外来生物法の罰則と輸入規制を関税視点で解説

外来生物法の罰則は個人でも最高300万円・懲役3年、法人なら1億円に及ぶことをご存じですか?輸入通関と深く関わるこの法律、関税手続きとの交点を正しく理解できていますか?

外来生物法の罰則と輸入規制の全貌

知らずに海外から生き物を持ち込むと、あなたは前科がつく懲役刑の対象になります。


📋 この記事の3ポイント要約
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罰則の重さ

特定外来生物を無許可で輸入した場合、個人は最高3年以下の懲役または300万円以下の罰金、法人は1億円以下の罰金が科される。

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税関との密接な関係

外来生物の輸入通関は成田・中部・関西・福岡・鹿児島の指定空港に限られており、種類名証明書の提出が必須となる。

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条件付特定外来生物とは

アカミミガメ・アメリカザリガニは2023年6月から「条件付特定外来生物」に指定され、飼育継続は可能だが輸入・販売・野外放出は禁止となった。


外来生物法の罰則区分と具体的な刑罰の内容


外来生物法(正式名称:特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律)は、2005年6月に施行された法律です。関税や輸入業務に関わる人にとって見落としがちですが、この法律の違反は「知らなかった」という言い訳が通用しない厳しい内容になっています。


罰則は違反行為の種類によって細かく分かれています。最も重い区分として、特定外来生物を無許可で輸入した場合・無許可で販売や配布をした場合・販売目的で無許可飼育した場合・偽りの申請で許可を得た場合・無許可で野外放出した場合のいずれかに該当すると、個人には3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科されます。つまり前科がつく刑事罰です。


法人が違反した場合は、その金額がさらに跳ね上がります。同じ違反でも法人には1億円以下の罰金が科される可能性があります。これは輸入商社や通関業者として業務を行う企業にとって、事業存続にかかわるリスクと言えます。


一方、軽い区分として「未判定外来生物」を無許可で輸入した場合や、愛玩目的で無許可飼育した場合は、個人に1年以下の懲役または100万円以下の罰金、法人には5千万円以下の罰金が定められています。軽いとはいえ、100万円は決して小さな金額ではありません。


| 違反行為 | 個人の罰則 | 法人の罰則 |
|---|---|---|
| 無許可で特定外来生物を輸入 | 3年以下の懲役または300万円以下の罰金 | 1億円以下の罰金 |
| 無許可で販売・配布 | 3年以下の懲役または300万円以下の罰金 | 1億円以下の罰金 |
| 無許可で野外放出 | 3年以下の懲役または300万円以下の罰金 | 1億円以下の罰金 |
| 未判定外来生物を無許可輸入 | 1年以下の懲役または100万円以下の罰金 | 5千万円以下の罰金 |
| 愛玩目的で無許可飼育 | 1年以下の懲役または100万円以下の罰金 | 5千万円以下の罰金 |


罰則は行為の悪質性や反復性によって、懲役と罰金が併科されることもあります。これが重要なポイントです。


参考:環境省による罰則の詳細な一覧はこちらで確認できます。


罰則について | 日本の外来種対策 | 外来生物法 - 環境省


外来生物法の罰則が関税・輸入通関と交差するポイント

関税の知識がある人でも、外来生物法と税関手続きがどう交差するかを正確に理解している人は多くありません。実は、外来生物に関する輸入通関には、関税法上の手続きとは別に、外来生物法固有の書類提出義務が存在します。


まず「特定外来生物」を輸入する場合、輸入者はあらかじめ環境省から「飼養等の許可」を取得していることが前提です。この許可なしに通関しようとしても、税関で書類不備として留め置かれるか、最悪は没収・廃棄処分になります。そのうえで通関時には、飼養等許可証の写しと、輸出国の政府機関等が発行した「種類名証明書」の原本を税関へ提出する義務があります。


「種類名証明書」とは、輸入する生物の学名・数量を証明する公的文書です。民間が発行したものは原則として認められません。英語または日本語で作成されており、種の学名(ラテン語)と数量が明記されている必要があります。書類が1枚でも不備であれば、通関手続きが停止します。


さらに見落とされやすいのが、輸入できる場所の制限です。外来生物の輸入通関は、以下の5つの指定空港に限られています:成田国際空港、中部国際空港(名古屋税関中部空港税関支署)、関西国際空港、福岡空港、鹿児島空港。これらの港以外から外来生物を含む荷物が到着した場合、指定の空港へ保税運送したうえで通関手続きを行う必要があります。これは輸送コストと時間の追加負担につながります。


「未判定外来生物」の輸入はさらに手間がかかります。輸入前に環境大臣と農林水産大臣への事前届出を行い、生態系への影響がないかどうかの「判定」を受けることが義務付けられています。この判定手続きには一定の時間を要するため、輸入スケジュールへの影響を十分に織り込む必要があります。


関税手続きに詳しい人は書類管理に慣れているものですが、外来生物法の書類要件は税関独自のルールと組み合わさっており、片方だけ知っていても対応できない点が難点です。


参考:税関による外来生物の輸入通関手続きの詳細は以下を参照。


特定外来生物 - 税関 Japan Customs


外来生物法の罰則が適用された実際の違反事例

法律の規定だけを読んでいると「実際に逮捕されるの?」と思う人もいるかもしれません。実際には逮捕・書類送検の事例が複数存在します。


環境省がまとめた資料によると、外来生物法が施行された2005年度から2011年度までの7年間で、法律違反による検挙件数は累計59件に上ります。年間平均でおよそ8〜9件のペースで摘発が行われていたことになります。無視できない数です。


