TPP11の加盟国を「11カ国全部同じアジア太平洋の国」と思い込んでいると、イギリス加盟で関税が無税になる輸入ルートを見落として年間数十万円の損失につながります。
TPP11(正式名称:環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定/CPTPP)は、もともとアメリカを含む12カ国で交渉が進められていた協定です。2017年1月にトランプ大統領就任後にアメリカが離脱を表明したため、残った11カ国が新たにまとめ直した経済連携協定になります。つまり「TPP11」の「11」は、アメリカを除いた参加国の数を意味します。
発効当初の加盟11カ国は次の通りです。
| 地域 | 加盟国 |
|------|--------|
| 東アジア | 日本 |
| 東南アジア | シンガポール・マレーシア・ベトナム・ブルネイ |
| オセアニア | オーストラリア・ニュージーランド |
| 北中南米 | カナダ・メキシコ・ペルー・チリ |
地域で整理すると、東南アジア4カ国・オセアニア2カ国・南北アメリカ大陸4カ国・アジア(日本)1カ国という構成になります。これが基本です。
なぜ加盟国を正確に把握することが大切なのでしょうか? 理由はシンプルで、TPP11の特恵関税率(低い関税率)を使えるのはTPP11加盟国の原産品だけだからです。加盟国を曖昧に覚えていると、本来は無税で輸入できる商品に通常の関税を払い続けるという、もったいない状況が生まれます。
つまり「どの国がTPP11に入っているか」は、関税コストに直結する実務知識です。
参考:外務省によるCPTPP(TPP11)の公式説明ページ
最も広く知られている語呂合わせが「メニペチ カオニブルベマシ(目にペチ 顔にブルべ増し)」です。
| 語呂の文字 | 加盟国 |
|---|---|
| メ | 🇲🇽 メキシコ |
| ニ | 🇯🇵 日本 |
| ペ | 🇵🇪 ペルー |
| チ | 🇨🇱 チリ |
| カ | 🇨🇦 カナダ |
| オ | 🇦🇺 オーストラリア |
| ニ | 🇳🇿 ニュージーランド |
| ブル | 🇧🇳 ブルネイ |
| ベ | 🇻🇳 ベトナム |
| マ | 🇲🇾 マレーシア |
| シ | 🇸🇬 シンガポール |
この語呂合わせのポイントは、「ブル」がブルネイを指す2文字になっているところです。他の国は頭文字1文字で対応していますが、ブルネイだけは「ブ」だとブラジル(非加盟)などと混同しやすいため「ブル」と2文字にしてあります。これが意外と見落とされがちなポイントですね。
別の語呂合わせとして「ガチで着るな、赤鬼のブルマ」というものも存在します。
- ガ(シンガポール)・チ(チリ)・で・キ(メキシコ)・ル(ペルー)・ナ(ベトナム)
- ア(アメリカ ※旧12カ国版)・カ(カナダ)・オ(オーストラリア)・ニ(ニュージーランド)
- ブル(ブルネイ)・マ(マレーシア)
こちらはもともとアメリカを含む12カ国バージョンで作られたものです。現在のTPP11ではアメリカは非加盟ですので、「赤鬼のブルマ」から「ア(アメリカ)」を除いた11文字が今の加盟国になります。覚えやすい方を選んでOKです。
語呂合わせは1種類だけ覚えれば十分です。
ここが多くの人が知らないポイントです。2024年12月15日、イギリス(英国)がCPTPPに正式加盟し、加盟国は現在12カ国体制になっています。
イギリスはEU離脱(Brexit)後の新たな通商戦略の柱として、CPTPPへの加盟を進めてきました。2023年3月に加盟合意、2023年7月に議定書署名、そして2024年12月に発効という流れです。注目すべきは、イギリスはCPTPP史上初めての欧州の加盟国であり、「環太平洋」という名前でありながら、実際には太平洋に面していないヨーロッパの国も加わっているという事実です。意外ですね。
語呂合わせに「イ(イギリス)」を追加した12カ国バージョンも登場しています。「メニペチィ 顔にブルべ増し(メニペチィ カオニブルベマシ)」として「ペチィ」に「ィ(イギリス)」が加わった形です。
現在、加盟を申請している国・地域はさらに複数存在します。
- 🇨🇳 中国(2021年申請・加盟基準を満たしているか議論中)
- 🇹🇼 台湾(2021年申請・中台問題により調整難航)
- 🇨🇷 コスタリカ(2024年から加入交渉中・2026年合意が近いとされる)
- 🇺🇾 ウルグアイ(2025年11月に加入検討プロセス開始)
- その他:エクアドル、ウクライナ、インドネシアも申請済み
コスタリカについては、2026年2月時点で「交渉は98%完了した」という報道も出ており、近く13カ国体制になる可能性があります。関税に携わる実務者にとって、この最新動向を追うことは大きな意味を持ちます。
参考:JETROによる英国CPTPP正式加入の詳細レポート
