金本位制簡単に仕組みと歴史わかる貿易決済への影響

金本位制は通貨の価値を金で裏づける制度ですが、通関業務従事者にとって貿易決済や為替相場にどう関わるのでしょうか?自動調節機能やメリット・デメリット、ニクソンショックによる終焉まで簡単に解説します。現代の変動相場制との違いを理解できていますか?

金本位制簡単に仕組みと歴史

この記事の3ポイント要約
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金本位制の基本

通貨の価値を金で担保し、紙幣をいつでも金と交換できる制度。貿易決済も金で行われ為替相場が安定

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自動調整機能

貿易赤字国は金流出で通貨量減少、物価下落により輸出増加。黒字国は逆で貿易収支が自動的にバランス

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1971年に終焉

ニクソンショックでドルと金の交換停止。固定相場制から変動相場制へ移行し現代の通貨制度が確立

金本位制とは、通貨の価値を金(ゴールド)で裏づけ、紙幣をいつでも金と交換できるようにした貨幣制度です。19世紀から20世紀初頭にかけて世界中で採用され、国際貿易の決済手段として機能していました。通関業務従事者にとっては、現代の変動相場制と対比して理解することで、為替リスク管理や貿易決済の仕組みをより深く理解できます。
参考)【3分で読める】いまさら聞けない「金本位制」とは <金にはな…


金本位制の基本的な仕組みとは


金本位制では、各国の中央銀行が発行する紙幣(兌換銀行券)は、一定量の金と交換可能であることが保証されています。例えば日本では1897年に金本位制を採用し、金と円の交換比率が法律で定められました。つまり金が基準です。
参考)金本位制


紙幣は金の保有量以上に発行できないため、通貨の価値が安定しインフレを防ぐことができました。金1オンス(約31.1グラム)あたりの価格が固定されることで、各国通貨間の為替相場も自動的に決まる仕組みです。イギリスでは1816年に金1オンス=3ポンド17シリング10ペンス半と定められました。
参考)金本位制とは?メリットとデメリットを解説【日本の歴史】|モチ…


通関業務の観点では、金本位制下の貿易決済は最終的に金(金貨または金地金)で行われていた点が重要です。各国の通貨は国内でしか通用しないため、国際取引では世界中どこでも価値が認められる金が決済手段として使われました。
参考)https://tsuka-atelier.sakura.ne.jp/theme/kinkaikin02.html


金本位制における貿易決済の自動調節機能

金本位制最大の特徴は、貿易収支の不均衡を自動的に調整する機能です。貿易赤字国(輸入超過)では、輸入代金の支払いのために金が国外へ流出します。
参考)金本位制とは?その自動調整作用と歴史を簡単にまとめてみた


金が流出すると国内通貨量が減少し、国民の所得が減って物価が下落します。どういうことでしょうか?物価が下がると自国製品の国際競争力が上がり、輸出が増加して輸入が減少するのです。この結果、貿易赤字が自然に解消されていきます。
逆に貿易黒字国では金が流入し、通貨量が増えて物価が上昇します。すると輸入が増えて輸出が減り、黒字が縮小します。つまり両国の間で自動的にバランスが取れるということですね。
通関業務従事者にとっては、この自動調整機能により為替相場が一定範囲内に収まっていた点が重要です。為替変動リスクが限定的だったため、現代のような複雑な為替ヘッジ手段は不要でした。
参考)https://www.yu-cho-f.jp/wp-content/uploads/201510.takigawa1.pdf


金本位制のメリットと通貨安定性

金本位制の最大のメリットは、通貨価値の安定性です。紙幣を金の保有量以上に発行できないため、過剰な通貨発行によるインフレが防止されます。1920年代のワイマール共和国のハイパーインフレのような事態は、金本位制下では理論上発生しません。
参考)面白いほどわかる金本位制!簡単にわかりやすく徹底解説【メリッ…


為替相場の安定も大きな利点でした。各国通貨の金との交換比率が固定されているため、通貨間の為替レートも自動的に決まり、大きな変動がありませんでした。これは使えそうです。
参考)https://ocw.kyoto-u.ac.jp/wp-content/uploads/2021/03/2012_oubeikeizaishi_4.pdf


貿易取引においては、為替リスクが小さいため輸出入業者は価格設定や契約がしやすく、国際貿易が活発化しました。19世紀後半から20世紀初頭にかけて国際貿易が急成長した背景には、金本位制による安定的な通貨制度があったのです。
参考)http://ritsumeikeizai.koj.jp/koj_pdfs/56t03.pdf


通関業務従事者の視点では、為替相場が安定していることで輸入申告価額の計算や関税額の予測が容易になり、業務の効率化につながっていました。​

金本位制のデメリットと経済政策の制約

実は通関に携わるあなたも、金本位制下なら恐慌時に通貨量が増やせず輸入激減で仕事を失います。
金本位制最大のデメリットは、金融政策の自由度が極端に制限されることです。不況や金融危機が発生しても、政府や中央銀行は自由に通貨を発行して経済を刺激することができません。通貨発行量は金の保有量に制約されるからです。
参考)金本位制 - Wikipedia


