ラボ試験とは何か通関業者が知るべき基礎知識

輸入通関において欠かせない「ラボ試験」とは何か。モニタリング検査・命令検査・自主検査の違い、費用負担、ISO/IEC 17025認定機関の役割まで通関業従事者向けに解説します。あなたはラボ試験の結果を待たずに通関を進めていませんか?

ラボ試験とは通関業者が押さえるべき製品検査の基礎

命令検査の対象品は、ラボ試験なしに通関できず、費用も全額あなた(輸入者)の負担になります。


この記事の3つのポイント
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ラボ試験とは何か

ラボ試験(laboratory test)とは、ISO/IEC 17025等の認定を受けた第三者試験機関が、製品・食品などを科学的に分析・測定し、規格や法令への適合を確認する検査です。輸入通関の現場では欠かせない手続きのひとつです。

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3種類の検査の違い

輸入食品では「モニタリング検査(国費負担・通関可能)」「命令検査(輸入者負担・通関不可)」「自主検査(任意・輸入者負担)」の3種類があり、それぞれ費用負担と通関可否が大きく異なります。

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違反時のリスク

ラボ試験で不合格となった場合、貨物は廃棄または積み戻しとなり、輸入者名・商品名が厚生労働省のWebサイトで公表されます。通関業者として事前のリスク管理が不可欠です。


ラボ試験(laboratory test)の意味と輸入通関での位置づけ

ラボ試験とは、「laboratory test(ラボラトリー・テスト)」を略した言葉で、試験所・検査機関(ラボ)が製品や食品などの検体を科学的に分析・測定し、規格や法令の要求事項に適合しているかを確認する検査のことを指します。つまり書類審査だけでは判断できない「物質の成分・安全性・性能」を、機器と専門技術によって数値で証明する行為です。


輸入通関の実務では、このラボ試験の結果を記載した文書を「試験成績書(Test Report)」や「試験成績証明書」と呼びます。これが輸入届出書類の一部として検疫所に提出され、食品衛生監視員による審査の根拠となります。


ラボ試験が必要になる主な場面は、食品・添加物・器具・容器包装・乳幼児用おもちゃの輸入時(食品衛生法)、電気用品の輸入時(電気用品安全法=PSE)、ガス用品やプレッシャー式石油燃焼機器の輸入時(消費生活用製品安全法=PSC)など多岐にわたります。製品カテゴリーによって根拠法が異なる点が重要です。


食品の場合、試験成績書には有効期限があります。食品・添加物・器具・容器包装・乳幼児用おもちゃは原則として1年以内のものが求められます(食品製造機械・ガラス製・ステンレス製・アルミニウム製器具は3年以内)。有効期限切れの成績書を使い回すと書類不備となり、貨物が止まる原因になります。期限管理は基本です。


通関業者として荷主に確認すべき「ラボ試験成績書チェックポイント」をまとめると、以下のとおりです。



  • 発行機関がISO/IEC 17025認定を受けているか(認定番号・有効期限を確認)

  • 成績書の発行日が有効期限内か(食品等は1年、器具は3年が目安)

  • 検査項目が輸入品目の規制に対応しているか(残留農薬・添加物・重金属など)

  • 検体のロット・品目が申告内容と一致しているか


食品等輸入手続について(厚生労働省)|命令検査の定義・費用負担・通関不可の根拠条文を確認できます


ラボ試験における3種類の検査の違いと通関への影響

輸入食品のラボ試験には、「モニタリング検査」「命令検査」「自主検査」の3種類があります。これは別々の概念です。この3つを混同すると、スケジュール管理と費用見積もりの両方で大きなミスにつながります。


モニタリング検査は、厚生労働大臣の指示のもと、検疫所が年間計画に基づき実施する抜き取り検査です。費用は国が負担します。重要なのは、検査結果の判明を待たずに通関を進められる点です。ただし、後で不合格が判明した場合は輸入者が自費で貨物を回収・廃棄しなければなりません。


