退職後に何もしなければ、秘密保持義務は法律上なくなります。
参考)5分で分かる!秘密保持義務に違反した退職社員へ損害賠償請求す…
通関業法第19条は、通関業者・通関士・その他の通関業務従業者に対して「正当な理由がなく、通関業務に関して知り得た秘密を他に漏らし、又は盗用してはならない」と定めています。 この義務は退職後も継続します。 つまり法律上の義務は残るということですね。
しかし、この規定だけでは民事上の損害賠償額が自動的に確定するわけではありません。 秘密が漏れても、損害賠償を確実に受け取るためには、契約書の中で賠償額や違約金の金額を具体的に定めておく必要があります。 例えば「情報漏洩が発生した場合、受領者は300万円を上限に損害を賠償する」という形式が一般的です。note+1
通関業従事者が取り扱う荷主の輸出入情報・関税申告内容・取引先情報は、漏洩した場合に荷主に直接的な経済損失をもたらします。契約書の中で秘密情報の範囲を明確に定義しておくことが、実務上の第一歩です。
参考)NDA(秘密保持契約)で注意すべきことは? - 中堅~大手会…
以下は実務でよく使われる秘密保持条項の基本例文です。
| 条項タイプ | 例文(概要) | 主な用途 |
|---|---|---|
| 片務型 | 「受領者は開示者から開示された秘密情報を第三者に開示・漏洩してはならない」 | 荷主→通関業者への情報開示 |
| 双務型 | 「甲乙双方は、相互に開示した秘密情報を第三者に開示してはならない」 | 通関業者間・業務委託先との契約 |
| 違約金付き | 「本条項に違反した場合、違反者は●●円の違約金を支払う」 | 損害立証が困難な場合の抑止力 |
例文を使う際にまず確認すべきなのが「秘密情報」の定義です。 法律には「秘密情報」という言葉の定義がなく、各契約で明確にする必要があります。 定義が曖昧なことが原因です。
定義の方法には主に2つのアプローチがあります。
秘密保持義務と例外の条項とは?第三者の範囲はどこまで?(業務委託契約書.com)
契約の有効期間は、秘密保持条項の中で最も見落とされがちな規定のひとつです。 一般的に「何年」という定めはなく、情報が陳腐化するまでの期間を開示者が見積もって設定します。 期間には目安があります。
通関業従事者が注意すべき最重要ポイントがあります。在職中の守秘義務は退職と同時に原則として消滅します。 退職後も義務を継続させるためには、就業規則の明示または秘密保持誓約書への署名が必要です。 明文化が条件です。
退職後の秘密保持義務に関する例文として以下が一般的に使われます。
ただし、期間や範囲が広すぎる場合は公序良反(無効)と判断されるリスクもあります。 大阪地裁の平成25年9月27日判決(マツイ事件)では、秘密保持義務の範囲が広すぎる場合に公序違反として無効とされた事例があります。 合理的な範囲に絞り込むことが重要です。
退職後の秘密保持義務の有効性(弁護士法人長瀬総合法律事務所)
通関業の秘密保持条項が一般的なNDAと異なる最大のポイントは、「荷主情報の二重構造」にあります。通関業者は荷主から情報を受け取るだけでなく、税関・運送会社・倉庫業者・銀行など複数の第三者との間で情報を流通させる立場にあります。この流通経路を想定した例文アレンジが必要です。
具体的には、以下の条項を追加することで実務上のリスクを大幅に減らせます。
参考)秘密保持契約書(NDA)の実践的雛形と重要ポイント|法務コラ…
目的外使用の禁止は特に重要です。 一度渡った情報を荷主側から監視するのは実質不可能であり、条項の文言による抑止と、万一の場合の損害賠償根拠として機能させることが現実的な対策です。
実務では、秘密保持に関する書面として税関が公開している「機密保持に関する誓約書」の書式も参考になります。 これは税関調達における雛形ですが、官公署との取引が多い通関業者にとって文言の参考になります。
参考)https://www.customs.go.jp/kyotsu/chotatsu/seifu/s_tokyo/20260202_No2_kimitsu.docx