具体的な事例として、2007年には北海道のペットショップ経営者(当時28歳)が、特定外来生物に指定されているオーストラリア原産のザリガニ「ヤビー」を販売目的で飼育したとして逮捕されています。1匹7万9800円という値段がついており、「価値があるので捨てられなかった」と供述したとされています。


2009年には奈良県で、釣ったオオクチバス(ブラックバス)2匹(それぞれ体長53cm・54cm)を生きたままクーラーボックスに入れて車に運んだとして、男性(当時42歳)が現行犯逮捕されています。「彼女に見せようと思った」という動機でした。運搬だけで逮捕という点は、多くの釣り愛好家にとっても驚きでしょう。


また2010年には、メダカに似た外来魚「カダヤシ」(体長5cm程度の小魚)をネットオークションで1回あたり4400円で売買したとして、2名が書類送検されています。


これらの事例が示すのは、高額な生物だけが対象ではないという事実です。体長5cmの小魚でも、学術的に珍しい生き物でなくても、特定外来生物であれば罰則の対象になります。軽い気持ちでの売買や運搬が、刑事事件に発展するリスクがあるということです。


参考:環境省がまとめた外来生物法違反事例(平成19〜24年)。


外来生物法違反事例(平成19〜24年)- 環境省


外来生物法の罰則における条件付特定外来生物の特殊な扱い

外来生物法の中でも、特に混乱を招きやすいのが「条件付特定外来生物」という分類です。2023年6月1日からミシシッピアカミミガメ(いわゆる「ミドリガメ」)とアメリカザリガニがこのカテゴリに指定されました。


条件付特定外来生物は「通常の特定外来生物よりも一部の規制が緩和されている」生物です。具体的には、すでにペットとして飼育しているアカミミガメ・アメリカザリガニを引き続き飼育することは、手続きなしに認められています。無償での個人間の譲渡も可能です。生きたまま持ち帰ることも禁止されていません。これが「条件付き」の意味です。


ただし、禁止されている行為も明確に存在します。野外への放出・放棄は厳禁です。生きた個体の輸入・販売・購入も禁止されます。販売目的での飼育も認められません。無償であっても、広く不特定多数に配布する(景品・お土産など)行為も禁止です。これらに違反した場合は罰則の対象になります。


通関や輸入を扱う立場から見ると、条件付特定外来生物の「輸入禁止」は重要なポイントです。「飼育は認められているから輸入もできる」という解釈は誤りで、生きた個体の輸入は禁止されています。つまり国内での飼育継続は許されるが、新たに海外から取り寄せることはできない、という仕組みです。


アメリカザリガニは国内に約20億匹いると推定されており、今後も長期的な管理が求められます。身近な生き物だけに「これも規制対象なの?」という感想を持つ人も多いですが、規制が始まった以上、知らなかったでは済まされません。


参考:環境省による条件付特定外来生物の規制内容の詳細。


条件付特定外来生物アカミミガメ・アメリカザリガニの規制について - 環境省


外来生物法の罰則と関税リスクを同時に回避するための実務チェックポイント

関税や輸入業務に携わる立場から見た場合、外来生物法のリスクを回避するうえで最も重要なのは「輸入前の事前確認」です。通関当日に書類不備が発覚しても、その時点ではすでに手遅れになるケースがほとんどです。


まず確認すべきは、輸入しようとする生物が「特定外来生物」「未判定外来生物」「種類名証明書の添付が必要な生物」のいずれかに該当するかどうかです。環境省の外来種データベースや税関のウェブサイトで学名(ラテン語)ベースで確認できます。商品名や通称だけで調べると、判断を誤るリスクがあります。


次に、輸入目的に応じた許可取得の要否を確認します。特定外来生物の場合は「飼養等許可」が事前に必要であり、この許可なしには通関を開始することもできません。許可申請には環境省への書類提出と審査期間が必要なため、輸入スケジュールよりも前倒しで動く必要があります。


書類面では、輸出国の政府機関が発行した種類名証明書(英語または日本語・学名と数量記載)の原本が必須です。民間の証明書は不可で、発行機関が政府機関であることの確認も欠かせません。


輸入港の選定にも注意が必要です。外来生物の輸入通関を扱える税関は成田・中部・関西・福岡・鹿児島の5か所のみです。これ以外の港への到着便や船便を選んでしまうと、保税運送の手配が追加で発生し、コストと時間が余計にかかります。


最終的な実務上のポイントとしては、輸入しようとする生物の正確な学名を書類に明記すること、輸出国の政府機関証明書を原本で保管すること、通関手続きは指定5空港のいずれかで行うこと、の3点が基本です。


輸入規制の対象かどうかを事前に調べる際は、環境省の「外来種データベース」や税関のウェブサイトで学名検索を行うのが最も確実です。1つの確認作業が、数百万円規模のペナルティ回避につながります。


参考:輸入に関する手続きの詳細は環境省の以下のページが参考になります。


輸入に関する手続き | 日本の外来種対策 | 外来生物法 - 環境省




千葉県の生物日本生物教育会第30回全国大会実行委員会1975年