命令検査は、過去の法違反や高リスクと判断された品目に対して、輸入のたびに必ず実施が命じられる検査です。費用は輸入者が全額負担します。命令検査に指定されると、ラボ試験の結果が出るまで通関は一切できません。検査期間は品目によって異なりますが、化学分析で3〜10営業日、カビ毒検査で2〜5営業日程度が目安とされています。輸入スケジュールへの影響は非常に大きくなります。


自主検査は、義務ではなく輸入者が自らのリスク管理として行う検査です。初回輸入時に国から指導される場合も多いです。費用は輸入者負担です。自主検査を適切に続けることで命令検査への格上げを予防でき、長期的には大きなコスト削減につながります。


3種類の違いを表にすると次のとおりです。




























種類 費用負担 通関の可否 実施主体
モニタリング検査 国(無料) 結果前でも通関可能 検疫所
命令検査 輸入者(全額負担) 結果判明まで通関不可 登録検査機関(輸入者が依頼)
自主検査 輸入者(全額負担) 制限なし(任意) 登録検査機関(輸入者が依頼)


命令検査と自主検査は、輸入者が「登録検査機関」へ依頼します。登録検査機関とは、厚生労働大臣が登録した民間の試験所のことで、公益社団法人日本食品衛生協会(JFFIC)などが代表的です。検疫所の窓口が担当するモニタリング検査とは実施主体が異なる点を押さえておきましょう。


輸入食品監視業務FAQ(厚生労働省)|モニタリング検査・命令検査の費用負担・通関可否の公式説明があります


ラボ試験機関の信頼性を担保するISO/IEC 17025認定とは

ラボ試験の結果が通関に使用できるかどうかは、試験を実施した機関の信頼性によって左右されます。その信頼性の国際基準が「ISO/IEC 17025(試験所及び校正機関の能力に関する一般要求事項)」です。


ISO/IEC 17025は、試験所が正確・一貫した測定・分析結果を生み出す技術能力を持つかどうかを、第三者認定機関が評価・認定する規格です。日本ではISO 9001に相当する品質管理規格よりも、さらに「技術的要求事項」まで含む高度な規格として位置づけられています。


日本国内でISO/IEC 17025の認定を与える機関は、公益財団法人日本適合性認定協会(JAB)や独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE/IAJapan)などです。国際的には、IALACというMRA(相互承認協定)ネットワークに加盟した認定機関が認定した試験所は、世界各国で相互に試験結果が受け入れられる仕組みになっています。


つまり、輸出国現地のISO/IEC 17025認定機関でラボ試験を行い、その試験成績書があれば、日本の検疫所での指導検査が省略できる制度があります。これは「外国公的検査機関の試験成績書の活用」と呼ばれ、輸入者にとって大きな時間・コストの節約になります。


通関業者として荷主にアドバイスするときのポイントとして、現地サプライヤーに発注段階で「ISO/IEC 17025認定を受けた試験機関でのラボ試験成績書の取得」を条件として盛り込むよう促すことが有効です。これが後工程でのコスト削減に直結します。日本の検疫所が受け入れ可能な外国公的検査機関のリストは厚生労働省のウェブサイトで確認できます。


なお、細菌・カビ毒など輸送中に変化が起こり得る項目については、現地での試験成績書でも指導検査省略の対象外となります。成分・添加物・残留農薬など「輸送で変化しない項目」との使い分けが必要です。


試験所・校正機関 ISO/IEC 17025(公益財団法人 日本適合性認定協会 JAB)|認定の仕組みと認定試験所一覧を確認できます


PSE・PSC等の製品安全法規で求められるラボ試験の実務

食品以外の分野でもラボ試験は必須です。特に電気製品・生活用品の輸入では、電気用品安全法(PSE)や消費生活用製品安全法(PSC)に基づくラボ試験が求められます。通関業者がこの仕組みを理解しておくことは、荷主へのアドバイスや書類チェックに直結します。


