港湾情報システムCONPASで関税・通関の流れが変わる

港湾情報システムCONPASとは何か、関税・通関に関わる荷主やフォワーダーが知っておくべき機能・導入港・利用手順を解説。NACCSとの連携でどこまで効率化できるのか?

港湾情報システムCONPASで関税・通関の流れを知る

CONPASを使わずに通関書類を正しく出しても、ゲート前でトレーラーが80分以上も足止めされて、あなたの貨物が予定通り届かないことがあります。


港湾情報システムCONPASの3つのポイント
🚢
CONPASとは何か?

国土交通省が開発した「Container Fast Pass」の略。コンテナターミナルのゲート前混雑を解消し、トレーラーの待機時間を劇的に短縮するシステムです。

📋
通関・物流業務への影響

NACCSと連携することで、通関手続の入力項目が最大80%削減可能。搬入情報の事前照合により、ゲート処理時間が約6割削減されると試算されています。

🗺️
全国への展開状況

横浜・東京・大阪・神戸など主要港湾に順次導入済み。2024年9月時点でサイバーポートを導入する企業は745社以上に拡大しています。


港湾情報システムCONPASとは何か?仕組みと目的を解説

CONPAS(コンパス)は、「Container Fast Pass」の頭文字をとった略称で、国土交通省が開発した新・港湾情報システムです。正式名称は「新・港湾情報システム」であり、コンテナターミナルのゲート前混雑解消とトレーラーのターミナル滞在時間短縮を主目的としています。


このシステムが生まれた背景には、コンテナ船の大型化という国際的な潮流があります。1隻の船が大量のコンテナを積み下ろしするため、特定の時間帯に大勢のトレーラーがターミナルゲートに殺到し、渋滞が深刻化していました。関税や通関を担うフォワーダー・海貨業者の視点から見れば、ゲート前での無駄な待機は貨物のスケジュールを乱し、荷主へのサービス品質に直結します。


つまり、物流DXの一環です。


CONPASは「ヒトを支援するAIターミナル」施策の一つとして位置づけられており、情報通信技術によってゲート処理とヤード内荷役作業の両方を効率化することを目指しています。単なる予約システムではなく、ICカード認証・搬入情報の事前照合・車両接近情報の活用という4つの機能が組み合わさった複合的なプラットフォームです。


CONPASの4つの主要機能を整理すると以下のとおりです。


機能 内容 効果(試算・実測値)
①搬出入予約制度 予約枠を設定し、トレーラーの到着時間を分散・平準化 ゲート前総待機時間を約1割削減
②PSカードの活用 ICカードのタッチのみで入場。書類提示・手入力を省略 ゲート処理時間を約2割削減(搬出)
③搬入情報の事前照合 コンテナ到着前に搬入票とTOS情報を自動照合 IN側ゲート処理時間を約6割削減(推計)
④車両接近情報の活用 トレーラーの到着を事前検知し、荷繰り準備を先行 荷繰り準備時間を約15分確保


これらの機能は独立して動くのではなく、相互に連携することで効果を最大化します。搬入情報の事前照合が基本です。


特に注目すべきは③の搬入情報の事前照合です。従来、トレーラーがゲートに到着してから紙の搬入票を提示し、ターミナルのTOS(ターミナルオペレーションシステム)情報と突き合わせていたため、書類の不備があれば、その場で確認・修正が必要となり、後続のトレーラー全体の待機時間が増える連鎖が起きていました。CONPASではこの照合をコンテナ到着前に電子的に完了させることで、ゲートでの手続が大幅に簡略化されます。


参考:国土交通省港湾局による新・港湾情報システム「CONPAS」の基本解説はこちら
CONPASについて(Cyber Port・CONPASポータルサイト)


CONPAS導入による関税・通関手続への影響とNACCSとの連携

関税や通関に関わる人たちがCONPASに注目すべき最大の理由は、NACCSとの連携によって物流手続と通関手続が事実上ワンストップ化される点にあります。


NACCSとサイバーポート(CONPASを包含するプラットフォーム)は、別々のシステムです。NACCSは税関を含む行政機関との「官民」手続、つまり輸出入申告・審査・許可などを担います。一方、CONPASを含むサイバーポートは荷主・海貨業者・フォワーダー・倉庫・陸運・ターミナルオペレーター間の「民民」手続を電子化する基盤です。


