UN Comtrade Databaseの使い方と関税分析への活用法

UN Comtrade Databaseの使い方を基礎から解説。無料でできるHSコード検索やデータダウンロード方法、関税分析への応用まで徹底紹介。あなたはもう使いこなせていますか?

UN Comtrade Databaseの使い方と関税・貿易データ活用の完全ガイド

無料なのに、使い方を知らないだけで年間200万円分の調査コストを損しているかもしれません。


この記事でわかること
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UN Comtrade Databaseとは何か

国連統計局が提供する世界最大級の貿易統計データベース。約200カ国・地域、10億件超のレコードを収録し、無料で利用できる。

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HSコードで検索・ダウンロードする手順

アカウント登録から検索条件の設定、CSVダウンロードまで、初心者でも迷わない具体的な操作ステップを解説。

⚠️
データの限界と使用上の注意点

台湾データの扱い、数量データの推計値混入、中継貿易による誤差など、実務で必ず知っておくべき落とし穴を整理。


UN Comtrade Databaseとは何か:世界最大の貿易統計データベース

UN Comtrade Database(正式名称:United Nations Commodity Trade Statistics Database)は、国連統計局(United Nations Statistics Division)が運営する世界最大級の貿易統計データベースです。国連に加盟する約200カ国・地域の税関当局が報告した輸出入データを一元管理し、品目別・相手国別に検索・ダウンロードできる仕組みになっています。収録件数は10億件超とされており、世界の商品貿易の99%以上をカバーしています。


関税に関心を持つ人であれば、「どの国がどの品目をどれだけ輸出入しているか」を知ることは基本中の基本です。これが原則です。UN Comtradeはまさにその問いに答えるためのツールで、民間有料サービスに頼らずとも、一定水準の貿易フロー分析が無料で行えます。


2023年1月より、旧来の `comtrade.un.org` から新プラットフォーム Comtrade+(`comtradeplus.un.org`)に移行しました。UIが刷新されており、検索インターフェースや検索結果の表示方法が大幅に改善されています。旧サイトのURLでアクセスしても新サイトに転送されますが、操作感が変わっているため、以前の使い方の情報がそのまま使えないケースも増えています。意外ですね。


収録データの種類としては、商品貿易(Goods)の年次・月次データが中心です。取引額は輸出がFOB(本船甲板渡し)価格、輸入がCIF(運賃・保険料込み)価格で記録されています。金額・数量(重量など)の両方を取得できる点が実務上の強みで、単価の比較や輸送コストの推計にも応用できます。


参考:アジア経済研究所によるComtradeデータの特徴と留意点(PDFレポート)
https://www.ide.go.jp/library/Japanese/Publish/Reports/InterimReport/2010/pdf/203_ch1.pdf


UN Comtrade Databaseの使い方①:アカウント登録とログイン手順

UN Comtradeでデータを検索・ダウンロードするには、まず無料のアカウント登録が必要です。登録自体は費用ゼロです。`https://comtradeplus.un.org/` にアクセスし、右上の「Sign In / Register」からメールアドレスとパスワードを設定するだけで完了します。登録完了後はそのままデータ検索に進めます。


ログイン後、トップページ上部にある検索フォームから条件を順番に設定していきます。設定する項目は以下の6つです。


  • 📅 Frequency(集計期間):Annual(年次)またはMonthly(月次)を選ぶ
  • 📦 Trade flow(取引方向):Export(輸出)・Import(輸入)・Re-export(再輸出)・Re-import(再輸入)から選ぶ
  • 🏳️ Reporter(報告国):データを報告している国(例:Japan)を選ぶ
  • 🤝 Partner(相手国):特定の国を選ぶか、全世界(All)を選ぶ
  • 🔢 HS Code(品目コード:調べたい商品の6桁HSコードを入力する
  • 📆 Year(年):取得したいデータの年を選ぶ


