pl保険 個人事業主が安く入る方法と補償の選び方

個人事業主がPL保険に安く加入する方法を徹底解説。通関業や輸入販売に関わる方が知っておくべき補償の選び方・保険料相場・落とし穴とは何でしょうか?

pl保険を個人事業主が安く入るための補償と選び方

PL保険が安いほど補償範囲が狭くなり、いざというとき1円も出ないケースがあります。


この記事の3つのポイント
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PL保険は年間1,000円から加入できる

全国商工会連合会の中小企業PL保険制度を使えば、最低保険料は年間わずか1,000円。通関業や輸入販売に関わる個人事業主でも、売上規模が小さければ格安で加入できます。

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輸入品の販売者は「製造業者」と同等の責任を負う

PL法では、輸入者が国内の流通における最初の事業者とみなされ、海外製造者に代わって賠償責任を負います。通関業に携わる方は特に注意が必要です。

「安さ」だけで選ぶと保険が使えない落とし穴がある

保険料の安さだけを優先すると補償範囲が狭く、リコール費用や示談交渉が対象外になる商品も存在します。選び方の基準を正しく理解しておくことが重要です。


PL保険とは何か・個人事業主に必要な理由

PL保険(生産物賠償責任保険)とは、事業者が製造・販売・提供した製品やサービスが原因で、第三者に身体障害や財物損害を与えた場合に、法律上の賠償責任をカバーする保険です。PLはProduct Liability(製造物責任)の略で、1995年に施行された製造物責任法(PL法)が直接の根拠となっています。


個人事業主がこの保険を必要とする最大の理由は、「無過失でも責任を負う可能性がある」という点です。PL法では、消費者が「損害があったこと」「製品に欠陥があったこと」「欠陥によって損害が生じたこと」の3点を証明できれば、事業者側の過失の有無にかかわらず賠償責任が発生します。「注意していた」「悪意はなかった」という弁明は通用しません。


法人と違い、個人事業主は事業の責任を個人の私財で負う立場です。数千万円規模の賠償請求が発生した場合、保険に入っていなければ事業の継続どころか、個人の生活基盤そのものが崩壊するリスクを抱えます。資金力に余裕のない小規模事業者こそ、PL保険による防衛が実質的に必須といえます。


通関業や輸入販売に携わる個人事業主は、特別な注意が必要です。PL法では輸入者が国内における製品流通の最初の事業者とみなされるため、海外製造者の欠陥製品であっても、輸入者が消費者に対して賠償責任を負う仕組みになっています。つまり、製造していない製品でも、輸入した時点でPL法上の「製造業者等」に準じる立場となるわけです。


PL保険の補償内容は主に以下の通りです。


- 被害者への損害賠償金(治療費・慰謝料・休業補償など)
- 争訟費用(弁護士費用・訴訟費用)
- 応急手当等にかかった費用


一方で補償の対象外となるのは、製品そのものの修理・交換費用、故意または重大な過失による事故、法令違反による事故などです。また、リコール(製品回収)費用も基本契約には含まれないケースが多いため、加入前に確認が必要です。


つまり、PL保険は「他者への損害」をカバーするものです。


消費者庁「製造物責任法の概要Q&A」—PL法の適用範囲・義務の有無などが公式Q&A形式でまとめられています


PL保険の個人事業主向け保険料相場と安く入る方法

「PL保険は高い」というイメージを持っている方は少なくありませんが、実態は全く異なります。個人事業主・小規模事業者向けには、年間数千円から加入できる商品が複数存在します。保険料は主に「年間売上高」と「業種」の2点で決まる仕組みです。


一般的な最低保険料の目安は以下の通りです。


| 保険提供者 | 最低保険料(年間) |
|---|---|
| 全国商工会連合会(中小企業PL保険制度) | 1,000円 |
| 三井住友海上(生産物賠償責任保険) | 5,000円 |
| 東京商工会議所(団体PL保険制度) | 5,000円 |


最低保険料が安いということですね。実際の保険料は売上高と業種に応じて変動しますが、年間売上が数百万円以下の小規模事業者であれば、年間5,000円〜1万円台で加入できるケースも珍しくありません。


保険料を安く抑えるために最も有効な方法は、商工会議所・商工会の「団体割引制度」を活用することです。日本商工会議所や全国商工会連合会が運営する団体保険は、スケールメリットによって保険料が個人での加入より大幅に割安になります。東京商工会議所の団体PL保険制度では「一般で加入するよりも割安」と明記されており、全国商工会連合会の中小企業PL保険制度は最大28%引きが適用されます。