英国がCPTPPに正式加入、日本を含む12カ国に枠組み拡大|ジェトロ
加盟国を覚えるだけでお金が節約できる。これは決して大げさではありません。
TPP11における関税撤廃率は非常に高水準で、具体的な数字を確認すると理解が深まります。
| 国 | 品目数ベース関税撤廃率(最終) |
|----|-------------------------------|
| 日本 | 95% |
| カナダ | 99% |
| オーストラリア | 100% |
| ニュージーランド | 100% |
| シンガポール | 100% |
| ベトナム・その他6カ国 | 99〜100% |
工業製品に限れば、TPP11加盟10カ国全体で99.9%の関税撤廃が約束されています(経済産業省資料)。たとえば、ベトナムからの「さけ調整品」の場合、基本の関税率34%が7年間で段階的に撤廃されます。これだけで輸入コストが大きく変わります。
また特筆すべきはカナダとニュージーランドです。TPP11以前、日本はこの2カ国とEPAを結んでいませんでした。つまりカナダ・ニュージーランドの産品にTPP11を活用するのは、日本にとって初めての特恵関税適用になります。これが原則です。
実際に活用するためには、原産地規則の確認と自己申告制度による原産地証明が必要です。TPP11は他のEPA(EPA多くは第三者証明制度)と異なり、生産者・輸出者・輸入者が自ら原産地を証明できる「自己申告制度」を採用しています。書類は5年間保存が必要という点も覚えておきましょう。
参考:ジェトロ「TPP11特恵関税の活用メリット」解説資料
語呂合わせは便利ですが、「どの国がどの地域にあるか」をセットで覚えると、記憶が定着しやすくなります。地域でグルーピングする方法を紹介します。
【グループ1:南北アメリカ大陸4カ国】
- 🇨🇦 カナダ(北米)
- 🇲🇽 メキシコ(北米)
- 🇵🇪 ペルー(南米)
- 🇨🇱 チリ(南米)
太平洋側に面した国だけが選ばれています。同じ南米でもブラジルは大西洋側なので非加盟です。これは使えそうです。
【グループ2:東南アジア4カ国】
- 🇸🇬 シンガポール
- 🇲🇾 マレーシア
- 🇻🇳 ベトナム
- 🇧🇳 ブルネイ
ASEAN10カ国のうち4カ国が入っています。タイ・インドネシア・フィリピンは非加盟です。ブルネイは人口約45万人という小国(東京23区のおよそ3分の2ほどの人口規模)ですが、原加盟4カ国のひとつです。
【グループ3:オセアニア2カ国】
- 🇦🇺 オーストラリア
- 🇳🇿 ニュージーランド
この2カ国はセットで覚えやすいでしょう。関税撤廃率は両国とも100%です。
【グループ4:アジア太平洋・単独1カ国】
- 🇯🇵 日本
日本だけが「東アジア」から1カ国という構成です。
このように地域別に整理すると「4+4+2+1=11」というシンプルな構造になります。語呂合わせで覚えてから、この地域グループで確認するというステップを踏むと、記憶に残りやすくなります。
さらに視覚的に整理したい場合は、税関のウェブサイトで公開されているTPP11の原産地規則ポータルも活用できます。加盟国と対象品目の確認を同時に行えます。
参考:税関の原産地規則ポータル(加盟国の原産品確認に使用可)
ここまでの内容を整理します。
TPP11(CPTPP)の正規加盟国は2024年12月以降「12カ国」です。名称は「TPP11」のままですが、イギリスの加盟により国数はすでに12になっているという点は重要です。試験でも実務でも要注意の点です。
語呂合わせは「メニペチ カオニブルベマシ(目にペチ 顔にブルべ増し)」が最もコンパクトにまとまっています。イギリスを加えた12カ国版なら「メニペチィ カオニブルベマシ」に「ィ(イギリス)」を追加するだけです。
記憶定着のための3ステップを示します。
1. 語呂合わせで11カ国の頭文字を暗記(まず基本の11カ国を完全に覚える)
2. 地域別グループで「4+4+2+1」の構造を確認(どの地域のどの国かを把握)
3. イギリス加盟と申請中の国を別でチェック(実務では最新情報が命)
関税実務において加盟国の把握が大切な理由は、TPP11の特恵関税は加盟国原産品にのみ適用されるためです。間違えて申告した場合には関税の事後追徴が発生するリスクもあり、「なんとなく知っている」ではなく「正確に知っている」ことが求められます。
今後、コスタリカが正式加盟した場合は13カ国体制に移行します。関税に関わる業務を行っている方は、ジェトロや外務省の公式情報を定期的に確認する習慣をつけることをおすすめします。加盟国情報は1〜2年単位で変わる可能性があるからです。
参考:カサロ「現在のTPPの特徴とは?加盟国・経緯と、輸出・輸入での使い方」
現在のTPPの特徴とは?加盟国・経緯と、輸出・輸入での使い方|カサロ