6つの条件を設定したら「Preview」ボタンを押します。画面下部に結果が表示され、「Download」ボタンからCSVファイルでダウンロードできます。これだけ覚えておけばOKです。


HSコードについては、世界共通の6桁を使うことが基本です。たとえば「ビール」はHS 220300、「乗用車」はHS 870321~870390、「半導体集積回路」はHS 854231などが該当します。品目コードがわからない場合は、財務省の税関サイト(`https://www.customs.go.jp/`)でHSコードを事前に確認しておくと作業がスムーズです。


実務で使う際のポイントとして、Export(輸出)とImport(輸入)の視点の選択は混乱しやすい箇所です。「日本から米国へのビール輸出」を調べたい場合、Reporter を Japan、Trade flow を Export、Partner を USA と設定します。一方、「米国が世界各国からどれだけビールを輸入しているか」を調べたい場合は、Reporter を USA、Trade flow を Import、Partner を All と設定します。つまり視点が逆になる場合があります。


参考:UN Comtrade を使って世界の貿易統計データを調べる方法(実際の操作例付き)
https://blog.conocer.jp/haga-overseas-sales66/


UN Comtrade Databaseの使い方②:関税分析に活かすHSコードの読み方

UN Comtradeを関税・貿易分析に活用するには、HSコードの構造を正確に理解しておくことが重要です。HS(Harmonized System)は世界税関機構(WCO)が管理する国際的な商品分類システムで、現在200を超える国・地域が採用しています。


HSコードは上位2桁の「類(Chapter)」、4桁の「項(Heading)」、6桁の「号(Subheading)」の3階層で構成されており、UN Comtradeで取り扱うのは原則として6桁レベルです。6桁まではWCO加盟国で世界共通ですが、7桁以降は各国が独自に細分化するため、Comtrade上では6桁止まりになります。


HS体系の大枠は以下の通りです。


| HSの類(2桁) | 内容 |
|---|---|
| 01〜05類 | 動物・動物性生産品 |
| 07〜14類 | 植物性生産品 |
| 25〜27類 | 鉱物性生産品(原油・石炭など) |
| 84〜85類 | 一般機械・電気機器類 |
| 86〜89類 | 輸送用機器(自動車・船舶・航空機) |


関税分析との関連でいえば、HSコードは各国の関税率と直接紐づいています。WTO加盟国はHSコードに基づく関税譲許表を公表する義務があるため、HSコードがわかれば、そのコードに対応する相手国の関税率も調べられます。UN Comtrade自体に関税率のデータは含まれていませんが、世界銀行のWITS(World Integrated Trade Solution)と組み合わせることで、貿易フローと関税率を一体的に把握できます。これは使えそうです。


WITSは `https://wits.worldbank.org/` で無料公開されており、UN Comtradeの貿易フローデータとUNCTAD TRAINSの関税データを統合して可視化・ダウンロードできます。たとえば「日本製自動車に対する各国の関税率」と「実際の輸入量の推移」を組み合わせると、関税変化が貿易量に与えた影響を具体的に分析できます。関税率と貿易量を同時に見たいなら、WITSが条件です。


なお、HSは定期的に改訂されており、これまでに HS1988・HS1996・HS2002・HS2007・HS2012・HS2017・HS2022 の計7版が存在します。同一品目でも版によってコードが変わるケースがあるため、長期時系列で比較する際には版のずれに注意が必要です。Comtrade上では旧版のコードに組み替えた統計も収録されていますが、時系列の連続性が完全に保証されているわけではありません。


参考:WITSによる貿易統計・関税情報の統合的な可視化ページ
https://wits.worldbank.org/trade-visualization.aspx


UN Comtrade Databaseの使い方③:実践!輸出入データのダウンロードと活用事例

実際にUN Comtradeをどう使うか、具体的な事例で確認していきましょう。ここでは「2024年に韓国から米国へ輸出されたビール(HS 220300)の量と金額を調べる」シナリオを使います。


