関税障壁 非関税障壁 違いと業務影響

通関業務で混同されがちな関税障壁と非関税障壁は、実務上の対応が全く異なります。関税は税率計算だけですが、非関税障壁は書類不備や規格違反で貨物が止まるリスクがあることをご存知ですか?

関税障壁と非関税障壁の違い

非関税障壁は関税障壁よりコスト負担が大きい。

この記事のポイント
💰
関税障壁は税金による制限

輸入品に税率をかけて価格を引き上げ、輸入量を抑制する直接的な障壁

📋
非関税障壁は制度・手続きによる制限

数量制限や検査手続きの煩雑化など、税金以外の方法で輸入を制限する障壁

⚠️
通関業務への影響は非関税障壁の方が深刻

書類不備や規格違反で貨物が止まり、保管料や遅延損害が発生するリスクがある

関税障壁とは税率で輸入を制限する仕組み


関税障壁とは、政府が輸入品に高い税率を設定することで、輸入量を抑制する貿易障壁です。輸入される貨物には品目ごとに関税が課税されますが、自国産業の保護や振興を目的として、政府が意図的に関税率を高く設定することで、輸入品の価格競争力を下げる仕組みを指します。
参考)関税障壁、Tariff Barriers 貿易用語を説明しま…

例えば、チーズを輸入する際には関税として22.4~40%が徴収されます。税率が明確に設定されているため、輸入業者は事前にコストを計算できます。これが関税障壁の基本です。
参考)非関税障壁とは?わかりやすく具体例など

この障壁は、輸入品の国内販売価格を引き上げることで、国内生産者を保護する効果があります。一方で、関税率は明示されているため、通関業務においては計算が比較的単純です。​
ただし、近年ではEPAやFTAによる関税撤廃が進んでいます。例えば、今まで10%の関税がかけられていた30億円の商品を輸出していた場合、関税が撤廃されれば単純計算で3億円のコスト削減が見込めます。
参考)EPA(経済連携協定)・FTA(自由貿易協定)は関税や非関税…

非関税障壁とは規制や手続きで輸入を制限する措置

非関税障壁とは、関税以外の方法で主に輸入を制限する措置のことです。ルールや基準、手続きの煩雑さによって輸入の障壁となるものを指します。​
具体的には以下のような種類があります。


  • 輸入数量制限(クォータ制度):一定期間に輸入できる数量を制限する制度。例えば外国産米を年間○トンまでに制限するケースがあります​

  • 許可制度(ライセンス制):政府の許可がないと輸入できない制度。輸入手続きを複雑にすることで事実上制限することもあります​

  • 技術的規格・基準:成分表記が日本語でないと販売不可、検疫に数週間必要といった要件​

  • 輸入一時停止措置:安全上の理由(伝染病、放射能、異物混入など)で特定の国や品目の輸入を一時的に停止する措置
    参考)非関税障壁とは?具体例を挙げて解説して下さい。


  • 国内産業への補助金:国内生産者に補助金を交付することで、輸入品よりも国産品を有利にする​

これらは表向きは安全・健康・環境・品質確保などを目的としますが、結果的に輸入を難しくする効果があります。つまり制度が基本です。​
米国では、輸入数量割当制として一定期間内に輸入される品目の数量を制限する制度が運用されており、数量が制限される場合と、一定の数量に対し関税の割引が適用されるものの、この数量を超える分には通常の税率が適用される場合があります。
参考)貿易管理制度

日本では、のりは1人(1世帯)1月1,000枚まで、あおのり及びひとえぐさは1人(1世帯)1月250グラムまでといった具体的な数量制限が設定されています。
参考)輸入割当制度(IQ品目) ~IQ品目該当、非該当について~

関税障壁と非関税障壁の通関業務での影響の違い

通関業務における両者の影響は、対応方法とコスト構造が大きく異なります。
関税障壁の場合、税率が明示されているため、輸入前にコスト計算が可能です。通関士は関税率表を参照し、貨物の価格に税率を乗じるだけで税額を算出できます。手続きは定型的で、予測可能性が高いのが特徴です。​
一方、非関税障壁は「お金」ではなく「制度・ルール・書類不備」によって輸出入が止まるケースが増えています。FDA登録、CEマーク、ラベル表示など、実務に直結する要件をクリアしなければ、貨物は通関できません。YouTube​
書類不備や規格違反が発生した場合、貨物は保税地域で留め置かれます。保管料は日割りで発生し、遅延による納期遅れは取引先との関係悪化につながります。そのため非関税障壁の方が条件です。
デジタル化によってこれらのミスを最小限に抑えられます。例えば、システムによる入力チェックや自動計算機能を活用することで、人為的なミスを減らし、正確な情報に基づいた通関手続きを実現できます。​
通関手続きを電子化することで、手続きにかかる時間を大幅に短縮できます。税関職員による書類の確認や処理も電子化によって効率化され、通関手続き全体のスピードアップにつながります。​