役割が違うということですね。


2023年3月、国土交通省はサイバーポートとNACCSの直接データ連携機能をリリースしました。これにより、サイバーポート上で作成した搬入票情報がNACCSに自動連携され、NACCSで輸出入許可が下りた情報がサイバーポート側にも自動反映されます。実際の効果として、通関手続における入力項目が最大80%削減できることが試算されています。たとえばB/L番号・船名・航海番号・申告区分などの共通項目を複数システムに重複入力する手間がなくなります。


具体的なコスト削減の試算では、年間10万件の取引処理を行う企業が1取引あたり15分の業務時間を削減できた場合、年間で約9,100万円のコスト縮減効果が見込まれると国土交通省は示しています。金額が大きいですね。


さらに連携基盤全体(CONPASを含むサイバーポート)を活用した2021年度の実証事業では、港湾物流手続にかかる時間が最大60%削減されたと確認されています。これは輸出の「船腹予約~船荷証券発行」に至る全工程を対象にしたモデルケースでの数字で、海貨業者・ターミナルオペレーター・NVOCCなど7社すべてで効率化効果が実証されています。


  • 🔗 サイバーポートとNACCS連携のポイント: サイバーポートで搬入票・危険品書類などを作成すると、NACCS業務(EDA/IDA等82業務コード対応)が同一画面からワンストップで実行可能。書類の差し戻しや再入力が大幅に減る。
  • 🔗 通関業者・海貨業者への直接メリット: 搬入情報の事前照合により、通関許可後の搬入手配~ゲート通過までのリードタイムが大幅に短縮。荷主からの「いつ届く?」という問い合わせに対してもタイムラインで正確な情報を提供できる。
  • 🔗 荷主側の間接的メリット: 到着通知(A/N)が関係者にリアルタイム共有されるため、陸送手配や倉庫確保などの後工程への早期着手が可能になる。


参考:サイバーポートとNACCSの直接連携についての国土交通省プレスリリース
「Cyber Port」と「NACCS」のシステム間直接連携機能のリリース(国土交通省)


CONPAS対応の主要港湾と導入状況(横浜・東京・大阪・神戸)

CONPASが現在どの港湾で使えるのかは、実際に通関・物流業務を行う立場では欠かせない確認事項です。ここでは最新の導入状況を整理します。


CONPASの展開はまず横浜港から始まりました。2017年度から南本牧コンテナターミナルで試験運用を重ね、2021年3月30日に常時運用を開始しています。これが日本初の常時運用です。その後、横浜港本牧ふ頭のBC1・BC2・D1・D4の4ターミナルにも試験運用が拡大されており、2024年度には初めて4ターミナル同時の試験運用が実施されました。


東京港では、2022年8月から大井1・2号、3・4号、6・7号ターミナルおよび青海4号でCONPASを活用した搬出入予約制の取り組みが開始されました。2025年度(令和7年度)には、大井6・7号、青海4号に加えて中央防波堤外側Y1ターミナルにも対象が拡大されており、大井1・2号では東京港初となる常時運用も始まっています。


阪神港では大阪港夢洲コンテナターミナルが2024年3月29日から、神戸港PC-18が2024年9月27日からCONPASの常時運用を開始しています。2025年10月時点では、神戸港のPC-15〜17区域へのさらなる展開も進んでいます。


港湾 主な対象ターミナル 運用状況(2025年時点)
横浜港 南本牧CT・本牧BC1/BC2/D1/D4 南本牧:常時運用中。本牧4ターミナル:試験運用実施済み
東京港 大井1〜7号・青海4号・中央防波堤外側Y1 大井1・2号:常時運用開始。その他:予約制取り組み実施中
大阪港 夢洲コンテナターミナル 2024年3月より常時運用中
神戸港 PC-18(PC-15〜17に拡大中) PC-18:2024年9月より常時運用。拡大展開中