まず Comtrade+ にログインし、Frequency に「Annual」、Trade flow に「Export」、Reporter に「Rep. of Korea」、Partner に「USA」、HS Code に「220300」、Year に「2024」を設定して Preview をクリックします。結果として金額と重量(kg)が表示されます。実際のデータによると、2024年における韓国のビール対米輸出額は約883万ドル(重量:約572万kg)で、同年の日本(約716万ドル、重量:約453万kg)を金額ベースで約25%上回っています。数字が出ると話が具体的になりますね。


このデータを応用すると、次のような分析が可能になります。


  • 🍺 市場シェア分析:米国の輸入全体の中で日本・韓国・メキシコ・オランダなどの構成比を比較し、どの国が伸びているかを確認できる
  • 💰 単価比較:金額÷重量でkg単価を算出し、日本が$1.58/kg、韓国が$1.54/kg といった価格帯の差を把握できる
  • 📈 トレンド分析:過去5〜10年分のデータを取得して、輸出量の増減傾向や新興国の台頭を可視化できる


ダウンロードしたCSVファイルはExcelやGoogleスプレッドシートで開き、ピボットテーブルやグラフで整理するのが実務的な使い方です。結果はABC順(国名のアルファベット順)で並んでいるため、フィルター機能を使って注目国のデータを抽出すると作業が早くなります。


また、Pythonを使う方向けには、公式ライブラリ `comtradeapicall` が提供されています。`pip install comtradeapicall` でインストールでき、条件をコードで指定して一括取得できます。ただし無料アカウントでのAPIリクエスト数には時間あたりの制限があるため、大量のデータを一度に取りたい場合は、有料のプレミアムアクセスを検討する必要があります。無料の範囲でも品目と期間を絞れば十分に活用できます。


なお、UN Comtradeのデータはあくまで6桁レベルのHSコードで括られた範囲のデータです。同一HSコードに複数の異なる品種が含まれる点は弱点です。麦芽主体のビールも、コーンスターチ混合のビールも、HS 220300にまとめられています。細かい品種レベルの分析は、各国の税関統計(日本なら財務省貿易統計)で補う必要があります。


UN Comtrade Databaseの使い方④:データの限界と信頼性を高める活用の注意点

UN Comtradeは強力なデータベースですが、そのまま無批判に使うと分析結果が実態と乖離してしまうことがあります。厳しいところですね。具体的な落とし穴を知っておくことで、データの質を正しく見極めることができます。


① 台湾のデータは直接収録されていない


最も代表的な注意点です。台湾は国連に加盟していないため、UN Comtradeに「Taiwan」として収録されていません。既存研究の多くは「Other Asia, nes(その他アジア・特定不能)」を台湾のデータとして代用しますが、台湾当局の統計と比較すると相手国・品目によっては大きな乖離が生じます。台湾との貿易を正確に把握したい場合は、台湾財政部の貿易統計(`https://www.mof.gov.tw/`)を直接参照するのが基本です。


② 中継貿易が盛んな国は数値が膨らむ


香港やシンガポールは域内貿易のハブ機能を担っており、輸入の大半が第三国への再輸出を目的としています。香港の場合、輸入総額のうち実際の国内消費向けは少なく、大部分が再輸出向けです。Comtrade上では輸出の内数として再輸出額が示されることがありますが、再輸出のための輸入額は別途記録されないため、単純に「香港への輸出=香港市場の需要」とは解釈できません。中継貿易国のデータは要注意です。


③ 数量データに推計値が含まれる


各国が独自に7桁以降で細分化した品目では、数量の単位がバラバラになることがあります。その場合、UN統計局は基準単価を機械的に算出し、金額データをその単価で割って数量を推計します。つまり、機械機器類や電子部品など多品種が混在する品目の数量データは、実態から乖離している可能性があります。金額ベースの比較は比較的信頼性が高いものの、数量ベースの分析は慎重に扱うことが必要です。