非関税障壁が通関業務に与える具体的リスク

非関税障壁への対応不足は、通関業務において深刻な経済的損失を引き起こします。
最も直接的な影響は、貨物の留め置きによる保管料の発生です。書類不備や規格違反が判明した場合、貨物は保税地域で留め置かれ、1日単位で保管料が加算されます。大型コンテナの場合、1日あたり数万円規模の追加コストが発生するケースもあります。
検査手続きの煩雑化も大きな問題です。輸入品に対する追加検査や認証取得の義務付けにより、通関に数週間を要することもあります。この間、納期は遅れ、取引先との信頼関係が損なわれるリスクが高まります。
輸入数量制限(クォータ制度)に該当する品目の場合、割当枠を超えた輸入は原則として認められません。事前にクォータ枠の取得手続きを行わなければ、貨物自体が輸入不可となる可能性があります。​
さらに、国際的な貿易の場では非関税障壁がたびたび問題になるトピックです。各国の規制が異なるため、複数国への輸出入を行う場合、国ごとに異なる規格や基準への対応が必要となります。​
これらのリスクに対応するために、JETROや商工会など活用できる窓口があります。事前相談により、輸入予定品目に適用される非関税措置を確認し、必要な書類や手続きを把握することができます。YouTube​
AI・RPAによる業務自動化も有効な対策です。過去の通関データに基づいて最適なルートを予測したり、不正リスクを事前に察知したりすることが可能になります。​

関税障壁の削減が進む中での非関税障壁の重要性

貿易自由化の進展により、関税障壁の重要性は相対的に低下しています。国際的な貿易協定の進展やグローバル化の深化に伴い、非関税障壁が貿易政策においてより大きな役割を果たすようになっています。
参考)非関税障壁とは?関税との違いや近年の政治動向をわかりやすく解…

WTO(世界貿易機関)では、加盟国が交渉を通じて相互に関税を引き下げていくことを目指してきました。その結果、多くの品目で関税率が大幅に引き下げられ、一部では関税が完全に撤廃されています。
参考)https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/tsusho_boeki/fukosei_boeki/report_2019/pdf/2019_02_05.pdf

しかし、関税率が下がっても貿易量が期待ほど増加しないケースが多く見られます。これは非関税障壁が依然として大きな影響を持っているためです。低い関税障壁にもかかわらず、日本の輸入規模が欧米と比較して低いのは、非関税障壁によるものだとして、日本をめぐる通商摩擦の焦点となりました。
参考)非関税障壁

国際通商の自由を担保するために非関税障壁の一つとなりうる規格を国際的に統一する動きが高まっています(WTO/TBT協定)。WTO/TBT協定により、各国の規格は基本的に国際規格と一致していることが求められています。​
2025年には、アメリカのトランプ大統領が自身が問題と考える貿易上の不正行為(非関税障壁)についてSNSで発信し、非関税障壁について注目が集まっています。為替操作、関税および輸出補助金として機能する消費税、原価割れ販売(ダンピング)などが具体的な論点として挙げられています。​
通関業務従事者にとって、非関税障壁への理解と対応能力は今後ますます重要になります。規制、基準、割当、許可など、さまざまな措置に関する最新情報を常に把握し、適切な事前準備を行うことが、円滑な通関業務の実現につながります。
各国・地域の通関手続きにおける非関税障壁の改善に向けて、我が国を含む各国において一層の通関手続きの電子化を推進し、シングルウィンドウ構築を促進することが求められています。ASEANが今後本格的に導入を予定している通関手続き共通化・情報連携の仕組みは、非関税障壁を軽減する重要な取り組みです。
参考)https://www.jmcti.org/mondai/pdf/2013teigen.pdf

米国の貿易管理制度(輸入数量割当制の詳細)- JETRO
各国・地域の貿易・投資障壁の改善に関する提言 - 日本貿易会




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