類の基準や例外を解説します。

危険物等級一覧と通関業務で必要な分類の実務知識

等級1の爆発物より、等級9の雑品が通関トラブルの原因になることの方が実は多いです。


📋 この記事の3つのポイント
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危険物等級は全9クラス

国際基準(UN)による分類体系を理解すれば、申告ミスによる貨物差し止めリスクを大幅に下げられます。

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等級の見落としは法的リスクに直結

危険物の誤申告は関税法違反となり、貨物没収や行政処分の対象になる場合があります。

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等級9(雑品)が最も見落とされやすい

リチウム電池や乾燥剤など日用品に近い物品が等級9に分類される場合があり、見落としが現場で多発しています。


危険物等級一覧:国連分類による全9クラスの基本

国際輸送において「危険物」とは、国連(UN)の勧告である「危険物輸送に関する勧告(オレンジブック)」に基づいて定義・分類されます。この分類体系は、航空輸送ではICAO技術指示書やIATA危険物規則書(DGR)、海上輸送ではIMDGコードとして各機関が実務規則に落とし込んでいます。通関業従事者がまず頭に入れるべきは、この9つのクラス(等級)の体系です。


以下が危険物等級の全9クラスの一覧です。






















































等級(クラス) 分類名称 代表的な品目例
Class 1 火薬類・爆発物 花火、弾薬、信号弾
Class 2 高圧ガス LPGボンベ、消火器、スプレー缶
Class 3 引火性液体 ガソリン、エタノール、塗料
Class 4 可燃性固体・自然発火性物質・禁水性物質 マッチ、金属粉、カーバイド
Class 5 酸化性物質・有機過酸化物 過酸化水素、硝酸アンモニウム
Class 6 毒物・感染性物質 農薬原液、病理検体
Class 7 放射性物質 医療用放射性同位体、核燃料
Class 8 腐食性物質 塩酸、硫酸、水酸化ナトリウム
Class 9 その他の危険物(雑品) リチウム電池、ドライアイス、磁性物質


クラスが数字で表されるため「数字が大きいほど危険」と思いがちですが、それは間違いです。等級の数字は危険度の高低ではなく、危険の種類(性状)を示す識別番号です。


Class 1の爆発物は確かに取り扱い制限が厳しいですが、それはClass 9より「危険性が高い」のではなく「危険の種類が異なる」ということです。通関実務では、この前提を誤解したまま書類作成をしているケースが散見されます。注意が必要なポイントです。


さらに、Class 1、Class 2、Class 4、Class 5、Class 6にはそれぞれ細分類(Divisionと呼ばれる副等級)が設けられています。たとえばClass 1は1.1〜1.6、Class 2は2.1〜2.3というように細分化されており、申告書には主等級だけでなくDivisionまで記載が求められる場合があります。これが記載漏れになりやすい箇所の一つです。


国土交通省:危険物の海上輸送に関するIMDGコード対応ページ(IMDGコードの最新改正情報および国内法令との関係が確認できます)


危険物等級一覧の副等級(Division)と混在禁止ルールの実務上の落とし穴

等級の副番号(Division)を理解するだけでは十分ではありません。実務でさらに重要なのが「混載禁止(Segregation)ルール」です。これは、異なる等級・副等級の危険物を同一コンテナや同一パレットに積み合わせてはならない、または積み合わせる場合の条件を定めたルールで、航空・海上ともに厳格に規定されています。


つまり混載の可否判断が必要です。


海上輸送のIMDGコードでは、各危険物の組み合わせに対して「Away from(離す)」「Separated from(分離する)」「Separated by a complete compartment or hold from(区画で完全分離)」「Separated longitudinally by an intervening complete compartment or hold from(縦方向に区画で分離)」という4段階の分離要件が定義されています。これをSegregationテーブルと呼びます。


たとえばClass 1(火薬類)とClass 3(引火性液体)の混載は原則禁止です。一方、Class 8(腐食性物質)とClass 9(雑品)はケースによって混載可能となります。ただし等級だけで可否を判断するのは危険で、副等級や梱包グループ(Packing Group)、さらにUN番号までを照合して判断することが求められます。


梱包グループは3段階(PG I・II・III)に分かれており、PG Iが最も危険度の高い物品に割り当てられます。たとえばClass 3の引火性液体でも、PG Iのガソリンと、PG IIIの燃料用アルコールとでは、求められる梱包仕様・ラベル・書類が異なります。これが知識として頭に入っていないと、書類を見落とすリスクが高まります。


IATA Dangerous Goods Regulations(DGR)公式ページ(航空輸送における危険物規則の最新版確認および各等級の取り扱い基準の参照に使えます)


危険物等級一覧で最も見落とされるClass 9:リチウム電池の通関実務

Class 9は「その他の危険物」という名称からして「大した危険物ではない」と受け取られがちです。実際にはリチウム電池、ドライアイス、磁性物質、高温物質、環境危害物質など、現代の国際貨物に非常に高頻度で登場するアイテムが集中しています。リチウム電池がClass 9に含まれている事実は、通関業従事者なら押さえておくべき基本です。


