申告書を書かずに韓国税関を通ると、未申告で罰金を取られることがあります。
旅行者携帯品申告書(英語名:Customs Declaration Form)とは、入国者が携行する物品の中で、その国の税関規制に関係するものを届け出るための公式書類です。韓国では仁川国際空港や金浦国際空港などで使用されており、通関業務に携わる方にとっては旅行者から最も頻繁に質問を受ける書類の一つといえます。
歴史的には韓国入国者全員に申告書の記入が義務付けられていました。しかし2023年5月1日、韓国関税庁は外国人の訪韓観光活性化などを目的として、全ての旅行者に対する旅行者携帯品申告書の作成義務を廃止しました。廃止日は当初2023年7月の予定でしたが、5月1日に前倒しされています。
現在のルールは明快です。申告が必要な物品を持っている場合のみ書類を作成・提出し、申告不要な場合は「Nothing to Declare(申告なし)」のグリーンラインをそのまま通過できます。つまり書類の提出が「全員必須」から「必要な人だけ」へと大きく変わったわけです。
この変更は旅行者にとってスムーズな入国を可能にする一方、通関業務従事者にとっては「旅行者が申告すべき物品を持ちながら、廃止後も申告書を書かなくていいと誤解して素通りしようとする」というリスクを生んでいます。免税範囲を超えた物品や持ち込み禁止品を誤申告・無申告のまま通過させてしまうと、旅行者本人が韓国税関で重大なトラブルを抱えることになります。旅行者への正確な事前案内こそが、通関業従事者の重要な役割です。
書類そのものの様式は日本語・英語・韓国語の3言語で用意されており、日本人旅行者は日本語版を選択して記入します。機内や空港内で配布されるほか、韓国税関オンラインシステムでも手続きが可能です。
日本税関|入国(帰国)時における「携帯品・別送品申告書」の提出について(書式一覧)
申告が必要な旅行者に対して、携帯品申告書の書き方を正確に案内できるかどうかは、通関業従事者の基礎スキルです。申告書の主な記入項目は以下のとおりです。
| 項目 | 記入内容・注意点 |
|---|---|
| ① 姓名 | パスポート記載どおりのローマ字またはハングルで記入 |
| ② 生年月日 | 西暦・月・日の順で記入 |
| ③ 旅券番号 | パスポートの番号(入国申告書と異なり記入必須) |
| ④ 旅行期間 | 韓国滞在の予定日数を記入 |
| ⑤ 旅行目的 | 観光・商用・留学など該当するものに印をつける |
| ⑥ 航空便名 | 搭乗した便名(例:KE123)を記入 |
| ⑦ 同伴家族数 | 本人を除く同行家族の人数 |
| ⑧ 出発国 | 韓国へ向けて出発した国名 |
| ⑨ 電話番号 | 連絡可能な番号(国番号含む) |
| ⑩ 韓国での滞在先 | ホテル名または住所を記入(事前確認を推奨) |
| ⑪ 申告品と金額 | 免税範囲を超えた物品・現金等を具体的に記載 |
| ⑫ 日付と署名 | 西暦で記入し、自署する |
特に旅行者が迷いやすいのが「旅券番号の記入欄」です。韓国の入国申告書(Arrival Card)にはパスポート番号の記入欄がありませんが、旅行者携帯品申告書には必ずパスポート番号の記入欄があります。この違いを知らない旅行者が混乱するケースが多いため、事前に周知しておくと現場のトラブルを防げます。
家族で入国する場合の書き方も重要です。同一世帯の家族が同伴している場合は、代表者1名が1枚の申告書で全員分をまとめて申告できます。これはよく知られていないルールで、家族全員が1枚ずつ書こうとして混乱する例が実際にあります。家族まとめて1枚が基本です。
書類の記入言語は日本語用の書式であれば日本語での記入で問題ありません。記入具は黒いボールペンを使用し、鉛筆は不可とされています。フェリー利用の旅行者には特に注意が必要で、乗船中に記入を済ませておくよう案内すると下船後の手続きがスムーズになります。
裏面には免税範囲の一覧、持ち込み禁止・制限品の説明、検疫対象品の記載があります。旅行者が自己申告を判断できるよう、裏面の内容は出発前に必ず確認させることが大切です。
JAL公式|海外出入国書類の書き方(ソウル)|旅行者携帯品申告書の記入例と注意事項