これは使えそうです。


ただし、団体制度を利用するには事前に会員として入会していることが条件です。商工会議所の年会費は地域によって異なりますが、個人事業主の場合は年間1万円〜程度が多いです。PL保険の割引効果と合算して、トータルコストを計算してから判断しましょう。


月額490円から加入できるUSENの「ビジネスリスクGuard」のようなWEB完結型の保険も近年注目されています。手続きがオンラインで完結するため、代理店を探す手間なく即日申込が可能です。特に、小規模事業者が対面の保険代理店で断られるケースがある(代理店の収益が見合わないことが理由)という業界事情を考えると、WEB完結型は有力な選択肢のひとつです。


全国商工会連合会「中小企業PL保険制度」資料PDF—最低保険料1,000円の詳細や適用条件が記載されています


通関業に携わる個人事業主がPL保険で見落としやすい3つのリスク

通関業や輸入販売に関わる個人事業主には、一般的な事業者とは異なる独自のPLリスクが存在します。この点を正しく理解しておかないと、加入しているつもりで実は補償されていなかった、という深刻な事態になりかねません。


リスク①:輸入者が「製造業者」とみなされる問題


PL法では、輸入した製品が国内で流通する場合、輸入者が法律上の「製造業者等」に準じる立場を担います。海外の工場で製造された欠陥製品であっても、消費者が海外の製造者に直接責任を追及することは現実的に困難なため、国内での最初の事業者である輸入者が責任を負う構造です。らくらく貿易の元通関士による解説でも「輸入した製品に万が一事故が起こった場合には本当に大きな負担額になるため、PL保険加入は必須のリスクヘッジ」と明記されています。個人輸入のような比較的小規模なビジネスでも、年間保険料は1万円未満で加入できるケースがあります。


リスク②:「業務中の事故」はPL保険の対象外


PL保険が補償するのは「製品やサービスの引き渡し後」に生じた損害です。業務中(作業中)に発生した事故は、施設賠償責任保険や請負賠償責任保険が担う領域であり、PL保険では補償されません。通関業者が荷物の取り扱い中に引き起こした事故、または書類ミスによる顧客損害については、別途「通関業者賠償責任保険」の加入が必要になります。通関業者賠償責任保険の対象例としては、「通関士が税率の適用を誤り、関税の過大納付が生じ、更正請求の期限が過ぎてしまったため荷主が税金の還付を受けられなかった」といったケースが挙げられます。


リスク③:輸出品は国内PL保険では補償されない


PL保険には国内向けと海外向けがあります。国内PL保険は日本国内で請求された損害賠償のみを補償します。製品を輸出する立場の事業者には、海外PL保険(輸出PL保険)への別途加入が必要です。特に米国向け輸出はPL訴訟の賠償額が莫大になりがちで、企業経営に大きな影響を及ぼすケースもあるため、海外展開を視野に入れている個人事業主は注意が必要です。


厳しいところですね。これら3つのリスクは、多くの記事では触れられていませんが、通関業に近い業務形態を持つ個人事業主にとって、実務上の盲点になりやすい重要なポイントです。


ジェトロ「輸入品の品質欠陥に起因する人的・財的損害が発生した際の製造物責任」—輸入者の責任範囲と海外製造者への求償方法が解説されています


PL保険を個人事業主が選ぶ際の比較ポイントと注意点

保険料の安さだけを基準にPL保険を選ぶのは危険です。補償内容が不十分では、いざというときに全く役に立たない「名ばかりの保険」になってしまう可能性があります。正しい選び方の基準を押さえておきましょう。


補償限度額を事業リスクに合わせて設定する


補償限度額とは、保険金として支払われる上限金額のことです。過去の判例では、製品事故で後遺障害が残ったケースや死亡事故において、1億円を超える賠償命令が出た事例もあります。「1億円の補償」で年間2〜5万円程度の保険料が相場です。補償限度額が低すぎると、賠償額が限度額を超えた部分は全額自己負担になります。