特にリチウム電池は「機器に内蔵(Contained in equipment)」「機器に同梱(Packed with equipment)」「電池単体(Standalone)」の3パターンで適用されるUN番号・規制レベルが異なります。IATAのDGRでは、リチウムイオン電池はUN3480(単体)またはUN3481(機器内蔵・同梱)に区分され、ワット時定格(Wh)が100Wh超かどうかで取り扱いレベルが分岐します。


これは意外ですね。


電池内蔵のスマートフォンや小型デバイスの輸入申告では、「機器の通関だから危険物申告は不要」と誤解されているケースが現場では少なくありません。しかし100Wh以下の電池であっても、出荷数量が多い場合(たとえばスマホが500台ロットの貨物など)は、電池の総Wh数が航空機の積載制限に抵触する可能性が出てきます。申告前に電池仕様を荷主に確認することが原則です。


さらにドライアイスについても、航空貨物では200kg以上の積載に関する申告義務があります。ドライアイスは炭酸ガス(CO₂)として気化し、閉鎖空間での酸欠リスクがあるためClass 9の危険物として規制されています。「保冷材は荷物じゃない」という認識は誤りで、ドライアイス重量を含めた危険物申告が必要になる場合があります。確認が必要な場面です。


国土交通省航空局:航空危険物輸送に関する解説資料(リチウム電池を含む危険物の航空輸送規制と申告要件の実務的な解説が含まれています)


危険物等級一覧に基づく危険物申告書(Dangerous Goods Declaration)の記載ミスと法的リスク

危険物の輸送において求められる主要書類が「危険物申告書(DGD:Dangerous Goods Declaration)」です。航空危険物ではShipper's Declaration for Dangerous Goodsとも呼ばれます。海上輸送ではDangerous Goods Manifestがこれに相当し、IMDGコードおよび各国の国内法令に基づいて作成が義務付けられています。


この書類の記載ミスは、単なる書類不備ではなく法的リスクに直結します。


日本では、航空危険物輸送に関しては航空法第86条の2以下が適用され、不適切な危険物輸送に対しては1年以下の懲役または50万円以下の罰金が規定されています。さらに虚偽申告や故意の隠ぺいと判断された場合は、より重い処分の対象となります。海上危険物については、船舶安全法に基づき危険物の誤申告は行政処分や積み荷の揚げ降ろし命令の対象になり得ます。


DGDに必要な記載項目は以下の通りです。



  • 📌 UN番号(例:UN3480):物質ごとに固有の4桁番号

  • 📌 品名(Proper Shipping Name):規定された正式名称を使用(通称・商品名は不可)

  • 📌 危険物等級(Class/Division):主等級と副等級

  • 📌 梱包グループ(Packing Group):PG I・II・IIIのいずれか

  • 📌 数量と梱包の種類:重量または容量、梱包タイプのコード

  • 📌 荷送人の署名・日付電子署名の可否は輸送機関によって異なる


品名の記載について特に注意が必要なのは、英語での正式名称(Proper Shipping Name:PSN)を使用しなければならないという点です。荷主が商品名やブランド名で書類を作成してくることがありますが、それを通関業者がそのまま使ってしまうケースが発生しています。「Lithium Ion Battery」ではなく「Lithium ion batteries」と複数形で統一するなど、細部の記載ルールも決まっています。書類の細部が条件です。


通関業務の現場だけが知る危険物等級と「非危険物」境界線の実務判断

ここからは、マニュアルには載りにくい現場視点の話です。


危険物か非危険物かの境界は、必ずしも物質の化学的特性だけで決まるわけではありません。量・状態・用途・梱包方法によって、同じ物質が「危険物」になるか「非危険物(Not Restricted:NR)」として通関できるかが変わります。この点を理解しているかどうかが、現場での判断の速さに大きく影響します。


典型例が「Limited Quantity(限定数量)」と「Excepted Quantity(例外数量)」の規定です。一定の少量以下であれば、通常の危険物として扱われずに輸送できる制度が用意されており、IATA DGRおよびIMDGコードにそれぞれ規定されています。たとえばClass 3の引火性液体PG IIIの液体は、航空輸送のLimited Quantityとして1梱包あたり最大1Lまで許容されています。一般貨物と混載できる場合もあります。


ただしLimited Quantityで輸送する場合でも、外装に「Y」マーク(航空)または「<>」ダイヤマーク(海上)の表示義務が残ります。この表示が脱落していた場合は、税関でストップされるリスクがあります。表示確認は必須です。


また、化粧品(香水)のような一般消費財もClass 3の引火性液体に分類される場合があります。エタノール含有量が24%を超える製品は、輸送形態によって危険物申告が必要になります。荷主が「化粧品だから危険物ではない」と思い込んで申告書を省略してしまうケースが現場では実際に起きており、通関業者がチェックリストとして品目の成分確認を行う習慣が重要です。


現場で使いやすいツールとして、IATAのDGRに付属する「List of Dangerous Goods(A表)」や、各航空会社・船社が提供するオンライン危険物確認ツールがあります。荷主から受け取った品目とUN番号を照合するだけで、適用規制のレベルを素早く確認できます。確認する習慣が判断ミスを防ぎます。


税関:危険物等の輸出入に関する注意事項(税関窓口での取り扱い基準および関連法令の紹介ページ)


国土交通省:海上における危険物輸送の概要(IMDGコードの国内適用と船舶安全法の関係を確認するのに適しています)