危険物申告書の書き方と通関業務で失敗しない完全ガイド

危険物申告書(DGD)の書き方を誤ると、貨物が輸送拒否・没収されるリスクがあることをご存知ですか?通関業従事者が必ず押さえておくべき記載項目・ミスの回避策・最新規則を解説します。

危険物申告書の書き方と通関実務で知っておくべき全知識

UN番号を1文字書き間違えただけで、あなたの貨物はその日のうちに積み残されます。


📋 この記事の3つのポイント
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DGD(危険物申告書)の基本と必須記載項目

IATA DGRに準拠したDGDの構造と、荷送人・UN番号・クラス分類など絶対に外せない記載項目を徹底解説します。

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よくある記載ミスとその影響

UN番号の誤記・クラス分類の間違い・SDS不備など、実務現場で頻発するミスと、輸送拒否・損害発生リスクの実例を紹介します。

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IATA DGR改定への対応とミスゼロ運用術

毎年1月に改定されるIATA DGRへの追従方法と、通関現場で使えるチェックリスト運用の実践ノウハウをお伝えします。


危険物申告書(DGD)の基本と通関業務における役割


危険物申告書、英語では「Dangerous Goods Declaration(DGD)」または「Shipper's Declaration for Dangerous Goods」と呼ばれるこの書類は、航空輸送において危険物を送る際に法的に提出が義務付けられた最重要書類のひとつです。IATA(国際航空運送協会)が定める「危険物規則(DGR:Dangerous Goods Regulations)」に基づいて作成されます。


DGDの役割は単なる書類提出にとどまりません。これが原則です。航空会社や地上作業スタッフ、通関業者、税関担当者など、貨物に関わるすべての関係者に「この貨物には危険物が含まれている」という情報を正確に伝えるための唯一の公式コミュニケーション手段です。つまり、DGDの内容に誤りがあれば、安全管理の出発点が崩れることになります。


海上輸送においても同様の申告書が必要になります。国際海事機関(IMO)が定めるIMDGコード(国際海上危険物規程)に基づいており、「コンテナ危険物明細書(デクラ)」などの形式で提出されます。通関業務に携わる方は、航空と海上の両方のルールを理解しておく必要があります。


重要なのは、DGDの作成責任は荷送人(Shipper)にあるという点です。通関業者やフォワーダーが作成を代行するケースもありますが、最終的な確認と署名を行う義務は荷送人にあります。「フォワーダーに任せているから大丈夫」という発想は危険です。書類に署名した者が法的責任を負います。


危険物は国連規則に基づき9つのクラスに分類されています。それぞれ対応するルールや書類の書き方が異なるため、クラスの理解は書き方の前提知識として必須です。


| クラス | 種別 | 主な例 |
|--------|------|--------|
| Class 1 | 爆発物 | 花火、火薬、エアバッグ |
| Class 2 | ガス | スプレー缶、冷媒ガス |
| Class 3 | 引火性液体 | 香水、アルコール、塗料 |
| Class 4 | 可燃性固体 | マッチ、硫黄 |
| Class 5 | 酸化性物質・有機過酸化物 | 漂白剤、乾燥剤 |
| Class 6 | 有毒物質 | 農薬、医薬化学品 |
| Class 7 | 放射性物質 | 放射線計測器 |
| Class 8 | 腐食性物質 | バッテリー液、酸・アルカリ |
| Class 9 | 雑品(Miscellaneous) | リチウム電池、ドローンバッテリー |


クラス9のリチウム電池は特に注意が必要ですね。見た目に危険物と認識されにくいため、誤申告や申告漏れが後を絶ちません。


DGD(危険物申告書)とは|記載内容・注意点・実例まとめ(LOGISTIDA JAPAN)


危険物申告書の書き方:必須記載項目を詳しく解説

実際にDGDを書く際、どの項目をどのように記載すべきか、順番に確認していきましょう。これが基本の流れです。


まず「Shipper(荷送人)」欄には、危険物を輸送に出す側の企業名・住所・連絡先を英語で正確に記載します。次に「Consignee(荷受人)」欄には、到着地で貨物を受け取る先の情報を同じく英語で記入します。住所の誤記や省略は通関時に照合エラーを引き起こすことがあるため、インボイスの表記と完全に一致させることが原則です。


