金融危機いつ起きる?過去の発生時期と通関業務への影響

通関業務従事者にとって金融危機はいつ起きるのか、その発生時期と業務への影響を過去の事例から解説します。リーマンショックやアジア通貨危機など、実際に通関現場で何が起きたのか知っていますか?

金融危機いつ発生したか

輸入代金が払えず貨物が動かない事態、通関業務でも起きます。

📊 この記事の3ポイント
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金融危機の発生時期

1929年大恐慌、1997年アジア通貨危機、2008年リーマン・ショックなど、主要な金融危機の発生時期と特徴を整理

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通関業務への影響

金融危機時のドル調達困難で輸入代金支払いが停止し、貿易が一時的にストップする実態を解説

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リスク対策の知識

通関業務従事者が知っておくべき為替リスクと貿易金融の基礎知識を紹介

金融危機の歴史的発生時期一覧


20世紀以降、世界経済を揺るがす金融危機は定期的に発生してきました。最も破壊的だったのは1929年10月のウォール街大暴落をきっかけとした世界大恐慌で、株価は1932年までに89.2%も下落しました。
参考)https://www.ssbfnet.com/ojs/index.php/ijrbs/article/download/142/145


この危機は、1931年5月のオーストリア・クレディート・アンシュタルト銀行の破綻を契機に世界的な銀行危機へと拡大しました。金本位制を採用していた各国では金の取り付け騒ぎが起こり、実体経済と金融に3年以上も深刻な影響を与えました。
参考)世界経済の潮流 2008年 II


つまり発端から拡大まで数年かかることもあるということですね。
その後、1987年10月にはブラックマンデーと呼ばれる株価大暴落が香港、ロンドン、ニューヨークなど世界中の市場に瞬く間に広がりました。1997年にはアジア通貨危機が発生し、短期資金の急速な引き揚げによって為替レートが大幅に下落、銀行が資金調達できない事態に陥りました。
2007年8月のパリバ・ショックから2008年9月15日のリーマン・ブラザーズ破綻までが「混乱期」、それ以降が「金融危機」と区分されます。リーマン・ショックでは負債総額6000億ドル超という史上最大級の規模で倒産し、世界同時不況を引き起こしました。
参考)企業倒産で振り返る「平成」30年(前編)~バブル崩壊、金融危…


金融危機いつ通関業務に影響したか

リーマン・ショック時、日本の通関業務は深刻な打撃を受けました。日本では輸入のドル建て比率が2019年上期で67.9%と非常に高く、銀行がドルの調達が難しくなると、輸入業者がドルでの輸入代金を支払えなくなります。
参考)燻り続ける金融危機のリスク:邦銀のドル調達は日本のアキレス腱…

その結果、輸入が一時的に停止してしまうのです。
原材料の輸入が滞れば生産活動が大きな打撃を受けるため、金融危機の震源地ではなかった日本経済が主要国の中で最も悪化した背景となりました。ドルの調達は日本のアキレス腱と呼ばれています。​
実際の事例として、2012年にはキューバ共和国が日本に対する輸入代金を支払えない事態が発生しました。キューバ国立銀行からの代金支払いが6月頃から滞り始め、日本貿易保険は8月に同行の貿易保険扱いを停止しました。被保険者は約10社で債権額は200億円弱に達しました。
参考)輸入代金払われず、キューバ貿易が停止に

金融危機いつ予兆が現れるか

金融危機の予兆は複数の段階で現れます。2007年から2008年の金融危機では、まず2007年夏にサブプライム住宅ローン問題が顕在化し、世界的な金融不安が高まる中で株価の下落傾向が続きました。
参考)第1節 世界的な金融危機と国内金融 - 内閣府