これだけ広がっているということですね。


利用登録済みの陸運事業者数の推移を見ると、横浜港南本牧ターミナルの常時運用開始時の2021年3月には58店社だったものが、2024年11月時点では356店社にまで拡大しています。約4年間で6倍以上に増加した計算です。一方で、通関業者・海貨業者・荷主といった「ゲートの外」にいる事業者の登録はまだ拡大途上にあり、搬入情報の事前照合機能を最大限活用するためには、これらの事業者のCONPAS登録拡大が課題として残っています。


参考:東京港でのCONPAS活用と搬出入予約制に関する詳細(東京都港湾局)
CONPASを活用したコンテナ搬出入予約制の推進(東京都港湾局)


CONPAS・PSカードの登録手順と通関業者・荷主が知るべき利用方法

CONPASを実際に使うためには、サイバーポートのアカウント登録と、PSカードの利用が必要です。それぞれの手順を整理します。


まずCONPASのシステム登録について、利用者はCyber Port(サイバーポート)ポータルサイトからオンラインで申請できます。管理者が企業アカウントを作成し、配下のドライバーや担当者を招待する形で利用者を追加していく仕組みです。アカウントは無料で作成可能であり、サイバーポートの利用自体は無料です。


登録は無料で始められます。


ただし、利用者の立場によって必要な手続きが異なります。


  • 🚛 陸運事業者(トレーラー会社): CONPASで搬出入予約を取得するのが主な利用目的。PSカードとの紐づけによりドライバーが各ターミナルゲートでタッチするだけで入場処理が完了する。
  • 📦 海貨業者・倉庫事業者: サイバーポート上で搬入票を電子作成し、CONPASの事前照合機能に連携させることがミッション。これにより、陸運事業者がゲートに到着した時点で照合が済んでいる状態を作れる。
  • 🏢 荷主・フォワーダー: サイバーポートを通じて搬入票情報・到着通知(A/N)・船積依頼書(S/I)等の情報を共有する。CONPASの予約機能を直接使う機会は少ないが、書類を電子化することで下流の陸運事業者のCONPAS利用率が上がり、間接的に貨物のリードタイム短縮につながる。


PSカード(Port Securityカード)は、国が発行する全国共通のICカードです。コンテナターミナルへの人の出入りを確実かつ円滑に管理するための出入管理情報システムで使用される身分証明書であり、これがCONPASとセットになって機能します。ドライバーは事前の搬出入票登録時にPSカードのドライバー情報・貨物情報・車両情報を紐づけておくことで、当日のゲート処理をカードタッチ1回で完了できます。


PSカードが鍵になるということですね。


ゲート到着後の手入力では誤入力が起きやすく、確認作業に時間がかかることが渋滞の一因でした。CONPAS+PSカードの組み合わせにより、この誤入力リスクがゼロに近づきます。横浜港本牧BC1ターミナルの試験運用では、CONPAS予約車のゲート前平均待機時間が10.0分だったのに対し、非予約車は80.5分と、その差は実に70.5分(削減率82%)に上りました。


この数字は見逃せません。


関税に関わる通関業者にとっての実務上の注意点として、CONPASの搬出入予約は来場する日の3営業日前の午後2時から取得可能な設計になっています。予約開始直後に枠が埋まるケースが報告されており、「予約したくても取れない」という声もあがっています。実際に横浜港では、「すっぽかし(予約放置)」や「直前キャンセル」に対するペナルティ制度の導入が検討・実施されています。予約枠の確保を計画的に行うことが大切です。


参考:CONPASの利用申請方法についての公式マニュアル(Cyber Portポータルサイト)
CONPASポータルサイト(国土交通省 Cyber Port)


CONPAS未導入だと関税・物流コストにどれほど影響するのか

「CONPASはトレーラー会社向けのシステムだから、通関や荷主は関係ない」という認識は、コスト面から見ると危険な思い込みです。この思い込みが原因でどれほどの機会損失が発生しうるかを数字で見ていきます。


国土交通省の試算によれば、コンテナ取扱量が年間約100万TEUのターミナルを想定した場合、CONPAS導入前のゲート前待機時間は搬出で平均10分、搬入で平均30分でした。CONPASの目標値は搬出入ともに0分です。この待機時間解消による効果は、年間約10億円に相当すると試算されています。