電気用品安全法(PSE)は、電気製品457品目(2021年7月現在)を対象とした法律です。製造・輸入事業者はPSEマークを表示する義務があり、そのためにはラボ試験を経た技術基準への適合確認が必要です。製品によっては、登録検査機関での「適合性検査(第三者試験)」が義務となる「特定電気用品(菱形PSEマーク)」と、自主的な確認で足りる「特定電気用品以外(丸形PSEマーク)」に分かれます。


PSEのラボ試験費用は製品カテゴリーや試験項目によって幅があり、一般的に30万円から200万円程度とされています。期間は登録検査機関での試験で3〜6か月程度かかるのが標準です。試験中は製品を日本市場に出すことができないため、輸入スケジュールの早い段階で認証取得を着手することが必要です。


2025年12月25日には製品安全4法(PSE・PSC等)の改正法が施行されました。改正によって日本に直接販売する海外事業者(「特定輸入事業者」)が規制対象に追加され、国内管理人の設置が義務付けられています。これにより、従来は輸入者が担っていた検査・記録保存義務が、海外ECプラットフォームを経由する直接販売にも及ぶようになりました。通関業者として最新動向を把握しておく必要があります。


PSEの観点から通関前に確認すべき書類は次のとおりです。



  • 📄 試験成績書(ラボ試験レポート):適合性を証明する技術文書

  • 📄 適合性確認書類(技術基準適合証明書):特定電気用品の場合は適合証明書の保存が義務

  • 📄 届出受理書:経産省への事業届出が完了していることの確認

  • 📄 PSEマーク表示確認:現物または写真でマーク種別の確認


海外事業者が製品安全4法の規制対象となりました(経済産業省)|2025年12月施行の改正内容と特定輸入事業者の義務を確認できます


ラボ試験の結果が不合格だったときの通関実務と費用リスク

ラボ試験に合格できなかった場合、その後の通関実務はどうなるのでしょうか。このシナリオを事前に把握しておくことが、通関業者としての本質的なリスク管理です。


食品衛生法違反が判明した場合、貨物は原則として「廃棄」または「積み戻し(輸出国への返送)」のいずれかの措置をとらなければなりません。廃棄の場合は廃棄費用が輸入者負担で発生します。積み戻しの場合は輸送コストが二重にかかります。さらに、これらの措置が完了するまで貨物は保税地域に留め置かれ、倉庫保管料(デマレージ・デテンション)も蓄積し続けます。


金銭的なダメージだけではありません。食品衛生法違反が確定すると、輸入者名・商品名・違反内容が厚生労働省のウェブサイト上に公表されます。荷主の企業名がインターネット上に残るため、ブランドイメージへの打撃は計り知れません。これは通関業者として荷主に事前に伝えておくべき重要なリスクです。


さらに深刻なのが命令検査への移行です。一度でも食品衛生法違反が判明した品目は、命令検査の対象に指定される可能性があります。命令検査の対象になると、毎回の輸入のたびにラボ試験が義務となり、結果判明まで通関できない状態が繰り返されます。これが積み重なると、輸入ビジネス全体のスループットが大幅に低下します。


カナダへの牛肉輸入では、ラボ検査で不合格が1件でも発見された場合、連続して15回分の検査が追加で義務付けられます(JETROの情報による)。各国の規制によってペナルティの仕組みは異なりますが、「1回の不合格が長期的なコストを生む」という構造は共通しています。重いペナルティです。


こうした連鎖的なリスクを防ぐために、通関業者として荷主に提案できる予防策として、信頼性の高い現地サプライヤーの選定基準の整備、初回輸入前の自主ラボ試験の実施、試験成績書の有効期限管理システムの導入(Excelや物流管理ソフトで期限アラートを設定するなど)が挙げられます。期限管理だけは怠らないことが原則です。


食品衛生法違反事例(厚生労働省)|実際の違反品目・違反内容・輸入者名が公表されているデータベースです