申告書の書き方を理解するには、まず「何が申告対象になるのか」を正確に把握する必要があります。韓国の免税範囲を超えた場合、あるいは特定の品目を持ち込む場合に申告義務が発生します。
韓国の主な免税範囲(2026年現在)は以下のとおりです。
| 品目 | 免税範囲 | 条件 |
|---|---|---|
| 免税品(その他物品) | 合計US$800相当まで | 旅行者携帯品とプレゼント合計 |
| 酒類 | 2本(合計2L以下) | 合計金額US$400以下・19歳以上のみ |
| たばこ | 1カートン(200本) | 19歳以上のみ |
| 香水 | 100mlまで | 上限あり |
| 現金等(外貨) | US$10,000相当まで | 超える場合は必ず申告 |
| 現金等(韓国ウォン) | 100万ウォンまで | 超える場合は申告必要 |
申告書の裏面には記入例も掲載されており、「酒類3本・タバコ10箱・香水30ml・1,000米ドルの時計を持ち込む場合、記入が必要なのは酒類3本と1,000ドルの時計のみ(タバコ・香水は免税範囲内のため記入不要)」というような具体例が示されています。これは旅行者の混乱を防ぐうえで非常に参考になる情報です。
現金の未申告は特に深刻なリスクです。韓国に現金でUS$10,000(日本円で約150万円)を超える金額を持ち込む場合は申告が義務付けられており、未申告の場合は未申告額の最大40%の罰金・現金没収・刑事告発・繰り返し違反の場合の入国禁止といった厳しい処罰の対象となります。「これくらいなら大丈夫だろう」という認識が、深刻な法的リスクに直結することを旅行者に伝える必要があります。
同様に、商用品や一時的に持ち込む職業用品、銃器、食品(肉類・野菜・生果物など)も申告対象となります。知的財産権に関わる商品の持ち込みも申告が必要なケースがあります。特に食品類は、検疫確認が必要な品目も多く含まれます。牛肉などの加工肉、ジャーキー、ハム、チーズ、土、マンゴー、松茸、生果物・野菜といった品目を持ち込む際は検疫申請が求められ、忘れると後々大きなトラブルになります。こうした情報の伝達も通関業務の重要な仕事です。
仁川国際空港公式サイト(日本語)|税関申告・免税範囲と申告が必要なものの詳細一覧
通関業従事者にとって2025年以降もっとも注意が必要な変化の一つが、韓国への市販薬の持ち込み規制の強化です。この変化を知らずに旅行者を送り出すと、現地の韓国税関でまさかの足止めを食らわせてしまいかねません。
2025年4月、韓国関税庁は「アリルイソプロピルアセチル尿素」を含む市販薬を向精神薬(麻薬類)に指定し、韓国への持ち込みを禁止しました。この成分は日本では一般的な鎮痛薬に広く使われているため、旅行者の多くが「いつもの頭痛薬」としてスーツケースに入れたまま渡航するケースが後を絶ちません。
韓国持ち込み禁止となった主な日本の市販薬は以下のとおりです。
一方で、持ち込み可能な鎮痛薬には「ロキソニンS(プレミアムではないもの)」「ロキソニンSプラス」「バファリンA」「バファリンプレミアムDX」「タイレノールA」「イブスリーショットプレミアム」などがあります。同じブランド名でも製品ラインナップによって可否が分かれる点が、特に混乱を招きやすい部分です。
禁止成分は全部で5種類あります。アリルイソプロピルアセチル尿素・デキストロメトルファン・ジヒドロコデイン・コデイン・ブロモバレリル尿素の5つです。この成分が入っているかどうかは薬のパッケージ裏の「成分表」で確認できます。渡航前に必ず成分表を確認することが最大の対策です。
旅行者が持ち込み可否を迷った場合は、すべて申告するか、かかりつけの医師や薬局に確認してから渡航することを案内しましょう。韓国税関のQ&A(韓国語)でも持ち込み可否を事前確認することができます。
コネスト|韓国に持ち込み禁止の日本の薬・禁止成分一覧と代替薬(薬剤師監修)
書類手続きのデジタル化は韓国入国全般にわたって急速に進んでいます。申告書の書き方と合わせて、オンライン申告や電子入国申告書(e-Arrival Card)の存在も正しく把握しておく必要があります。
旅行者携帯品申告書のオンライン申告は、韓国税関(Korea Customs Service)の公式サイトまたはモバイルアプリ「Korea Customs Service」から行うことができます。入力言語は英語または韓国語ですが、各項目には日本語表示も用意されています。オンライン申告は韓国入国日を含めて3日前から提出可能であり、当日の空港での手続き時間短縮につながります。
