株安後も貨物量は即座に減少しません。
世界同時株安とは、複数の国の株式市場が同時に大幅に下落する現象です。通関業務従事者にとって、この現象は単なる金融市場の出来事ではなく、貨物の流れや業務量に直接影響を与える重要な経済イベントとなります。
参考)株式市場の事件一覧 - Wikipedia
過去50年間で最も影響が大きかった世界同時株安は以下の通りです。
1987年10月19日:ブラックマンデー
これは現在でも1日の下落率としては史上最大です。
参考)ブラックマンデーとは?1987年の株価大暴落をわかりやすく解…
1997年10月:アジア通貨危機による世界同時株安
2008年9月:リーマンショック
リーマンショック後、国際コンテナ貨物流動量が一時減少しました。つまり株安の影響は確実に貨物量に現れるということですね。
参考)混雑ピークと運用規模の違いによる岸壁空間利用の生産性への影響
2015年8月:チャイナショック
2025年4月:相互関税による世界同時株安
株式市場の暴落は、通関業務に複数の段階を経て影響を及ぼします。実体経済への影響が現れるまでには時間差があるため、株安発生直後ではなく、数週間から数カ月後に業務量の変化が顕在化するのが特徴です。
参考)https://www.semanticscholar.org/paper/cfa5daf2b2a29636f7503cb328065ab69fc28557
貨物量への影響として、リーマンショック時には国際コンテナ貨物流動量が一時的に減少しました。ただし、近年はその後回復しただけでなく、以前を上回る取扱量に増加しています。
財務省の資料によると、保税業者・通関業者は貨物の適正な管理と輸入申告を行う重要な責務を負っています。
参考)https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/syogakuyunyuwg/syogakuyunyuwg_gijihaihu/20250612/shiryo1.pdf
通関業務への具体的な影響は以下の通りです。
為替は株価と連動する場合が多いです。円安が進行すると輸入コストが増加し、輸入量が減少する可能性があります。
参考)貿易収支で考える為替相場と株式市場の動き - 外為どっとコム…
輸入者の業績悪化により、関税・消費税の支払いが遅延するケースも想定されます。通関業者が立て替えている場合、資金繰りへの影響に注意が必要です。
株安が実際の貨物量にどの程度影響したのか、過去のデータから検証します。
COVID-19パンデミック時の事例が参考になります。2020年の国際貿易は4.1%減少しましたが、その後2021年には回復が見込まれました。IMFは2021年の世界経済成長率を5.5%と予測しています。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8311633/
これは非常に使えそうです。
リーマンショック後、主要港湾のコンテナ取扱量は一時減少しましたが、中長期的には荷動きの低迷が懸念されました。航空貨物については、9.11同時多発テロ後、国際線旅客・貨物が前年同期比約27%減少した事例があります。
参考)https://dl.ndl.go.jp/view/prepareDownload?itemId=info%3Andljp%2Fpid%2F8796022amp;contentNo=1
海運についても株安の影響は深刻で、世界的な荷動きの低迷により海運業界の収益が悪化します。
通関業務従事者にとって重要なのは、株安発生から実際の貨物量減少までのタイムラグです。株価は即座に反応しますが、既に発注済みの貨物や契約済みの輸送は継続されるため、実務への影響は1〜3カ月後に顕在化する傾向があります。
2025年の相互関税による株安では、自動車・自動車部品の関税が15%に引き下げられたことで、逆に特定品目の輸入が増加する可能性も指摘されています。つまり、株安=貨物減とは限りません。品目別の動向確認が基本です。
参考)相互関税15%に 株価への影響は?自動車関税での譲歩引き出し…
株安と為替は密接に関連しており、通関業務では申告価格の算定に直接影響します。
円安の場合、輸出企業の株価にプラスに働きますが、輸入企業にとってはコスト増となります。例えば、1ドル100円が150円になると、同じ商品でも円建ての輸入価格が1.5倍になります。
為替変動が大きい時期の通関業務では、以下の点に注意が必要です。
円安が急進すると、企業収益を圧迫するリスクがあります。通関業務従事者は、荷主企業の財務状況にも目を配る必要がありますね。
世界同時株安に備えて、通関業務従事者が実務で押さえるべきポイントを整理します。
株安が発生した際、貨物量の急激な変動に対応する体制が重要です。少額輸入貨物を中心に輸入件数が急増している現状では、保税業者・通関業者の役割は一層重要となっています。
輸入通関手続きの基本フローを確認しておくと、業務効率化に役立ちます。
参考)自社通関とは メリット・デメリットと輸入通関手続きの流れとと…
具体的な対策は以下の通りです。
| 対策項目 | 具体的な内容 |
|---|---|
| 📊 情報収集の強化 |
主要輸出入相手国の経済指標、為替レート、株価指数を日次でチェック |
| 💰 与信管理の徹底 | 輸入者の財務状況確認、立替金の回収サイクル見直し、リスク分散 |
| 📝 申告業務の見直し | 為替変動時の価格調整プロセス整備、事後調査対応マニュアル更新 |
| 🤝 荷主とのコミュニケーション | 株安・為替変動時の影響説明、代替調達先の提案、通関スケジュールの柔軟な調整 |
税関は保税業者・通関業者に対する指導・監督を適切に行う方針です。コンプライアンス面での準備も欠かせません。
株安時には輸入量が減少する可能性がありますが、在庫補充のための輸入が後から急増するケースもあります。2020年後半には大規模な在庫補充が発生しました。
業務量の急激な変動に対応できる柔軟な体制整備が原則です。
繁忙期と閑散期の差が大きくなると予想される場合、事前に人員配置計画を立てておく、外注先との協力体制を構築しておく、などの準備が効果的です。
市場の変動は避けられませんが、事前の備えによって業務への影響を最小限に抑えることができます。株式市場の動向を注視し、経済指標と為替レートを定期的に確認する習慣をつけることで、突然の変化にも冷静に対応できる体制を作りましょう。