口頭で「また見直しましょう」と言うだけでも、契約変更として法的に有効になる場合があります。
見直し条項とは、法律や契約書の附則などに「一定期間経過後に当該規定の内容を検討し、必要な措置を講ずる」旨を定めた規定のことです 。参議院法制局によれば、法律においては「政府は、〇〇について検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする」という形で規定されることが多く、制定時に積み残した課題や将来の状況変化に対応するために設けられます 。
参考)見直し条項|参議院法制局
通関業務の現場では、関税率の改定・関税暫定措置・輸出許可内容の変更など、制度変更が頻繁に起こります。そのため、締結済みの業務委託契約や料金契約に見直し条項を盛り込んでおくことは、特に重要な実務上の備えです。
見直し条項は「サンセット条項」とも呼ばれ、一定期間後に自動的に効力を失う、または見直しを行う仕組みとして法律・規制・民間契約の幅広い分野で活用されています 。つまり「変化への対応策」が条項の本質です。
参考)サンセット条項|法律や規制が自動的に効力を失う &#8211…
| 呼称 | 主な使用場面 | 主な効果 |
|---|---|---|
| 見直し条項 | 法律の附則、業務委託契約 | 定期的に内容を再検討する義務を課す |
| 検討条項 | 政府提出法案の附則 | 課題を積み残したまま立法するための妥協策 |
| サンセット条項 | 税制優遇・規制・M&A契約 | 期間満了後に自動失効または再交渉を義務付ける |
見直し条項には、大きく「期間型」「事由発生型」「義務的協議型」の3パターンがあります。これが基本です。
① 期間型(定期見直し)
「本契約の締結日から3年を経過した場合において、本契約の内容について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。」
通関業の料金体系や業務範囲を一定期間ごとに見直す際に使います。環境影響評価法の附則第7条(施行後10年での見直し)がこのパターンの典型的な立法例です 。
② 事由発生型(法令変更トリガー)
「通関規制に関連する法令等の変更があった場合、速やかな情報共有と本契約内容の見直しを定期的に協議するものとする。」
関税法改正・EPA協定発効など、外部要因で条件が変わるリスクに備えるパターンです 。これは使えそうです。
参考)輸入通関で規制品と判断され差戻しとなった事例と契約条文の工夫…
③ 約款変更型(民法548条の4対応)
「甲は、民法第548条の4第1項に基づき、本約款を変更することにより本契約の内容を変更することができるものとする。この場合、甲は変更内容および効力発生時期を乙に対して書面または甲のウェブサイトへの掲載により周知するものとする。」
不特定多数の荷主と取引する通関業者が定型約款を用いる場合に特に重要なパターンです 。相手方の個別同意なしに変更できますが、「合理的な範囲内」という条件があります。
参考)契約の変更に関する条項とは?民法上のルール・書き方・例文など…
落とし穴は3点に集約されます。これだけ覚えておけばOKです。
落とし穴①:「書面」要件の欠落
民法上は口頭でも契約変更は成立します 。しかし通関業務では変更内容の立証責任が問題になるケースが多く、書面要件を条項に明記しなければ、後日「変更した・していない」のトラブルになります。「当事者全員の書面による合意によってのみ変更できる」という一文が必須です。
落とし穴②:効力発生時期の不記載
変更内容を合意しても、いつから有効になるかを定めていないと解釈が割れます。痛いですね。「本変更契約締結日から将来に向かって効力が生じ、過去に遡らない」と明記することで、遡及適用のリスクを防げます 。法不遡及の原則から遡及適用は原則避けるべきですが 、条項に明記がない場合は争いになります。lawinfo.joureikun+1
落とし穴③:見直し条項だけ入れて「対応フロー」がない
見直し条項は「見直すことがある」と書くだけでは不十分です。実務上は、①誰が見直しを発議するか、②いつまでに協議を終えるか、③合意できない場合はどうするかをあわせて定めておく必要があります。担当部署と連携して実務フローを確認した上で条項に反映しましょう 。
通関業法では、通関業者は財務大臣(税関長)の許可を受けて業務を行い、許可条件の変更や許可取消のリスクが常に存在します 。法令の解釈の相違を原因として関税額が増加する更正が行われる場合には、税関長は通関業者に意見を述べる機会を与えなければならないと定められています 。このような制度変更・行政判断の変化に対し、委託契約上の見直し条項があれば「法令変更時の対応責任の所在」を明確化できます。japanese-laws.readthedocs+1
通関業務委託契約に見直し条項を盛り込む際は、以下の事項を含めることを推奨します。
規制は毎年のように改訂されます。契約時点で合意していても次回取引時にはルールが変わっていることは珍しくありません 。見直し条項はそのためのセーフティネットです。
参考:通関業務の実務と通関業法条文(日本関税協会)
通関業法 全文 – 日本関税協会
見直し条項を入れること自体は正しい対応ですが、運用実態が伴わない「形式だけの見直し条項」は、むしろ荷主からの信頼低下を招くことがあります。意外ですね。
たとえば「3年ごとに見直す」と定めながら、実際には3年が経過しても何の通知も協議もなかったとします。その後、料金を一方的に値上げしようとした場合、荷主側から「見直し条項に基づく手続きが履行されていない」と主張され、変更の効力が否定されるリスクが生じます。見直し条項が不利に働くケースです。
対策として重要なのは、見直し時期が来たら必ず「見直し実施通知書」を書面で送付し、実施した記録を残しておくことです。実施記録が蓄積されれば、後日の変更主張の証拠にもなります。
実務的には、契約管理ツールや電子契約サービスを利用してリマインダー機能を設定しておくと、見直し時期の見落としを防げます。GMOサイン・クラウドサインなどの電子契約サービスには期限通知機能があり、通関業務の複数契約を効率的に管理できます。
参考:契約変更条項の書き方・例文(GMOサイン)
契約書の変更条項の書き方とひな形を紹介 – GMOサイン
参考:民法上の契約変更ルール・定型約款の変更要件(契約ウォッチ)
契約の変更に関する条項とは?民法上のルール・書き方・例文 – 契約ウォッチ