第二段階として、原油価格の高騰によりインフレ懸念が高まりましたが、夏場以降の原油価格反落と金融不安の再燃により市場が動揺しました。第三段階のリーマン・ショック後は、流動性の逼迫から債券を現金化する動きが強まりました。​
現在も金融危機のリスクは残っています。​
最大のリスクは、社債や証券化商品の中で信用力が低い高リスク資産の価格調整が完全に終わっていないことです。これらの調整や資金流出は企業の資金調達に大きな支障を与え、実体経済にも打撃となります。​
内閣府の金融危機の国際的波及に関する資料では、過去の金融危機が世界貿易に与えた影響とメカニズムが詳しく解説されています。

金融危機時の為替リスク管理方法

通関業務従事者は為替リスクの基本を理解しておく必要があります。取引リスク(Transaction Risk)とは、輸出入取引において決済時の為替レートが変動するリスクで、実際のキャッシュフローに直接影響します。
例えば1ドル=110円で契約した輸出代金も、決済時に円高が進んで1ドル=100円になれば、円換算の売上は減少します。ドル建て取引の場合、中国企業にとってドル高・人民元安はコスト増要因となり、代金支払い能力に影響する恐れがあります。​
対策としては為替予約が基本です。
また、アメリカから商品を輸入し同時にアメリカに商品を輸出する場合、ドル建ての支払額と受取額を調整する自然ヘッジという手法で為替変動の影響を減らせます。外貨預金やオプション取引も組み合わせることで、より安定したリスク管理が可能になります。
参考)輸出入ビジネスにおける為替リスクとその管理方法

輸出企業向けの為替リスク完全対策ガイドでは、具体的なヘッジ手法が詳しく紹介されています。

金融危機時の輸入金融と支払い猶予

金融危機時には輸入金融の知識が重要になります。輸入者が支払い期日までの支払いが難しくなった場合、輸出者が支払い期日を延ばしたり、銀行が輸入者に資金を貸しつけたりします。
参考)輸入貨物代金の支払い猶予を受けられる「輸入金融」とは?

輸入者に商品代金である輸入貨物代金の支払いを猶予することを「輸入ユーザンス」といいます。輸出者が支払いを猶予する「シッパーズ・ユーザンス」と、銀行が支払いを猶予する「銀行ユーザンス」の2つに分かれます。​
銀行ユーザンスでも返済できない場合は円建て融資に切り替えます。​
ただし、通関現場では関税の立て替え払い問題が独占禁止法上問題になる恐れがあると公正取引委員会が指摘しており、2021年度以降3年連続で取り上げられています。2024年3月には国会でも「関税の立て替え払い」問題が議論されました。
参考)http://www.japanpress.co.jp/front/SG_topnews-m.php?news=1718328050

通関業者は適切な資金調達手段を確保し、金融危機に備えた体制を整えておく必要があります。貿易保険の活用も有効な対策の一つです。​

金融危機後の通関業務の変化

コロナ危機や過去の金融危機を経て、通関業務の役割が見直されています。事業環境の回復に「2年以上かかる」との予測が過半に達した調査結果もあり、長期的な視点での対応が求められています。
参考)新コロナ後のニューノーマル(新常識)と通関士 | 通関士.c…


通関業務従事者は財務省への主張や陳述を行う本来の仕事を担う必要性が高まっています。また、中小メーカーや貿易商社に輸出入業務のプロフェショナルがいないことが貿易停滞の原因の一つとなっています。
参考)経済危機と規制緩和~通関士の個人営業に向けて | 通関士.c…


規制緩和が進めば活躍の場が広がります。
通関士の個人営業が可能になれば、中小の貿易メーカー・商社の輸出入業務が拡大し大きく発展する可能性があります。通関業者だけでなくメーカーや貿易商社でも通関士の資格が活用できれば、貿易業界全体の活性化につながります。​
保護貿易主義への傾斜が強まる中、多角的貿易体制への不満や機能不全への懸念も高まっています。通関業務従事者は国際的な貿易環境の変化を常に把握し、リスク管理能力を高めていく必要があります。
参考)保護主義概観、強まる不確実性





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