「リコール費用」の特約が必要かどうか確認する


一般的なPL保険では、事故が起きたあとの製品回収(リコール)費用は補償対象外です。食品製造・販売を行う個人事業主の場合、食中毒が発生した際の食材廃棄・回収・謝罪広告に多額の費用がかかります。リコール特約の付帯を検討するのが原則です。ただし、全国商工会連合会の中小企業PL保険制度の場合、充実補償リコール特約を付帯すると最低保険料が別途30,000円かかる点は知っておきましょう。


示談交渉サービスが付いているかどうか確認する


事故発生後、被害者との示談交渉を自分で行うのは精神的・実務的に大きな負担です。保険会社が代わりに示談交渉を行う「示談交渉サービス付き」の商品を選ぶと安心です。個人事業主のように専門スタッフを抱えられない事業者ほど、このサービスの価値は高くなります。


免責金額の設定を確認する


免責金額とは、損害のうち自己負担する金額のことです。免責金額を0円に設定しておくのが最も安心です。免責金額が設定されている場合、その金額以下の損害は保険が使えません。


以下に主要な商品の特徴をまとめます。


| 商品名 | 特徴 | 個人事業主向けの月額目安 |
|---|---|---|
| USEN「ビジネスリスクGuard」 | 月額490円〜、WEB完結型 | 490円〜 |
| 日新火災「事業をおまもりする保険」 | 売上高1億円以下対象、3プラン | 数百円〜 |
| 全国商工会連合会「中小企業PL保険制度」 | 最低保険料1,000円/年、最大28%引き | 約83円〜 |
| AIG「事業賠償・費用総合保険ALL STARs」 | 業種別プラン、サイバーリスク特約あり | 要見積 |
| 損保ジャパン「ビジネスマスタープラス」 | 1契約で複数リスクをカバー | 要見積 |


商工会議所の団体割引が条件です。加入前に一度、複数の保険の保険料を比較することをおすすめします。


東京商工会議所「団体PL保険制度」—商工会議所のスケールメリットによる割安保険料の詳細が確認できます


PL保険の保険料を安く抑えながら補償を充実させる実践的な方法

「安くて補償が手厚い」という両立は難しそうに感じるかもしれませんが、賢い選び方をすれば実現可能です。ここでは個人事業主が実際にとれる具体的な対策を整理します。


方法①:商工会・商工会議所に入会して団体割引を使う


通関業や輸入販売に関わる個人事業主は、多くの場合、地域の商工会議所に加入できます。商工会議所の会費は年間1万円程度(地域差あり)ですが、団体PL保険制度の割引率(最大28%)を活用すると、トータルコストで個別加入よりも安くなるケースがあります。加入条件の確認は、各地域の商工会議所に1本電話するだけで完了します。


方法②:複数のリスクを1つの保険にまとめる


PL保険を単独で契約すると、代理店が引き受けを断るケース(保険料が低すぎて代理店の収益が見合わない)があります。施設賠償責任保険や請負賠償責任保険、PL保険をセットにした「総合型賠償責任保険」に加入することで、引き受けてもらいやすくなるうえ、個別加入よりも保険料が割安になることが多いです。損保ジャパンの「ビジネスマスタープラス」やAIGの「事業賠償・費用総合保険ALL STARs」はその代表例です。


方法③:WEB完結型を利用する


対面の代理店で断られた場合でも、WEB完結型のオンライン保険であればシステム審査のため引き受けてもらえる可能性が高いです。USEN「ビジネスリスクGuard」のように月額490円から始められる商品もあります。手続きはスマホやPCから数分で完結し、最短翌日から補償が始まります。


方法④:必要な補償だけ選択してムダをなくす


パッケージ型の保険商品の中には、「必要な補償のみ選択可能」なものがあります。例えば、輸出業務がない個人事業主には海外PL補償は不要です。自社の事業内容に必要な補償だけを選択することで、余計なコストを削減できます。


これが条件です。「安く入ること」よりも「自分の事業に必要な補償を正確に把握すること」が、最終的に最もコストパフォーマンスの高い選択につながります。


PL保険の保険料は全額、事業の経費として計上できます。個人事業主の確定申告時に損害保険料として処理が可能なため、実質的な負担は税率分だけ軽くなります。年間1万円の保険料であれば、税率20%の場合は実質負担8,000円です。「守りの経費」として、事業継続の観点から積極的に活用することを検討してください。


らくらく貿易「輸入品が欠陥品!損害賠償は輸入者負担って本当?」(元通関士執筆)—輸入者のPL法上の責任とPL保険の実際の保険料例が解説されています