10億円というのは1ターミナル規模の話です。


ではこのコストが誰に跳ね返るかというと、最終的には荷主と通関・物流業務に関わる事業者全員です。トレーラーがゲート前で長時間待機することは、1台当たりの運送コスト上昇につながります。ドライバー不足が深刻化した「2024年問題」の文脈でいえば、時間外労働の規制が厳しくなった現在、待機時間の長さは輸送コストに直結します。


港湾関連データ連携基盤(サイバーポート)を利用したモデルケースの試算では、1取引あたりの港湾物流手続時間が現状の212分から132分へと38%削減できます。荷主から海貨業者・船社・通関・倉庫・陸運まで、全関係者の合計工数が1案件ごとに80分短縮されるイメージです。


  • 💸 時間コスト(例1): 年間50万件の取引処理を行う企業が1取引あたり10分を削減した場合、年間約3億円のコスト縮減効果が試算されています。
  • 💸 時間コスト(例2): 年間1万件の取引で1取引あたり30分削減できた場合、年間約1,800万円のコスト縮減が見込まれます。
  • ⏱️ スケジュールリスク: CONPAS非利用のトレーラーは横浜港本牧ターミナルのケースで平均80.5分の待機が発生。朝イチ配送のスケジュールに響くと、荷主クレームや保管料追加請求につながることがある。


コスト削減だけでなく、スケジュール管理リスクの観点でも、CONPASの利用状況は無視できません。特に輸入貨物の通関許可後の流れにおいて、搬入情報の事前照合が機能していれば、通関許可取得から搬出完了までのリードタイムが大幅に短縮されます。輸入者として通関業者に委託する際には「CONPASとの連携をしているか」「サイバーポートで搬入票を電子化しているか」を確認する視点が有効です。


参考:国土交通省による港湾関連データ連携基盤の効果と時間削減試算
港湾関連データ連携基盤の効果と利用促進について(国土交通省)


CONPASとサイバーポートの関係:関税担当者が理解すべき全体像

CONPASとサイバーポートは別物ですが、セットで理解することで初めてその全体像が把握できます。この点が混乱しやすいポイントです。


サイバーポートは国土交通省港湾局が整備するデジタルプラットフォームで、港湾物流・港湾管理・港湾インフラという3分野を横断しています。CONPASはその中の「港湾物流分野」に位置づけられるコンテナターミナルゲート管理システムです。


関係性を整理するとこうなります。


  • 🌐 サイバーポート(上位概念): 荷主・船社・海貨・通関・倉庫・陸運・ターミナルなど全関係者が使う港湾物流のデジタル基盤。S/I・A/N・搬入票・危険品書類など37種類の帳票に対応。NACCSと2023年3月から直接連携。2024年9月時点で745社以上が導入。
  • 🏗️ CONPAS(下位機能): ターミナルゲート処理に特化したシステム。搬出入予約・PSカード活用・搬入情報事前照合・車両接近情報活用の4機能を担う。サイバーポートで作成した搬入票データがCONPASに連携されることで、ゲート前の電子照合が実現する。
  • 🏛️ NACCS(行政システム): 税関を含む行政機関との輸出入申告・審査・許可を担う。サイバーポートと直接データ連携済み。


関税に携わる立場から見た実務の流れをまとめると、荷主や通関業者がサイバーポート上で搬入票などを作成・共有し、その情報がCONPASを通じてターミナルに事前照合される。通関許可(NACCS)が下りた情報はサイバーポートに自動反映され、搬出入のタイミングがスムーズに繋がる、という流れになります。


2018年当時、コンテナ物流手続の約5割が紙・電話・メールなどアナログ手段で行われていたことを考えると、この10年足らずでの変化は大きいといえます。紙が基本という常識が覆されたわけです。


関税や通関に関わる実務担当者が今後やるべきことは一つです。まず自社がサイバーポートを利用しているか確認し、搬入票の電子化とCONPASとの連携状況をチェックすることが出発点になります。取引先の海貨業者や陸運会社がCONPASを使っているかどうかを確認するだけでも、自社の輸入貨物のリードタイム改善につながる可能性があります。


参考:サイバーポート(港湾物流)の概要とCONPASとの関係に関する公式説明
Cyber Port(サイバーポート)・CONPASポータルサイト(国土交通省)