「Air Waybill番号(AWB番号)」は、航空貨物運送状の番号です。DGDとAWBは対で管理されるため、この番号の誤記は致命的です。


続いて最も重要なのが「UN番号(国連番号)」の記載です。UN番号は各危険物に対して国際的に付与された4桁の識別番号で、たとえばリチウムイオン電池(単体)は「UN3480」、機器に組み込まれたリチウムイオン電池は「UN3481」となります。この1番号の違いで適用されるパッキングインストラクション(PI)が変わり、梱包方法も変わります。


「正式品名(Proper Shipping Name:PSN)」は、UN番号に対応した正式な品名です。製品名や商品名ではなく、IATA DGRのDangerous Goods Listに記載された表現をそのまま使用しなければなりません。


「クラス(Class)」と「副次危険性(Subsidiary Risk)」は、該当するクラス番号を記載します。主たる危険性と副次的な危険性の両方を持つ場合、副次危険性も漏れなく記入しなければ申告書が不完全とみなされます。


「包装グループ(Packing Group:PG)」は、危険物の危険度に応じてⅠ・Ⅱ・Ⅲの3段階に分類されます。Ⅰが最も危険性が高く、Ⅲが比較的低い区分です。リチウム電池など一部の品目はPGが設定されていないため「—」または「N/A」と記載します。


「数量と梱包情報」には、正味量(Net Quantity)・総重量(Gross Weight)と梱包の個数・種類を記載します。単位の記載(kgなのかLなのか)は絶対に省略できません。


「署名(Signature)」欄は、荷送人が日付とともに署名する箇所です。IATA規定により、DGDには「危険物がIATAの規則に従って申告・準備・分類・梱包・表示・ラベリングされており、すべての点において輸送に適した状態にある」という証明文が記載されており、署名はその内容への同意を意味します。これは有料です——いいえ、コスト面ではなく法的責任として発生するものです。つまり軽い気持ちでサインしてはなりません。


危険物申告書 記入要領(国内貨物)|JAL貨物(PDF)


危険物申告書の書き方でよくあるミスと積み残しリスクの実態

現場で実際に起きているミスのパターンを把握しておくことは、通関業従事者にとって極めて重要な予防知識です。厳しいところですね。


最も頻発するのが「UN番号の誤記」です。たとえば前述のUN3480(リチウムイオン電池・単体)をUN3481(機器組み込み品)と混同して記載するケースは後を絶ちません。この場合、適用すべきパッキングインストラクションがPI965からPI966に変わるため、梱包基準が変わり、場合によっては旅客機搭載の可否まで変わります。航空会社が発見した時点で即積み残しとなります。


「クラス分類・パッキンググループの間違い」も深刻なミスです。ある日本企業が化学薬品を輸送する際、危険区分を誤って記載したために到着国の税関で貨物が一時保留となり、保管料・再検査費用が重なって輸送コストが大幅に膨らんだ事例があります。書類の修正と再提出だけで1週間以上かかることも珍しくありません。


「SDS(安全データシート)の不備や期限切れ」も見落としやすいポイントです。SDSは危険物輸送の出発点であり、UN番号・クラス・PSNの確認源となります。しかし発行から年数が経ったSDSをそのまま使用し続けているケースは実務現場では多く見られます。古い情報が記載されたSDSを基にDGDを作成すると、最新の規則に適合しない申告書が生まれます。SDSが古い場合、輸送会社が受け入れを拒否することがあります。


「ラベル・マーキングの不備」も書類と切り離せないミスです。危険物ラベルの貼り忘れ・サイズ違い・破損などは、空港での受託チェックで即座に発見されます。DGD自体が正確でもラベルが不備であれば、全体として搭載拒否の対象になることを覚えておいてください。


アジアのある空港では、DGD未提出のまま出荷しようとした日本企業の貨物が没収され、数十万円規模の損害が発生した事例も報告されています。痛いですね。DGDは「準備できたら提出」ではなく、「積み込み前の必須手続き」として位置づけておく必要があります。


危険物関連書類の不備が引き起こす国際輸送トラブルと解決策(container119)


航空・海上で異なる危険物申告書の書き方と提出タイミング

「航空も海上も同じ申告書フォーマットでいい」と考えている通関担当者は少なくありませんが、これは大きな誤解です。


航空輸送では、IATA DGR(航空危険物規則書)に準拠したDGD(Shipper's Declaration for Dangerous Goods)が必要です。フォームは白色(2部作成が原則)で、IATA指定の証明文が印刷されたものを使用します。日本語での提出は不可であり、英語での作成が必須です。また、DGDは手書きも可能ですが、読みやすく明確に記入されていることが条件です。


