包括保税運送の承認は、最長1年しか有効ではなく毎年更新が必要です。
保税運送とは、外国貨物を関税や消費税の支払いを留保したまま、国内の保税地域間で運送することを指します。通常、外国貨物を動かすたびに税関長へ申告し承認を受けなければなりません。これを毎回個別に行うのが「個別保税運送」です。
頻繁に保税運送を行う事業者にとって、毎回の申告は大きな事務負担となります。そこで活用されるのが「包括保税運送制度」です。
包括保税運送制度は、関税法第63条第1項に基づき、税関長が取締り上支障がないと認めた場合に限り、1年以内の期間を指定して外国貨物の運送を一括して承認できる制度です。承認を受ければ、その期間中は発送のたびに個別申告をしなくて済みます。これが基本です。
NACCSとは「輸出入・港湾関連情報処理システム(Nippon Automated Cargo and Port Consolidated System)」の略称で、日本の国際物流を支える情報処理インフラです。税関手続きの大部分はこのNACCSを通じてオンラインで行われています。包括保税運送申告も同様で、NACCSを使って電子的に申告します。
重要な点があります。包括保税運送の申告はNACCSで行いますが、発送地が「システム参加保税地域」であることが申告の大前提条件です。NACCSに参加していない保税地域が発送地の場合は、そもそもTDCによる電子申告ができません。
| 制度 | 申告単位 | 承認期間 | 到着確認 |
|---|---|---|---|
| 個別保税運送 | 運送1件ごと | 都度指定 | 都度必要 |
| 包括保税運送 | 年1回(最長1年) | 最長1年 | 月1回一括 |
| 特定保税運送(AEO) | 申告・承認不要 | 無期限(承認継続中) | NACCS入力のみ |
取締上支障がない場合に認められる制度ですが、認められた後も税関長は必要に応じて貨物に封印をしたり、担保の提供を求めたりすることができます。
参考:JETRO「税関からの保税運送の一括承認:日本」(包括保税運送・特定保税運送制度の詳細解説)
https://www.jetro.go.jp/world/qa/04A-020119.html
NACCSで包括保税運送申告を行うときに使う業務コードは「TDC」(業務項番4901)です。申告できる入力者は、通関業・保税蔵置場・船会社・船舶代理店・CY・NVOCC・海貨業と定められています。
TDCでの申告には、いくつかの条件があります。まず確認が必要です。
- 発送地がシステム参加保税地域であること
- 発送地と到着地が同一税関官署の管轄内なら、1件につき到着地は最大30箇所まで指定可能
- 発送地と到着地が異なる税関官署の管轄内なら、原則として到着地は1箇所のみ
- ただし、コンテナ貨物(船卸後に開扉されたものを除く)については、異なる税関官署間でも最大30箇所まで可能
この「30箇所」という上限は意外と重要です。複数の内陸保税地域を使っている事業者には、1件の申告でどこまでカバーできるかを事前に確認してから入力する必要があります。
TDC入力時に必要な主な項目は以下のとおりです。
| 入力項目 | 内容 |
|---|---|
| 承認期間開始予定日 | 西暦8桁で必須入力(継続申告時は入力不可) |
| 承認期間終了予定日 | 西暦8桁で必須入力 |
| 月間取扱予想件数 | 月間で予想される運送件数 |
| 運送種別コード | NR(一般運送)またはQU(検疫の経由運送) |
| 発送地コード・到着地コード | 保税地域コードで入力 |
| 運送経路及び運送具 | 必須入力 |
| 品名 | 必須入力 |
| 関税法基本通達該当番号コード | 業務コード集参照で必須入力 |
この基本通達該当番号コードは2025年10月12日に改正が施行され、使用するコードが変更されています。令和7年10月12日以降に申告を行う際は、旧コードが使えなくなっており、必ず新しい業務コード集で確認が必要です。誤って旧コードで申告してしまった場合は、税関に申し出て申告を撤回し、新コードで再申告することになります。つまり二度手間です。
申告を送信すると、NACCSシステムが自動的に「区分1(簡易審査扱い)」または「区分2(書類審査扱い)」に振り分けます。区分1に選定された場合は即時に承認となり、申告者に「包括保税運送承認通知情報(SAS0331)」が配信されます。区分2に選定された場合は申告控情報(SAS0321)が配信された後、税関が「包括保税運送申告審査終了」業務(業務コード:CEH)を実施することで承認となります。
