eori番号取得方法と通関実務の完全ガイド

EORI番号の取得方法がわからず、EU向け通関で困っていませんか?申請手順から必要書類、国別の注意点、ICS2との関連まで、通関業従事者が知っておくべき実務知識を徹底解説します。

eori番号取得の方法と通関実務で押さえるべき全知識

EORI番号を取得さえすれば、あとはどのEU加盟国でも問題なく通関できると思っているなら、それが荷物の差し止めを招く原因になります。


この記事のポイント3つ
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EORI番号とは何か・誰が必要か

EUで輸出入・通関に関与するすべての事業者が対象。法人ごとに1つだけ付与される識別番号で、EU全加盟国で共通利用できます。

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申請手順・必要書類・取得期間

日本企業がEUでEORI番号を取得する場合、最短2営業日から最長1か月以上かかる国もあります。書類不備が最大の遅延原因です。

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ICS2完全義務化と通関リスク

2026年2月3日よりICS2フェーズ3が完全施行。EORI番号の不備・未記載があると、日本の港で船積み禁止(Do Not Load)命令が下されるリスクがあります。


eori番号とは何か・取得が必要な事業者の範囲

EORI番号とは、「Economic Operators Registration and Identification Number(事業者登録識別番号)」の略称で、EU域内で輸出入・通関業務に携わるすべての事業者に割り当てられる固有の識別番号です。読み方は「イオリ番号」または「イーオーアールアイ番号」とも呼ばれます。


この番号は、EU加盟27か国の税関が共通して使用する統一システムで管理されており、一つのEU加盟国で取得した番号は、他のすべての加盟国でもそのまま有効となります。つまり、1回取得すればEU全域で使えます。


ただし、英国(GB)はEU離脱後、独自のEORI番号体系(GBで始まる番号)を運用しており、EUのEORIとは別扱いになります。北アイルランドとEU・英国以外の地域との輸出入には「XI」から始まる番号の追加取得も必要です。英国とEUで両方取引する場合は、それぞれ個別に取得が必要な点に注意が必要です。


EORI番号の取得が必要な事業者の範囲は以下の通りです。


事業者区分 典型的なシナリオ 備考
EUに所在する法人・個人 EU域内で輸出入・通関を行う継続的取引 初回申告前にEORIが必要
EU域外(日本など)の企業 EU向けに輸入またはEUから輸出を行う 最初に通関を行う国で取得可能
通関業者フォワーダー 荷主の代理として通関手続きを行う 代理人自身のEORIが必須。荷主側もEORIが必要な場合あり
個人・個人事業主 事業目的での輸出入 個人的使用の輸出入は不要。事業取引なら必要


重要なのは「1法人につきEORI番号は1つだけ」という原則です。グループ内の複数法人が個別に通関活動を行う場合は、各法人でそれぞれ取得が必要になります。EORIは共有できません。


また、少量の貨物しか取り扱わない企業は申請の必要がない場合もありますが、ICS2(後述)の完全義務化により、今後はほぼすべての商業輸送でEORI番号の記載が求められる流れになっています。これが基本です。


参考:EUの事業者登録識別番号(EORI)制度について詳しく解説しているジェトロの公式情報ページです。


ジェトロ:英国の輸出入手続き・EORI番号に関する公式情報


eori番号の申請手順と必要書類の準備方法

EORI番号の申請は、原則として「最初に通関を行う予定のEU加盟国の税関当局」に対して行います。申請方法は国によって異なりますが、大きく分けると「オンライン申請」「郵送・FAX・メール申請」「代理申請」の3通りがあります。


申請の基本的な流れ


まず申請に必要な書類を揃えることが最初のステップです。日本法人の場合、一般的に以下の書類が求められます。


- 登記簿謄本の英訳コピー(認証が必要な場合あり)
- 法人番号または納税者番号
- 代表者情報(氏名・役職・連絡先)
- 事業所所在地の証明書類
- 委任状(代理申請の場合)


次に申請フォームへの記入です。ドイツの場合は「0870フォーム」を使用し、ドイツ税関情報・知識管理局(Zoll)のポータルからオンライン提出するか、郵送・FAX・メールで提出します。


書類が受理されると審査が始まり、問題がなければEORI番号が発行・通知されます。番号取得後は、物流パートナー、通関ブローカー、社内のERPシステムへの登録も速やかに行う必要があります。


取得期間の目安(国別比較)