一方、海上輸送ではIMDGコードに基づく申告書が必要で、日本では「コンテナ危険物明細書(デクラ)」「危険物又は有害物事前連絡票」という書類が主に使われます。書類フォーマット自体は航空のDGDとは異なりますが、UN番号・クラス・PG・PSNの記載義務は共通です。


提出タイミングにも大きな違いがあります。航空便はAWBと合わせて出荷前の提出が必須であり、フライト当日の受託時点で完結している必要があります。海上輸送ではさらに注意が必要で、危険品申告(DGD)はコンテナブッキング前に提出することが求められるケースが増えています。申告タイミングが遅れると、すでに確保しているブッキング自体がキャンセルされ、船便を1本丸ごと逃す事態になります。


海上輸送では「UN容器(UN規格包装)」の使用が必須であり、容器証明書の準備も必要です。この点は書類の記載内容と実際の梱包が一致していることを証明する重要な根拠になります。つまり書類だけが正しくても、実物の梱包がUN規格に合っていなければ意味がありません。


また、航空では一部の危険物が「航空輸送禁止品目」に分類されています。大容量リチウムイオン電池や特定の腐食性物質がその例です。これらは航空での輸送自体が不可能であるため、DGDを正確に作成しようとしても申告できません。代替として海上輸送を選択する判断が必要になります。SDSを事前に入手して航空可否を確認する習慣が、ここで活きてきます。


危険品の海外輸送ガイド|航空・海上で必要なルールと準備を徹底解説(yushutsu.jp)


IATA DGR改定への追従と危険物申告書ミスゼロを実現するチェックリスト

IATA DGRは毎年1月1日付けで改定されます。これは意外ですね——と感じる方もいるかもしれませんが、実際には既存ユーザーでも「うっかり昨年版で申告した」というミスが業界内で繰り返されています。


2026年1月1日発効の第67版では、リチウムイオン電池に関する規制がさらに厳格化されています。ANA CargoやJALカーゴから発効前に公式アナウンスが出ているため、こうした航空会社の公式サイトでの告知を年末に確認する習慣をつけることが有効です。古い規則書のまま対応していると、知らず知らずのうちに最新規定に適合しない申告書を作成してしまいます。


DGDのミスをゼロに近づけるためには、チェックリストの現場定着が鍵です。以下のチェック項目を業務フローに組み込むと、ヒューマンエラーを大幅に減らすことができます。


✅ DGD作成前チェック
- SDSの最新版を入手済みか(発行から3〜5年以内が目安)
- UN番号・PSN・クラス・PGをSDSの第14項から確認したか
- 航空輸送禁止品目に該当しないか確認したか


✅ DGD記載内容チェック
- Shipper・Consigneeの情報がインボイスと一致しているか
- UN番号4桁に誤記がないか(リチウム電池なら3480か3481か)
- PSNがDGRのDangerous Goods List表記と完全一致しているか
- クラス・副次危険性・PGの記載漏れがないか
- 数量・重量の単位(kg/L)の記載は正確か
- 日付・署名の記入は完了しているか


✅ DGD提出前チェック
- ラベル・マーキングが梱包物に貼付されているか
- 容器証明書・SDSなど添付書類は揃っているか
- 第三者によるクロスチェックを実施したか


チェックリストは「作っただけ」で終わらせないことが最大のポイントです。形骸化すると意味がありません。担当者名・確認日時を記録に残す運用にすることで、責任の所在も明確になります。


さらに最近の実務では、IATA DGR準拠の危険物申告書作成支援ソフト(専用ツール)を活用する企業も増えています。UPSが提供する申告書作成モジュールや、各フォワーダーが提供するシステムを使うことで、PSN・UN番号の照合ミスを自動で検知できるケースもあります。ミスを減らしたい場合、こうしたツールの活用を一度確認してみることを推奨します。


IATA 航空危険物規則書第67版 DGR 改定に伴うご案内(ANA Cargo 公式)


危険物申告書DG申告のミスをゼロにするチェックリスト運用(newji)




ユニット 危険物標識(縦型)危険物の類別5行