また、申告後に内容の訂正が必要になった場合、NACCSシステム上で直接訂正することはできません。これは要注意です。申告の撤回または承認の取消しを税関(保税担当部門)に申し出て、改めて申告を行うことになります。
参考:NACCS掲示板「4901 TDC 包括保税運送申告 海上」(業務仕様・入力項目の公式定義)
https://bbs.naccscenter.com/system/ref_7nac/docs/2022112100025/
参考:税関「包括保税運送申告に係る関税法基本通達該当番号コードの変更」(2025年10月施行の変更点)
https://www.customs.go.jp/hozei/hozei_henkou.html
包括保税運送の承認を受けたあとで、現場担当者がよく見落とすのが「その後の管理手続き」です。承認を取ったら終わりではありません。
承認後の管理は大きく3ステップあります。
①月ごとに発送確認を受ける
指定期間内に発送した外国貨物の運送目録を、1ヵ月ごとに一括して発送地の税関に提示し、発送の確認を受けます。これが毎月の定例作業となります。税関長が必要と判断した場合は、貨物に封印が施されることもあります。
②月ごとに到着確認を受ける
運送先に到着した外国貨物の運送目録についても、1ヵ月ごとに一括して到着保税地域の税関長の確認を受けます。これを受けることで「到着確認済み」の状態になります。
③到着確認済みの運送目録を1ヵ月以内に提出する
到着確認を受けたら、その運送目録を1ヵ月以内に、保税運送を承認した税関長(発送地の税関長)に提出しなければなりません。この期限を守ることが条件です。
ただし、例外が1つあります。承認した税関と到着確認した税関の署の長が同一の場合は、この提出は不要とされています。
手続きの流れを図で整理すると以下のとおりです。
```
承認取得(TDC申告)
↓
毎月:発送時に運送目録を発送地税関へ提示 → 発送確認
↓
毎月:到着後に運送目録を到着地税関へ提示 → 到着確認
↓
1ヵ月以内:到着確認済み運送目録を承認税関(発送地税関)へ提出
```
この一連の流れを毎月繰り返すことになります。個別保税運送より手続き回数が減るとはいえ、月次の管理は確実に必要です。継続的な管理体制を社内で整備しておくことが、包括保税運送制度を使いこなすポイントになります。
なお、包括保税運送の承認期間は最長でも1年です。継続して利用したい場合は、承認期間の残日数が14日以内になってから「継続申告」をNACCS(TDC)で行います。継続申告の際は、継続申告を行う包括保税運送承認番号を入力します。この14日以内というタイミングを逃すと、新たに当初申告からやり直す必要が生じるため注意が必要です。
参考:税関「包括保税運送申告関係手続」(PDF/手続き詳細と月次管理フロー)
https://bbs.naccscenter.com/data/customs/jimu/pdf/tetsu/common/common/tcc_020_130_000.pdf
包括保税運送の運用に慣れてきたとき、必ず検討すべき選択肢が「特定保税運送制度(AEO運送者制度)」です。この2つの制度は似ているようで、実務上の負担が大きく異なります。
最大の違いは「承認手続き・更新手続きが不要かどうか」です。
包括保税運送は、最長でも1年の承認期間であり、継続する場合は毎年継続申告が必要です。また、発送地・到着地ごとに承認を受ける必要があります。さらに、月1回の発送確認・到着確認という定期的な手続きも残ります。
特定保税運送(AEO運送者)は、一度承認を受けると、NACCSで貨物管理を行っている保税地域間ならば、個別の申告・承認が一切不要になります。運送するたびに申告せず、NACCSへ必要事項を入力するだけでいつでも自由に運送できます。つまり手続き負担が格段に減ります。
| 比較項目 | 包括保税運送 | 特定保税運送(AEO) |
|---|---|---|
| 年次更新 | 必要(最長1年) | 不要 |
| 発送地・区間ごとの申告 | 必要 | 不要 |
| 月次の到着確認 | 必要 | 不要(NACCS入力のみ) |
| 対象区間の制限 | あり(発送地ごと) | なし(NACCS参加保税地域間) |
