景気後退アメリカ通関業務への影響と対策

アメリカの景気後退は通関業務にどのような影響を及ぼすのでしょうか。輸入貨物の減少、関税率の変動、書類処理の変化など、通関業務従事者が知っておくべき実務上の注意点と対策を解説します。備えあれば憂いなしですが、あなたは十分な準備ができているでしょうか?

景気後退アメリカと通関業務

景気後退時は輸入価格が下がるため企業利益が増えるとお考えですか?

この記事の3ポイント要約
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景気後退の定義と影響

アメリカ経済が2026年に景気後退に陥る可能性が高まっており、多くのエコノミストが成長率の低下を予測している状況を解説

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通関業務への具体的影響

輸入貨物量の減少、関税率の変動、通関書類の変更など、通関業務従事者が直面する実務上の変化を具体的に説明

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実務上の対策とリスク管理

景気後退期に通関業務従事者が取るべき対応策、リスク回避のための準備、業務効率化の方法を提示

景気後退アメリカの定義と2026年予測

アメリカの景気後退とは、実質GDP成長率が2四半期以上連続してマイナスになる状態を指します。2026年のアメリカ経済について、多くのエコノミストが景気後退に陥ると予想している状況です。
参考)三重苦に直面し、スタグフレーション懸念もあるアメリカ経済。し…

実質GDP成長率は2025年に+1.9%へ減速した後、2026年には+2.5%へ高まる見込みですが、2025年後半にかけて既往の利上げによる金融環境の引き締まりが家計の消費活動や企業の設備投資を抑制します。対中関税引き上げなどによる物価高が個人消費を下押しすることで、景気は減速すると見込まれています。
参考)https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/report/jrireview/pdf/15473.pdf

市場はエコノミストよりも深刻な景気後退を織り込んでおり、スタグフレーション(インフレと景気停滞が併存し、失業率が高い状態)になる可能性がある程度高いと見られています。金融市場では、米国債のイールドカーブがさらに平坦化し、ゴールドマン・サックスの企業景況感指標も急落するなど、経済活動の鈍化を示す兆候が広がっています。​
消費支出、企業の設備投資、建設許可件数、輸出、労働市場といったアメリカ経済の主要分野すべてで成長率予測が引き下げられました。つまり景気減速は広範囲に及ぶということですね。​

景気後退アメリカによる輸入貨物量への影響

景気後退期には輸入貨物量が大幅に減少する傾向があります。令和2年度分では、輸入は原粗油、液化天然ガスなどが減少し、68兆1,803億円(対前年度比11.6%減)となりました。これは東京ドーム約1万6,000個分の貨物量に相当する減少です。
参考)https://www.customs.go.jp/news/movement.htm

米中の貿易摩擦悪化を受けて、中国からアメリカへのコンテナ輸送量が大幅に減少し、アメリカ側でも一部輸入契約がキャンセルされるなど、貿易環境の悪化が確認されています。日本貿易振興機構ジェトロ)が米国の関税政策による影響を企業に調査したところ、最も多かったのは「日本から米国向け輸出の減少」で63.1%でした。
参考)米関税、景気後退で業績悪化 企業の5割超が懸念=ジェトロ調査…


52.6%が「全世界的な景気後退に伴う売上高・利益率の減少」と回答しています。通関業務従事者にとって、これは処理する貨物件数の減少を意味します。​
輸入減少の背景には、景気の悪化に伴って低価格品に需要がシフトする中で、相対的に安くなった輸入品への需要が変動する可能性があります。貨物量の変動が大きいですね。
参考)第2節 貿易・為替レートと日本経済 - 内閣府

景気後退アメリカ時の関税率変動リスク

景気後退期には関税政策が頻繁に変更されるリスクが高まります。トランプ政権が打ち出した関税政策により、一連の関税政策に伴い米国の平均関税率は一時28%程度まで上昇しました。これは過去数十年で最高水準の関税率です。
参考)トランプ関税で日本の中小企業が潰れる?影響と対策をわかりやす…


対中関税の大幅な引き下げ発表を受けて、足元で景気後退懸念は一旦緩和しましたが、関税政策をはじめトランプ政権の経済政策に対する不透明感は強く、個人消費や設備投資の重石となる見込みです。通関業務従事者は、関税率の変更に迅速に対応する必要があります。
参考)米国経済の見通し−対中関税引き下げから景気後退懸念は緩和も、…

関税による負の影響が相殺されるかたちで、成長率は高まると予想されますが、予見可能性が低いため、経済見通しは非常に不透明です。通関業務においては、関税率の変更に伴う申告価格の修正や、輸入許可後の価格変更手続きが発生する可能性があります。
参考)https://www.customs.go.jp/tsukan/henko/price_henko.pdf