④ HSの版改訂で時系列が断絶することがある


先述したようにHSは定期的に改訂されます。1988年から2022年までに7つの版が存在し、改訂ごとに品目の統廃合が行われています。UN Comtradeは旧版への組み替えデータも収録していますが、完全な時系列連続性が保証されているわけではありません。特に電子機器・通信機器などの分野は改訂の影響を受けやすいため、長期比較では版のずれを確認する必要があります。HS版のズレだけは例外です。


⑤ 報告が遅延している国がある


国によってデータの報告時期に差があります。最新年のデータが揃っていない国も多く、直近1〜2年分は欠損しているケースがあります。調べたい国の最新データが表示されない場合は、単純にデータがまだ報告されていないだけのことも多いです。気になる場合はデータの「注釈(Note)」を確認しましょう。


参考:アジア経済研究所によるComtradeデータの使用上の留意点(台湾・中継貿易・数量推計の解説)
https://www.ide.go.jp/library/Japanese/Publish/Reports/InterimReport/2010/pdf/203_ch1.pdf


UN Comtrade Databaseの使い方⑤:WITSや税関統計との組み合わせで関税分析を深める独自活用法

UN Comtrade単独では「何をどれだけ輸出入しているか」はわかりますが、「なぜその金額・量になっているのか」という背景の分析には他のデータソースとの組み合わせが欠かせません。つまり複数ツールの連携が条件です。


WITS(World Integrated Trade Solution)との組み合わせ


世界銀行が運営するWITSは、UN ComtradeのデータとUNCTAD TRAINSの関税情報を統合したプラットフォームです。`https://wits.worldbank.org/` で無料公開されており、ある品目について「各国の適用関税率(MFN税率・特恵税率)」と「実際の貿易フロー」を同一画面で確認できます。


たとえば、「米国が鉄鋼製品に対して追加関税を課したことで、輸出国別の対米輸出量がどう変化したか」という分析は、WITSのデータだけでかなりの精度で検証できます。関税変化の影響を数字で示したい場面では、WITSは非常に有効なツールです。


日本の財務省貿易統計との補完利用


UN Comtradeのデータ精度は6桁止まりですが、日本の財務省貿易統計(`https://www.customs.go.jp/toukei/info/`)では9桁レベル(統計細分)まで詳細なデータを取得できます。たとえばHS 220300(ビール)なら、日本の統計では麦芽ビールと混合飲料を分けて把握できます。UN Comtradeで全体像を把握し、日本関連の詳細分析では財務省統計を参照するという二段構えが実務では有効です。


国別統計との整合性確認


UN Comtradeの「Japan」データと日本の財務省貿易統計を同一期間・同一品目で比較すると、重量は一致し、金額も為替レートを考慮すれば整合することが確認されています(2024年ビールの対米輸出で実証済み)。これはUN Comtradeの信頼性を確認する簡単な方法で、初めて使う品目でデータの妥当性が気になる場合に有効です。


独自視点:HS版の違いを逆用したシグナル検出


あまり知られていない使い方として、HSコードの改訂前後でデータが断絶している品目は、WCOレベルで「政治的・経済的に重要と判断されて細分化された品目」であることが多いです。改訂で新設されたコードは、各国が保護・促進を意図した分野と重なりやすく、関税交渉上の注目点を探る手がかりになります。たとえば電気自動車(EV)のHSコードは2022年改訂で細分化が進んでおり、各国の関税政策と強く連動しています。いいことですね。


まとめとして、UN Comtradeを最大限に活用するには「UN Comtrade(貿易フロー)+ WITS(関税率)+ 財務省統計(詳細品目)」の三角形を意識することが重要です。それぞれが補完関係にあり、組み合わせることで見えてくる情報の深さが大きく変わります。一度この流れを体験すると、有料の調査レポートに頼らずに自力で分析できる範囲が格段に広がります。


参考:海外市場規模の調べ方と国際統計DBの使い分けガイド(UN Comtrade含む実践的解説)
https://note.com/taitonmai/n/n4979c7a3209e