ただし、AEO運送者の承認を受けるためには一定のハードルがあります。主な要件は下記のとおりです。
- 対象事業の許可等を受けてから3年以上経過していること
- 関税関係法令等について過去3年間に違反がないこと
- 特定保税運送に関する業務の法令遵守規則(CP)を定め、管理体制を確立していること
- NACCSを使用して業務を行える環境を整えていること
- 過去3年の間に保税運送の経験があること
承認申請には、書類の準備から税関との事前相談、合同調査まで一定の時間がかかります。事後監査も継続して行われます。厳しいところですね。
しかし一度承認されれば、毎年の更新コストや月次の管理工数が大幅に削減されます。頻繁に多区間で保税運送を行っている通関業者や物流事業者にとっては、AEO運送者の取得を検討する価値は十分にあります。現状の包括保税運送の手続き工数を試算してみることが、意思決定の第一歩になります。
参考:国土交通省「国際運送事業者のためのAEO制度実務手引書」(AEO運送者制度の要件・承認フロー詳細)
https://www.mlit.go.jp/common/000032415.pdf
参考:税関「AEO制度(各制度のメリット)」(特定保税運送者に対する緩和措置の公式説明)
https://www.customs.go.jp/zeikan/seido/aeo/aeo_merit.htm
包括保税運送制度とNACCSを日常業務に組み込む中で、現場では一定のパターンのミスが発生しやすいことが知られています。これらを事前に把握しておけば、承認の撤回・再申告という二度手間を防ぐことができます。
よくあるミス①:基本通達該当番号コードの入力誤り
2025年10月12日以降、TDCで入力する関税法基本通達該当番号コードが変更されました。旧コードで申告してしまうとシステムには受理されてしまう可能性があり、後から税関に申し出て撤回・再申告というプロセスが必要になります。申告前に必ずNACCS掲示板の業務コード集(最新版)で確認することが必須です。
よくあるミス②:到着地のコード・件数の上限超過
同一税関官署管轄内の到着地は1件の申告につき最大30箇所ですが、異なる税関官署間では原則1箇所しか指定できません。コンテナ貨物の場合は例外で30箇所まで可能です。この区分を誤って入力すると申告がエラーになります。業務開始前に発送地と各到着地の管轄税関官署をリスト化して確認する習慣をつけるとよいでしょう。
よくあるミス③:継続申告のタイミング遅れ
継続申告は承認期間の残日数が14日以内になってから行う必要があります。14日を超えていると継続申告ができず、新たに当初申告からのやり直しになります。カレンダーへのリマインド登録など、社内管理の仕組みを設けることが重要です。
よくあるミス④:月次の運送目録提示を忘れる
包括保税運送では、毎月の発送確認と到着確認の手続きが義務づけられています。月次作業として担当者を明確に決めておかないと、提出期限(到着確認済み運送目録の発送地税関への提出:到着確認日から1ヵ月以内)を見落とすリスクがあります。
実務チェックポイントの一例
```
□ 発送地がNACCSシステム参加保税地域であるか確認
□ TDC申告に使用する基本通達該当番号コードは最新版を参照しているか
□ 到着地の数・税関官署の管轄を確認済みか
□ 承認期間終了日から14日前にリマインド設定をしているか
□ 月次:発送時の運送目録を発送地税関へ提示したか
□ 月次:到着時の運送目録を到着地税関へ提示し、到着確認を受けたか
□ 到着確認日から1ヵ月以内に承認税関への提出をしたか
```
申告後に内容の訂正が必要になった場合、NACCSシステム上での直接訂正はできません。「NACCS登録情報変更申出」に撤回または取消しが必要な旨と申告番号・事由を記入し、包括保税運送申告控または承認通知書を添付して税関保税担当部門に提出します。添付ファイル登録業務(業務コード:MSB)による電子提出も可能です。これは使えそうです。
また、NACCSの区分2(書類審査扱い)になった場合は、税関からの照会に対して迅速に対応できるよう、申告関係書類は一定期間手元に整理・保管しておくことをおすすめします。日頃からの書類管理が、スムーズな通関業務の土台となります。
参考:税関「保税手続きQ&A」(神戸税関版・実務的な保税運送Q&A集)
https://www.customs.go.jp/kobe/hozei/pdf/202411_hozei_qanda.pdf