封印を外した状態で車を1メートルでも動かすと、30万円以下の罰金が科されます。
封印解除(レリーズ)とは、普通自動車(登録自動車)のリアナンバープレートの左側ボルトを覆うように取り付けられたアルミ製のキャップ(封印)を外す行為のことです。英語の「release(解放する・拘束から自由にする)」が語源で、通関・自動車登録の実務では「封印を解く」という意味で使われます。
道路運送車両法第11条は、登録自動車の所有者に対して、ナンバープレートを取り付けたうえで封印を受けることを義務づけています。つまり、封印はただの「キャップ」ではなく、その車が日本で正式に登録されていることを証明する法的な証しです。封印の表面には、管轄の地方運輸局を示す刻印(東京なら「東」、大阪なら「大阪」など)が入っており、登録された場所と車両の同一性を担保しています。
つまり封印が原則です。
封印制度が適用されるのは「登録自動車」(普通自動車・小型自動車・大型自動車)であり、軽自動車には封印義務がありません。軽自動車のナンバーは「車両番号標」といい、国への登録ではなく市町村への届出制だからです。輸入自動車を扱う通関業従事者は、輸入案件が普通車か軽自動車かによって後続の手続きが大きく変わる点を覚えておく必要があります。
| 区分 | 封印の有無 | 登録窓口 | ナンバー呼称 |
|---|---|---|---|
| 普通自動車(輸入登録車) | ✅ あり(義務) | 運輸支局 | 自動車登録番号標 |
| 軽自動車 | ❌ なし | 軽自動車検査協会 | 車両番号標 |
参考:道路運送車両法第11条に基づく封印制度の詳細と義務の範囲について
道路運送車両法 第11条(e-GOV 法令検索)
通関業従事者にとって、封印解除(レリーズ)が直接関わる場面はおもに2つあります。
1つ目は、輸入自動車の新規登録時です。海外から輸入した自動車は通関後、日本で初めてナンバープレートの交付と封印を受けます。この流れを「新車新規登録(または中古輸入車の新規登録)」と呼びます。
2つ目は、すでに封印がついている車両の名義変更・ナンバー変更です。住所変更(管轄変更)や所有者変更が生じると、旧ナンバープレートを返納し新しいナンバーに付け替えるため、既存の封印を外す(解除する)必要があります。
輸入自動車の新規登録の場合、通関手続きで発行される「自動車通関証明書」が登録申請に不可欠な書類です。この証明書がなければ、運輸支局での登録審査が通らず、封印を受けることができません。
封印を受けるまでの大まかな流れは次のとおりです。
ここで重要なのが、「④と⑤の間に車を動かしてはいけない」という点です。封印のない状態で公道を走ることは法律違反になります。運輸支局の敷地内での移動は認められていますが、公道への乗り出しは絶対に避けなければなりません。
令和7年(2025年)10月12日より、自動車通関証明書の電子化が開始されました。これにより、NACCSを利用して通関証明の交付申請ができるようになり、税関の窓口に出向く手間が省けるようになっています。なお、NACCS経由での申請手数料は1件300円(書面申請は400円)です。
参考:自動車通関証明書の電子化に伴う登録申請書類の取り扱い変更について
宮城自販(PDF):自動車通関証明書の電子管理に伴う取り扱い変更
「封印を外すくらい大した違反じゃない」と軽く考えていると、大きな痛手を負います。
道路運送車両法第11条第5項は、封印を「整備のためなど正当な理由なく取り外すことは禁止」と明確に定めています。違反した場合のペナルティは次のとおりです。
「懲役刑の可能性がある」という点が見落とされがちです。罰金刑のみならず、前科がつくリスクがある違反だということです。
さらに、2024年8月には国土交通省が封印の不正再利用に関与したとして全国28社を行政処分しました。その内訳はトヨタ系24社・ダイハツ系3社・日産系1社。本来、一度使用した封印は再利用できない使い捨て構造になっているにもかかわらず、旧封印を再利用する運用が常態化していたことが問題になりました。処分内容は「業務委託解除」(4社)と「業務改善指示」(24社)で、一部では懲役リスクを伴う刑事告発の可能性も指摘されています。
これは業界全体に衝撃を与えた事案です。