申告が必要な旅行者には、以下の選択肢を案内できます。
一方で、入国申告書そのものは2025年2月24日から電子化されています。電子入国申告書(e-Arrival Card)は韓国法務部が導入したオンラインシステムで、韓国到着日を含む3日前から公式サイト(e-arrivalcard.go.kr)で提出が可能です。なお、有効なK-ETA(電子渡航認証)を所持している旅行者は電子入国申告書の提出が不要となりますが、現在日本国籍者はK-ETAの一時免除措置が2026年12月31日まで適用されているため、多くの日本人旅行者はe-Arrival Cardの提出が必要です。
税関申告書(旅行者携帯品申告書)とe-Arrival Cardは別物であることも、旅行者が混同しがちな点です。整理すると、e-Arrival Cardは「入国審査」に使う書類、旅行者携帯品申告書は「税関申告」に使う書類です。それぞれの提出タイミングも違い、入国審査の段階では携帯品申告書は不要で、荷物受取後の税関ゾーンで申告書を渡します。この流れを旅行者に伝えておくと、現場での混乱を大幅に減らすことができます。
通関業務の現場では、旅行者が「電子申告は済ませたから大丈夫」と思い込み、別途必要な税関申告書の手続きを漏らすケースへの対応が求められます。e-Arrival CardとCustoms Declarationは全く別のプロセスである点を、特に電子化に慣れていない旅行者へは丁寧に説明する必要があります。
韓国観光公社公式サイト(日本語)|入国審査・税関申告・アプリ申告の最新手順
韓国法務部公式|大韓民国電子入国申告書(e-Arrival Card)申請ページ
旅行者携帯品申告書の書き方そのものを案内するだけでなく、現場でよく起きるトラブルパターンを知っておくことで、事前の指導や案内の精度が上がります。以下に、通関業従事者が特に意識すべきポイントをまとめます。
「申告書提出が廃止された」の誤解による無申告リスク
2023年5月の制度変更後、「申告書が不要になった」という情報が一人歩きし、申告が必要な物品を持ちながら「もう書かなくていい」と思い込む旅行者が増えています。廃止されたのは「全員提出の義務」であり、申告物品がある場合の申告義務はそのまま存在しています。案内時はこの違いを明確に説明しましょう。
申告するかどうかわからない場合の対応
旅行者が自分の持ち物を申告すべきかどうか判断できない場合、韓国税関では「すべて申告する」ことを推奨しています。申告した場合、たとえ問題のない物品であっても責任を問われることはありません。一方で未申告のまま摘発された場合は、申告書不提出自体がペナルティの対象になります。迷ったら申告が原則です。
19歳未満の旅行者への酒・たばこの扱い
韓国では19歳未満の入国者に対して酒類とたばこの免税は認められていません。これは申告書の記入以前に持ち込み自体が問題となるため、旅行者が未成年の場合は早い段階で確認が必要です。修学旅行や学生グループの引率者がいる場合は特に注意が必要なポイントです。
書き間違いへの対応
申告書を書き間違えた場合は、新しい用紙に書き直すことが原則です。修正液(ホワイト)や過度な上書きは受け付けてもらえないケースがあります。機内での記入時に間違えた場合は乗務員に新しい用紙を求めるよう、事前に旅行者へ伝えておきましょう。
旅行者が申告書を書かずに税関で止められた場合
申告物品がある旅行者が申告書を持たずにRedライン(申告あり通路)に進んだ場合、その場で書類を書かされます。時間のロスだけでなく、荷物の精査が行われる場合もあります。申告の必要性を迷っている旅行者には、事前に書類を準備したうえでRedラインを利用するよう案内するのが安全です。
実務上のポイントを一言でまとめると「申告書の義務廃止≠申告不要」という認識の徹底が最重要です。通関業従事者としてこの点を正確に旅行者へ伝えることが、現地でのトラブルを防ぐ最大の一手となります。
阪急阪神ビジネストラベル|韓国E/Dカード・税関申告書について(2026年最新情報)
JETRO(日本貿易振興機構)|5月1日から韓国入国時の「旅行者携帯品申告書」作成義務を廃止(韓国)