年に3回以上輸入するなら、single entry bondを毎回買うとコンティニュアスボンドより総コストが高くなります。
米国に商品を輸入する際、CBP(U.S. Customs and Border Protection)はほぼすべての商業輸入に対して「カスタムズボンド(Customs Bond)」の提出を義務付けています。これは保証債務の一種であり、インポーター(主体)、サーティ会社(保証人)、CBP(受益者)の三者による契約です。インポーターが関税・税金・手数料を支払わなかった場合、サーティ会社がCBPに対して肩代わりし、その後インポーターに求償します。
カスタムズボンドが必要になる主なケースは次のとおりです。
- 申告価額が$2,500以上の商業輸入(Formal Entry)
- 海上貨物のISF(Importer Security Filing)の提出
- 保税倉庫(Bonded Warehouse)やFTZ(Foreign Trade Zone)の利用
- FDA・EPA・DOT・USDAなどのパートナー政府機関が関係する輸入品
つまり原則です。正式申告が必要な輸入には、必ずボンドが必要になります。
Single Entry Bond(SEB)とは、1件の輸入申告のみをカバーするボンドです。Bond Type 9、Activity Code 1として分類され、申告を行うポート(入港地)ごとに個別に提出しなければなりません。対してContinuous Bondは1年間有効で、全米のすべての港で無制限に使用できます。
single entry bond calculatorを活用すると、個々の輸入案件に対して必要なボンド金額を事前に計算でき、コスト見積もりの精度が格段に上がります。これは使えそうです。
CBPが定めるSingle Entry Bondの金額計算には明確なルールがあります。基本的な計算式は次のとおりです。
$$\text{SEB金額} = \text{貨物の申告価額} + \text{関税(Duty)} + \text{税金(Tax)} + \text{手数料(Fee)}$$
たとえば、家具を$40,000で輸入し、関税・税金・手数料の合計が$2,000だとします。この場合のSEB最低金額は次のとおりです。
$$\text{SEB最低金額} = \$40,000 + \$2,000 = \$42,000$$
SEB金額が条件です。この金額を下回るボンドは受理されません。
ただし、重要な例外が存在します。FDAやEPAなど特定のパートナー政府機関の規制対象となる貨物では、CBPがボンド金額を申告価額の3倍に設定するケースがあります。これは厳しいところですね。
$$\text{FDA対象品のSEB金額} = \$40,000 \times 3 = \$120,000 \text{(関税・手数料は別途加算)}$$
つまり、食品・医薬品・医療機器などFDA規制品を輸入する通関業従事者は、ボンド金額が通常の3倍になるリスクを常に念頭に置く必要があります。知らずに過小なボンドを設定すると、CBPから申告が却下される可能性があります。
また、SEB金額に最低額が設けられているケースもあり、多くのサーティ会社は最低$100から設定しています。実際の保険料(Premium)は通常ボンド金額の0.5%〜0.7%程度で、小口輸入でも$50〜$100程度が目安です。
ポートディレクターがリスクを高く判断した場合は、さらに高額なボンドを要求する裁量権も持っています。SEB金額は「最低ライン」であることを覚えておけばOKです。
CBPの公式なボンド金額ガイドラインはこちらで確認できます。
CBP公式文書「How CBP Sets Bond Amounts(2024年2月版)」:ボンド金額の設定根拠と事例が詳細に解説されています。
多くの通関業従事者が「SEB(Single Entry Bond)はその都度買えばいい」と考えています。しかし実際のコスト比較をすると、この判断が損になるケースが多くあります。
Continuous Bond(コンティニュアスボンド)の計算式は次のとおりです。
$$\text{Continuous Bond金額} = \text{過去12ヶ月のDTF(関税・税金・手数料の合計)} \times 10\%$$
端数は$10,000単位($100万超は$100,000単位)で切り上げ、最低金額は$50,000です。以下の表は具体的な計算例です。
| 年間DTF合計 | 必要Continuous Bond金額 |
|---|---|
| $0 〜 $499,999 | $50,000(最低額) |
| $500,000 〜 $599,999 | $60,000 |
| $900,000 〜 $999,999 | $100,000 |
| $1,000,000 〜 $1,999,999 | $200,000 |
| $2,000,000 〜 $2,999,999 | $300,000 |
年間DTFが$499,999以下のインポーターの多くは、$50,000のContinuous Bondを年間$400〜$600程度で取得できます。
一方、Single Entry Bondは1回あたり最低$50〜$100の保険料がかかります。たとえば輸入ごとのボンド費用が$150だとすれば、年4回で$600です。これはContinuous Bondの年間費用と同水準かそれ以上になります。