取得にかかる期間は国によって大きく差があります。


通常の取得期間 備考
ドイツ 2〜3週間 書類不備がある場合は1か月以上
英国 最短3〜5営業日 オンライン申請で比較的迅速
フランス・イタリアなど 1〜4週間程度 国によって運用に差あり
代行申請(共通) 申請後1か月程度 書類準備期間は別途必要


少なくとも最初の出荷予定日の1か月前には申請を完了させるスケジュールが鉄則です。「通関1か月前には準備を」という業界標準をそのまま守るのが条件です。


よくある書類不備と対策


現場で多発する書類不備のパターンとして、和文書類のみ提出(英訳が必要)、署名形式の不一致、代表者名の誤り、認証が必要な書類の未認証などが挙げられます。国によっては、外国企業の書類にアポスティーユ(公的認証)や公証翻訳が求められる場合もあるため、提出先の税関当局の最新要件を必ず確認する必要があります。


参考:ドイツでのEORI番号申請に必要な書類・手続きの詳細手順についての解説です。


Damalion:ドイツでのEORI番号申請方法(必要書類・手順・注意点)


eori番号とVAT番号の違い・インボイスへの記載方法

通関業務の現場で非常に多いのが、EORI番号とVAT番号を混同してしまうケースです。この2つは目的も役割もまったく異なります。混同すると誤ったEORI番号が通関申告に記載されてしまい、VAT還付金が別の事業者の口座に送られるなどの重大な損失が発生することがあります。


EORI番号とVAT番号の根本的な違い


EORI番号は「税関向けの事業者識別番号」であり、通関申告・輸出入申告・ENS申告などの税関手続きで使用されます。一方、VAT番号は「税務当局向けの付加価値税登録番号」であり、販売取引に関連するVATの申告・納税・還付手続きで使用されます。


つまり、EORI番号は「通関を通るための鍵」、VAT番号は「税金を精算するための鍵」と考えると整理しやすいです。


項目 EORI番号 VAT番号
目的 税関での事業者識別 付加価値税の申告・納税管理
使用場面 輸出入申告・通関手続き・ENS申告 販売・仕入れのVAT申告
発行機関 各国税関当局 各国税務当局
EU内の有効範囲 1か国で取得→EU全域で有効 登録国のみ有効(国ごとに必要)
形式の例(ドイツ) DE + 15桁の数字 DE + 9桁の数字


インボイスへの記載方法の実務


インボイスにEORI番号を記載する際の実務では、DHLやFedExなどのクーリエ各社が「VATナンバー」の入力欄にEORI番号を記載するよう案内しているケースがあります。そのため、住所欄の後ろや品名欄の後ろに「EORI No: XXXXXXXXXX」と明記する方法が実務上よく使われています。


バイヤーが個人なのか事業者なのかによって対応が変わります。個人宛の場合は「NATURAL PERSON(ナチュラルパーソン)」やパスポート番号を記載し、事業者宛の場合はEORI番号を記載するのが基本です。EORI番号がなくても発送自体は可能ですが、現地通関で確認のために時間がかかり、税関での遅延が発生します。


さらに、誤ったEORI番号を利用してしまうと、輸入VATの支払証明書が別の事業者のものとして記録されてしまい、VAT還付が受けられなくなるリスクもあります。致命的なミスになりかねません。


参考:EORI番号をインボイスへ記載する際の具体的な注意事項と、VAT還付との関係について解説されています。


Around The World:欧州VAT・EORI番号取得代行サービスと記載方法の解説


eori番号と通関業者が知るべきICS2完全義務化の影響

2026年2月3日に、EUの輸入管理システム「ICS2(Import Control System 2)」のフェーズ3(リリース3)が完全義務化されました。これは、海上輸送・道路輸送・鉄道輸送を対象としたもので、これまで航空貨物のみに適用されていた規制が「すべての輸送モード」に拡大されたことを意味します。


この義務化によって、通関業務の現場では「EORI番号の正確な記載」が以前にも増して重要になっています。重要な点です。


ICS2が求める3つの必須データ


ICS2フェーズ3では、出荷前に以下のデータをENS(Entry Summary Declaration:事前搬入略式申告)として電子的に提出しなければなりません。


- 最低6桁のHSコード(EUのTARIC関税分類と整合したもの)
- 輸出者・輸入者・通知先(Notify Party)のEORI番号(正確な記載が必須)
- ハウスB/Lレベルの詳細な商流・物流情報