通関業従事者は輸入車の受け渡し前後に封印状態を確認する役割を担うケースがあります。封印が外れている・破損している・再利用されている疑いがある場合は、速やかに運輸支局または封印受託の行政書士に相談することが重要です。「知らなかった」では済まされないリスクが現実に存在しています。
参考:封印不正再利用による28社行政処分の詳細(国交省)
NEXT MOBILITY:国交省、封印取付の法令違反でトヨタ販社(28社)を処分
封印解除(レリーズ)を行った後に必要なのが「再封印」です。再封印の取り付けは、運輸支局の職員または「封印受託者」(国土交通大臣から委託を受けた者)しか行えません。自分で封印をかぶせるだけでは完全な再封印にはならないため、必ず正規の手順を踏む必要があります。
再封印の手順(自分で運輸支局に持ち込む場合)
手続き時間は30分程度が目安です。ただし、封印が外れた状態の車は公道を走れないため、運輸支局まで自走できません。その場合、次の2つの方法で対応します。
- 仮ナンバー(自動車臨時運行許可)を取得する:市区町村の窓口で申請。取得手数料750円で、有効期間は最長5日間。目的・経路・期間が特定された場合のみ利用可能で、使い回しはできません。
- 搬送車(キャリアカー)で運ぶ:陸送業者に依頼し、封印取付場所まで運搬します。費用は数万円規模になることが多いです。
痛いですね。
一方、出張封印(丁種封印)を利用すれば、車両を運輸支局に持ち込まずに自宅や営業所・保管場所での封印取り付けが可能です。これは平成29年(2017年)10月から本格的に運用が拡充された制度で、丁種封印受託者として登録された行政書士が対応します。
出張封印を行政書士に依頼した場合の費用は、一般的に7,000円〜2万円前後が目安です(地域・事務所によって異なります)。平日日中に時間が取れない場合、土日祝日に対応できる行政書士事務所も増えています。これは使えそうです。
参考:出張封印(丁種封印)の制度と利用方法について
田中行政書士事務所:丁種封印とは?出張封印できる場合と手続き解説
通関業従事者の実務では、輸入車の登録手続きを外部の行政書士や代理業者に委託するケースが多くあります。その際、書類を先に申請して封印を後日行う「後日封印」という流れを選ぶ場合があります。この後日封印には、知らないと損するポイントがいくつかあります。
まず、後日封印が選択されるのは「書類の有効期限が迫っている」「3月末など登録が集中する繁忙期に先に登録だけ済ませたい」ケースが多いです。車庫証明や印鑑証明書には発行から1か月〜3か月という有効期限があるため、書類の期限切れを防ぐ目的で先行登録を行います。車検証は先に交付されますが、封印は後日という状態になります。
この状態が条件です。
ここで注意が必要なのは、「後日封印待ちの車は公道を走れない」という点が見落とされやすいことです。登録は完了していても封印がなければ公道走行は禁止されます。運輸支局の敷地内での試走も本来は避けるべきです。特に輸入車は現場の保管場所から別の場所に車を移動させるタイミングで、封印の有無を確認しないまま走らせてしまうミスが起こりやすいです。
また、後日封印に使う仮ナンバーの有効期間は最長5日間です。当初の予定日に封印が取れなかった場合、仮ナンバーの期限が切れ、再度申請しなければなりません。このタイムロスが輸入車の納期に影響するケースも実際に発生しています。
もう一つ、意外と知られていないのが「出張封印は再々委託が可能」という点です。地方の行政書士では丁種封印に対応していない場合でも、再々委託の制度を使って他のエリアの行政書士が代わりに対応できる仕組みが整っています。輸入車の保管場所が運輸支局から遠い地方港湾エリアにある場合、この制度を活用することで移動コストと時間を大幅に削減できます。
輸入車が届く港や保管場所を管轄するエリアで丁種封印に対応している行政書士をあらかじめリストアップしておくと、スムーズな登録完了につながります。出張封印対応の行政書士は、各都道府県の行政書士会ウェブサイトや「自動車登録・出張封印」をキーワードに事前検索するのが確実です。
封印が条件を満たせば問題ありません。
通関業者の立場からすると、「通関完了=仕事完了」ではなく、封印受領までの一連のフローを把握・支援できる体制を整えておくことが、顧客満足度と法令リスク回避の両面で大きな差を生みます。封印の知識を持つことで、通関業者としての付加価値が高まります。これは使えそうです。
参考:後日封印の仕組みと活用メリットについて
てしろぎ事務所:後日封印について