価格未決定貨物の輸出申告価格について、価格の計算に誤りがある場合等を除き、許可後の価格変更を不要とする取り扱いに変更されましたが、関税率変動時は特に注意が必要です。関税率の確認が基本です。​

景気後退アメリカでの通関書類処理変更点

景気後退期には通関書類の処理方法に変更が生じることがあります。2025年の法令改正情報によると、特例輸入者・特例委託輸入者のいずれも、納期限を延長する際には必ず担保を提供しなければならないとされてきましたが、制度変更により輸入通関から30日後、60日後、90日後、120日後という段階的な処理に変更されました。
参考)https://www.jmcti.org/mondai/pdf/region2025-5.pdf


輸出許可後の船名、数量変更申請手続も通関手続に含まれます。輸入の許可前引取承認申請手続は、輸入申告から許可を得るまでの重要な手続きです。
参考)https://www.customs.go.jp/tetsuzuki/c-answer/sonota/9105-2_jr.htm

通関後は品物の仕向け地の変更が不可能という制約もあるため、輸入通関時に品物の仕向け地が決定しなければいけません。景気後退期には、顧客企業の倒産や契約変更が増えるため、仕向け地の事前確認がこれまで以上に重要になります。
参考)https://www.jmcti.org/mondai/pdf/region2024-5.pdf

通関業務、関連業務の範囲を正確に理解し、変更に柔軟に対応する体制を整えることが求められます。手続きの理解が条件です。
日本の財務省が提供する通関情報データベースやジェトロの貿易統計を定期的に確認し、最新の法令改正情報を入手しておくと安心です。
財務省税関の通関業務の範囲に関する詳細情報(通関手続きの具体的な範囲と変更申請の手続き方法について解説)

景気後退アメリカ時の通関業務効率化対策

景気後退期には業務量が減少する一方で、手続きの複雑化により一件あたりの処理時間が増加する可能性があります。製造業と小売業は、財の消費が減速したことを受け、ともに伸び悩んでおり、建設業も住宅需要の後退により大きく減少しています。
参考)米国経済、2023年に景気後退入りとの見方が大勢

この状況下では、通関業務の効率化が企業の収益維持に直結します。デジタル化やシステム導入により、書類処理の自動化を進めることが有効です。電子通関システムを活用すれば、申告から許可までの時間を大幅に短縮できます。
景気後退前に長短金利の逆転が発生することが多く、これが景気後退の予兆となります。通関業務従事者は、こうした経済指標にも注意を払い、業務量の変動を予測することで、人員配置や業務計画を最適化できます。​
余剰貯蓄が消費の原資として、所得の実質減を補ってきましたが、貯蓄は今後も急激に減少していくため、輸入需要の変動に備える必要があります。業務計画の見直しが必須です。​
AIを活用した書類チェックツールや、クラウド型の通関管理システムを導入すると、複数の案件を並行処理しやすくなります。

景気後退アメリカ独自視点:通関業務のリスク分散戦略

景気後退期には、特定の取引先への依存度を下げるリスク分散戦略が重要になります。グローバルな景気減速懸念が高まることで原油などの資源価格が低下するほか、諸外国が米国向けに輸出できなくなった財の需給が緩むことでそれらの財の価格が低下します。
参考)Mizuho RT EXPRESS 相互関税が景気回復を腰折…

輸入インフレが鈍化すれば、交易条件の改善が企業・家計にプラスの効果をもたらす面もあります。通関業務従事者は、複数の仕入れルートや取引先を確保しておくことで、特定の国や地域の景気後退による影響を軽減できます。​
下振れ要因としては、海外現地法人を含めた日系企業について収益が悪化する中で賃上げの機運が後退するリスク、株価下落による逆資産効果が個人消費を下押しするリスク、トランプ政権の政策や内外経済の不確実性が高まることにより企業の設備投資意欲が減退するリスクなどが挙げられます。​
これらのリスクに対応するため、アジア諸国やヨーロッパなど、複数の地域からの輸入ルートを開拓しておくことが推奨されます。一つの地域に集中させないことですね。
貿易保険の活用も検討に値します。景気後退期には取引先の倒産リスクが高まるため、NEXI(日本貿易保険)などの貿易保険を利用することで、代金未回収のリスクを軽減できます。
また、定期的な顧客企業の財務状況チェックを行い、支払い能力に問題がないか確認しておくと、突然の取引停止による業務への影響を最小限に抑えられます。
ジェトロの米国経済景気後退に関するレポート(景気後退の具体的な影響と産業別の動向について詳細データあり)