これ以前は「品名の記述だけで通関できた」ケースもありましたが、ICS2完全義務化以降はAIによるリスク分析が行われ、曖昧なデータや不正確なEORI番号は即座に弾かれます。


EORI番号の不備が引き起こす3つのリスク


🚨 船積み禁止(Do Not Load)命令:申告データに不備がある場合、EU税関が出発地の港(日本やアジア)に「船積み禁止」命令を発出します。貨物は欧州に向けて出港すること自体ができなくなります。


⏱️ 大幅な納期遅延:データに疑義がある場合、EU到着後に「情報の追加要求(RFI)」や「物理的検査(Do Not Unload)」の対象となり、数日から数週間の遅延が発生します。ジャストインタイムの製造ラインや販売計画に直接影響します。


💰 高リスク事業者認定と罰金:不正確な申告を繰り返すと、EU税関のリスクプロファイルで「高リスク」と分類され、以後すべての貨物が検査対象となります。加盟国によっては罰金が科されるケースもあります。


ICS2のフェーズ3は「2026年2月3日の壁」とも呼ばれており、古いメッセージ形式(v2など)での申告は完全に拒絶されます。「知らなかった」では済まない段階に入っています。


通関業者やフォワーダーにとって実務上のポイントは、取引先のEORI番号が最新・有効であることを出荷前に定期確認する運用体制を作ること、そして自社のERPシステムや輸出書類作成システムに正確なEORI番号を登録・管理することです。


参考:ICS2フェーズ3の完全義務化の内容と、日本企業が直面するリスクについて詳しく解説されています。


Global SCM:ICS2フェーズ3完全義務化と欧州物流への影響(2026年2月8日)


eori番号の代行申請・通関業者活用と独自のリスク管理視点

EORI番号の取得は、各国の税関ポータルから自社で申請することも可能ですが、日本企業や日本の通関業者が欧州の税関当局に直接申請する場合、言語の壁・書式の差異・最新運用情報の収集など、かなりの負担がかかります。そのため、代行申請サービスの活用が実務上は現実的な選択肢として広く使われています。


代行申請サービスの費用感


代行申請を依頼する場合、VAT番号取得とセットになっているプランが多く見られます。一例として、英国・ドイツ・フランス・イタリア・スペインなど主要国での「VAT+EORI番号取得代行+1年間のVATリターン作業」込みのプランで、750ポンド〜750ユーロ程度(1か国ごと)が相場感の参考になります。ドイツではコンサル費用込みのプランで1,860ユーロ程度のサービスも存在します。


費用だけで判断せず、「申請後の採択割合の高さ」や「書類不備への対応力」「最新の税関運用情報の保有」を選定基準にすることを強くおすすめします。


通関業者として知っておくべきEORI番号の管理実務


通関業者の立場から見た場合、EORI番号の管理で見落とされがちなポイントがいくつかあります。


まず、EORI番号は一度取得したら終わりではないという点です。法人名・住所・VAT番号・代表者など、登録情報に変更が生じた場合は、速やかにEORI情報の更新届を提出しなければなりません。変更を怠ると通関申告時にエラーとなり、貨物の遅延原因になります。


次に、グループ内再編や合併・分社化が行われた場合、EORI番号への影響を必ず評価する必要があります。別法人が同じEORI番号を引き継いで使おうとするケースが現場で見られますが、これは認められません。


さらに、通関業者自身が荷主の代理として通関手続きを行う場合は、代理人自身のEORIと荷主のEORIの両方が必要になる場面があります。どちらが必要かを場面ごとに正確に把握しておくことが、プロとしての最低限の知識です。


EORIマスター情報管理のチェックリスト


✅ 取引先のEORI番号が現在も有効かを四半期ごとに確認しているか
✅ EU委員会の公式EORI検証ポータルで番号の有効性チェックを行っているか
✅ 輸出書類作成システム(ERPなど)のEORI番号が最新のマスターデータと一致しているか
✅ 申告前に荷主・通知先・フォワーダーそれぞれのEORIが書類間で一致しているか
✅ 英国向けとEU向けで別々のEORIを使い分けているか


EORIマスター情報は、通関申告の精度を左右する基礎データです。担当者個人の記憶や属人的なメモ管理ではなく、組織としての共有データベースに管理を移行することが、長期的なコンプライアンスリスクの低減につながります。


参考:EORI番号の申請代行から取得後の維持管理まで、実務に即したサービスを提供する国内専門機関の情報です。


オプティ株式会社:EORI登録申請代行サービス(国内屈指の実績)