1929年に始まった世界恐慌では、多くの国が金本位制を維持したために不況が深刻化しました。各国とも金本位制の制約で通貨供給を増やせず、デフレが進行して失業率が急上昇したのです。厳しいところですね。
日本では1930年に旧来の交換比率のまま金輸出を解禁しましたが、すでに世界恐慌が始まっており金が海外へ大量流出しました。景気が一層悪化したため、1931年12月に金輸出を再び禁止し金本位制から離脱しています。
参考)金本位制とは?歴史、メリット・デメリットを簡単に解説


通関業務への影響としては、金本位制の硬直性により不況時に貿易量が激減し、通関業務そのものが大幅に縮小するリスクがありました。金流出を防ぐため輸入制限が強化されることもあり、通関手続きが複雑化する要因となっていました。

金本位制の歴史と日本の導入経緯

世界で最初に金本位制を採用したのはイギリスで、1816年のことです。19世紀後半には主要国が次々と金本位制を導入し、国際金本位制と呼ばれる世界的な通貨体制が確立しました。
参考)金本位制度とは?


日本は明治時代の1897年(明治30年)に金本位制を採用しました。それまで日本は事実上の銀本位制でしたが、1873年恐慌後に銀価格が暴落したことで金本位制への移行が進みました。日清戦争の賠償金で得た金を準備金として、ようやく金本位制を実現できたのです。
参考)【投資家が大損】「1873年恐慌」に学ぶ“お金のメカニズム”…


第一次世界大戦(1914-1918年)で各国は戦費調達のため金本位制を一時停止しました。戦後は金本位制への復帰が試みられましたが、世界恐慌(1929年開始)により再び各国が離脱し、金本位制は事実上崩壊しました。
通関業務の歴史的観点では、金本位制の時代は固定相場制であったため、為替変動による申告価額の変更が少なく、現代に比べて手続きがシンプルでした。

ニクソンショックによる金本位制の完全終焉

第二次世界大戦後、1944年のブレトンウッズ協定により金ドル本位制が確立されました。この制度では米ドルのみが金と固定比率(金1オンス=35ドル)で交換可能で、他国通貨はドルに固定されるという仕組みです。これが基本です。
参考)ニクソン・ショックとは 金とドルの交換停止、変動相場制へ -…


しかし1960年代後半、ベトナム戦争の戦費増大などでアメリカの国際収支が悪化し、金の保有量が激減しました。ドルと金の交換が困難になり、ドルへの信用が揺らぎ始めたのです。
参考)ドル=ショック/ニクソン=ショック


1971年8月15日、ニクソン大統領はドルと金の交換停止を突然発表しました。これがニクソンショック(ドルショック)です。同時に10%の輸入課徴金も導入され、戦後の自由貿易体制も大きく揺らぎました。
参考)ニクソン・ショック - Wikipedia


この結果、1973年には主要国が変動相場制に移行し、金本位制は完全に終焉を迎えました。日本では1ドル=360円の固定相場が終了し、為替相場が市場で決まるようになったのです。
参考)実践的基礎知識 金融/経済史編(5)<高度成長期②>


通関業務への影響は甚大でした。変動相場制により為替レートが日々変動するようになり、輸入申告価額の計算が複雑化しました。為替リスク管理のため、企業は先物為替予約などのヘッジ手段を活用する必要が生じ、通関業務従事者も為替知識の習得が必須となりました。
日本経済新聞のニクソンショック解説記事では、ブレトンウッズ体制の詳細とその崩壊過程について詳しく説明されています。通関業務における為替相場の歴史的変遷を理解する参考資料として有用です。

金本位制と現代の変動相場制の違い

現代の変動相場制では、通貨の価値は市場の需給で決まり、金による裏づけはありません。中央銀行は経済状況に応じて自由に通貨供給量を調整でき、金融政策の柔軟性が大幅に向上しました。
参考)ニクソン・ショック​とは|原因や日本への影響などをわかりやす…


為替相場は日々変動し、通関業務従事者は輸入申告時の為替レートを正確に把握する必要があります。税関長が公示する外国為替相場を使用しますが、金本位制時代のような固定相場ではないため、申告タイミングにより関税額が変動するリスクがあります。これは無料です(税関の公示レート情報)。
変動相場制のメリットは、各国が独自の金融政策を実施できる点です。不況時には通貨供給を増やして景気を刺激でき、金本位制のような硬直性がありません。一方で為替変動リスクが大きく、輸出入企業は為替ヘッジコストを負担する必要があります。
通関業務の観点では、変動相場制により業務が複雑化した反面、為替専門知識を持つ人材の価値が高まりました。通関士には関税だけでなく為替リスク管理のアドバイスまで求められる場面も増えています。
OANDA Japanのニクソンショック解説では、固定相場制から変動相場制への移行過程と、現代のFX取引への影響が詳しく説明されています。通関業務で為替知識を深めたい方に推奨できる資料です。




金本位制復活!