結論はシンプルです。年間3〜4回以上輸入するインポーターには、コスト面でContinuous Bondが有利です。
さらにSEBにはもうひとつのコスト要因があります。海上輸送の場合、Single Entry BondにはISF(Importer Security Filing)のカバーが含まれていません。ISF専用のSingle Transaction Bond(Activity Code 16)を別途取得する必要があり、その費用は$50〜$100程度です。
$$\text{海上輸入時のSEB総コスト} = \text{SEB保険料} + \text{ISFボンド料} \approx \$100 \sim \$200 / \text{件}$$
Continuous Bondであれば、ISFカバーは原則として追加費用なしで含まれています。これはContinuous Bondの大きなメリットです。
コスト計算に便利なオンラインツールも存在します。
CUSTOMS INTEL Bond Calculator:年間DTFを入力するだけでContinuous Bondの必要金額を自動計算できる無料ツールです。
Roanoke Insurance Group – Continuous Customs Bond Calculator:CBP基準に準拠した連続ボンド計算機で、通関業者が顧客説明に活用できます。
海上貨物を輸入する際に、single entry bondだけで手続きが完結すると思っている通関業従事者は少なくありません。しかしこれは間違いです。
ISF(Importer Security Filing、通称「10+2」)は、米国向け海上貨物に対してCBPが義務付ける事前申告制度です。貨物が船積みされる24時間前までにCBPへ提出しなければなりません。そして、このISF提出にも別途ボンドが必要です。
Single Entry Bondは「Entry(輸入申告)」のみをカバーします。ISFは対象外です。つまり、海上輸送でSEBのみを手配しても、ISF部分のボンドが不足した状態になります。
ISFに対応するためには次の2つの方法があります。
- Activity Code 16のISF専用Single Transaction Bond($50〜$100/件)を別途取得する
- Continuous Bondを保有している場合は、そちらで自動的にカバーされる
ISFボンドが欠如していた場合、CBPはISFの遅延・不備として最大$5,000/件のペナルティを課すことができます。痛いですね。
さらに実務上の問題として、Single Entry BondはEntry申告を行う入港ポートに直接提出する必要があります。電子提出(eBond)が主流のContinuous Bondとは異なり、SEB手配には時間的な余裕が必要です。
通関業者として顧客のコンプライアンスを守るためには、海上輸入案件でSEBを選択した場合は必ずISFボンドの別途手配も確認する、というフローを標準化することが重要です。この習慣が条件です。
ISFに関するCBPの公式ガイドラインも合わせて参照してください。
CBP公式 – Importer Security Filing (ISF) 10+2:ISF提出要件・タイムライン・ボンド要件の公式説明ページです。
Continuous Bondを使用している通関業従事者にとって、見落としがちなリスクが「Bond Insufficiency(ボンド不足)通知」です。これはSEBとは無関係に見えますが、SEBからContinuous Bondへ切り替えたばかりのインポーターが陥りやすい問題です。
CBPは毎月、すべてのアクティブなContinuous Bondの十分性をレビューしています。過去12ヶ月のDTFに基づいてボンド金額が不足していると判断された場合、CBPは「Demand for Increased Bond(ボンド増額要求)」を発行します。
重大な点があります。CBPのボンド充足性カウンターは「新しいボンドを提出した時点でリセットされません」。つまり、年度途中でボンドを増額した場合でも、過去12ヶ月のすべての輸入活動が対象になります。
不足通知が届いた後に対応が遅れると、輸入貨物の通関が保留(Hold)になる場合があります。特に関税率の急激な変動(たとえば追加関税の適用)があった年には、Bond Insufficiency Noticeの件数が急増します。
対策として、通関業者は以下のタイミングでインポーターのDTFを確認し、ボンド金額の見直しを推奨することが有効です。
- 新関税(追加関税・アンチダンピング税等)の適用が見込まれる場合
- 輸入頻度や貨物価値が急増した場合
- 会計年度の区切りで年間DTFを集計した際
$$\text{推奨Continuous Bond金額} = \text{次の12ヶ月のDTF見込み額} \times 10\%$$
過去実績ではなく「将来見込み額」を使う点が原則です。CBPは過去12ヶ月を基準にしますが、業者が推奨するのは次の12ヶ月のプロジェクションを使ってボンド金額を設定することです。この先読みアプローチにより、Bond Insufficiency通知とそれに伴う貨物保留リスクを回避できます。
ボンド充足性の詳細については以下の公式情報を参照してください。
また、Bond Insufficiency Noticeの急増について詳細にまとめた専門家向け情報はこちらです。